デベロッパーとは何か?ゼネコンとの違い、その仕事内容を解説

会社の業種で、「デベロッパー」という言葉を耳にしたことがあると思います。しかし、デベロッパーと言っても、具体的にイメージが分からない人も多いはずです。「不動産業」と漠然に分かっていても、不動産業の中の位置づけまでは言葉だけでは良く分かりません。そこで今回は、この「デベロッパー」について詳しく解説します。

デベロッパーとは?

デぺロッパ―デベロッパーとは、英語で「developer、開発者」の意味です。日本では、土地や街を開発すること主業としている不動産会社のことを指します。デベロッパーが行う事業は多岐にわたり、たとえば以下のような事業になります。

1.街の再開発事業

2.リゾート開発

3.大型商業ビルの開発

4.大規模場な宅地造成(戸建て街の形成)

5.マンション開発

これらの事業はデベロッパー以外にも色々な事業者が協力して行いますが、主になって行う企業はデベロッパーであることが多いです。

ゼネコンとの違い

ゼネコンとは「総合建設会社」のことを指します。平たく言うと、不動産を「造る側」の企業であり、「建築を請け負う」ことが仕事になります。

たとえば、マンションを1棟建築するとします。マンション1棟建築するときには、コンクリートを流し込む業者や、外装を作る業者、そして電気関係の業者や内装関係業者など色々な業者が携わっています。それらを取りまとめているのが「ゼネコン」と言われる総合建設会社なのです。

そのため、デベロッパーとゼネコンは「パートナー」のような関係になります。デベロッパーが土地を購入して、その土地をどのように「開発」するかを考えます。そして、その開発内容を図面に落とし、図面に落としたことを実行して建築する部隊がゼネコンになるのです。

一応、関係性としてはクライアントが「デベロッパー」で、下請け会社が「ゼネコン」という構図になります。

しかし、特に大手のゼネコンはデベロッパーと「共に」開発をしていくことも多いです。事実、デベロッパーとゼネコンは共同事業を行い、一緒に事業者として土地を開発することもあります。

不動産屋との違い

そもそも、「不動産屋」という言葉に定義はありません。「不動産屋」という言葉は、不動産の仕事をしている企業全般を指す言葉なので、その意味ではデベロッパーも「不動産屋」になります。

しかし、一般的にいう「不動産屋」は、街に店舗を構える「身近な」不動産会社を指すことが多いです。そのため、個人の住宅の「仲介」を主業としている不動産仲介業者を指す場合がほとんどです。

つまり、「不動産屋」という言葉の中にデベロッパーも含まれているものの、一般的には街の「不動産業者」のことを不動産屋といいます。

街の再開発事業

再開発デベロッパーの具体的仕事内容は、扱う事業によって大きく異なります。そのため、今回は3つの具体的な事業を例に挙げ、どのような仕事をしているのかを解説します。まずは、「街の再開発事業」から解説します。

街の再開発事業とは?

街の再開発事業とは、特定の街のインフラや住宅、商業施設などを新たに建築して、「街づくり」をする事業のことを言います。街の再開発をするときには、シンボルとなる大型の建物を建築することが多いです。

たとえば、池袋であれば「区役所一体型の大型マンション」や、渋谷の再開発であれば「ヒカリエ」などが挙げられます。その大型建築物を中心として、以下のような開発を行います。

1.インフラ(道路など)整備

2.周辺住宅開発

3.周辺商業施設開発

インフラ整備

街の再開発に欠かせないのが、インフラ整備です。具体的には道路の拡張や、歩道の整備、線路の地下化などが挙げられます。いずれにしても、その街の「利便性向上」や「景観の向上」などを目的とした整備になります。

たとえば、調布駅付近では、京王線が地下化される工事が行われました。そして、調布駅や調布駅付近の国領駅などでは駅も新装され、今後は歩道の建築なども計画されています。

また、虎ノ門再開発を例にとると、まずシンボルとしての「虎ノ門ヒルズ」が出来上がりました。その虎ノ門ヒルズにつづく環状二号線が、新橋から開通されています。さらに、汐留・勝どきの方まで環状二号線は続いていく予定です。

このように、交通利便性を向上させるため、インフラ整備も行う再開発が多いです。

ただ、インフラ整備は、道路や線路など「国土」に関わってくる開発です。そのため、環状二号線もそうですが、当初の計画とは変更になったり中止になったりする場合も少なくありません。

インフラ整備に関しては、道路や公共施設などが絡みます。そのため、インフラ整備が関係する大きな再開発については、国が主導する公的デベロッパーが中心になることが多いです。

そのため、公的デベロッパーが中心となり、その下に協力会社として民間デベロッパーが参加するパターンが多いのです。民間デベロッパーは、公的デベロッパー指導の元で、ゼネコンと共に建築監理をします。

また、再開発の全体図の作成や、それらの管理などもデベロッパーの仕事です。

周辺住宅開発

また、再開発は、インフラ整備と並行して周辺住宅の新築工事を行うことも多いです。先ほどいった池袋の大型マンションもそうですが、たとえば湾岸エリアの再開発は住宅開発が非常に多い再開発でした。

豊洲では、「ららぽーと」という大型商業施設を皮切りに、周辺にデベロッパーが新築分譲マンションの開発を進めました。実は、このような街の再開発に関わる住宅開発は、通常の住宅開発よりも大変です。なぜなら、規模が大きいため、大規模な土地を確保する必要があるからです。

そのため、大規模な土地を確保するため、元々居住している居住者に「建て替え」をススめるという仕事が必要になります。昔は、無理やり「地上げ」をするなど、悪いイメージがもたれており、そのような点も「不動産屋」と呼ばれていた理由でもあります。

しかし、今は「新しく建て替えて大規模マンションを建てる。そのマンションの1室を譲るので、この土地を売却して欲しい」というような交渉をすることが多いです。ただ、あまりにも数が多いため、街の再開発による土地の確保は数年がかりである場合も少なくありません。

しかし、これも「区画整理」という行政が関わってくる事業であると話が違います。区画整理であれば、元々行政が開発することを計画している事業です。そのため、住んでいる人も、区画整理がはじまれば「立ち退きをする」という前提の元で居住しています。

つまり、立ち退き交渉をするというよりは、「約束した計画を実行するので立ち退いてください」と促すことになるので、通常の地上げよりはスムーズに進みます。

周辺商業施設開発

先ほどの「ららぽーと」や「虎ノ門ヒルズ」など、街の再開発には大型商業施設を建築することが多いです。大型商業施設を建築するときにも、前項の「住宅開発」と同様、大規模な土地が必要になります。そのため、前項と同じような苦労があります。

また、住宅を立ち退いてもらい、商業施設を建てる場合には、「建物が完成したら1部屋譲ります」というような交渉ができません。そのため、「近くのマンションを購入して譲る」などの対応が必要になるため、住宅開発よりも時間がかかるケースが多いです。

いずれにしろ、インフラ・住宅・商業施設が絡む大規模な再開発事業は、民間デベロッパーのみで行うことは不可能です。しかし、一方で公的デベロッパーだけではノウハウ不足などがあるので、公的デベロッパーのみでも不可能です。

そのため、公的デベロッパーと民間デベロッパーが協業して街の再開発に当たることが多いです。

大規模な宅地造成

宅地造成2つ目の事例は「大規模な宅地造成」です。大規模な宅地造成とは、平たく言うと「戸建て街」の形成です。デベロッパーにもよりますが、「10棟以上」など、規模の基準を定めているデベロッパーが多いです。

用地の取得

大規模な宅地造成をするといっても、街の再開発ほどの規模はありません。そのため、基本的には「商業施設跡」や「大地主が所有していた大規模な土地」などの場所を造成することが多いです。

宅地「造成」というくらいなので、土地そのものを一から造るイメージです。たとえば盛り土をすることで段差をなくしたり、逆に切土をすることでグランドレベルを合わせたりします。

戸建ての建築

宅地造成が終われば、その場所に戸建てを建築します。大規模な造成宅地の場合には、数棟はモデルハウスとして見せるために、実際の家を建築します。しかし、ほかの住戸に関しては、「建築条件付き住宅」とすることが多いです。

建築条件付き住宅とは、売主であるデベロッパーが施工会社を指定した状態で、土地を販売することを言います。建築条件付き住宅にすれば、購入者も戸建ての設備や仕様を選ぶことができ、デベロッパーも利益を上げることができるからです。

販売

いわゆる「モデルハウス」を構えて販売することが多いです。先ほど言ったように、何棟かモデルハウスを設けて、その家を見学して「室内のイメージ」をしてもらいます。そして、営業マンが図面などで営業をして、最終的には契約をしてもらうという流れです。

デベロッパーによって、販売手法は異なります。たとえば、販売も一体となっているデベロッパーもいますし、販売は別の会社に依頼するデベロッパーもいるのです。

後ほど具体的な会社も紹介しますが、大手デベロッパーは販売会社を独立させていることが多いです。いずれにしろ、デベロッパーは土地の開発から販売まで一貫して責任を持ちます。

ハウスメーカーとの違い

ハウスメーカーとの違いは、「規模」にあります。たとえば大手ハウスメーカーである積水ハウスやヘーベルハウスは、基本的には1棟の注文住宅を受注します。つまり、個人で土地を持っている人が顧客になるということです。

その顧客に対して営業を行い、建物の仕様や設備、設計などを売りにして工事を受注するという流れです。

マンション開発事業

マンション開発3つ目の事例は「マンション開発事業」です。マンション開発事業とは、平たく言うと「マンション1棟を建築し販売すること」です。戸建ての宅地造成と似ていますが、マンションの場合は数十戸~数百戸の規模になるので、事業としてはマンション開発の方が大きな事業になります。

そのため、「マンションデベロッパー」と呼ばれる、マンション開発を主業とするデベロッパーもいるほどです。

用地の取得

マンション用地の取得は、規模によっては、戸建て開発よりも小さい土地で行うこともできます。建築基準法上「容積率」という基準があり、小さな土地でも縦に大きなマンションを建築することができるからです。

一方、戸建て建築よりもマンション開発の方が、単純に「大きな」建築物になります。そのため、近隣への周知をするものの、近隣とのトラブルも多くなります。マンション開発を行うデベロッパーは、周辺住民との話し合いなども行う必要があります。

マンションの建築

マンションの建築は、先ほど出てきた「ゼネコン」と密接に関わってきます。通常は土地情報を得た段階で数社のゼネコンに見積もり依頼をかけます。そして、その見積りをみて、マンションを売却した「売上」と比較しゼネコンを選定します。

マンションの建築については、ゼネコン任せにせずに、デベロッパー内で「建築」の部署を持ち管理するデベロッパーがほとんどです。その建築部の社員が、ゼネコンと「間取り」や「仕様・設備」、「構造」など細かな打ち合わせを重ねマンションを建築していくのです。

デベロッパーに勤務している社員の仕事

社員
デベロッパーの社員の仕事は実に多岐にわたります。そもそもデベロッパー自体が色々な事業をしているため、社員の仕事も「種類」がたくさんあるのです。今回は代表的な以下の職種に絞って解説します。

1.用地仕入れ

2.建築監理

3.マーケティング

4.業務

5.販売

用地仕入れ

用地仕入れは、読んで字のごとく「土地を仕込んでくる部隊」です。マンション用地だったり、商業施設の用地だったりの情報を得て、そこに建築をして利益が上がるかを考えます。デベロッパーの中では「花形」の部署であり、千三つ(千個のうち三つしか事業化しない)と言われるほど、難しい部署でもあります。

情報源は街の不動産会社から、商社や信託会社、そして行政など非常に幅広くあります。その情報源となる法人や個人とつながりを持ち、良い土地情報があったときに真っ先に自分へ連絡をもらえるような関係性構築が重要になります。

たとえば、マンション用地の情報を得たら、まずそこに簡易的なボリュームを入れます。ボリュームとは「どの程度のマンションが建つか」ということです。

次にマンションの売値を計算し、販売経費や建築費を加味した上で「利益が出る」と判断したときだけ、土地を購入するという流れになります。

建築監理

建築監理とは、ゼネコンや設計事務所など、建築関連企業とやり取りする部署になります。デベロッパーは、実際に建築することはほとんどないですが、売主として建築物に責任を持ちます。

そのため、建築物の「構造」「間取り」「規模」「品質」などは、細かくチェックした上でゼネコンへ依頼するのです。また、建築中も図面通り設計しているか、工期は順調かなどの確認をするのも建築監理の仕事になります。

会社によっては、デザインや設計なども建築監理で行うこともあります。大手デベロッパーであれば、自社の建築監理でデザイン・設計したものをゼネコンに依頼するという流れになることが多いです。自社で行った方がブランディングはしやすく、管理もしやすいからです。

ただ、中堅デベロッパーは設計やデザインの部署まで、自社で抱えることはできません。そのため、設計は設計事務所、デザインも設計事務所かデザインだけ外注することも多いです。

マーケティング

マーケティング部隊は、主に「値付け」をします。マンションなどの住宅事業であれば、マンション価格の値付けです。値付けは、膨大な過去データや周辺の売り出し物件相場、そして不動産の全体市況を加味した上で行います。

また、商業施設の開発やオフィスビルの開発などは、テナントの誘致や賃料などの査定をします。マーケティングが算出する査定額が、その開発の「売上」につながり、その売り上げによって事業化するか決めるのです。

業務

企業によってさまざまな呼び方がありますが、不動産に関わる膨大な書類を管理する部署のことです。不動産はほかの事業に比べて、金額が大きな事業が多く、関連会社が多いです。そのため、契約関係の書類が膨大になるのです。

たとえば、マンションの1棟開発でも以下のような膨大な書類になります。

・土地売買契約

・施工請負契約

・近隣住民と結ぶ協定書

・モデルルームと賃貸借契約

・購入者と結ぶ売買契約書

細かくあげると上記以外にもたくさんの書類があるのです。これらは事業的な観点や、個人情報保護の観点から、外注することができません。そのため、デベロッパーは、自社内で書類を管理する部署が必ず存在します。

販売

先ほど言った通り、販売部門を外注したり系列会社が担当したりすることも多いです。また、不動産の販売は、ただ不動産を売るだけが仕事ではありません。たとえば、マンション開発事業を例に見ます。

マンション開発事業であれば、以下のようなことを行います。

・マンションの魅力の洗い出し

・パンフレットなどの作成

・広告展開の立案

・モデルルーム場所の選定、および建築

・実際の売却業務

・契約、引渡関連業務

このように、売るための「下準備」も行いますし、「売った後の手続き」もデベロッパーで行います。

デベロッパーの紹介

先ほども少し触れましたが、デベロッパーは「総合デベロッパー」と「マンションデベロッパー」に分けられます。総合デベロッパーは「三菱地所」「三井不動産」「住友不動産」という財閥系をはじめ「野村不動産」「東急不動産」などの大手が続きます。

一方、マンションデベロッパーは、「大京」「東京建物」「コスモスイニシア」「オープンハウス」などの会社を指します。一般的に「デベロッパー大手」と言えば総合デベロッパーの5社を指します。マンションデベロッパーと言われる会社は総合デベロッパーと比較すると中堅になります。

次項から、いくつか会社をピックアップして、その会社の特徴を紹介します。

三菱地所

三菱地所は「丸の内の大家」と呼ばれるくらい、首都圏を中心にビルなどの不動産を大量に保有しています。そのため、ビルの賃料収入などが安定的にあり、再開発や住宅、リゾートなど、幅広い不動産事業を手掛けている会社です。

三菱地所は、完全に分社化しているのも特徴の一つです。たとえば、所有しているビルの管理は「三菱地所プロパティマネジメント株式会社」が行っています。また、三菱地所が開発した住宅事業は「三菱地所レジデンス株式会社」が販売を行っているのです。

また、関連会社には「設計事務所」もあり、ホテルも所有しているため、全ての不動産に携わっているといっても過言ではないです。

三井不動産

三井不動産も三菱地所同様に、総合的に不動産事業をしています。もちろん、所有しているビルもたくさんあり、ホテル・物流・住宅事業なども手掛けている会社です。

ただ、三井不動産は既存の不動産を運営するというよりも、新たな開発に力を入れている会社でもあることが特徴です。たとえば、「三井のアウトレットパーク」や日本橋室町の「三井ビルディング」などが良い例です。

新たな施設や価値を消費者に提供することで、三井ブランドを確立して、そのほかの不動産事業に波及しようとしています。この「新たな開発」に力を入れているあたりは、三菱地所との差別化につながっています。

住友不動産

財閥系の最後は住友不動産です。住友不動産も、上記2社と同様に全ての不動産事業を行っています。ただ、住友不動産は「再開発」や「住宅」よりも、「オフィスビル賃貸」に力を入れているのが特徴です。

つまり、三井不動産とは逆で、新しい開発というよりは、既存の不動産の運営に力をいれているということです。丸の内が三菱地所であれば、新宿は住友不動産が非常に強いエリアになります。そのため、ビルのリーシング事業は住友不動産の看板部署になります。

大京

大京は「ライオンズマンション」でお馴染みのマンションデベロッパーです。マンションデベロッパーでは「大手」になりますが、総合デベロッパーも合わせると「中堅」になります。大京は約50年間マンションを中心に開発を手掛けてきた会社です。

大京のマンションの特徴は、とにかく「どのエリアにもマンションを供給する」という点です。通常、マンションデベロッパーは、得意なエリアがあります。たとえば、「東京の城東エリアが得意」「北関東が得意」などです。

しかし、大京は基本的にどのエリアでもノウハウがありますので、エリアを限定せずにマンションを供給できます。そのため、知名度があり、大京のライオンズマンションのブランド形成に一役買っているのです。

東京建物

東京建物も、大京と同じくマンションデベロッパーでは大手、総合デベロッパーでは中堅になります。「Brillia(ブリリア)」というブランドで、全国にマンションを展開している会社です。

東京建物の特徴は、マンションのデザイン性にあります。もちろん、立地や間取り、構造などのマンションの基礎的なニーズは抑えます。その上で、でデザイン性を重視した建物をつくり、ブランドイメージを確立しています。

実際に東京建物のマンション広告のほとんどが、デザイン性を謳っています。マンションという「住まうモノ」に、デザインという「住む楽しさ」を提供し、ブランドを確立することが狙いです。

まとめ

このように、デベロッパーは「開発者」の名のごとく、さまざまな不動産事業を自ら開発する会社です。自ら開発するので、土地の仕入れから建築、販売までを一貫して自社(もしくは系列会社)で行います。

このように製造~販売まで一貫して行う会社がデベロッパーであり、ほかの「不動産仲介会社」や「ハウスメーカー」などとの違いになります。

- 2017年02月10日