なぜ不動産業者は怪しいと思われがちなのか?

不動産屋は信用できない・・・

怪しい特にご年配の方には不動産業者に対して不信感を持っている方もいます。数ある業種の中でなぜ不動産業者は特に怪しいと思われがちなのか。それは、「過去の歴史」と「相場の分かりにくさ」、そして未だに「利益優先型の会社」があるという3点が理由になっています。今回は、その3点について詳しくお話します。

過去の歴史

特に不動産流通(中古の売買)業界は不透明な点が多く、不動産業者しか知り得ない情報がたくさんありました。

現地にしかない情報

今ではインターネットで検索すれば売り物件の情報などが出てきます。しかし、数十年前までは現地に行かないと情報が得られない時代でした。例えば、東京都の上野付近で中古の一戸建てが欲しいと思ったら、実際に上野まで足を運ばなくてはいけません。しかも、自ら不動産業者を訪ね売り物件がないかを確認する必要があるのです。不動産業者も、自分の持っている情報を全て一見さんに見せる事はありません。検討具合や予算を見ながら少しずつ物件情報を出していくのです。

つまり、物件を買う人からすると、少ない情報の中で判断しなくていけないので、その物件が高いか安いかも分からないまま検討しなければいけない時代でした。そのため、「5年前に買った中古マンションを今売りに出そうとしたら半値以下の価格になった」なんてことがあり得たのです。

整備されていない手続き

物件を売買する時には、「査定→売却活動→申込→契約手続」という一連の流れは、今ではどこの不動産業者も行います。しかし、昔は物件の価格を決める「査定」ですら、決まったフォーマットがなく不動産業者のさじ加減によって査定額が出されていました。今は、どの会社も周辺事例比較法(周辺の成約事例を基に査定額を算出)を利用するため、一般消費者も事例と照らし合わせて査定額を確認できます。しかし、昔はそんな資料も無いワケですから、先ほどと同様、査定額が高いのか安いのかも分からないまま売却活動をしなければいけなかったのです。

さらに契約書のフォーマットがないのも問題でした。例えば、今では買主がローン審査不承認になった場合は「ローン特約」になり、契約は白紙解約されます。しかし、当時はそのような文言がなければ手付金の没収による契約破棄となっていた場合もあるのです。当然、買主は不服ですのでトラブルが起きます。このように売り手側も買い手側も不動産業者に翻弄され、自分自身何も分からないまま不動産の売買は進んでいきました。そのため、不動産業者に対しての不信感は募っていったのです。

相場が分かりにくい

不動産屋が怪しいと思われる2つ目の理由は相場が分かりにくいという点です。

レインズは不動産業者しか見られない

レインズとは、「Real Estate Information Network System」の略称で、不動産流通標準情報システムのことです。 このネットワークシステムには現在売られている物件や、過去の成約事例が掲載(全てではない)されているので、相場の参考になります。しかし、これは不動産業者しか閲覧できないサイトになっており、一般消費者は見る事が出来ません。今では、REINS Market Information※1というサイトで一般消費者も物件情報を閲覧できますが、REISほどの情報量ではありません。つまり、不動産業者と一般消費者では得られる情報量が違うという事です。

※1 REINS Market Information
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do

同じ商品が二つとしてない

例えば、家具や家電、車も高額な商品です。しかし、車屋や家具屋、電機屋に「不動産屋」ほど怪しいというイメージはありません。その大きな違いは家具や家電、車は量産しており、世の中に同じ商品があるため相場価格が分かり易い点です。不動産と同じく二つとして同じ物がない美術品などは、嗜好品であり、高ければ高いほど価値が高いので生活必需品である不動産とは毛色が違います。不動産は商品によって価値が変わります。同じマンション内で同じ広さの部屋でさえ価値が違ってきます。

例えばAという部屋が20建ての最上階南向きの部屋だったとします。一方、Bという部屋は20建て1F北向きの部屋だったとします。この2つの部屋は同じ広さだったとしても、Aは5,000万円でBは3,800万円という20%以上の価格差がついてもおかしくないのです。更に、この価格はあくまで「今」の価格であり、5年前に全く同じ部屋を売り出していたら、また全然違う価格になってもおかしくありません。

中古マンションを売却する時に比較になる物件は、広さも駅距離も向きも築年数も階数も何もかも違います。上述のように、同じマンション内ですら価格差が大きく出るのに、全く違う条件の部屋と比較をして算出した「相場価格」に「絶対」はあるはずもありません。一般消費者が不動産情報にリーチできる時代である今でも、不動産はこのように相場価格の算出に「絶対」はないため、人によっては不満を抱えたままの売買になってしまうのです。

利益優先型の会社

利益優先不動産屋が怪しいと思われてしまう最後の理由は、不動産業者自体にあります。

囲い込みについて

未だに「物件の囲い込み」という行為があります。物件の囲い込みとは不動産業者が利益を多く出すために、外部へ物件情報をシャットダウンする行為です。例えばAさんという方が自分のマンションの売却をX社に依頼しました。X社は自分で買主も見つけてくる事が出来れば、買主からも売主であるAさんからも仲介手数料が貰えます(これを「両手取引」と言います)。つまり、利益が倍になるのです。

一方、買主を別の会社Z社に連れてこられてしまったら、X社は売主Aさんからしか仲介手数料を貰えません(これを「片手取引」と言います)。そのため、不動産業者は両手取引を狙う傾向にあります。その行き過ぎた例が「囲い込み」です、例えば上記の例で言うと、X社は出来れば自分で買主を見つけて両手取引にしたいです。だから、Z社から「検討者がいるので物件を案内したい」と言われても、「もう購入検討者がいるので、案内はできません」とシャットダウンしてしまうのです。この行為を「囲い込み」と言い、売主からしてみればデメリットしかありません。未だにこのような行為を行っている不動産業者が存在するのも、不動産屋は怪しいと思われている原因の一つです。
※囲い込みについて更に詳しく知りたい方は「不動産業界が抱える「囲い込み」問題とは?」も参考にしてください。

担当者のインセンティブ制度

しかし、これを両手取引で成立させると、96万円×2(売主と買主)×40%で76.8万円インセンティブが入ります。営業担当者からすると実に4倍も収入が違うという事です。従って、両手取引を狙うため、前項の囲い込みを行う営業担当が未だにいるのです。

※2 税抜き3,000万円の物件で、仲介手数料の上限。仲介手数料には消費税は加味していません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。不動産屋が怪しい・・・と思う人の気持ちも理解できる部分があると思います。しかし、勿論全ての不動産業者が上述したような会社ではありません。むしろ、不動産業者のモラルは上がってきています。例えば、物件を売る時は建物診断をするという方針で動いているなど、安心・安全な取引をモットーに不動産流通業界も努力しています。物件を売買する時には、モラルの高い信頼できる不動産業者を選びましょう。

- 2016年10月17日