第2回 よい管理会社と悪い管理会社の違いは?

管理の良し悪しによって、マンションの資産価値は大きく左右されると言われています。資産価値の低下を避けるためには、それぞれのマンションに沿った正しい管理・運営が必要であると考えられます。
前回に引き続き、メルすみごごち事務所代表の深山州(みやま しゅう)さんに、よい管理会社と悪い管理会社の違いや、管理会社の対応が悪い場合にはどのように対処すればよいかなどについてお伺いしました。

管理会社は「コンサルタント」ではなく、あくまで「事務やルーチンワーク」を得意としている

事務―よい管理会社と悪い管理会社を見分けるチェックポイントはありますか?
また、管理会社の対応がよくないことに気付いた場合、どのように対処すればよいのでしょうか?

管理会社は、いわゆるマンション管理組合の「アドバイザー」「コンサルタント」として関わってくれるのではないかというイメージがありますが、そうではありません。管理会社の重要な役割は「事務や日々のルーチンワーク」であり、例えばエレベーターのメンテナンス、管理人派遣、管理費徴収など会計など、定常業務を契約に内容としています。我々マンション管理コンサルタントのような「問題解決、提案、チェック、調査」は、管理会社の得意とする所ではなく、本来の業務ではないのです。

例えばマンションで何か問題が起きた時、「管理会社に相談したけれど、全然提案や調査をしてくれない」ことを理由に管理会社を別のところへ変更しても、おそらく同じことが起きるでしょう。管理会社を変えたから問題が解決されるわけではなく、事務や日々のルーチンワークのレベルが高くなるだけだと考えておいた方がよいでしょう。これは、大手であっても小規模な管理会社であっても大きく変わりません。

そのため、管理会社の役割はあくまで「事務や日々のルーチンワーク」だと割り切って考えておくことが必要です。事務やルーチンワークが早く正確なところ、は良い管理会社であると言えます。基本的な事務作業やルーチンワークであっても、滞ってしまうような管理会社もたくさんあるのです。

ところで、管理会社の仕事のなかで、清掃や設備のメンテナンスなどの業務は下請け会社にお願いしていることがほとんどで、現場で作業するスタッフきちんと役割を果たしていることが多く、ここがマンション管理で問題になることはあまり多くありません。一方で、管理会社の中で唯一の「アドバイザー機能」を持つのが、毎月の理事会や年一回の総会に出て助言をする「フロント担当者」なのですが、ここが管理組合にとって問題となることが多くあります。

フロント担当者が優秀で誠実な人の場合、理事会ではマンション管理において良いアドバイスをしたり、総会でもてきぱきと進めてくれますが、やる気のない人や能力の低い人が担当者の場合、「前回の理事会でお願いしたことをやってくれない」「言っていることがちんぷんかんぷん」などという事が起こります。担当者によってマンション管理が円滑に進むかどうかが変わってきますので、担当者が悪い場合は、別の担当者に変えてもらう必要があります。マンション住民は管理会社に管理委託費を支払う「クライアント」なので、担当者の変更希望を申し出ることを躊躇することはありません。

基本的には担当者を変更してもらえば解決するケースが多いですが、管理会社の中には、担当者の変更をお願いしても「代わりとなる担当者がいません」「うちの担当者は優秀ですのでその必要はありません」などと言って担当を代えてくれないこともあります。この場合、住民側が困っているのに管理会社が助けてくれないわけですから、管理会社自体を変える必要が出てきます。ご相談の中には「管理会社ともめているけどどう向き合えばわからないから教えてほしい」というケースも多くあります。

最近では、マンションの将来を見据えて理事に立候補するような熱心な住民も出てきている

また、ご相談の中には「毎月支払う管理費が高い」という声も多くあります。管理会社は民間サービスなので、管理費はもっと安くできるのではないかと考える住民もいます。もちろん、30戸と300戸のマンションでは、必要な管理費も変わってきます。最近ではインターネットや業界新聞などで、マンションの管理費の大体の相場データなども出ているので、それを見ると、自分の住むマンションの管理費が相場より高く感じる人がいるのではないかと思います。
また、インターネットが普及しているので、マンションを購入する前から「管理費は下げられる」という事を知っている人も出てきています。実際に、新築マンションを購入時の設定管理費は、購入者が交渉したわけではなく最初に決められている額ですから、「希望小売価格で管理がスタートするのだから金額は下げられるだろう」という、賢い発想を持った人も増えてきています。

新しいマンションほど熱心な住民も出てきていて、理事に立候補して管理費を下げようと考える人も、100戸あったらそのうちの1~2人は出てきています。以前はインターネットも普及しておらず情報も少なかったですし、管理費が下がることも知らなかった人がほとんどでしたから、時代が変わりましたね。

そしてこれら「無駄な管理費を下げたい」と考える熱心な住民のほとんどが、「下げた管理費を修繕積立金にまわして、管理組合としての将来貯蓄に回し、修繕費の値上げを抑え、長期的に住みやすいマンションにしたい」と考えています。ただコストダウンするのではなく、「生活費」である管理費のムダをなくして節約し、余ったお金を「将来貯蓄」である修繕積立金へ充当する、という、どこの家庭でもやっていることを、マンション管理でも実現できるのです。

第3回 マンション管理コンサルタントはなぜ必要?

- 2016年02月15日