賃貸物件を借りる時には注意が必要!経年劣化とは認められない9個の事例

賃貸物件を退去するときには、オーナーや管理会社と室内の現状立ち会いを行います。
この立ち合いの意味は、「補修が必要である箇所をお互いチェックする」という意味です。
立ち合いの結果、賃借人の負担とされた場合には、賃借人は費用を負担するという流れです。

ただ、賃借人が負担するかどうかは、「原状回復」の定義や「経年劣化かどうか」という点で判断されます。

そこで今回は、経年劣化と判断されなかった事例を9個紹介します。
この事例のようなことになると費用負担が発生するので注意しましょう。

経年劣化と敷金の関係性

部屋を補修
まず、経年劣化と敷金の関係性を解説します。

賃貸物件を借りるときには、物件のオーナーに敷金を預けることが多いです。
敷金は、「退去時に部屋を補修する費用」などに使われ、費用が足りなければ追加で請求され、余剰金があれば返還されます。

補修義務について

このとき大事になってくるのが、どこまでが賃借人の補修義務があり、どこからがオーナー負担になるのかという点です。
それを知るためには、「原状回復」を知っておく必要があります。
なぜなら、原状回復に必要な補修が敷金返還と大きく関わりがあるからです。

敷金返還のトラブル事例として多いのが、「この補修は賃借人の負担か?オーナーの負担か?」という点です。
事細かく決められているワケではないので、全ては「原状回復の定義」によります。

原状回復の定義

原状回復の定義は、国土交通省が定めるガイドライン※1にて「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定められています。

要約すると、「経年劣化した分」はオーナーの負担になるということです。
つまり、補修するか否かは、「その箇所が経年劣化しているのか賃借人の使い方に問題があるのか」が焦点になるということです。

※1国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

経年劣化による残存価値について

価値
仮に、賃借人の使い方が悪かったり、過失が認められたりした場合でも、経年劣化分は考慮されます。

たとえば、クロスの場合(新品クロス前提)は以下のような残存価値になります。

・入居後4年⇒残存価値は約50%と評価される

・入居後10年⇒残存価値は約0%〜20%と評価される

たとえば、新築の賃貸マンションに4年間住んで退去したとします。
その際、クロスの使い方が悪く、5万円の補修費用が請求された場合には、まずクロスの残存期間を考慮します。
つまり、4年経過時点で残存価値は50%落ちているので、「そもそもクロスの価値は新品の半分しかない」とされているということです。
そのため、賃借人の負担金も5万円の補修費用の半分になります。

これらの点を踏まえて、次項より「経年劣化として認められず、賃借人に負担義務が発生する事例」を紹介します。

事例1:クロスの張替え費用

クロス張り替え
室内で劣化しやすい代表格である「クロス」ですが、事例の1つ目はこのクロスの張替え費用についてです。

賃借人はクロスにホワイトボードシートを張っていたことにより、その箇所だけが黒ずんでしまいました。
そのため、賃借人はクロスの補修費用をオーナーから請求されたのです。
賃借人は黒ずんだ部分は経年劣化ではなく自身の「使い方」によるものだと認めましたが、あくまで「黒ずんだ部分のみ」認めたという形です。

しかし、結論から言うと、その壁一面のクロス張替え費用が賃借人の負担になりました。
理由は、黒ずんだ部分だけを張り替えると継ぎはぎのような形になり、室内が不自然な状態になるからです。
そのため、自然な形で補修するときには、壁一面のクロスの張替えが必要であると判断されたということです。

事例2:壁ボードの穴補修

マンションの壁は、隣戸との境である「戸境壁」と、室内の部屋を区切る「間仕切壁」の2種類があります。

戸境壁はコンクリートに直接クロスを貼っていることが多いですが、間仕切壁は軽鉄とボードの上にクロスを貼っています。
そのため、間仕切壁に関しては穴をあけてカレンダーや時計を掛けたりすることができるのです。
このように、モノを掛けたりするために、間仕切壁のボード部分へ穴を空けた場合は、経年劣化にならずに賃借人が補修費用を負担することになります。

これも前項と同様、必要であれば壁一面のクロスを張り替えることになるので注意しましょう。

事例3:ピクチャーレールの破損補修

賃貸物件によっては、ピクチャーレールなどが設置されていることがあります。
ピクチャーレールとは、絵画が掛けられたり、時計が掛けられたりするレールのことです。

ピクチャーレールには重量制限があるため、その制限を超える重量のモノを掛けると破損しやすいです。
ピクチャーレールは、天井のボードや壁のボードに吊られているため、重量オーバーで破損するとボードまで剥がれてしまう場合があります。

ほかには、玄関前に「コート替え」があったり、「補助用の手すり」、または「室内物干し器具」があったりする場合も上記と同じ扱いになります。

事例4:家具によるフローリングのへこみ

へこみ
つづいての事例は、家具によるフローリングのへこみです。

たとえば、テーブルやソファなどの大型家具や、冷蔵庫などの大型家具を置いている場合、その重さによりフローリングが損傷することがあります。
この「損傷」については、基本的に経年劣化と見なされるので賃借人の負担にはなりません。

しかし、明らかに賃借人の過失や使い方が悪い場合には、賃借人の責任として費用負担が発生する場合があります。
たとえば、日常的にソファの上で子供飛び跳ねていたり、テーブルを運ぶときに勢いよくフローリングに落としてしまったりしたときです。
このようなときには、フローリングの陥没などが発生するので、賃借人の「使い方が悪い」と判断されることがあります。

事例5:天井と壁のカビ補修費用

続いての事例は、天井と壁のカビを補修する費用についてです。

天井や壁のクロス部分はカビが生えることがあります。
カビが生えてしまうとクロスの裏側のボード部分まで浸食することが多いので、クロスとボードの張替えになります。

このとき、賃借人の使い方が悪い補修費用は賃借人の負担となります。
「賃借人の使い方が悪い」とは、過度に室内を加湿していたり、室内にゴミなどを放置しているような衛生的に良くない状態が続いたりしたときです。
このような場合には、賃借人の過失と認定されるので、天井と壁のカビ補修費用は賃借人の負担となります。

事例6:キッチンの換気扇焼け焦げ補修

経年劣化は、キッチンや浴室などにある「設備」にも適用されます。

今回の事例は、キッチンの換気扇の焼け焦げ後の補修です。
キッチンの換気扇の汚れや破損は、キッチンの使い方にもよります。
結論から言うと、今回のケースは焼け焦げの度合いがひどく、賃借人が「不当な使用をした」として補修費用を負担しました。

設備関係の使い方が不当かどうかは、退去時に立ち会った業者との話し合いになり、明確な定義を定めるのは不可能です。

基準としては、一般的に使用した状態とかけ離れているほど劣化・破損した場合に、賃借人の「不当な使用」になります。
ただ、上述したように経年劣化による「残存価値」も考慮されます。

たとえば、この事例の場合は換気扇を設置して12年が経過していました。
そのため、そもそも換気扇の価値が12年間の期間で下がっており、新規交換価格の10%と評価されています。
たとえば、新規交換費用が3万円であれば、賃借人はその10%である3,000円を負担するということです。
つまり、賃借人の不当な使い方であったとしても、経年劣化分は考慮して負担金額を算出するというワケです。

事例7:タバコのヤニにより変色した扉の交換

タバコ
結論から言うと、タバコのヤニが原因で変色した部分は、賃借人の過失として賃借人が補修費用を負担します。
今回の事例は、日常的に室内でタバコを吸っていることによって、扉が変色した事例です。

木製の建具に関しては、タバコのヤニが原因で変色にまでいたることは少ないです。
ただ、和室がある部屋の襖に関しては、タバコのヤニで変色しやすいので注意する必要があります。
もちろん、タバコのヤニによってクロスが黄ばむなどの事例も、賃借人の責任として費用負担が求められます。

事例8:浴室ミラーの破損

結論から言うと、今回紹介する「浴室」だけでなく、洗面所などにあるミラーが破損している場合には、ほぼ100%賃借人の負担になります。
なぜなら、通常の生活においてミラーが破損することはないからです。

特に、ミラー範囲が広い洗面所の三面鏡や、曇り加工などが施されている浴室ミラーなどは補修(交換)費用が高くなるので注意しましょう。
子供がいる家庭などでは、ミラーの破損は無い話ではありません。

事例9:浴室の湯垢による補修費用

浴室などの水まわりは、水垢や湯垢がつきやすい場所になります。
水垢は、通常利用をしていても発生しますし、クリーニングや補修(交換)をしたところで、またすぐに発生する汚れです。

しかし、たとえば「清掃を怠ったことによる湯垢」などは、賃借人の負担になります。
どこまでが賃借人の負担になるかの定義が明確化されているワケではありませんが、目視レベルで汚れがひどい場合には賃借人の負担になることが多いです。

このような「汚れ」の場合、原状回復をするとき「クリーニング」で済めば良いですが、設備の交換にまで至ると多額の費用が発生するので注意しましょう。

まとめ

上述したような、経年劣化と認められない事例を基に、以下の点に注意しましょう。

・国土交通省のガイドラインにて原状回復の定義を理解する

・負担金については「残存期間」という考え方がある

・事例を基に、どのようなパターンが経年劣化と認められないかを確認する

これらは、「主観」の判断によるところが大きいです。
そのため、「判断基準」を正しく理解しておき、事例を知っておくことで、どこまでが自分の負担になるかのイメージをしておくことが大切です。

- 2017年05月23日