住宅ローンは「35年」という長い期間で組んでいる人も多いです。 そのため、借入期間内に借入者の状況が変化し、住宅ローン返済が滞る場合もあります。 仮に住宅ローン返済が滞ったら、物件が強制的に売却されてしまう場合もあります。
ただ、事前に対応をすることによって、強制売却を防いだり、そもそも住宅ローンの滞納を防いだりすることもできます。
そこで今回は、住宅ローンを払えない状況になったときの手続きや、住宅ローンを滞納しないための対策などを解説します。
住宅ローンが払えない状況になると、住宅ローンを融資している金融機関が、不動産を処分するという手続きに入ります。 具体的な処分方法は、住宅を「競売」にかけるという方法になるので、所有者からしたらデメリットしかありません。
なぜ、金融機関が住宅を処分するかという、住宅ローンを融資する条件として住宅に抵当権が設定されているからです。 そのため、金融機関が主導となって、物件を処分できるというワケです。
抵当権とは、分かりやすくいうと担保のことです。 金融機関は「お金を貸す」ときには、「返済が滞るかもしれない」というリスクを負いますので、返済不能になったときのリスクヘッジをする必要があります。
そのリスクヘッジが、不動産に抵当権を設定することによって、物件を「担保」にすることです。 物件を担保にすれば、「住宅ローン返済の滞納」という金銭消費貸借契約(住宅ローンの契約)違反があれば、金融機関が主導で不動産を売却して良いのです。 そして、物件を処分した売却益を、ローン返済に充てるというワケです。
つづいて、ローンを滞納して競売になったときの手続き方法を解説します。 そもそも競売とは、債権者(金融機関や保証会社)が債務者(ローン滞納者)の所有する不動産を、裁判所の管轄下で強制的に売却する手続きのことをいいます。
競売をする際の流れは以下の通りです。
結論から言うと、競売を回避したいのであれば、「②催告書(代位弁済手続き)が届く」タイミングがラストチャンスです。
「③競売開始決定通知が届く」の状況になれば、競売を止める方法はありません。
まずは、住宅ローンを2~3か月程度滞納すると、借入先の金融機関から催促状が書面で届きます。 また、フラット35を運営している住宅支援機構の場合は、滞納期間を6か月程度待つ場合もあります。
前項の催促状が届いても返済に応じずにいると、半年程度で債権者が金融機関から保証会社に替わります。 保証会社は、そもそも借入者が滞納したときに債務を肩代わりするので、保証会社が金融機関に債務を返済(代位弁済)するのです。
そのため、債権者が金融機関から保証会社に変更になります。 先ほど言いましたが、このときが競売を回避する最後のチャンスです。
催告書が届いてもローン返済がない場合には、いよいよ競売開始の合図である「競売開始決定通知」が届きます。
この時点で、ローン滞納者の家は強制的に売却されることが決まります。
競売の具体的な流れは、まず債権者となった保証会社が裁判所に競売を申請します。 その申請を裁判所が受理することで競売手続きが完了となり、裁判所からローン滞納者は「競売開始決定通知書」が届くという流れです。
競売開始決定通知が届いた後に、裁判所の執行官が「自宅に訪れます」という内容の、「現状調査通知書」が届きます。
この通知を拒否することは出来ずに、執行官は自宅内の写真撮影や現状調査を強制的に行います。
競売とはいえ当然「買い手」がいますので、その買い手に対して提示する情報を、執行官が現地で調査するということです。
現状調査が終われば「期間入札決定通知」という書面が届きます。 この時点で、ローン滞納者の自宅が競売物件であることが公開されて、希望する人は誰でも入札することができます。 ただし、ローン滞納者自身や過去に滞納歴がある人などは入札できません。
競売の入札終了後は、入札者の中で一番高い金額を入札した人へ、住宅の所有権が移転します。 その時点でローン滞納者は強制的に立ち退かなくてはいけません。以上が競売までの大まかな流れになります。
競売をすることのメリットは一切なく、以下のようなデメリットしかありません。
まず、競売で物件を売却すると、相場価格が5~7割程度まで売却価格は下がります。 理由は「競売物件」というだけで印象が悪くなってしまうからです。 競売物件を転売するとしても、購入検討者は競売物件だと「立ち退きを請求された人はどんな人が」という不安が残ります。
もし、立ち退きの際に揉めたのであれば、元の所有者が家に戻ってこようとする危険性などもあります。 そのため、競売物件は転売しにくく、相場価格が下がってしまうのです。 また、あくまで入札により価格が決まるので、所有者の意思は完全に無視されます。
極端な話、相場価格が6,000万円でも、入札最高額1,000万円であれば、1,000万円で売らざるを得ません。 当然、競売にかけても返済できない分のローンは、借金として残ります。
競売するということは、入札希望者を集める必要があります。そのため、新聞やネットで競売情報を公開して、物件が競売になることを広く認知してもらいます。
つまり、周囲は物件が競売にかけられていることを知ることができるのです。
また、競売にかけられるときは、ほとんどのケースがローンを滞納したときです。そのため、知人などにローン滞納を知られるというリスクも小さいですが存在します。
入札者がいれば物件は強制売却になるので、元々の所有者は強制的に退去になります。
しかし、強制退去になると以下のようなデメリットがあります。
まず、ローンを滞納しているくらいなので資金がありません。 つまり、次に住む家を探すことすら困難である可能性も高いのです。
そして、競売にかけられると信用情報に記録がつきます。 賃貸の際に保証会社が信用情報を調べ、競売歴が発覚すると審査に落ちることもあります。 さらに、競売はかなり安い金額での売却になるので、ローンは完済できずに借金が残るケースが多いです。
これらの理由から、
競売によって強制退去になるとローン滞納者は住む家がなくなり、新しい家を見つけることも難しいという大きなリスクがあります。
前項でいったように、競売にかけられると元々の所有者にはデメリットしかありません。
そのため、結論を言うと競売にかけられる前に任意売却手続きをする必要があります。 先ほど言ったように、任意売却手続きは「競売開始決定通知が届く」前に行いましょう。
つまり「催告書(代位弁済手続き)が届く」といった事態になった時点で、即刻任意売却手続きを専門家に相談するということです。
任意売却とは、平たくいうと抵当権が設定されている状態でも、金融機関が家の売却を許可してくれることです。 先ほどいったように、金融機関はローンを融資する代わりに、物件を担保にします。物件を担保にするということは、通常はローンを完済しないと売却ができません。
しかし、ローンを完済できない状態を放置すれば、ローン滞納者になり、結局は競売にかけられてしまいます。 そのため、金融機関と話し合い、ローンが完済できない状態でも抵当権を抹消してもらい、売却する手続きをとります。 このような売却方法を「任意売却」というのです。
任意売却は金融機関との話し合いになります。 先ほど説明したとおり、金融機関は保証会社に代位弁済してもらえるので、競売になったところで大きなリスクはないのです。 そのため、任意売却手続きは素人が行うのは難しいです。
そのため、任意売却専門の不動産コンサルタントなどに依頼する方法が、最も良い方法になります。
出来るだけ早い段階で不動産コンサルタントへ相談して、金融機関へ交渉してもらいましょう。
金融機関と話をする内容は「返済額」「返済期間」についてです。 任意売却をしてローンが残れば、その分は借金となります。
しかし、その借金を「いくら」で「どのくらいの期間」設定すれば返せるかは再度考える必要があります。 そうしないと、また返済ができない状況になり、同じことの繰り返しになるからです。また、金融機関の判断で、借金額を圧縮してくれる場合も稀にあります。
任意売却は通常の売却と同様、以下のような方法になります。
任意売却は基本的に通常の売却と同じなので、「査定は複数社に行う」「媒介契約は専任系で結ぶ」「売却活動には最大限協力する」というような点は認識しておきましょう。 これらのポイントは、物件を高く売るためには欠かせないポイントになります。
特に、任意売却額によって残る借金も変わるので、「高く」売るためには最大限のサポートをしましょう。 売主の協力によって、売却金額が上下することは良くあります。任意売却は競売とは異なり、相場価格並みに売れるチャンスもあります。
また、周囲に「物件の売却」は知られますが、「ローンの滞納」を知られることはありません。これらの点が、競売に比べてメリットといえる点です。
ただし、任意売却にも競売と同様、信用情報に記録が残るというリスクはあります。
信用情報は、先ほどいった「競売」や「任意売却」、ほかにも「延滞履歴」などが残ります。
つまり、住宅ローンを滞納した時点で、「延滞履歴」は信用情報として残っているのです。
信用情報に記録が残ると、ほかの借り入れを起こすことが困難になります。
なぜなら、融資をするときには住宅ローンに限らず、どの金融機関も「信用情報」を照会するからです。
信用情報に延滞履歴が残っている時点で、ほとんどのローン審査は通りません。
また、信用情報を記録している機関が複数あり、その期間によって信用情報履歴が消えるタイミングが異なります。 任意売却の状況になったら、5~8年程度は信用情報に記録がつくと思っておきましょう。
ただし、連帯保証人がいる状態で任意売却するときには、連帯保証人の許可をとっておきましょう。 主たる債務者が返済不能な状態になれば、金融機関は連帯保証人に返済を求めます。 金融機関は主たる債務者に返済を請求するか、連帯保証人に返済を請求するかは自由に選ぶことができるのです。
仮に、主たる債務者が自己破産しても、連帯債務者の債務が消えるワケではありません。 つまり、その状況で連帯保証人も返済能力がなければ、連帯保証人も自己破産せざるを得ないということです。 任意売却をしてもローンが帳消しになるワケではなく、売却益で返済できない分は借金として残ります。
そのため、その残った借金の返済義務は連帯保証人にも関係してきます。これが、任意売却のときに連帯保証人に許可を取っておかなくてはいけない理由です。
住宅ローンを滞納してしまう、もしくは支払えなくなる理由としては以下のような理由が多いです。
上記3点については、まず住宅ローン借入時にきちんと見極めるべき点です。また、次項で解説する「借り換え」にも関連してくることです。
住宅ローンを、変動金利か期間指定型固定金利で組んでいる場合には金利上昇リスクがあります。 変動金利の場合には5年に1回返済額の見直しがあり、期間指定型固定金利の場合には期間終了後に金利が変わります。
※変動金利、固定金利については「住宅ローンは固定金利と変動金利、どちらを選ぶべきか」も参考にしましょう。
まずは、金利上昇でどの程度返済額が異なるかを理解しておくことが大切です。
たとえば、現在ですと変動金利は0.5%前後の金融機関もあります。 仮に、金利0.5%で4,000万円の借り入れ、35年の借入期間で住宅ローンを組んだ場合は、月々103,834円の支払いになります。
ただ、仮に5年経過時点の金利が0.9%まで上昇すると110,038円の支払いになります。つまり、年間で74,448円上昇するのです。
さらに、マンションであれば修繕積立金の上昇リスクもあります。 そのような点を加味して、無理のない範囲で住宅ローンを組むことが大事になってきます。
また、住宅ローンは長期間で組むことが多いので、その期間内に借入者の状況が変化することも多いです。
具体的には以下のような変化があります。
結婚や出産によって家族数が増え、扶養家族が増えると支出が多くなります。また、転職などによって収入が減る場合もあります。 つまり、支出と収入が変化することがあるので、ギリギリで住宅ローンを組んでいると厳しいのです。
特に、「恐らく年収は順調に上がっていくだろう」という考えの元で住宅ローンを組むのは危険です。
また、家族数の変化にも関連しますが、ほかの借り入れが増えるリスクもあります。 たとえば、車を購入するためのローンであったり、子供の学費のためのローンだったりです。その返済額を合わせると住宅ローンの返済が厳しくなるという状況もあり得るのです。
前項の「住宅ローン金利の上昇」にも言えることですが、とにかくギリギリの返済額で住宅ローンを組まないことです。
リスクヘッジは「しすぎる」くらいで住宅ローンは組みましょう。
そもそも、住宅ローンを滞納する前に、対策をしておくことで住宅ローンの支払いをスムーズにできます。
任意売却も競売に比べればリスクは小さいですが、信用情報に残るというリスクはあります。
そのため、以下のような対策を事前にしておきましょう。
いずれにしろ、ローンを滞納して催告書が届く状態は避けなければいけません。 そのため、返済が厳しくなりそうだと判断した時点で、上記の対策は取っておくべきです。
当然ですが、ローンを滞納する理由としては、ローン返済額が高いという理由が多いです。
そのため、ローン返済額をローン借り換えによって抑えることができれば、ローン滞納リスクは抑えることができます。
自分の状況を加味した上で、借り換え先の金融機関や、そもそも借り換えするかは検討する必要があります。
今まで一度も返済の遅れがない場合には、ローン借り換えはしやすいです。
ただし、他行の融資を受けるときには「諸費用」がかかってきます。 いくら金利が下がり返済額を抑えられるからといっても、諸費用額が高ければ意味がありません。
ただ、今の金融機関で保証料を支払っていれば、ローンの途中解約により保証料の一部が返還されるかもしれません。 そのため、その返還金額を加味した上で、借り換えた方が良いかを検討しましょう。
別の金融機関へ借り換える以外にも、そもそも今借入を起こしている金融機関に返済計画の変更の相談をすることもできます。 計画計画も、「一定期間元金は据え置く」や「返済期間の延長」など、色々な対応方法があります。
一定期間元金を据えておいてもらえれば、その期間は利息の支払いだけなので返済は楽になります。また、返済期間を延長できれば、月々支払い額は減額されます。
ただ、注意点は返済計画の変更をすると金利が上がるリスクがあります。
金利は店頭金利と呼ばれる各金融機関が設定している金利から、借入者のプロフィールによって金利が優遇(優遇金利)されます。 返済計画を変更することによって、借入者の金融機関内の格付けが下げられ、優遇金利が引き下げられるかもしれません。 優遇金利が引き下げられれば、マイナス幅が狭まるので実質金利は下がります。
また、返済計画の変更をした時点で「返済計画をした顧客」と判断されます。 そのため、信用情報にも記載され、ほかの金融機関での借り換えが難しくなる場合もあるのです。
その点を踏まえた上で、今の金融機関で返済計画を見直すか、別の金融機関で借り換えるかは判断するべきです。
住宅は築年数が経つほど売却価格が下がっていきます。
そのため、タイミングによっては物件を売却することでローンを完済できるかもしれません。
ローンを完済すれば競売のリスクもなくなりますし、任意売却すら必要ありません。 物件を売却するというのは最終手段ではありますが、返済が厳しくなった時点で売却を一度検討してみることをおススメします。
まずは、物件がいくらで売れるか「査定」をしてみることです。 競合状況や不動産市況によっては、運よく高値で売れる場合もあります。
住宅ローンを組む前であれば、そもそも無理なローンを組まないという点が最も大切です。
金融機関のローン審査は金利3%ほどの審査金利で、返済比率35%以内という条件が多いです。 つまり、金利を高めに設定して審査した結果、年収の35%以内であれば融資するということです。
仮に、借入額3,500万円、借入期間35年で住宅ローンを組んだ場合では、金利3%で計算すると年間約162万円の返済額になります。 この金額を返済率35%で逆算すると、年収約462万円であれば条件を満たすということになります。
しかし、この金額はあくまで金融機関が勝手に定めた条件なので、審査に受かったから返済できるというものではありません。
そのため、ローンを組むときには以下の点を意識して組みましょう。
上記「金利が上昇しても問題ない返済額にする」に関しては上述した通りなので、詳細は割愛します。
管理費が上昇するリスクは小さいですが、修繕積立金が上昇するリスクは高いです。 なぜなら、多くのマンションが「段階積み上げ方式」と言われる方式で、修繕積立金の計算をしているからです。
この方式は大体5年程度を目途に、修繕積立金を上昇していき、長期修繕計画を達成するという方式になります。 まずは、管理規約などでこの計画を見直してみましょう。
銀行の審査基準は、サラリーマンであれば額面年収でみます。 つまり、社会保険などの控除は加味されていないので、手取り給与とは大きく異なるのです。 そのため、きちんと手取り給与で支払えるかを確認する必要があります。
このように、住宅ローンが支払えない場合に以下の点に注意しましょう。
特に、競売する流れになった時点で、非常に厳しい状況になる点は認識しておくべきです。
また、任意売却という手段もありますが、
そもそもローン返済を滞納しないように、事前に対策を売っておくことを忘れないようにしましょう。
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