賃貸専門リノべ・仲介会社が語る「若者や女性に人気のリノベ賃貸の作り方」

近年、注目されつつあるリノベーション物件。中古マンションやアパートなどを改修し、よりデザイン性の高い部屋へと改良したり、間取りや内装を変更したりすることをいいます。
なかなか住み手の決まらない古いマンションは、リノベーションをすることで見た目も機能もアップさせることができ、賃貸契約に結び付きやすい傾向にあるのです。
大幅に工事するよりも、コストも時間もかからずオーナーにとって非常にメリットの多いリノベーション。
そんな近年注目されつつあるリノベーションについて2016年6月15日東京ビッグサイトで開催された住宅イベント「賃貸住宅フェア2016」にて行われたセミナーを取材。リノベーション事業で活躍中の株式会社ジェントル代表取締役蒲谷宜治氏にお話を伺ってきました。

<プロフィール>
蒲谷宜治
1981年生まれ。2002年に不動産会社へ入社。2008年に株式会社ジェントルを創業。代表取締役に就任。2012年賃貸に特化した内装事業「RENOVATION TIME」を開始。

店舗デザインをコンセプトに

カフェ現在の住宅は、新しさや綺麗さよりも「デザインが自分の好みかどうか」で選ばれつつあると思っています。まるでカフェに行ったかのような感覚になれる住宅が、若い人や女性に人気なのです。
リノベーションをするうえで、僕が意識しているのは人気のある飲食店やアパレル店の内装で、色の相性やバランスを参考にさせてもらっています。
また、照明も非常に参考になり、雰囲気の良い照明をチョイスしたり、調整したりして非日常的な雰囲気を作ることを心がけているのです。

リノベーションのポイント

※事例物件概要・・・明大駅前から徒歩5分。築年数40年木造アパート17㎡。

ワンルーム上記の物件をリノベーションすることになって最初にしたことは、店舗の内装に似せた「ダウンライト」や壁に取り付ける「ブラケットライト」の設置です。それぞれのライトのスイッチは全部一緒にせず、一つひとつスイッチを分けることで雰囲気を変えることができるようにしました。
全部の照明をつければ、明るい雰囲気になりますし、照明を一つだけつけることで落ち着いた雰囲気にすることができるのです。

全体の色合いに関してはホワイト・ナチュラル・ブラックを7:2:1の割合で調整し、そのほかの色合いはなるべく無くして統一感を出すことにしました。
そして玄関から部屋が丸見えだった問題を、玄関前に壁を作ることで解消し、収納としても活用できるよう、壁に収納場所を確保しました。丸見えだった部屋は壁で仕切ることによって外からの視線を遮ることができるようになっています。

築年数の古い建物ではあったのですが、リノベーションを終え内装はかなりオシャレな雰囲気へと変化させることができました。
また、家賃は40,000円から65,000円へ値上げしましたが、リノベーションの甲斐あって、無事入居者様が決まりました。

賃貸入居者希望の間取りを作る

住環境やデザインを重視する入居者の多くは、マナーが良い傾向にあります。これは、部屋にこだわる人の共通点が「収入が安定している」からなのです。そのため、家賃滞納などのトラブルが比較的少なく、オーナー様も安心して部屋を貸し出すことができます。
そういった住環境やデザインを重視する入居者を呼び込むためには、3つのポイントがあります。

1.一度は住んでみたい間取り、空間を作る
希望に沿った間取りや空間づくりが大切になってきます。「一度は住んでみたい部屋」として、オシャレな空間を作る必要があるのです。
普通の物件では備わっていないアイランドキッチン、インテリアキッチン、グラスハンガー、コンクリートの打ちっぱなしなど、住宅っぽくない空間が人気を集めているのです。

2.食寝分離(しょくしんぶんり)
狭い部屋に住むとどうしても、寝る場所と食事をする場所が一緒になってしまう傾向があります。住環境やデザインを重視する人の理想に近づけるためにも、なるべくオシャレなカウンターキッチンなどを設けたりして食事のスペースと寝るスペースを分けられる工夫が必要です。

3.住みにくい部分、決まらない理由を減らす
なかなか空室が埋まらないのには何か理由があるものです。
コンセントの数が少ない、テレビコンセントの位置が気に入らない、収納が少ない、洗濯機置き場が外、冷蔵庫置き場が台所にない、玄関から部屋が丸見え、蛍光灯の照明、などといった「住みにくい部分」「決まらない理由」をどんどん解消していくことで空室率を下げることができると思います。

職人の方々との連携

人気のデザインである「ヴィンテージ」や「レトロ」な雰囲気はなかなか職人さんに理解してもらいにくいということもあります。ヴィンテージ加工のような「味のあるキズ」や「雰囲気のある使用感」などを分かってもらえないということも少なくありません。
だからこそ、現場の人たちとの連携はとても重要になってきます。画像などで伝わるまで詳しく説明したり、リノベーション事態に興味を持ってもらったりということも必要です。

ヴィンテージやレトロな雰囲気でリノベーションを計画していたのにも関わらず、職人さんが綺麗に塗装してしまった、なんていうこともあり得るので、進み具合などを見るためにも現場に通うことを意識したほうがいいでしょう。

一緒に仕事をしていくうちに、職人さんもリノベーションを理解してくれるようになるので、長期で付き合ってくれる業者さんにお願いをしたり、対応が柔軟な業者さんにお願いしたりするのがおすすめです。
ただ、リノベーション工事は大変な割に儲からない仕事。手間も時間もかかる割にはあまり儲けにはなりません。ですから、時には通常のリフォーム工事をお願いして、継続しながら付き合えるようにしていくといいでしょう。

賃貸リノベーションでやってはいけないこと

NG賃貸リノベーションではやってはいけないという注意点もあります。

1. 部分的な改装
デザインは統一感が大切です。中途半端では費用対効果が低い投資になる可能性があります。

2. 高価な設備をつける
床暖房や風呂内のテレビ、外せないような高価な照明などは大きなコストがかかってしまうのでやめておいた方がいいでしょう。

3. ニッチ過ぎるデザインコンセプト
一部の人にしか受け入れてもらえないようなコンセプトはNGです。アニメ、映画、森林浴、メルヘンなどのデザインコンセプトは止めたほうが無難です。

4. 好みが偏った家具を設置する
余計なものは置かないほうが無難です。良かれと思っておいた家具が、入居者は求めていないということも考えられます。

5. 収納を無くしてしまう
デザインに凝り過ぎて収納を無くしてしまうのはNGです。

6. 家賃を非常に高く設定する
リノベーションでかかった費用を回収しようと、高い家賃の設定はやめましょう。どんなにいい部屋でも相場より高くなってしまうことで契約されなくなってしまいます。

決まるリノベーションのポイントは3つ。
1. 店舗デザインをコンセプトにする
2. 賃貸入居者の希望の空間を作る
3. 現場の方々との連携
これらのポイントを掴むことで、契約の決まるリノベーション物件になるはずです。

今回のセミナーを聞いて

リノベーションは、空室改善としても注目されていますが、リノベーションをすることで「余裕のある」入居者が契約し、「入居者トラブル」も起きにくいというメリットがあるということが分かりました。
ただ、自分本位になってしまわないよう入居者目線でのリノベーションデザインを実現するには、業者との円滑な連携、コミュニケーションも必要になってくるとのこと。素敵なリノベーション物件にするには、コストや時間を惜しまないということが、呼び込むには大切なことなのかもしれません。

- 2016年07月04日