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知っておけば安心!マンション相続でもめないためには~髙原誠税理士インタビュー~

髙原誠税理士

自分の死後、気になるのが「相続」のこと。 大切な家族に自分の財産を残してあげたいという気持ちはあっても、例えば所有するマンションを自分の配偶者や子どもに相続させる場合にはどのような方法があるのか、 実際にどれくらいの相続税がかかるのかなど、若いうちはピンと来ないこともあります。

所有するマンションを相続する場合には、どのような方法があるのか、また、マンション相続の際の注意点などについて、不動産鑑定士と相続専門の税理士が協働し、 不動産に特化した相続対策に強いフジ総合グループ(https://fuji-sogo.com/)から、 フジ相続税理士法人の髙原誠税理士にお話をお伺いしました。


―所有するマンションを、自分の死後に家族などに相続させるためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか?

死後

まず、相続に関しては民法で法定相続人(亡くなった人の財産を相続する権利がある人)が定められています。 故人の遺した財産が不動産なのか、現金なのか、不動産の中でもマンションなのか、あるいは戸建なのかといった財産の種類は問わず、お金で換算できるものはほぼすべて相続の対象となります。

民法における法定相続人は、相続順位が決められています。 被相続人(亡くなった人)の配偶者の方は常に相続人になり、第一順位はお子さん、お子さんがいない場合には被相続人のご両親(第二順位)、ご両親もいない場合には被相続人の兄弟姉妹(第三順位)というふうに、相続する権利が移っていきます。

親御さんが所有するマンションを、自分の子どもに相続させる場合で考えてみます。 例えば、親御さんが亡くなって、相続の権利を持っている人が一人だけしかいなければ(配偶者がおらず子ども一人しかいない等)、相続放棄などをしない限り、その方がマンションも含めすべての財産を相続するという形になります。

ただ、法定相続人が複数いらっしゃる場合には、そのようには行きません。例えば、被相続人であるお父さんが亡くなって、法定相続人が奥さんとその息子二人という場合には、その三人で 残されたマンションを誰が相続するのか?を話し合って決める、遺産分割協議を行うことになります。

民法では相続人ごとの取り分(法定相続分)も定められていますが、遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、法定相続分にかかわらず誰がどの財産を相続するか自由に決めることができます。 例えばマンションを、長男だけ、次男だけ、奥さんだけという一人だけが相続するということも認められます。 また、奥さんと長男で二分の一ずつ相続する、奥さん、長男、次男で三分の一ずつ相続するということも認められています。 ただし、一つの不動産を複数の人で共有するのは後々トラブルになりやすく、あまりおすすめはできません

また、すでに家族が別々の場所に暮らしていて、マンションを相続しても住む人がいないなどのご事情から、相続されるマンションを使わない、必要ないという場合もありますよね。 現金などと違ってマンションはひとつしかありませんから、どのようにして分けるのかということになります。 そういう場合には、相続をきっかけにそのマンションを売却して、売却金額を三人で分けるという方法があります。 もちろん、そのマンションが区分なのか、一棟なのか、エリアなどの立地条件によっても売却金額が変わってくるというのは、相続の場合でも同じです。

なお、遺言があれば原則として遺産分割協議は不要です。 例えば、生前にお父さんが、奥さんだけにマンションを相続させるという遺言を書いていた場合、マンションは奥さんが相続することになります。 遺言を書けば、一義的には(遺言執行者が遺言通りに執行してくれれば)財産を持っている人が自分の死後にその財産の処分をどうするかについて決めることができます。 そのため、例えば相続人以外の人にあげることも可能になります。 ただし一定の相続人には、民法の定めにより、最低限主張できる相続財産の割合(遺留分)が確保されています。 遺言を書く際には、それを侵害しないようにするのがポイントです。


―被相続人が予期せず亡くなってしまった場合など、遺言書を残さずに死亡してしまった場合には、 マンションの相続はどのように行えばよいのでしょうか?

基本的に、遺言を残さずに亡くなった場合には、先ほどお話しした遺産分割協議を行います。 法定相続人で話し合い、財産をどのように分けるか決め、遺産分割協議書という書面を作成します。

遺産分割協議書には、どの財産を誰が相続するのかを明記します。 マンションを売却してお金を分ける場合には、換価して分ける旨を記載します。 遺産分割協議書は、原則として法定相続人の人数分作成する必要があり、それぞれの住所と氏名を記入し、実印を押します。 遺産分割協議書と印鑑証明書を各自が保管し合い、遺産分割協議成立になります。

不動産の名義変更(相続登記)は、遺言がない場合は、遺産分割協議書と被相続人の戸籍謄本等を法務局に提出して行います。 遺言がある場合は、遺言と被相続人の戸籍謄本等を提出することで名義変更を行えます。 相続登記の手続きを相続人や遺言執行者が行うことも可能ですが、一般的には司法書士に頼まれる方が多いです。

自分が所有するマンションの評価額や、マンションの相続税評価額などがいくらかかるのか知っておくことが大切

評価

―自分の死後、家族へマンションの相続を考えている人が、生前に気をつけておくべきポイントはありますか?

一番は、自分が所有するマンションの評価額を知っておくということです。 相続発生時の評価額は、マンションを購入した当時の金額とは違うということを認識しておくことが大切です。 もちろん、都心などのエリアでは価格が下がらない所や、むしろ価格が上がっているケースなどもありますので一概には言えませんが、郊外などでは下がることもあります。 また、相続税がかかりそうな人は、マンションの相続税評価額がいくらなのか、相続税がいくらかかるのかも知っておくべきでしょう。

―仰るように、被相続人のマンション購入時と現在とでは評価額が異なり、思っていたより低いというケースもあるかもしれません。 御社にご相談にいらっしゃるご家族は、遺産分割のときのマンションの評価額にはご納得されているのでしょうか?

ご家族ごとによって、本当に異なります。納得いくまで複数のデベロッパーを当たり、査定書を出してもらうというお客様もいらっしゃいます。

弊社は不動産鑑定士の事務所もやっているため、不動産鑑定評価を入れることを希望されるお客様も多いですね。 我々はマンションを買い取る事業を行っているわけではありませんので、あくまで中立公平な立場で鑑定を行っています。

固定資産税の評価額は毎年出されるので、そちらをもとに財産を分割するということでご納得されるお客様もいます。 あるいは、いずれ相続税の申告のために必要だからと相続税評価額を計算し、その金額で遺産分割も決めるということでご納得されるお客様もいます。

財産を残す方の財産状況、家族環境、財産内訳などによってさまざまな対策を取る必要がある

相続

―自分の財産を家族に渡す方法として、相続のほかに、生きているうちに財産をあげる「生前贈与」という方法があることを知りました。 生前贈与と相続の違いや、メリットとデメリットについて教えて下さい。

生前贈与のメリットとしては、遺産分割において起こりうる、子どもたちの兄弟げんかなどのトラブルを回避するという点があります。 生きているうちに生前贈与をしてしまえば、要するに自分が亡くなった後には財産が残っていないわけですから、誰が相続するかをめぐってもめることは、原則としてないですよね。

デメリットとしては、かかるコストが高いという点です。 まず、生前贈与には贈与税がかかります。 相続税にも贈与税にも基礎控除という、「この額までなら税金はかかりませんよ」という枠がありますが、相続税の場合の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」であるのに対し、 贈与税の場合は、贈与された人ひとりにつき年間110万円しかありません。 これだけ見ても、贈与税は相続税よりも高くつくということがわかるかと思います。

それでも例えば、所有するマンションを小分けにして、持ち分で毎年少しずつ渡していけば、贈与税の基礎控除を利用しながら贈与することもできますが、別のコストもかかります。 生前贈与の場合には、相続の場合にはかからない不動産取得税がかかることがあります。 また、マンションの名義を変える時に法務局に払う登録免許税も、相続の場合は(現在は)0.4%の税率ですが、 生前贈与の場合はその5倍の2%がかかります。

相続の場合はその逆で、かかるコストが安いことがメリットですが、 遺産分割をめぐって兄弟げんかやトラブルなどの原因になりやすいことがデメリットと言えるでしょう。 とても極端な話をすると、1億円の価値があるタワーマンションと現金100万円が親御さんの財産としてあり、死後、長男がタワーマンションを、次男が現金を相続するとなった場合には、次男は納得しないのではないでしょうか。 そのため、財産を残す方の財産状況、家族環境、財産内訳などによってさまざまな対策を取る必要があると言えるでしょう。

相続税の節税方法として、不動産や金融商品など現金以外に変えたり、生前贈与などの方法がある

マンション購入

―相続税が上がったとお伺いしましたが、例えば、相続税を節税するための方法などはあるのでしょうか。

相続税の節税対策は千差万別ですが、マンションを購入する、つまり現金を不動産に変えることは、古くから言われている節税対策のひとつであると言えるでしょう。

相続税の場合には現金が評価額として一番高いので、節税という点で考えると、いかに相続する現金を現金以外の財産に変えるかということがひとつのポイントになってくると思います。 >不動産に変えれば相続税評価額は圧縮されますし、生命保険などの金融商品に変えるという方法もあります。金融商品でも、株などはリスクも大きいため、 >生命保険などのコントロールが効くものに変えるということも、方法のひとつであると考えます。 また、先ほどご説明した「生前贈与」で、生きている間に財産をお子さんに移していくという方法もありますね。 ただし現金を減らしすぎると、目先の生活費や、相続税の納税資金の準備に支障が出る可能性もあります。

―現金は、相続財産の中でも一番相続税がかかるとお伺いしました。現金を別の資産に変える方法の中でも、髙原税理士から見て「不動産の購入はあまりすすめない」というお考えなどはありますか。

それは全くありません。大切なのはどこの場所にあるマンションを購入するのかという、購入するエリアやご家族の状況次第ではないかと考えます。 いまや東京都でも賃貸経営ができるエリアは限られていると感じますから、そこは慎重に考えてほしいですね。

―マンションのみにこだわらず、財産である現金を不動産に変える場合に、おすすめなどはありますか。

マンションに限らず言えば、戸建賃貸も、時代の潮流としてひとつあると思います。 これは地主さん向けの話で、あまりキャッシュリッチの方向けの話ではありませんが、戸建で細かく家を立てていくと、いわゆる「小回り」が利くというメリットがあります。 複数棟の戸建を立てれば、棟ごとの敷地で売却が可能になりますし、遺産分割もしやすくなるというメリットが挙げられます。

あとは、不動産でも特徴のある商品、尖った商品などもニーズがあるのではないかと思います。 とはいえ、学生・女性専用の賃貸物件などは今や当たり前になっていますので、例えばガレージ付きや音楽演奏ができるなどの特徴を持った物件や、 荷物を家の中にしまうスペースがない人も増えていることから、レンタル収納BOXなどの居住にこだわらない活用方法もよいのではないかと思います。 また、東京23区内で駅の力が強いエリアの場合には、シェアハウスなども面白いかもしれません。

相続に関して親子が腹を割って話し合い、対話することが必要

話し合い

―何もなく元気な時から「相続」について考える人はそう多くはないと思いますが、どのタイミングから相続について考えはじめる方が多いのでしょうか。また、御社にご相談に来られるお客様は、親御さん(相続される側)とお子さん(相続する側)のどちらが多いでしょうか。

私どもの事務所には、ご自身が亡くなった時や、自分の親が亡くなった時を想定して、 「相続税はいくらかかるの?」「うちのようなケースの場合、相続税はそもそもかかるの?」といったご相談にいらっしゃる方が多いですね。

お子さん側からのご相談ですと、「親が昨日食べたものを覚えていない」「入院しがちになった」という、 「そろそろ危ないのではないか」という状況になって相続について考えはじめ、ご相談にいらっしゃることが多いです。 一方で親御さんの場合は、比較的早い段階でご相談に来られる方が多い傾向にあります。 「今は元気だけれど、自分の死後に相続税がいくらかかるか不安」という、お子さん思いの方などですね。

割合で言うと、お子さん側がご相談に来られるケースの方が多いです。 親御さんとしては、自分が亡くなった後の話をするわけですから、やはりそれなりにパワーがいるのではないでしょうか。 また、お子さんはお金(相続税)を支払う側の立場になりますので、現実にどれくらい相続税を支払うことになるのかなどが心配になり、ご相談にいらっしゃるのではないかと思います。

―自分や親の死後を考える立場になってみて初めて、相続についてそれぞれに心配な点が出てくるということですね。 相続でもめないために、相続する側・される側の双方で、やっておくべきことはありますか。

相続対策は、親が子を、子が親を巻き込んで話し合う必要があります。

お子さん側が弊社にご相談に来られて、例えば「相続税を安くするために、現金で残すよりもマンションを買った方がよい」という結論になっても、そのマンションを買うのは結局親御さんですから、 お子さんが親御さんと話し合って、説得する必要があります。 でないと、「相続税を安くするためには、マンションを買うべきだよね」という〝べきだよね論〟で終わってしまいます。

また、親御さんがご相談に来られて、例えば「マンションを買った方が相続税は安くなる。 収益用に購入して賃貸に出せば家賃収入も得られる」という話になったとしても、「うちの息子はそういうことには興味がない」などと、子どもの意見を聞かず、親の判断でシャットダウンしてしまうことがあります。

そのため、相続に関しては親子が腹を割って話し合うこと、きちんと対話をすることが必要です。 話し合う際のポイントは、親御さんがお亡くなりになるまでの生活をどのようにするかをきちんと話し合ってから、相続について考えることです。 つまり、親御さんに介護が必要になった場合に、老人ホームなどの施設に入るのか、自宅で診るのか、施設に入るとしたら予算はいくらぐらいかかるのか、 自宅で診るとしたら誰が面倒を見るのかなどを話し合った上で、「今から10年後の親の財産は、大体これくらいになっていそうだな」という「棚卸し」をする必要があります。

そこまで想定した後に出てくる相続税が、本当の相続税であると言えます。 例えばマンションを買う・買わないなどを決めるにしても、現在の親の財産だけで考えるのではなく、介護の部分まで見込んで話し合う必要があると言えるでしょう。

マンション売却を成功させるコツや売買の流れについて知りたい方は下記のページをご参照ください
「マンション売却を成功させるコツを不動産業者が徹底解説」

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