人気リノベ賃貸サイト『グッドルーム』のデータから見る、「満室のためのリノベでやっていいこと、悪いこと」

6月14日(火)~15日(水)、東京ビッグサイト 西1.2ホールにて、全国賃貸住宅新聞主催の「賃貸住宅フェア 2016 in 東京」にて、家主と地主と賃貸住宅市場で働く人のセミナー&展示会が開催されました。今回は、15日に行われた ハプティック株式会社代表取締役 小倉弘之氏による「ユーザー数30万人の賃貸サイト『グッドルーム』のデータを公開!リノベでやっていいこと、悪いこと」セミナーの概要を一部ご紹介します。

<プロフィール>
小倉弘之 氏
東京大学経済学部卒業後、竹中工務店、ボストンコンサルティンググループ勤務を経て、2009年12月に賃貸のリノベーションに特化した、ハプティック株式会社を設立。2013年3月には、築古、リノベーション等のセレクト賃貸 グッドルーム株式会社を設立。賃貸サイト「goodroom」は、30万人のユーザーが利用する人気サイトとなっている。

現在、リノベーション部門賃貸ポータルサイト利用者数NO.1の実績を持つ「goodroom」設立者である小倉氏が、現在の賃貸ポータルサイトが抱える課題や、入居者目線のリノベーションについてなどを中心に語るセミナーでした。

お客様のニーズという目線から見てみる

お客様のニーズという目線金沢県の21世紀美術館にある「スイミング・プール」という作品は、庭に設置されたプールを見下ろすという芸術作品です。しかし、上から見下ろす鑑賞者だけではなく、実はプールの下からも別の鑑賞者が、見下ろしている人々を見ることができるというユニークな作品です。通常では、「プールを見下ろす」ことはあっても、「プールの中から見上げる」という発想はないのではないでしょうか。今から7年前に会社を立ち上げましたが、我々も、そのような発想で「視点を変える」ことを大切にしています。

入居者目線に立ったニーズとは?―グッドルームからわかった、お客様の動向

賃貸物件を選ぶ時に、ポータルサイトなどに掲載されている物件を見て不動産会社に問い合わせをしたお客様の場合、一般の不動産仲介店舗への問い合わせで契約が成立する確率は全体の1~3割程度と言われています。しかし弊社の場合は、サイトに掲載している物件をお問い合わせ頂いた方の6割が、最初にお問い合わせ頂いたお部屋で契約成立して頂いています。

1、お客様はすでにサイト上で部屋を決めている

その理由は、他のポータルサイトが行っていることと逆のことをやっているからではないか、と考えています。例えば、弊社のサイトの物件情報には、きちんと「マイナスポイント」を記載するようにします。弊社のスタッフが取材に行き、部屋を見て感じたことを正直に記載します。例えば、半地下の物件の場合には「半地下なので、少し暗めです」というコメントを入れます。

「マイナスなことを書くともったいないと」考える方もいると思いますが、そうしないと、実際にお客様が内見にいらした時、がっかりしてしまうのではないかと考えています。そのため、あえて物件情報にはマイナスポイントを入れます。また、サイトに掲載する写真にもこだわっています。

他のサイトでは、広角レンズや魚眼レンズなどを使って部屋の中を撮影し、広く見せるという管理会社様もいらっしゃいます。その結果どうなるかというと、なかなか契約者が決まらなくなります。理由として、どんなに写真で部屋を広く見せても、実際にお客様が内見した時には狭く、写真と実際が異なるためです。そのようなことを避けるため、サイトに記載する文章や写真は、goodroomではあえて「お客様目線」の正しい情報を記載するようにしています。サイトに正しい情報があれば、店舗に足を運ばなくても、お客様はきちんとしたサイトの情報があれば、物件を選べる時代になりつつあると考えています。

2、お客様のニーズは来店相談よりも、案内ニーズが高い

不動産仲介店舗に来店せず、気になった物件を内覧するために直接担当者と現地で待ち合わせしたい、という希望を持つお客様は全体の6割というデータが出ています。サイトで見て気になった部屋を内見してみて、よければそこに決めたいという方は多いのです。もちろん、お客様が来店して相談することが全く大事ではないわけではありませんが、「店舗に行かなくても、サイトで見て気になった部屋が見れればいい」考えるお客様が増えていることを、ここ数年で実感しています。goodroomでは、サイト上でお客様が「直接現地内覧」か「来店」をお選びいただけるようにしています。

3.繁忙期は7月?需要は創りだすもの

不動産仲介会社の常識として、いわゆる1~3月の繁忙期は「はねる」とよく言われますが、弊社では「閑散期」と呼ばれる7月や、12月に売上のピークが来ます。通常であれば、繁忙期の後はなかなか成約しないという印象があると思います。確かに、4月の就職・進学・転勤などに合わせてお部屋選びをされるお客様は多いでしょう。しかし逆に考えてみると、オーナー様にとっては、繁忙期に成約しなかった部屋の「リノベーションニーズ」が大きいのです。

4.賃貸でも「カスタマイズ」のニーズが実は高い

本格的に「DIY」をやろうとすると、道具を揃えたり手間がかかったりと大変な部分もありますが、弊社でアンケートをとったところ、例えば「壁付けの収納を作る」や「壁紙をチョイスする」、「ベランダやテラスをウッドデッキにする」などの「カスタマイズ」をやってみたいというお客様は全体の4割という結果が出ました。そのため、カスタマイズのニーズは増えていることが考えられます。

弊社ではカスタマイズ賃貸の物件を取り扱っていますが、工事をしてから入居者を探すのではなく、入居者が決まってから工事を行うというサービスも開始しました。このようなサービスにより、内装工事はしたものの入居者が決まらない、という状況を避けることができます。

5.お客様は、築年数より内観の情報を求めている

賃貸ポータルサイトを利用するお客様は、物件を探す時に「築年数」を重視していると言われがちですが、実は築年数の浅い物件ばかりをお客様が求めているかというと、必ずしもそうではありません。弊社が行ったアンケートによれば、ポータルサイトで築年数を検索するユーザーは全体の約4/1という結果が出ています。つまり、残りの4/3のお客様は、賃貸物件を探すうえで築年数を重視しているわけではないことがわかります。築年数を気にするにしても、新築~10年以内ではなく、築20~30年まで選択肢に入れるお客様も多いのです。

むしろ、お客様は築古物件でも内装がしっかりしている部屋を求めているといえます。そのため、外から見ただけではわからない内観の情報を求めているのです。goodroomのアンケートでは、「ほかのサイトより部屋の状況がわかりやすい」「写真が多い」などのご意見を頂いています。大手ポータルサイトでは外観の写真が多い傾向にありますが、我々は、内観の写真はお客様のニーズと考えています。また、弊社では、セレクトやAI機能などによって、築年数で検索しなくてもお客様のニーズに合ったお部屋を提供できる開発を実施しています。

物件のリフォーム・リノベーションを行う際は、入居者目線に立つことが大切

入居者目線に立っことが大切 現在のポータルサイトは、入居者様・管理会社のニーズを捉えれていない部分もあると考えています。これからの時代は賃貸住宅でもリノベーション物件など特徴のある「差別化」が大事で、入居者様の目線に立ったポータルサイトを作ることで、築古物件や特徴のある物件も選んで頂きやすいのではと考えています。

物件に取材に行くと、入居者様のニーズと合わないリフォームやリノベーションなどの差別化をしている物件を見ることがあります。例えば、壁にコンクリート打ちっぱなし「調」のクロスを利用しており、写真ではよくても内見に行くとチープに見える物件や、女性が困惑してしまうスケルトンのバスルームなどの間違った過剰投資をしている物件、パートナーのアドバイスをうのみにして3点ユニットを無理やり分離したために部屋が狭くなり、借り手がつかないままというケースなども見てきました。

差別化の方法を間違えるとお客様のニーズがなくもったいないため、入居者目線を心がけて違う所にお金をかけたほうがよいと考えています。例えば弊社が取り扱う物件では新築・築浅物件を活かす方向ではなく、同じ費用をかけるならばユニットバスを交換するより、キッチン込で部屋をリノベーションするという方法を選びます。また、ユニットバスを分離させるより、その半分の費用でユニットバス自体をリフォームする方が家賃も安くなり、お客様にもご満足いただけます。

まとめ

そのほかにも、築古物件をリノベーションしたことで入居者がすぐに決まった事例紹介などもありました。今回のセミナーでは、

・従来の業界の常識や慣例にとらわれるのではなく、お客様のニーズを考えたサイト作りが成約につながる
・築浅などの条件だけが重視されているわけではなく、入居者の使い勝手のよい空間にすることが大切

ということがわかりました。マンションのオーナーは、独りよがりではなく入居者視点に立ってリフォームやリノベーションを検討すること、物件の特徴や利点を生かした提案をしてくれるハプティックのようなパートナーと組むことが、空室率が下がり入居者も満足できることにつながるようです。

※本セミナーの内容は登壇者個人の見解であり、当サイトの見解ではございません。

- 2016年06月28日