注目されている不動産ローン『リバースモーゲージ』とは何か?

通常、住宅ローンとは、自宅を購入するための資金を一括で支払えない場合に、購入する不動産を担保に、不足分を金融機関から借り入れるローン商品です。簡単に言うと、“購入”を目的としたローンということになります。

一方、購入が目的ではなく、“老後の生活資金の確保”を目的とした「リバースモーゲージ」という不動産ローンがあります。自宅を担保に資金を借りるという点は住宅ローンと同じです。ただ、貸し出し条件や返済方法などに大きな違いがあることや、住宅ローンと比べて取り扱う金融機関が少ないことから、ある程度“対象が限られたローン”という性質があります。

今回は、リバースモーゲージの仕組みを中心に、メリットやデメリット、取扱金融機関などについて説明していきたいと思います。

目次
[1]リバースモーゲージの成り立ちから現在に至るまで
Ⅰ.導入当初は認知度が低かった
Ⅱ.再び注目され始めた背景
[2]リバースモーゲージの仕組み
Ⅰ.自宅を活かした収入の確保
Ⅱ.どのように資金を受け取って、どのように返済するのか?
①資金の受取方法
②返済方法
③ホームエクイティローンとの違い
[3]どのような案件(人・不動産)が対象となるのか?
Ⅰ.対象となる方
Ⅱ.対象となる不動産
Ⅲ.他の融資条件
[4]リバースモーゲージによって享受できる恩恵とは?
[5]リバースモーゲージのリスク
Ⅰ.担保割れのリスク
Ⅱ.“長生き”のリスク
[6]取扱機関、商品名

[1]リバースモーゲージの成り立ちから現在に至るまで

リバースモーゲージ

Ⅰ.導入当初は認知度が低かった

1960年代にアメリカで発祥したリバースモーゲージは、1981年に日本に導入されました。当初、生活支援を目的として東京都武蔵野市が取り扱いを始め、それに追従する形で、一部の自治体や都市部の信託銀行でも取り扱うようになりました。

その後、平成初頭のバブル崩壊に伴う不動産価値の下落によって、不動産の担保割れが相次いだことから、取り扱いを停止したり、評価の高い不動産所有者のみの限定商品とするなど、市場規模は徐々に減少していきました。

Ⅱ.再び注目され始めた背景

しかし、2000年代に入り、再びリバースモーゲージが注目されることになります。その理由として「高齢者が抱える老後の不安」が挙げられます。「定年後も働くところはあるのだろうか?」「年金は大丈夫なのだろうか?」「これからますます医療費の負担が増えていくのだろうか?」と言った老後の生活不安に対し、リバースモーゲージが選択肢の一つに考えられるようになります。

そして、2002年、厚生労働省による号令のもと「長期生活支援金貸付制度」として、リバースモーゲージが国策に盛り込まれることになります。ただ当初は、国や一部の自治体、民間金融機関などが少しずつ扱いを増やす程度に止まっていました。

ところが、2013年にみずほ銀行がメガバンク史上初めてリバースモーゲージの導入を発表したことに端を発し、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行が相次いで導入を決定し、リバースモーゲージは一躍脚光を浴びることになりました。

2013年と言えば、東京五輪開催が決定した年で、アベノミクス効果による株式相場や不動産価格が上昇カーブを描いていており、そういった背景もリバースモーゲージに対する関心度向上に大きく作用したと考えられます。

さらに、2015年には国土交通省の直轄機関である「安心居住政策研究会」が、リバースモーゲージについて、フラット35を提供する「住宅金融支援機構」を活用した住み替え支援策や、担保評価の基準見直し、公的な保証制度策定などの方針を打ち出しており、国を挙げてリバースモーゲージを普及させる取り組みが進んでいます。

[2]リバースモーゲージの仕組み

Ⅰ.自宅を活かした収入の確保

前項で年金問題について少しだけ触れましたが、リバースモーゲージは「自宅不動産を活かして年金収入を得る手段」と言うことができます。年金以外に収入の当てがなく、資産と言ったら自宅だけという方にとっては、その自宅が収入を得る手段になる訳です。

少子高齢・核家族化や空き家問題が取り沙汰され、子供に自宅を残す必要がなくなってきている昨今、「自宅には健康な間だけ住めれば、子供に残す必要はない」といった割り切った考えを持つことができれば、検討する価値は十分にあると思われます。

Ⅱ.どのように資金を受け取って、どのように返済するのか?

ここで、資金をどのように受取ってどのように返済していくのかについて簡単に説明します。具体的にどのような案件を対象とするのかについては、次項で詳しく解説します。

①資金の受取方法

自宅の担保評価の50~80%を上限に国・自治体・金融機関から資金を借り入れます。受け取り方法としては、おもに「毎月または毎年一定額を受取る年金方式」「借入時に一括で受取る一時金方式」「設定された借入限度枠内で必要に応じた額を引き出すキャッシング方式」があります。

②返済方法

リバースモーゲージは、収入がない世帯に対する融資であることから、最初から「不良債権」となることを見越したローンということになり、自宅の売却処分による返済が前提になります。あらかじめ設定した契約年数(20年間など)か、または契約者が死亡したした時のどちらか早い時期に一括返済義務が生じ、相続人等が現金で返済するか売却処分して返済することになります。

金融機関によっては、「一定額を毎月に渡って返済する元利金等型」や「利息分だけを毎月返済する利払い型」も選べることもできますが、ほとんどの方が一括返済型にされるようです。

③ホームエクイティローンとの違い

リバースモーゲージと類似するローンに、みずほ銀行などが扱う「ホームエクイティローン」があります。これは、例えば、評価が3,000万円の自宅に対し、住宅ローンが2,000万円残っている場合、この自宅の正味価値(ホームエクイティ)は1,000万円ということになり、その正味価値を上限として融資されるのが、ホームエクイティローンです。

双方の違いとして、ホームエクイティティローンが40代を中心とする現役世代を対象としているのに対し、リバースモーゲージは退職後の高齢者が対象となる点です。また、一括返済が前提のリバースモーゲージに対し、ホームエクイティローンは毎月定額返済を原則としています。

[3]どのような案件(人・不動産)が対象となるのか?

何が対象?では、リバースモーゲージの具体的な融資条件について解説します。

Ⅰ.対象となる方

前項でも触れましたが、リバースモーゲージは高齢者を対象としています。年齢については、多くの金融機関が満60歳以上としていますが、みずほ銀行、東京スター銀行、スルガ銀行などは55歳以上から可能となっています。

世帯構成としては、民間金融機関の場合は単身者か夫婦世帯に限定しており、国や自治体の場合は、親子同居世帯も対象としています。なお、夫婦世帯において、契約者本人が死亡した後で配偶者が契約を引き継ぐことを希望する場合は、一定の条件を満たす必要があります。

〔配偶者がリバースモーゲージ契約の引継ぎを希望する場合の条件〕
1.配偶者の年齢が、契約時点において65歳以上であること(50歳以上の場合もある)。
2.契約者が死亡した後、引き続き配偶者が居住予定であること。
3.一定の事情を除き、配偶者が契約者と同居していたことを証明できること。
4.自宅の相続について、配偶者が単独の権利を有し、登記を行っていること。
5.契約者が死亡した後、3ヶ月以内にリバースモーゲージの契約承継手続きを行うこと。
6.配偶者の契約承継手続き時点において、不動産評価が融資残高を超過していないこと。
7.融資残高について、配偶者および推定相続人が連帯して返済義務を負うこと。

Ⅱ.対象となる不動産

国や自治体の中には、リバースモーゲージを実施していないところもあるため、事前の確認が必要になります。また、国の場合は、住宅ローンが残っていない不動産のみを対象としていますが、民間金融機関の場合は、住宅ローンが残っていても融資の対象になります。

前述で、リバースモーゲージは不良債権になるのを見越したローンであると申し上げましたが、裏返すと、不良債権になっても売却できる不動産に対して貸し出されるローンということになり、地方で著しく評価が低い不動産については、対象外ということになります。

また、不動産の種別としてはおもに土地付きの一戸建てを対象としていますが、みずほ銀行や東京スター銀行、一部の自治体などではマンションも対象となるケースがあります。

不動産評価に対する融資金額の目安としては、国や自治体で概ね70%以内としているのに対し、民間金融機関では50%以内のところがほとんどであり、「資産価値の高い不動産所有者(=富裕層)をターゲットにした金融商品」という見方もできます。

Ⅲ.他の融資条件

金利について、国の場合は長期プライムレート(*1)か上限金利(3%)のいずれか低い方を、自治体の場合は長プラか上限金利(%)のいずれか低い方が適用になります。民間金融機関については、長プラ以外にも短期プライムレート(*2)や独自の基準金利を設定しているところもあり、それぞれ確認が必要となります。

また、融資の条件に「遺言信託(*3)」等の信託契約を付帯させたり、建物の築年数制限を設けている金融機関もあります。

*1長期プライムレート
*2短期プライムレート
*3遺言信託

[4]リバースモーゲージによって享受できる恩恵とは?

恩恵金融機関が扱うリバースモーゲージは、使い道に制限を設けていないがほとんどです。目的としては老後の生活資金の確保が第一にはなりますが、年齢とともにお金を使う目的も変わってくるため、使い道に関しては金融機関が条件を緩和しています。

ここで、リバースモーゲージの使い道について、おもな事例を挙げてみます。

①自宅のリフォーム資金(バリアフリー工事、耐震補強工事、設備機器の交換工事など)。
②住宅ローン残債の完済資金として。
③子供、孫に掛かかる費用として。
・結婚資金
・孫の教育資金(入園入学費用、学費など)
④医療費(長期入院費用、高額医療費など)
⑤介護費用(ヘルパー費用など)
⑥老人ホームなどに入居するための一時金および月額費用

他に、もう何年も夫婦で旅行していないという方の旅行資金や、趣味や教養などシニアライフを充実させるための資金として利用される方もいます。また、年齢的にも不測の事態に対する備えが必要と考え、手の届くところに資金を確保しておくというケースもあるようです。なお、事業資金、投資資金、金融商品購入を目的とした融資は除外対象となります。

[5]リバースモーゲージのリスク

リスク

Ⅰ.担保割れのリスク

前述(成り立ち)の項で、かつてリバースモーゲージが担保割れを起こしたことに触れましたが、バブル期の経験から、担保評価がより厳しく査定されており、一見すると担保割れのリスクは少ないように感じられます。

しかし、現在のリバースモーゲージでは一定期間ごとに評価基準の見直しが行われており、景気の変動などによって地価が下落し、一時的にでも担保割れが発生した場合は、契約期間が満了する前に一括返済を求められる可能性があります。

また、リバースモーゲージは変動金利方式の融資であるため、現在の低金利状態から金利上昇局面に入って利息が増えると、一括返済額(元本と利息の合計)が担保評価を上回ってしまう可能性もあり、担保割れの状態に陥ってしまうのです。

Ⅱ.“長生き”のリスク

契約期間を設定して融資を受けた場合、契約者が融資期間満了後も生存していたとしても、一括返済の義務を免れることはできず、売却処分しなければならない恐れがあります。それに加え、年金方式を選択していた場合は、その資金が停止されることになり、二重のリスクを背負うことになります。

また、前述(配偶者の契約承継)を認めていない金融機関もあり、契約者が死亡した後、一定期間内に自宅を明け渡して売却しなければならないリスクも考えられます。
取り扱う機関によってリバースモーゲージの仕組みに違いがあるため、恩恵とリスクを十分に勘案する必要があります。

[6]取扱機関、商品名

最後に、代表的なリバースモーゲージ商品(制度)をご紹介します。なお、対象者、対象不動産、おもな特徴については、主要項目のみ抜粋して記載します。

【国(制度名:不動産担保型生活資金)】

○対象者

・契約者および配偶者ともに契約時の年齢65歳以上
・同居家族は配偶者のみ認められる。
・いわゆる低所得世帯(市町村税が非課税またはそれに相当)であること。

○対象不動産

・一戸建てのみ
・貸借権や抵当権等の担保権が設定されていない不動産
・原則として、土地の評価額が1,500万円以上(条件によっては1,000万円以上)

○おもな特徴

・毎月30万円を上限に年金方式
・一部取扱いの無い地域もある

参考:厚生労働省

【みずほ銀行(商品名:みずほプライムエイジ)】

○対象者

・契約時の年齢55才以上
・同居家族は配偶者のみ認められる

○対象不動産

・一戸建ての場合、土地の評価額が2,000万円以上
・マンションの場合
①契約者の年齢が100歳となる時点で、築45年以内
②専有面積が50㎡以上
③1坪(3.3㎡)当たりの評価額が250万円以上且つ総評価額が5,000万円以上
・不動産の所在地が東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県であること

○おもな特徴

・使途フリー資金と使途限定資金があり、併用することも可能

参考:みずほ銀行

【三井住友銀行(商品名:SMBCリバースモーゲージ)】

○対象者

・契約時の年齢60歳以上
・同居家族は配偶者のみ認められる

○対象不動産

・一戸建てのみ
・土地の評価額が6,000万円以上
・不動産の所在地が東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県であること

○おもな特徴

・使途は原則フリーだが、契約時に同行が使途について認めた場合のみ融資

参考:三井住友銀行

【三菱東京UFJ銀行(商品名:リバースモーゲージ型住宅関連ローン)】

○対象者

・契約時の年齢が満60歳以上80歳の誕生日まで
・同居家族は配偶者のみ認められる

○対象不動産

・原則として一戸建てのみ(評価に関する詳細は窓口にて説明)
・不動産の所在地が東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県であること

○おもな特徴

・使途限定のみの扱い
①リフォーム資金(新耐震基準工事を含む)
②サービス付き高齢者向け住宅に住み替える際の一時金

参考:三菱東京UFJ銀行

【東京スター銀行(商品名:充実人生)】

○対象者

・契約時の年齢が55歳以上80歳以下
・同居家族は配偶者のみ認められ、年齢が55歳以上

○対象物件

・一戸建て、マンションとも利用可能(評価に関する詳細は窓口にて説明)
・マンションの場合
①築年数14年以内
②専有面積が50㎡以上
③最寄駅まで徒歩10分圏内

○おもな特徴

・返済方法について、毎月利息のみを支払い、元本は契約者死亡後6か月以内に一括返済

参考:東京スター銀行

【西武信用金庫(商品名:生きいきライフ)】

○対象者

・契約時の年齢が55歳以上80歳未満
・同居家族は配偶者のみ認められる

○対象不動産

・一戸建てのみ(評価に関する詳細は窓口にて説明)
・東京都、埼玉県、神奈川県(いずれも一部地域を除く)

○おもな特徴

・(株)朝日信託とリバースモーゲージ信託契約が条件

参考:西武信用金庫

※2016年6月執筆
※サービスの詳細内容は各社のホームページをご覧ください。

- 2016年06月23日