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住宅ローンと不動産投資ローンの違い

不動産ローンの中で、もっとも知られているのは「住宅ローン」です。 自己資金だけで購入できる方は別として、マイホームを購入される方の多くは、この住宅ローンを利用されるでしょう。

一方、投資用不動産向けに「不動産投資ローン」というローン商品があります。 これは、賃貸アパート・マンションなどの不動産事業に対して貸し出されるローンで、他にも賃貸ビルやトランクルーム、賃貸目的で分譲マンションの一室を購入する場合などにも利用が可能です。

どちらも不動産を対象としたローン商品ですが、それぞれ目的や審査基準が異なるため、 投資用不動産を購入する際に、住宅ローンの経験則で不動産投資ローンにのぞんでしまうと、思わぬデメリットがあったり、融資を申込んでも通らない場合があります。

今回は、「住宅ローンと不動産投資ローンの違い」と題して、おもに金融機関が行う審査の判断基準にスポットを当てて詳しく解説して行きたいと思います。

目次

1. 不動産投資ローンが、あまりなじみが無いのはなぜ?
 1-1. 住宅ローンに比べて不動産投資ローンのPRが少ない理由
 1-2. 不動産投資ローンに積極的な金融機関
  1-2-1. スルガ銀行
  1-2-2. りそな銀行
  1-2-3. オリックス銀行
  1-2-4. 静岡銀行

2. 住宅ローンと不動産投資ローンの審査基準の違い
 2-1. 住宅ローンと不動産投資ローンの最大の違いは、「購入目的」と「返済原資」
 2-2. 双方の審査基準と相違点
  2-2-1. 住宅ローン審査の材料
  2-2-2. 不動産投資ローン審査の材料
  2-2-3. 不動産投資ローンの審査で最重要視されるレントロール資料とは?

3. 不動産投資ローンを利用するメリットとは?
 3-1. 「スケールメリット」を生かして空室リスクを軽減できる!
 3-2. 「レバレッジ効果」が生かせる!

4. 不動産投資ローンの利用によって生じるデメリットとは?
 4-1. 「空室リスク」によってローン返済が困難に!?
 4-2. 近い将来心配される「金利上昇リスク」

5. まとめ

1. 不動産投資ローンが、あまりなじみが無いのはなぜ?

なぜ?

1-1. 住宅ローンに比べて不動産投資ローンのPRが少ない理由

住宅ローンは国内ほぼすべての金融機関で取り扱われています。 都市銀行や最寄りの信用金庫などの金融機関はもちろん、日本国政府の資金も投入されている「フラット35」やインターネットによる取り扱いのみを対象とする「ネット住宅ローン」など、 利用される方にとって選択の幅が多く、認知度が高いローン商品です。

ところで、金融機関は融資することで利益を得る会社であり、窓口には「融資受付」のコーナーもありますので、不動産投資ローンも当然扱っていると思われるでしょう。 でも、不動産投資ローンを住宅ローンと同じように店頭でPRする金融機関は少なく、積極的な取り扱いを行っていないというのが実情なのです。

その理由としては、「不動産投資におけるリスク」が大きな要因になっているようです。 バブル崩壊やリーマンショックなどによる資産デフレや不良債権問題という苦い経験をしてきた銀行にとって、最も敏感になるのがリスクです。

衣食住の住にあたるマイホームは、生活する上での耐久消費財産ですから、「居住」「維持」が続く限りリスク(損失)が発生する可能性は少ないと考えられます。 片や不動産投資は、リターン(利益)をもたらすと同時にリスクも背負うことになり、金額も大きくなることから、リスクに対するハードルは住宅ローンよりも高く設定されることになります。

つまり、住宅ローンのように誰でも借りられるローンではないということを暗に示しているとも言え、結果として店頭PRが控えられるのです。

しかし、そんな中で、不動産投資ローンを積極的に行っている金融機関もあり、 2010年代に入って、同ローンのラインナップをPRする金融機関が、徐々にではありますが増えてきています。

1-2. 不動産投資ローンに積極的な金融機関

金融機関

メガバンクなど大手銀行は、不動産投資ローンの貸出先として、おもに富裕層を対象とすることが多く、一般個人の方に対する審査のハードルは高いと言えるでしょう。 そんな中、都市銀行や地方銀行、信用金庫の中には、賃貸アパート・マンションの新築や、投資用中古物件を購入する一般個人を対象とした融資を積極的に行っているところがあります。

都銀、地銀、信金には、メガバンクと比べて審査ハードルが柔軟なところが多いようです。 例えば、築年数の古い中古物件であっても、法定耐用年数だけでは判断せず、実質的な家賃収入が見込める収益力を重視した審査が行われます。 この審査基準ですと、借りる側には以下のようなメリットがあります。

  • ①築年数が古い中古物件は、購入金額が低い。
  • ②価格が安く、融資期間も長期で組めれば、返済額が少ない。
  • ③価格が安ければ、少ない自己資金でも可能である。
  • ④価格が安いため、収支バランスが取れていれば、自己資金ゼロ(フルローン)も可能である。

ただ、地銀や信金には、不動産投資ローンに強くないところもあり、金融機関選びが難しいという側面もあります。 そこで、物件を紹介してくれた不動産会社に相談する事をお勧めします。 投資用不動産を扱う不動産会社は、不動産投資ローンに積極的な金融機関を熟知している可能性が高いですから、持ち込み可能な金融機関を紹介してくれる会社は多いでしょう。

また、一部の都銀や地銀では、従来から不動産投資ローンを専門に取り扱い、ラインナップを充実させているところがあります。 下記に、業界内でも知られている4つの不動産投資ローンを記載します。

1-2-1. スルガ銀行

  • ・商品名:ドリームライフアセット
  • ・融資金額:最高1億円
  • ・融資期間:最長30年
  • ・融資金利:原則4.5%、変動金利
  • 参照:スルガ銀行

1-2-2. りそな銀行

  • ・商品名:りそなアパート・マンションローン
  • ・融資金額:最高1億円
  • ・融資期間:30年
  • ・融資金利:1%台後半、変動金利または固定金利選択型
  • 参照:りそな銀行

1-2-3. オリックス銀行

  • ・商品名:不動産投資ローン
  • ・融資金額:最高2億円
  • ・融資期間:最長35年
  • ・融資金利:3年固定2.3%、5年固定2.5%
  • 参照:オリックス銀行

1-2-4. 静岡銀行

  • ・商品名:アパートローン(固定・変動ミックス型)
  • ・融資金額:1億円
  • ・融資期間:最長25年~35年(構造によって異なる)
  • ・融資金利:3%台後半
  • 参照:静岡銀行

2. 住宅ローンと不動産投資ローンの審査基準の違い

違い

2-1. 住宅ローンと不動産投資ローンの最大の違いは、「購入目的」と「返済原資」

住宅ローンは、マイホームを購入したい方が、自己資金の不足分を補う目的で利用します。その際、ローン返済の原資となるのは、毎月の給料です。 経営者や特殊な給与形態の方を除いて、一般的なサラリーマンであれば、毎月・毎年の給料が大きく変動することは少ないと考えられるため、 過去にローン事故等が無ければ、住宅ローンを借りられる可能性は高いと言えます。

一方の不動産投資ローンは、不動産から得られる家賃収入が返済の原資になります。 毎月安定した家賃収入が見込める物件であれば、その不動産は高く評価され、融資の条件(融資額、融資年数等)も有利なものになります。

仮に、賃貸アパートの購入を検討する時、すべて満室であれば相応の家賃収入が得られますので、ローンの返済に問題は無く、融資するに足る物件と言うことができます。 反対に、常に空室が目立つ物件の場合は、返済の原資となる家賃収入が不足しますので、ローン返済は厳しくなる可能性が高く、融資を受けるのは難しくなります。

変動の少ない給料からの返済か、常に変動する可能性がある家賃収入からの返済か、住宅ローンと不動産投資ローンとでは返済原資が全く異なります。 そうなると当然、審査の基準も異なってくる事になります。次項で、その審査基準について説明します。

2-2. 双方の審査基準と相違点

審査

2-2-1. 住宅ローン審査の材料

住宅ローンの審査基準は“個人の信用力”がおもな対象になります。 債務者本人はもちろん、連帯債務者や連帯保証人がいる場合は、その人も審査されます。

審査の項目としては、勤務先、勤務年数、年収(給料)など属性的な審査と、過去から現在にかけての債務履歴(債務の大小、延滞等の有無)などの信用情報が調査されます。 債務者が経営者や自営業者の場合は、事業の状況を把握するため、確定申告書や決算書などの提出が求められます。


2-2-2. 不動産投資ローン審査の材料

一方、不動産投資ローンの審査は何が対象となるかというと、もちろん個人の信用力も重要ですが、それと同等以上に重視されるのが「不動産の収益力と担保力」です。 融資を受けたい方が、どんなに年収が高くて社会的信用のある方だとしても、不動産に収益力と担保力が無ければ、金融機関が融資することはありません。 融資する側としては、安定的な家賃収入が期待できる物件なら、ローンを滞納されるリスクが少ないでしょうし、 立地条件が良く、建物が融資完済まで利用可能であれば、資産としての評価も水準以上と言えるため、仮に返済不能になったとしても、当該不動産を担保として資金回収が可能と考えるのです。

なお、中古物件の審査では、建物診断や修繕履歴などの提出が求められます。 また、購入時に必要な諸費用(登記費用、仲介手数料、火災保険料等)については、融資対象外となる場合がありますので覚えておきましょう。


2-2-3. 不動産投資ローンの審査で最重要視されるレントロール資料とは?

不動産投資ローンの審査では、現状の入居状況や家賃収入だけでなく、 各部屋ごとの家賃、契約開始日、敷金の額、契約条件なども調査し、将来的な収支計画に問題が無いかを判断します。

そのため、融資を受けたい方は、それらの情報を集約した「レントロール資料」を作成し金融機関に提出します。 これを見れば、現在の入居者の賃貸条件がひと目でわかり、返済に支障を来たす要因を見出すこともできるため、融資の可否判断を左右する最重要資料に位置づけられます。

レントロール資料の判断基準として、たとえ現状が満室であっても、賃貸条件によってはマイナス査定とされる場合があります。 かつて頻繁に見られた事例ですが、投資用不動産の売主が、一時的に入居率を高く見せようと家賃を下げて空室を埋めるというケースがありました。 また、利回りをアップさせるために、契約上の家賃は相場並みにも関わらず、3ヶ月以上もフリーレントにして満室状態をつくり、レントロールを良く見せようとするケースも見られました。 そのような物件に融資が為され、結果的に計画が立ち行かなくなった経験が、不動産投資ローンに対する金融機関の審査基準のハードルが高い理由の一端とも考えられます。

3. 不動産投資ローンを利用するメリットとは?

メリット

リスクがあるにも関わらず、なぜローンを組んでまで不動産投資を行うのでしょう。それには、不動産投資ローンに大きなメリットがあるからです。

3-1. 「スケールメリット」を生かして空室リスクを軽減できる!

自己資金だけで不動産投資をする場合、自己資金が投資額(=購入金額)の上限になります。 遺産相続で現金を手にされた方でも、数千万から億単位の財産を手にするケースはめったになく、不動産投資に回せる自己資金はせいぜい1~2千万円程度が上限となり、 1棟ものの物件を購入するのは難しくなります。

でも、投資計画にあらかじめローンを組むことを想定していれば、購入物件の範囲が広がり、より規模の大きな物件を購入することが可能になります。 規模が大きくなるということは、世帯数(分母)が大きくなる訳ですから、空室(分子)リスクの比率を低減できることになります。

仮に、20世帯の賃貸マンションに投資する場合、空室が2世帯あったとしても、入居率は90%になりますが、分譲マンションの1室を購入して投資にまわす場合ですと、 入居していれば入居率100%ですが、空室になった途端0%になってしまいます。 このように、不動産投資ローンの利用によって投資する物件の規模が大きくなるほど、空室リスクが軽減できる「スケールメリット」の効果が向上することになります。

3-2. 「レバレッジ効果」が生かせる!

さらに、「レバレッジ効果」が生かせる点も、不動産投資ローンのメリットと言えます。 住宅ローンで借入れできる金額は年収の7倍程度ですが、不動産投資ローンの場合は金融機関ごとに審査基準が異なるため、最も低くて年収の5倍程度ですが、最も高いところでは20倍にもなります。

このレバレッジ効果(=てこの原理)を利用して、自己資金は少しだけで、残りの大部分を他人の資金を使って高い収益が得られる点が、不動産投資ローンの最大のメリットなのです。 ここで言う「他人のお金」とは、もちろん、常にお金の貸出先を常に探している銀行の「不動産投資ローン」ですが、銀行が投資のためにお金を貸すのは不動産だけでと言っても良いでしょう。

4. 不動産投資ローンの利用によって生じるデメリットとは?

デメリット

4-1. 「空室リスク」によってローン返済が困難に!?

前述した通り、ローン返済の原資は入居者からの家賃収入です。購入物件が常に満室であれば、ローン返済や経費を差引いた後には大きなリターンがもたらされます。 しかし、日常的に空室が目立つ物件の場合、想定していた家賃収入が得られず、ローン返済もままならない状態になってしまいます。

そうなると、投資計画は行き詰ることになり、やむを得ず物件を売却してローンを清算してしまおうと考えます。 ただ、売却時期と不動産マーケットが盛況な時期が重なれば、ある程度高値で売却できる可能性もあるでしょうが、 マーケットが冷えている時期に当たってしまうと、売却価格してもローンが残ってしまう可能性があり、売りたくても売れない事態に陥ってしまう可能性もあります。 返済もできない、売却もできない状態が続けば、最悪の場合、破産・競売といった債務処理をしなければならない恐れもあるのです。

4-2. 近い将来心配される「金利上昇リスク」

また、入居状況が良くても、ローン金利の上昇によって返済が圧迫され、収益力の低下を招く「金利上昇リスク」があることも、不動産投資ローンを利用する上では注意しておかなければなりません。 このところの超低金利政策によって資金調達がしやすくなり、不動産投資には大きなプラス作用となっていましたが、いずれ来るであろう金利上昇に伴って、現在の収益が維持できなくなる可能性が高くなります。

5. まとめ

以上のように、住宅ローンは「生活に必要なコスト」であり、不動産投資ローンはリターンやリスクといった市場原理が働く「投資活動の資金」ということがおわかり頂けたでしょう。 ローンの目的を理解し、収入と支出、リターンとリスクを十分考慮した上で、どこからいくら借りるのかを判断するようにしましょう。

※ 本記事は2016年03月時点の内容になります。各サービス内容の詳細については当該サービス事業者にご確認ください。

中古マンション購入に掛かる費用や手続きの流れについて知りたい方は下記のページをご参照ください。
中古マンション購入の流れと注意点、費用の目安などについて

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