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告知や相場は?注意が必要な事故物件の売却方法

不動産情報を検索していると、「事故物件」、「心理的瑕疵(かし)物件」という表記のある物件を目にされたことがあるかも知れません。
事故や心理といった言葉のニュアンスから、問題のある物件というイメージが浮かぶことと思います。

お察しの通り、これらは何かしらの問題を抱える物件であり、取引(売却、購入、賃貸借)する際は、一般の物件とは区別して取り扱われます。
なかでも、事故物件については判例等による線引きがあり、売却する際には特に注意が必要になります。

そこで今回は、事故物件を売却する際に知っておくべき内容について説明していきたいと思います。

■事故物件とは何か?

Ⅰ.「心理的瑕疵物件」と「物理的瑕疵物件」

事故物件の説明に入る前に、「瑕疵物件」について理解する必要があります。
まず、瑕疵の意味ですが、“広義の欠陥”と捉えてください。欠陥というからにはマイナス要素を表す訳ですが、不動産においては「 物理的瑕疵」と「 心理的瑕疵」の二つに分類されます。

①物理的瑕疵

これは、例えば、一戸建て住宅の場合、柱や基礎などの構造部分が欠損していたり、シロアリや雨漏りなどによる腐食などが該当します。
マンションですと、給排水管の詰まりや上階からの水漏れ、開口部からの雨漏りなどが該当します。
また、土地についても、地中に廃材などが埋められたままになっていたり、極端な軟弱地盤であることなども該当します。

つまり、物理的瑕疵をわかりやすく言うと、“物質的な欠陥”になります。
物理的瑕疵は、現地を確認したり専門家の調査などによって把握することができ、大概の欠陥は補修で直すことが可能です。

万が一引渡し後に欠陥が発覚した場合の措置については、売買契約書に「売主の瑕疵担保責任」が明記されており、買主に対する一定の保全措置が講じられます。
なお、壁クロスの剥がれやフローリングの擦り痕など、日常生活で生じる軽微なキズや損耗は、瑕疵とは見なされません。

②心理的瑕疵

心理的瑕疵をわかりやすく言うと、「気味が悪い」「怖い」などの不快を感じさせる要因を指します。
例えば、過去に物件内で自殺や殺人事件があったり、火災や洪水などの被害が該当し、また、反社会的勢力の活動拠点や火葬場などの施設が近くにあるといった場合も該当します。
これらの他にも、近所にゴミ屋敷や騒音トラブルなどの迷惑行為を起こす人がいる場合も、最近では心理的瑕疵と認識されるようになっています。

心理的瑕疵についても物理的瑕疵と同様、売買契約書に明記することになっており、買主に対する保全措置が講じられます。
物理的瑕疵と心理的瑕疵の違いは、補修によって問題が解決できるか否かということになります。
補修による解決が不可能な心理的瑕疵物件の売主は、売却の際、少なくとも市場価格を下回ることを覚悟しておく必要があります。

Ⅱ.事故物件は心理的瑕疵物件よりも範囲が「死亡」に限定される

ここまで瑕疵物件について説明してきましたが、あらためて事故物件の説明に入ります。
事故物件とは、物件内において、殺人、自殺、自然死、病死等の過去があったものを指します。お気付きかと思いますが、事故物件は心理的瑕疵物件の範疇になります。

では、何をもって事故物件に定義されるかと言うと、「死亡」を伴うということになります。 ここで、事故物件における「死亡の線引き」について、下表で説明します。

事故物件の死亡の線引き

事故物件に該当するか否かは、死亡だけでなく“自然死か人為的な死か”で線引きする必要もあります。 その点を踏まえて表を見てみます。

①②はおわかりかと思いますので説明は省略します。
④については死亡者は出ていませんが、「火災という事故」に見舞われた忌避的なイメージを持つ物件と括られることから該当の扱いになります。 更地にした場合も同様です。
⑨は判断が難しいところですが、物件内では死亡者が出ていないものの、「殺人を犯した人の居住地」という忌避的なイメージは拭えず、 加えて昨今のコンプライアンス上の観点から、事故物件と判断するのが妥当と思われます。

③⑦については、基本的に該当しないと思われますが、自殺の痕跡や遺体の経過日数によっては物件状態に影響が及ぶ可能性もあり、状況によって判断が分かれるでしょう。
⑤⑥については、人間は必ずどこかで亡くなる訳ですし、事件性もないため非該当となります。
⑧については、⑤の状況に近く且つ物件外での死亡ですので、これも非該当となります。

■事故物件には告知義務がある

事故物件の定義についてのイメージは大体把握して頂けたことと思います。
では、テーマである「事故物件の売却」について説明していきます。

Ⅰ.事故物件であることを隠して契約することはできるのだろうか?

何の瑕疵もない普通の物件を売却するのであれば、過去の物件状況について、何も隠す必要はないでしょう。
しかし、瑕疵それも事故物件に該当する場合は、前述の通り、市場価格を下回るのは間違いありません。
そのため、もし住宅ローンがまだ相当残っている場合などは、相当な負担を強いられることになってしまいます。

そこで売主はこう考えます。「事故の事実を言わなければ、相場で売れるはず」と。
そして、事実を告げないまま不動産会社に査定を依頼し、相場の金額で売りに出し、数ヵ月後、買い手が付いて契約・引渡しが無事完了し、ローンの残債も完済できました。
見事、相場価格での売却に成功します。

数年後、突然、損害賠償請求が届きます。金額は自宅の売却代金と掛かった費用一式で数千万円。もちろん請求者は当時の買主です。そう、事故の事実が発覚したのです。
買主は売主だけでなく、事故を発見できなかった不動産会社に対しても賠償を求めたため、不動産会社からも責任を追及されることになり、途方に暮れるしかなくなったのです。

Ⅱ.事故の事実を隠蔽したり虚偽を語って契約した場合は、ほぼ確実に損害賠償の責任を負う!

ちょっと物語調になってしまいましたが、事故の事実を隠して売却した場合の末路だと思ってください。
実際には、不動産会社が事前に十分な調査や聞取りを行い、売主に対して「物件状況等確認書」によって事故歴の有無を告知してもらったうえで売却活動をスタートしますので、 そうそう見過ごされるものではありません。

仮に、何とか隠し通して契約・引渡したとしても、住んでいれば近隣の噂や報道などで発覚するのは時間の問題です。
さらに、その“時間”についても、売買が完了した6年後に、物件内で自殺があったことを売主が隠していたことを理由に、買主が損害賠償を請求したという事例がありました。
その際、売主の「6年経ったのだから時効だ」という抗弁は退けられ、買主の請求が認められたのです。
この事例の通り、事故物件の告知義務違反には時効が認められず、怠った場合は相応の責任を負う可能性が高いと考えるべきでしょう。

また、前述の通り、事故の事実を発見できなかった不動産会社にも責任が及ぶことになり、 事実を隠された不動産会社としては、損害の原因者である売主に対して相応の賠償を求めてくることも考えられます。
売却代金のうちの数百万円を得ようと、事実を隠したり虚偽を語ったために、大きすぎるリスクを背負うことになるのです。

事故物件を含む心理的瑕疵物件はもちろん、物理的瑕疵物件についても売主が買主に対して瑕疵の事実を告げずに契約し、 買主に物理的・精神的な損害が及んだ場合は、損害賠償の対象となります。
賠償額の基準としては、通常、売買契約書に記載された金額となりますが、損害の程度が甚大であったり、 売主の隠蔽行為に詐称や虚偽など著しい悪意があった場合は、契約書記載額を超える賠償が課せられるケースもあります。

この項の最後に、「大島てる」について触れておきます。 これは、事故物件の位置情報を明示したサイトで、新聞報道等によって開示された日本全国の事件・事故の発生場所が明示されています。
参考までにご覧になって見てください。 ※大島てる:http://www.oshimaland.co.jp/

【参考】瑕疵担保責任について

■事故物件を売却するには2つの方法がある

数多くの売却物件が出回るなかで、あえて事故物件を購入するという方は少ないでしょう。
そのため、売却にあたっては専門知識と豊富な経験のある不動産会社への相談が不可欠となります。
物理的瑕疵物件については、前述の通り、補修等によって解決が図れるため、不動産会社のハードルは高くないでしょう。

一方、事故物件を含む心理的瑕疵物件については、経験・知識ともに豊富な業者は決して多くはありません。 そのため、依頼する業者の選定は慎重に進めて行く必要があります。

Ⅰ.「仲介」による売却

不動産の売却では、大きく分けて二つの方法があります。
一つ目は「仲介」という売却方法で、不動産会社に売却を依頼して買主を探してもらう形態です。 世間に出回っている売却物件の大部分は、この仲介によるものです。

具体的には、1社もしくは複数の不動産会社に売却価格を査定してもらい、1社(複数も可)と「 媒介契約 」を結んで販売活動をしてもらいます。
この時の不動産会社の立場はいわば“仲人”で、インターネット等の広告を用いて買主を見つけ、売主と引き合わせることが目的となります。
仲介は、相場価格で売却できることから、大部分の売却方法として選ばれている訳です。

しかし、事故物件の場合は相場価格で売却するのは難しくなります。
そのため、不動産会社に相談する前に事故の経緯を整理して書面化してから行動することをお勧めします。
相談に当たっては、周囲を気にせずに話せる環境を不動産会社に整えてもらうようにします。

売却価格については、起きてしまった事実を消すことができない事故物件の性格上、相場価格と比べて少なくとも3割減、 状況によっては半値程度になってしまうことも心得ておく必要があるでしょう。

Ⅱ.「買取」による売却

仲介以外の方法として、不動産会社自らが買主となる「 買取 」という方法があります。
昔から訳あり物件を専門に買い取る不動産会社がありましたが、近年では扱う業者の数が増えてきており、事故物件を抱えて困っている売主にとって相談できる窓口が多くなりました。

買取業者は、事故物件および心理的瑕疵物件だけでなく、住宅ローンが払えずに差押となってしまった物件や複雑な権利関係が絡んだ物件など、 さまざまな問題を抱えた物件を扱っているため、売主の事情に配慮した対応を取ってもらえます。

注意点としては、困難を抱えた売主の事情につけ込んで安く買い叩く買取業者がいることです。
困難から脱するために早く処分したいと考える心情もあるでしょうが、事故物件と言えど相応の価格で売却することによって、残る負担に充てることもできるでしょうから、 冷静な判断を心掛けるようにしましょう。

Ⅲ.売却活動を開始した後にすべきこと

不動産会社に売却を依頼すれば、次は売却活動に入ります。
この時、「事故物件の事実は消えないし、どうせ安くしか売れないのだから、あまり手を入れる必要は無いだろう」と考えるかも知れません。

しかし、特に仲介で売却する場合は、事故物件だからこそしっかり手を掛ける必要があります。
消臭処理はもちろん、壁クロス、カーペット、畳等の交換など換えられる部分はできる限り行い、 「言われなければ事故物件とは分からない」と感じられるほどに手を掛けた方が、何もしないよりも早く買い手が付きやすくなります。

【参考】内覧の準備

■まとめ

事故物件の売却はできる限り早く決断されることをお勧めします。
時間が経過するごとにさまざまな憶測が飛び交い、“尾ひれはひれ”が付いてしまうのが世の常で、それに連れて価格も下がる可能性が高くなります。
事故物件を抱えているという困難な状況から早く脱するために、多少査定が安くなっても“楽”な方法を選んでしまいがちです。 心情を考えればやむを得ないことかも知れません。

しかし、売却した後の生活を考えれば、必ずしも“楽”と言えないのではないかと思われます。
その後の生活のためにも、事故物件の売却では、豊富な経験と知識を持った不動産会社のサポートが不可欠です。 仲介・買取のいずれを選ぶにせよ、売主の事情を考慮し、親身に相談に応じてくれる不動産会社に任せることが、行動の第一歩になります。

マンション売却を成功させるコツや売買の流れについて知りたい方は下記のページをご参照ください
「マンション売却を成功させるコツを不動産業者が徹底解説」

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