欠陥住宅に注意!大切なマイホームを守る方法

マイホーム一世一代の決断をして購入したマイホーム。
契約やローンなどの手続きが終わってようやく新居を満喫できる日が来ました。
でも何か気になる。
歩くとギシギシ鳴る床、建付けの悪いドア、想像していたよりも寒い室内、大型車が通った時の振動・・・コレってひょっとして手抜き工事!?

販売主に連絡して調べてもらっても、専門用語を連発され「大丈夫です」の一言で片づけられてしまいます。
でも一向に症状は改善しません。
“クレーマー”と思われるのが嫌でそのまま泣き寝入りし、後悔と住宅ローンだけが残りました。
みなさんの中にこのような経験をされた方がいらっしゃるのではないでしょうか。

昔と比べて最近の住宅は性能も向上していますので、上記のような話は大袈裟と思われるかも知れません。
ところが、性能は向上しているにも関わらず、手抜きや欠陥のある住宅は無くならず、訴訟沙汰になったり建て替えにまで発展するケースさえあります。

そこで今回は、「欠陥住宅」についてお話しして行きたいと思います。
なぜ欠陥が起こるのか、調べる方法は、直すための費用は、などの疑問点について詳しく解説して行きます。

目次

1.低価格と欠陥に因果関係はあるのか?

2.欠陥住宅は“人”と“時間”が足りないために起きる!?
☞人材不足
・システム化するだけでは解決しない問題
☞下請け多重構造
☞タイトな施工スケジュール

3.欠陥住宅に対処法はあるか?
☞築年数が古い住宅を購入する場合はココに注意しよう!
☞欠陥住宅かどうかを調べるにはどうしたらいい?
☞ホームインスペクションとは?

4.欠陥住宅被害のセーフティネット・・・「不法行為責任」
☞「瑕疵担保責任」と「品確法」があるから欠陥があっても大丈夫!?
☞弱点となる2つのキーワード・・・「いつまで」と「誰に」
・「いつまで」
・「誰に」
・瑕疵担保責任と品確法の弱点を補完するセーフティネットとは?

5.まとめ

1.低価格と欠陥に因果関係はあるのか?

低価格
昔から価格と品質の関係は“安かろう悪かろう”と揶揄され、殊に住宅ではその定説が顕著に言われてきました。

一般的に欠陥住宅とは、「建築価格を安くするために必要以上に資材や人材コストをカットして建てられた法令で定める基準に満たない住宅」を指します。

ただ、昨今では法令上のチェック機能が厳格になっており、また欠陥の多い会社はインターネット上で相応の投稿が寄せられることから、従来と比べて“故意”や“悪意”を持って欠陥住宅を建てる会社は少なくなってきたと言えます。
とは言え全く無くなった訳ではありません。

北陸に本社のある住宅メーカーS社を見てみましょう。
これまで全国で約1万棟の住宅を建築してきた中堅住宅メーカーですが、仕入れコストの圧縮、流通網の効率化、工期短縮によって1棟1000万円を下回るローコスト施工を実現したとあります。
住宅の価格を企業努力によって低く抑えているのですから、施主(消費者)にとっては歓迎すべきことでしょう。

しかし、実態は欠陥住宅を絵に描いた有様で、S社が施工した建物の基礎・土台・柱・耐力壁といった建物の構造の根幹を為す部分に相次いで欠陥が発覚し、なかには建築基準法に違反する施工も発覚しました。
かつてS社の現場監督だった方によると、「約70棟の現場を監理したが、1割の建物で欠陥の疑いがあると思う。残りの9割についても自信を持って欠陥がないとは言えない。」というお粗末な状態です。
S社の対応としては、訴訟沙汰になる前に補償金を払うことで表面化を回避しているようですが、すでに各方面から実態が明るみになってきています。

やはり安かろう悪かろうなのでしょうか?

2.欠陥住宅は“人”と“時間”が足りないために起きる!?

時間と人手不足
先の現場監督は70棟を3年間で監理していたとのことで、年換算で23棟、1棟当たりの施工期間を3ヶ月とすると常に5~6棟、季節要因で施工時期が重なると最大10棟くらいの現場を同時期に抱えていたことになり、一戸建てにおいてこのような状況は明らかにキャパオーバーであり、品質面に支障を来たしかねません。

また、ローコストで提供するということは人件費も下がるため、熟練職人を確保することが難しくなります。
すると、経験の浅い職人や外国人を使うケースが増え、施工不良や工事スケジュールの遅れにつながります。

欠陥住宅とコスト・人材不足・工事スケジュールは密接に関係していると考えられます。

人材不足

熟練した職人の減少に伴い、住宅資材のほとんどがプレカット化され、施工もマニュアル化することで施工ミスは減少するはずでした。
確かに、資材の寸法に狂いは無く、マニュアル通りに施工していく訳ですから、ミスは起こり得ないと考えられるでしょう。

しかし、現実に多くの欠陥事例が報告されているのはなぜなのでしょう?

システム化するだけでは解決しない問題

木造、RC(鉄筋コンクリート)造に関わらず、一般的な住宅の施工現場における指示系統は下記のようになります。

指示系統

例えば、基礎を施工する前に壁クロス貼りができないように、住宅の施工では作業手順が重要であり、その指示を行うのが監理責任者(部門長)や現場監理者(いわゆる現場監督)になります。
多くの場合、それら監理者は有資格者である必要がありますが、その絶対数は少ないため、いくつもの現場を掛け持ちすることになり、会社によっては1人の監督が20以上の現場を監理するケースもあります。

量が増えれば質が劣るのは世の常で、監督が現場を抱え過ぎると指示が行き届かなくなってしまい、施工手順が前後したり職人が適時に入れないなどの支障が発生することになります。
そうなると、工期が遅延するために各分野の職人が予定時期に入れず、指示系統が“ツギハギ状態”となり、スケジュール通りに工事が運ぶのに比べて、施工ミスや事故など不測の事態が発生する可能性が高まることになります。

また、監理者だけでなく職人も不足している現状があります。
建築・土木・内装など職人は年々減少しているため、こちらも複数の現場や会社を掛け持ちする事が常態化しており、経験の浅い見習い職人にも関わらずベテランと変わらない作業を任されることも珍しくありません。
そのような現場環境では、ミスや事故の確率がおのずと高まることになります。

下請け多重構造

2015年に発覚した横浜のマンションの杭データ改ざん問題は、「大手神話」を根底から覆す事件として大々的に報道されました。
数々の要因が重なって起きたこの事件の中で、大きくクローズアップされたのが「下請け多重構造」という仕組みです。

マンションのような大型建築物の場合、大手業者(ゼネコン、デベロッパーなど)が事業主体(施工・企画・販売)となります。
大手業者という“看板”によって信頼を得られやすいことから、「自分の住まいがどのように建てられているか」にはあまり関心を持たれることはありません。

ご存知の方も多いと思いますが、施工においてはそれら大手業者は“看板”だけで、実際に工事を担っているのは大手から仕事をもらっている一次下請け業者で、さらに分野ごとに二次下請け、三次下請け・・・という「下請け多重構造」になっています。

勿論、定期的な工程会議(工事スケジュールの報告会)は行われますが、報告は看板業者と一次下請け業者間で行われることがほとんど(二次下請け業者が出席しても発言の機会はない)であり、三次下請け以下の一部の担当者がミスを看過したり問題を隠ぺいしても発覚しない可能性があります。

当然ながら、工程ごとに行政・社内検査があるため、問題が放置される危険性は少ないですが、現実に横浜のマンションでは二次下請け業者の担当者が地盤データを紛失し、その後の工事が適正に行われず、建物の傾斜が発覚する事態に発展しました。

タイトな施工スケジュール

よしんば、「人員不足」や「下請け多重構造」があるとしても、時間を掛けて慎重に工事を進めて行けばミスや欠陥は防げるはずです。
工事を急ぐあまり安全性が軽視されるくらいなら、スケジュールに多少の遅れが生じても理解は得られると思われるでしょう。

がしかし、新築物件の場合、契約書や広告で完成時期を明記しているため、その時期に間に合わなければ契約上で債務不履行となり、違約金や損害賠償が発生することになりますし、ライフイベント(結婚、出産、入学、家族の増減等)に合わせて引越しされる方も多く、スケジュールの変更は大きなトラブルに発展します。

ところで、マンションでも一戸建てでも一定の時間を要する工程があります。
それは基礎や杭などコンクリートの工程で、一定期間乾燥させて確実な強度としたうえでその後の工程に進む必要があります。

ということは、それらの時間を差し引いた日数で他のすべての工程を進めて行かなければならず、当然に一定の余裕をもった施工スケジュールが組まれる訳ですが、悪天候、資材不足、物流トラブル、人材不足、施工時の事故、施工不良への対応など、不測の事態によってスケジュールを押してしまう危険性は十分考えられます。
スケジュールが押せば、コンクリート工程以外の分野にしわ寄せされます。

特に建築の最初の工程である「地盤調査」や「地盤調査データ解析に基づく杭および基礎仕様計画」、「杭打設工事」については、完了しなければその後の一切の工事が入れないため、厳しいタイムリミットが課せられます。

ところが、それらの作業をこなせる企業や人材は慢性的に不足しており、限られた人員で全国各地に点在する複数の会社の複数の現場の工程を回さざるを得ず、調査の正確性やデータの保存状態に不備不足が発生しやすい状況になってしまいます。
実際に横浜の問題では、地盤調査会社の担当者が不注意でデータを汚損したにも関わらず、再調査する時間が無いために別の現場のデータを流用していた事実が発覚しています。

前述で「一定の余裕を持ったスケジュールが組まれる」とお話ししましたが、発覚した問題をひも解いていくと、現場レベルではスケジュールに余裕などなかったことがおわかり頂けるでしょう。

3.欠陥住宅に対処法はあるか?

住宅診断

築年数が古い住宅を購入する場合はココに注意しよう!

前項で、人材不足、下請け多重構造、タイトな施工スケジュールが欠陥住宅の要因として増えていることがおわかり頂けたと思います。
そして、減少傾向ではあるものの “故意や悪意”による欠陥住宅も、依然として存在していることは覚えておく必要があります。

横浜のマンションで挙げたように、新築物件の欠陥は物理的・構造的な要因によるものが多く見られますが、中古物件の場合は現行の基準でないために強度不足であったり、明らかに意図的な欠陥であったりする場合もあります。

さらに、住宅診断と称して無料で天井裏や床下を“検査”し、問題がないにも関わらず強度不足という診断を下して割高なリフォーム工事を獲得しようとするリフォーム詐欺も、相変わらず存在しています。

ちなみに、中古物件のなかでも旧耐震基準以前の古い建物などは、事前の説明や契約書などで現行法に適合していないことを十分認識したうえで購入することになりますので、適切な耐震リフォーム工事とセットで検討するようにします。

欠陥住宅かどうかを調べるにはどうしたらいい?

「いま住んでいる家は欠陥住宅ではないか」、「購入を検討している建物に欠陥がないか心配だ」と心配される方は少なくないと思います。
でも、一般の方が欠陥かどうかを判断することは難しいため、前述のような無料診断を安易に利用してしまう方もいらっしゃいます。

他にも、「知り合いに大工さんがいるから見てもらう」という方もいらっしゃいますが、大工さんのなかには従前法の在来工法までしか経験がない方だったり、大工さん同士の粗探しを好まない方もいたりすることから、適切な判断とは限らない場合もあります。

住宅診断においては、確かなスキルを持ち、しがらみなく欠陥住宅かどうかを判別できる人に調べてもらうことが重要ということになります。
具体的に言うと、一級・二級建築士資格を持つホームインスペクターが行う「ホームインスペクション」です。
一級と二級で取り扱うことのできる建物の規模・構造に違いがあり、マンションや一定規模以上の大型建築物の場合は一級でなければなりません。
一般的な一戸建て住宅であれば二級でも問題はありません。

ホームインスペクションとは?

ホームインスペクションの位置づけについて、内閣府認証NPO法人日本ホームインスペクターズ協会サイトで紹介されていますので引用させて頂きます。

※ホームインスペクションの位置づけ

ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者的な立場から、また専門家の見地から、住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行う専門業務です。

住宅の購入前や、ご自宅の売り出し前にホームインスペクションを行うことで、建物のコンディションを把握し、安心して取引を行うことができます。居住中のご自宅について調べることもあります。また、不動産仲介業者が物件の状況を消費者に明らかにするために利用するケースも増えています。

診断の方法は、目視で、屋根、外壁、室内、小屋裏、床下などの劣化状態を診断するのが基本です。機材を使用する詳細診断もあります。ホームインスペクターは住宅の「かかりつけのお医者さん」です。(引用元:内閣府認証NPO法人日本ホームインスペクターズ協会

同協会では、公認ホームインスペクターという高い知識と倫理観を有する資格制度を敷いており、会員数は全国で2300名以上です。
調査に掛かる費用は、一次診断(目視)で5~6万円程度、二次診断(機材使用)で10万円以上となっているようです。

4.欠陥住宅被害のセーフティネット・・・「不法行為責任」

法律

「瑕疵担保責任」と「品確法」があるから欠陥があっても大丈夫!?

住宅を購入・建築した後で欠陥(瑕疵)が見つかった場合、売主や施工会社は瑕疵の修補損害賠償に応じなければなりません。
さらに、欠陥の程度が重大で、安心して住むことができない場合は契約の解除を求めることもできます。
こういった物件の瑕疵に対する売主・施工会社に課せられる責任を「瑕疵担保責任」といいます。

また、不動産会社や住宅会社が建築した新築住宅に限り、構造上主要な部分(基礎・土台・柱など)と雨水の侵入を防止する部分について、10年間の無償補修や損害賠償を義務付けた「住宅の品質確保の促進等に関する法律(略称:品確法)」が定められています。

この二つの法律によって、万が一自宅が欠陥住宅だったとしても守られると考えるでしょう。
ところが、これらの法律には思わぬ弱点があるのです。

弱点となる2つのキーワード・・・「いつまで」と「誰に」

「いつまで」

瑕疵担保責任の期間について、例えば、売主が一般個人である中古住宅の売買契約の場合、一般的に2~6ヶ月程度(または瑕疵担保免責)と契約書上で規定されます(売主と買主の同意)。
契約書で期間を明記していない場合は、民法の判例に基づき、「買主が目的物に瑕疵があることを知った時から 1 年以内に請求を行使しなければならない」とされています。
一方、不動産会社や住宅会社が売主・施工会社の場合は、品確法により完成から10年間と定められています。

つまり、瑕疵担保責任が適用されるのは10年間が最長であり、明らかに故意・悪意と思われる瑕疵であっても、10年を1日でも過ぎたら補修も賠償もされないことになります。

「誰に」

品確法の規定において瑕疵担保責任を請求できる相手は、直接の売主である不動産会社施主から工事を請け負った施工会社です。

そこで問題となるのが中古住宅の買主で、品確法の規定では請求できる立場にならないため、中古住宅の売主と同意した瑕疵担保期間が過ぎてから重大な瑕疵を発見しても、補修・賠償の対象とはなりません。
たとえ、故意・悪意の瑕疵であることが明確だとしてもです。

瑕疵担保責任と品確法は消費者を保護するための法律のはずですが、「最長10年」「責任を負う相手」という弱点が抜け穴となり、消費者が泣き寝入りするケースもあります。

瑕疵担保責任と品確法の弱点を補完するセーフティネットとは?

瑕疵担保責任と品確法の弱点の補完として、「不法行為責任」による賠償請求が有効な対策として考えられます。
これは例えば、家電製品や車などの欠陥によって事故が発生した場合に、使用者が変わっていたとしても一定期間は製造者が責任を負うことを考えるとわかりやすく、住宅の場合も例外ではありません。

ちなみに、瑕疵担保責任と品確法は国土交通省が管轄する法律であり、一方の不法行為責任は民法が基になっているため、「対象となる瑕疵」、「責任の種類」、「責任の期間」、「責任が生じる関係」について法的な見解が異なります。

一部の例外はありますが、不法行為責任の方がより広範囲の責任負担としていて、施工会社は中古住宅の買主に対しても賠償責任が生じることになり、その期間も瑕疵担保責任・品確法よりも長く、最長で20年になります。

瑕疵担保責任&品確法不法行為責任
対象となる瑕疵・柱、基礎等構造耐力上主要な部分、雨漏り、シロアリ等の瑕疵一般

・規制で定めた性能の不足(新築)

住宅としての基本的な安全性・快適性を欠く瑕疵
責任の種類無過失責任(損害を与えた側に故意・過失が無い場合でも責任を負う)過失責任(損害を与えた側に故意・過失がある場合に限り責任を負う)
責任の期間・瑕疵を知った日から1年

・完成から最長10年(新築)

完成から最長20年
責任が生じる関係契約の当事者のみ(買主と売主、施主と施工会社)・契約の当事者

中古住宅の買主と当該住宅の施工に関わった者(※別記参照)

 

※中古住宅の買主に対して不法行為責任が生じる者(施工に関わった者)

・施工会社(元請け・下請け会社も含む)

・設計に携わった者(設計会社、設計士など)

・工事監理者(施工管理資格者、現場監督など)

5.まとめ

欠陥住宅の原因には建設業界の構造的な問題が大きく関わっているため、解消されるかどうかは不透明です。
そんな中で私たちにできることは、「欠陥が無いか十分にチェックする」ことと、「欠陥住宅に対する法律の知識を備える」ことに尽きるでしょう。

- 2017年05月25日