日本銀行の歴史的なマイナス金利政策もあり、今多くの金融機関の住宅ローン金利は、かつてなかったほどの水準の低さになっています。
例えば35年間固定金利ローンである、フラット35の場合でも35年間約1.10%という金利での契約が可能になっています。
それまでの住宅ローン金利というと、アパートローンなどと比較して低金利だったとしても、1.5~2.5%などの金利が大半でした。
また長期優良住宅など、機能的かつ環境に配慮した住宅を購入するのならば、0.7%代で長期ローンを契約することすらできます。
35年ローンになれば、3000万円借りた場合、金利が1%違うとなんと約600万円もの支払総額の差が出てくるのです。
これは想像以上に大きな差額であると、感じる人も多いのではないでしょうか。
借入金3,000万円、返済期間35年 | |
金利1% | ¥35,567,998 |
金利2% | ¥41,739,109 |
差額 | ¥6,171,111 |
この低金利時代に、もし金利が低い住宅ローンへの借り換えができれば、完済までの総額を減らす、もしくは期間を短縮できる という人はかなり多くなるはずです。
日本のこの極端な低金利はここ数年続いている現象です。
公定歩合がバブル期のように5%以上になるという可能性は国の借金が増大している現在では極めて低いですが、
それでもこれ以上の低金利もそうそう望めないタイミングであることも同時にいえます。
つまり 今はより金利の低い住宅ローンへ借り換えを行う非常に大きなチャンスでもあるのです。
しかし住宅ローンの借り換えには、金融機関の審査を通過する必要があります。
ほとんどの金融機関では審査基準を明白にしておらず、審査を行ってみて初めて結果がわかるということが大半を占めます。
そこで住宅ローンの借り換えを検討する時、 審査は自分たちの何を見られるのか、またどうすれば審査を通過できるのか、そして落ちてしまった時の対策はどうすればよいのか などを、ポイントを絞ってお伝えします。
目次
1. 住宅ローン借り換えの流れ
1-1. 借り換えを行っても良い条件
2. 借り入れ住宅ローンで審査されるポイント、借り換えならではのポイントとは
3. 借り換え住宅ローンで審査が通らない原因
4. 借り換えで審査に落ちてしまったとき採るべき対策
4-1. 考えられる対策
4-1-1. 別の金融機関に審査をお願いしてみる
4-1-2. フラット35に審査を申し込む
4-1-3. ローン返済額を減らす、借入期間を短くする
4-1-4. 職場の審査条件を良くする
4-1-5. 他からの借り入れを返済する
5. まとめ
まず住宅ローンの借り換えを行うにはどうしたら良いのでしょうか、またどういった住宅ローンに借り換えを行うほうが良いのでしょうか?
当たり前ですが、借り換えを行うのではメリットがなくてはいけません。 多くの人にとって借り換えを行う最大のメリットは、 「住宅ローンの支払総額が減る」ことでしょう。
そのためには
という条件を満たしていないとあまり意味がありません。
住宅ローンの金利は残額に乗算されるので、残り1000万円程度の住宅ローンならば、たとえ金利の差が1%あっても総額で52万円、 年額にすれば5万円程度の差にしかならないので、借り換えに関する諸費用のほうが上回る場合があります。
しかし残額2500万円で、金利が1%以上違うのでしたら、年額14万円以上、 最終的には約350万円の差になることが多いので、借り換えを行う意味は十分にあります。
借入金1,000万円、返済期間10年 | |
金利1% | ¥10,512,495 |
金利2% | ¥11,041,614 |
差額 | ¥529,119 |
借入金2,500万円、返済期間25年 | |
金利1% | ¥28,265,434 |
金利2% | ¥31,789,075 |
差額 | ¥3,523,641 |
借り換えに関しては新規住宅ローンの契約手数料、保証料などの費用がかかりますし、古い住宅ローンの抵当権抹消の手続きも必要になります。
契約手数料や保証料などの条件は最初に定額を支払うものは金利が高め、
契約したローンの何%、といった割合で決まるものは金利が低めという傾向があります。
複数のローンを見て条件をしっかりと確認しておきましょう。
抵当権抹消や新しい住宅ローンの抵当権設定に関しては、自分で行うこともできますが、大抵の人は司法書士に依頼をすることになるでしょう。
その場合は司法書士に報酬を数万円支払わなくてはいけません。
これも計算の中に入れておきます。
更にフラット35以外の住宅ローンを契約するのならば団信への加入も必須です。
ローンの総額や司法書士の利用の有無によって異なりますが、住宅ローンを新たに融資してもらう時の費用総額は、
安くても30万円はかかるものと見積もっておきましょう。
借り換えの手順としては
といった流れになるでしょう。
その中でも審査に時間がかかることや、現在の融資先からの連絡が遅くなるなどの、トラブルが発生するケースもあります。
また新規の住宅ローンを申し込むわけですから、住民票や収入を証明する源泉徴収票、前の金融機関との契約書、現在の住まいの登記簿謄本など、 公的なもの、金融機関と作成したものなど各種の書類が必要になります。
これは金融機関により求められる書類は異なりますが、公的な書類に関しては
といったものはまず必要になるので、事前に用意しておきましょう。
見つからない、取りにいけないなどの不具合があると、せっかく住宅ローンの審査が通っても、審査が有効な期間を過ぎてしまい、
再度審査を受け直さないといけないこともあります。
せっかく審査が通ったのに、それは大変もったいないですから、その点には十分に注意をしておきましょう。
また借り換えならでは注意点として、直近12ヶ月の預金通帳の写しを求められることも多いようです。
これはその家庭の収支の状況を把握し、きちんと貯蓄ができているか、無駄遣いがないかなどの家計の健全度を審査するためのものとなっています。
毎月赤字で、ボーナスで補填をしている家庭などは、審査が厳しくなることもあるかもしれません。
ただ面談などできちんと状況を説明できれば、不問になることもあります。
結局はケースバイケースであることが多いのが、住宅ローン審査の特徴と言えるでしょう。
では実際に、借り入れを行う時にどのような部分が審査の対象になりやすいのでしょうか?
金融機関が融資への審査を行う際に重視するポイントには、
主に上の2つになります。
住宅ローンの新規借り入れと、借り換えならではの大きな特徴として、「物件の担保能力に関してはやや審査が甘い」という点が挙げられます。
それはたとえ新築住宅を購入していても、住宅の価値は10年もすれば3~4割も落ちてしまうからです。
土地の価値は経年で変化するものではなく、需要と供給の関係で売買価格が上がることもありますが、建物自体の価値は経年で下落する一方です。
特に木造住宅は減価償却期間も短いので、財産としての価値は20年も経てばほぼゼロになりますし、
もともと日本では新築住宅に対する「信仰」とまで呼ばれる、需要が高いので、中古物件は資産が大きく低下します。
それこそ「買った瞬間に試算価値が2割落ちる」と言われるほどのものです。
しかしその一方で、35年ローンの10年、15年時点での返済額は、2/7、3/7まで進んでいるかというと、全くそのようにはなっていません。
住宅ローンを返済する初期においては金利返済が占めるので、残債はまだ非常に多く残っているケースがほとんどです。
残債が多いのに、資産価値は落ちているという不釣り合いな状況で、シビアに家の担保力をはんだんし、 その担保能力に基づいた金額しか融資しないとなると、実際には債務者の借りたい金額には遠く及ばない金額になってしまっていることがほとんどです。
具体的なシミュレーションをしてみます。
15年前に3500万円の新築住宅を購入。
住宅ローンは融資額3,000万円、金利2.5%返済期間35年という条件で借りて、返済を続けていたとします。
15年間で返済できた金額は10,550,828円だけであり、まだ残債は19,449,172円も残っています。
時間だけ見れば35年ローンで15年も返しているのですから、3/7の期間返済を行っており、43%の時間を経過しています。
しかし返済できている金額は35%程度です。
その一方15年で建物の資産価値は大きく低下し、たとえ築15年の物件付きで販売を行っても1800~2000万円程度でしか回収ができないでしょう。
通常ならば金融機関は不動産を売却しても債務の回収ができないので、融資などしてくれないのですが、
ここを厳密に見てしまうと、借り換えできるケースがどんどん少なくなってしまうので、あえて担保能力に関しては甘く見ているのです。
しかし担保を超える金額を貸し出すというリスクを負う以上、 債務者自身の返済能力に関しては、ややシビアに見られるのが借り換えローンならでは特徴になっています。
また一般的に考えれば、大抵のサラリーマンは住宅ローンを申込んだときよりも、年収はアップしているものですし、 個人事業主や自営業の場合でも、住宅を購入した頃の年齡よりも、10年、15年経てば一般的には収入が増えているはずです。
もちろん子供が生まれて、その生活費や教育費で家計が圧迫されることもありますし、妻が育児のため退職して一家としての収入が減った、ということは有りえます。 それでも一定期間住宅ローンの返済を続けられてきたということで、支払い能力に関してはある程度の信用を持っているとも判断されます。 それだけに求められる基準も高くなってしまうのです。
せっかく低金利の金融機関を見つけられたのに、残念ながら審査に落ちてしまった。 そういったことも当然ながら起こりえます。
では審査に落ちる原因としては、どのようなものが該当するのでしょうか。
まずは返済能力に関する部分です。
融資をしても返済できなければ貸し倒れになるので、金融機関がまず融資してくれません。
年収の何割が住宅ローンの返済に当てられているのか、いわゆる「返済負担率」が高いほど、融資は受けにくくなります。
返済負担率を下げるには、毎月のローンの支払額を減らして、返済期間を長くする、もしくは年収を上げるということになります。
しかし返済期間を長くすれば結果的に金利を多く支払わなくてはいけないことになりますし、借りる人の年齡によってはローンを長引かせることができないこともあります。 その上年収を簡単に上げるということができる人は少ないでしょう。
しかし最初の住宅ローンを借りたときには、夫のみ正社員で定収入があったが、子育てが一段落し、妻も正社員として再就職し、 定収入があるという状態になっていれば、二人の収入を合算して融資を受けられることもあります。
次に考えたいのが現在の職種や勤務状況です。
住宅ローンの融資に関しては、本来一般のサラリーマンより遥かに収入の多い芸能人よりも、定収入がある安定した企業の社員の方が融資を受けやすいということもあります。
東証一部上場企業など知名度があり、会社の業績も安定している企業で長く働いている正社員である、
こういった本人の属性は融資に関して有利に働きますし、どうしても自営業の人間は、不利になります。
また転職が多い、業績連動給で収入の浮き沈みが激しい、歩合給の社員なども不利になることがあります。
とにかく毎月の出費になるだけに、何よりも「安定」が重視されるのです。
さらに家計の状況やその人、家庭の日常的な支出がどの程度かというのも重要になります。
住宅ローン借り換えを検討するような家庭は、住宅の購入から10年以上経過している家庭が多く、子供もいる人が多いです。
それだけにある程度の生活パターン、支出額や子供の教育プラン、将来へ向けた貯金をしているかどうかなど住宅購入時と比較してそれぞれの家庭の個性が如実に現れてきています。
簡単に言うと堅実な生活をしている家庭か、出費が多く派手にお金を使ってしまう家庭かという属性が判断しやすくなっているのです。
当然金融機関が融資をする可能性が高いのは、堅実に収入の中で生活をしている前者の家庭になります。 サラ金を利用している、親からの支援を頼っている、明らかに出費が多く、また貯金額が少ない家庭に融資をしたいと思う金融機関はいないでしょう。
また住宅ローン以外にも自家用車用のローン、アパートローン、ソーラーパネル設置のためのローン、家のリフォームローンなど様々なローンを状況によって利用している人もいます。 こういった住宅ローン以外に利用しているローンや、日常的な借り入れが多いことも、金融機関の審査に落ちる原因となります。
住宅ローンの審査で判断される基準には、これまで挙げたもの以外に、住宅ローン融資の残額も重要になってきます。
当然ながら住宅ローンの残額が少なくこれまで返済してきた実績があれば、融資は受けやすくなりますし、いま所有している家の担保としての評価額との兼ね合いとしても判断されます。
例を挙げるとすれば2000万円の評価額の住宅に住んでいながら、3000万円の融資を新たに受けようとするのはかなり無謀でしょう。
しかし同じ3000万円の融資でも、住宅の担保評価が5000万円ならば、ぐっと融資を受けやすくなります。 金融機関としても担保物件を売却すれば資金の回収が用意ですから、借り換えもスムーズに進むことでしょう。
こういった担保として自分の所有する物件の価値を知るには、周辺の相場を熟知している不動産屋に聞いてみるのが最も手早いです。
これまで挙げた住宅ローンの借り換えの審査基準を総合すると、
ということになります。
なかなかシビアな現実ですが、わかりやすくまとめると
「収入が低くギリギリの返済を続けている、住んでいる家の担保価値も低い」という人です。
収入が低いからローンを借り換えたいんだろう、と抗議の声の一つも挙げたくなりますし、
収入に余裕があり、ローンの返済も特に問題ない、担保力のある家に住んでいるならばわざわざ面倒な借り換えなどしないかもしれません。
しかし融資をする金融機関としては、貸し倒れだけは絶対に避けたいもの。
ローンの借り換えをするべき人は、「現状でも返済に余裕はあるのだけれども、借り換えをすることでさらに金利の返済を節約したい」という人になるのです。
もし審査に一旦落ちてしまっても、借り換えを諦めるにはまだまだ早いです。
金融機関にもいろいろな属性を持つものがあり、それぞれ融資を決定する審査基準が細かい点で違うこともあるのです。
最初の銀行などに断られたからといっても諦めるには早計です。
ついつい最初に申し込むのは金利の安い金融機関、今でしたらネットバンクという人が多いのではないでしょうか。
しかしネットバンクはそれだけ借りる人の属性や経済的な状況、担保の審査が厳しくなります。
それよりも面談などで状況を詳しく説明できる信用金庫を検討してみるという手もあります。
地元に根づいた信用金庫は、企業の財政状況などもよく知っているので、中小企業でも高く評価してくれることもあります。
ネットバンクは人件費の節約のために面談などを行っていないところが多いので、機械的に審査をされがちです。
スペックで全てを判断されるような金融機関に申し込むのではなく、個人としてみてもらえる金融機関を、多少金利面でネットバンクに劣るとしても、探してみると良いでしょう。
結果的に毎月の返済や返済総額が下がれば、借り換えの意味はあります。
銀行やネットバンク、そして信用金庫でも断られてしまった場合に、最後に頼れるのがフラット35です。
それはなぜかというと、フラット35は住宅金融支援機構が運営母体となっており、利潤を追求する金融機関と異なり、
多くの国民に、質の良い住宅を安価で供給することを目的としているからです。
フラット35の評価基準は住宅性能であり、
環境に優しい、バリアフリー、省エネなどの住宅であれば返済能力に不安があっても審査が通りやすいと言われています。
幾つもの金融機関の審査においても、フラット35で融資を受けられた!という人はたくさんいます。
フラット35の融資には、ウェブサイト上にしっかりとした基準が記載されています。
こういった条件がまず設けられています。
大抵の住宅やマンションならばクリアーできる条件ですが、その他にも
新耐震基準に適合していること、そして独自の「技術基準」をクリアーしているかどうかが問われます。
この技術基準は新築と中古物件で異なりますが、ローンの借換えの際には中古物件に対する技術基準に適合していなくてはいけません。
中古で購入し、そこから何年も経過している住宅では、なかなか技術基準に適合しないことも多いですが、
新築で購入していた新しい住宅ならば、技術基準を満たしていることも多いです。
不動産屋に条件を確認してみましょう。
また「省エネルギー性や耐震性に優れた住宅に対しては、より金利がお得な「フラット35S」の利用も可能です。
とにかく住宅が「技術基準に適合しているかどうか」が一番の基準になります。 さらに親子リレーローンや、フラット50、夫婦で収入の合算なども可能です。
ただしフラット35は団信の加入が必須ではありません。 融資に関する諸経費の節約にもなりますが、別途入る必要がある時には、思わぬ出費を強いられることもあります。
ローンの返済額を減らすというのは、当然ですが融資の審査が緩和されやすくなります。
また現在60歳なのに20年間ローンを組むことができないように、大体の住宅ローンは80歳までの返済を前提としています。
現金が何らかの手段で用意できるのならば、借入額を減らす、ローン返済期間を短縮するなどの措置を行い、審査に臨んでみましょう。
住宅ローンでは、その個人の返済能力を見るために、どのような会社に勤務をしているかも重視されます。 原則解雇や倒産がない公務員が住宅ローン審査で特に有利なのはこのためです。
転職をしたばかりの人間は、その会社に定着するかを疑問視されることもあるので、審査でマイナスになることもあります。
転職をしたばかりで、住宅ローンの審査に落ちた場合は、1年以上継続して同じ職場で勤務をした後に再度申し込むことで、審査を通過することもあります。
またもっと年収の高い企業に転職し、しばらくしてから申し込めば審査通過の可能性が上がるともいえます。
審査の基準としては、1年、そして3年継続して働けば一定の基準を満たすものとして、審査を通過できるケースが多いようです。
住宅ローンは個人で借りられるローンの中では、最も規模が大きいローンと言えるでしょう。
それだけに個人の信用に関する情報が、厳重にチェックされます。
もしクレジットカードでの借り入れが多い、返済を滞納している借金があると行った、信用に関わるような問題がある場合には、 借金やローンを完済すれば個人信用情報が回復し、ローンの融資を受けられる可能性も高くなります。
住宅ローンの借り換えは手間もかかりますし、審査も厳しくなる傾向があるので、誰でもできるものではありませんし、 もともと金利が低い住宅ローンを利用していた場合には、それほどメリットはありません。
しかし2017年時点の各住宅ローンの金利を見る限り、10年、15年前に住宅ローンを借りていたような人は、
金利の差も大きく残高によっては利用する価値は大いにあるといえるでしょう。
物件の担保力よりも、個人の返済能力が見られるようになりますが、大抵の人は住宅ローンを借り始めた頃よりも、収入がアップしていることでしょう。
収入が伸び、返済に余裕が出てきたという人は、ぜひ借り換えを検討してみてはいかがでしょうか。
※ 本記事は2017年08月時点の内容になります。
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