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不動産売買の際は要注意!流れに身をまかせがちな重要事項説明書で見るべきポイント

重要事項説明書をご存知ですか?

不動産を取引するときに説明を受ける書類です。
内容を説明している宅建士(宅地建物取引士)から「よろしいですか?」と尋ねられ、思わず「はい…」と答えてしまう方が少なくありません。

しかし、本当に理解できているのでしょうか?

重要事項説明書の内容は、文字通りとても重要です。
今回は、重要事項の説明を受けるうえで、これを押さえておけば大丈夫というポイントについてご紹介します。

目次

1. 重要事項説明書が必要な理由

2. 重要事項説明の流れとポイント
 2-1. 重要事項説明をする宅地建物取引士など、基本的な確認
  2-1-1. 宅地建物取引士の確認
  2-1-2. 取引の態様の説明
  2-1-3. 売主
 2-2. 物件の基本的な確認
  2-2-1. 物件の概要
  2-2-2. 物件の詳細情報の確認
  2-2-3. 抵当権について
  2-2-4. その他の権利について
 2-3. 法令上の制限
  2-3-1. 都市計画法・建築基準法に基づく制限
  2-3-2. 用途地域の確認
  2-3-3. 建ぺい率と容積率の確認
  2-3-4. 再建築不可の物件の存在
  2-3-5. 都市計画法・建築基準法以外の法令による制限
 2-4. 道路や飲用水、電気、ガス、給排水設備の設備状況
  2-4-1. 私道の負担に関する事項
  2-4-2. 飲用水やガス、電気などの整備状況
 2-5. その他物件に関する事項
  2-5-1. 石綿(アスベスト)使用調査の有無とその内容
  2-5-2. 建物の耐震診断の有無
  2-5-3.住宅性能評価を受けた新築住宅であるかどうか
 2-6. マンションなど区分所有建物に関する事項
  2-6-1. 敷地に関する権利の種類及び内容
  2-6-2. 共用部分に関する規約
  2-6-3. 専有部分に関する規約
  2-6-4. 専用使用権に関する規約
  2-6-5. 修繕積立金や管理費に関する規約
  2-6-6. 管理の委託先に関する事項
 2-7. 契約条件に関する事項
  2-7-1. 代金及び交換差金以外に授受される金額
  2-7-2. 契約の解除に関する事項
  2-7-3. 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
  2-7-4. 手付金等の保全措置の概要
  2-7-5. 支払金または預り金の保全措置の概要
 2-8. その他の事項
  2-8-1. 金銭の貸借のあっせん
  2-8-2. 瑕疵担保責任の履行に関する措置に関して
  2-8-3. 割賦販売に関する事項
  2-8-4. 供託所に関する事項

3. 最後に

1. 重要事項説明書が必要な理由

なぜ?

重要事項説明書は、不動産を購入してから後悔しないために必要とされています。
不動産とは高価な買い物です。

後で、「しまった!」は許されません。
たとえば、家を建てたいと思い、まず土地を購入しました。

ところが後で、その土地には家を建てることができないと分かったら、どうしますか?
どうしようもありません。

そこで、「知らなかった」という悲劇を避けるために「宅地建物取引業法」という法律で、不動産業者に重要事項を説明することを義務付けているのです。

2. 重要事項説明の流れとポイント

不動産の購入前に必ず行われるのが、宅地建物取引士による重要事項説明です。購入予定の物件の詳細や法令上の制限などの重要事項が説明されます。 重要事項説明は契約前に必ず行うこととなっており、重要事項説明を聞いたからといってもちろん契約書にサインをしなければいけないということではありません。 契約前の最終チェックといえるもので、その内容をしっかりと理解することが大切です。

重要事項説明書の様式はいくつかありますが、今回は一般的な重要事項説明書を想定してその記載内容についての確認を行っていきます。

2-1. 重要事項説明をする宅地建物取引士など、基本的な確認

2-1-1. 宅地建物取引士の確認

重要事項説明は宅地建物取引士が、宅地建物取引士証を提示した上で説明をしなければなりません。 宅地建物取引士証を確認することで、説明する担当者が確かに宅地建物取引士であることの確認やどこの都道府県から免許を受けており、更新手続きを行っているかどうかなどの確認ができます。

いくら知識を持っている担当者でも、宅地建物取引士として登録されていないものが行う重要事項説明は、法令違反となるので注意が必要です。

2-1-2. 取引の態様の説明

説明をする不動産会社がどのような立場で取引に関わっているのかを示します。

・売主

取引の態様が売主の場合、説明をしている宅地建物取引士や宅地建物取引士が所属している不動産会社が所有している不動産を購入することになります。

・代理

取引の態様が代理の場合、説明をしている宅地建物取引士は購入する不動産の所有者の代理として不動産の売買手続きを行っていることになります。

・媒介

取引の態様が媒介の場合、説明をしている宅地建物取引士は不動産の所有者か買主、もしくはその両方の仲介をすることになります。 なお、重要事項説明は通常買主に対して行うものですが、売主も重要事項説明書の内容を確認しておくべきです。

2-2. 物件の基本的な確認

次は、物件の基本的な内容の確認をします。

2-2-1. 物件の概要

物件の所在地や地目、面積、売主の住所氏名などを確認します。 基本的には登記簿と同じ内容になっているかどうかの確認をしましょう。 何らかの理由で謄本と相違がある場合にはその確認をします。

2-2-2. 物件の詳細情報の確認

土地を購入する場合、地目が田や畑の場合には農地転用手続きが必要となります。場合によっては、農地転用が難しい地域もあるので注意が必要です。

新築の建売や中古住宅を購入する場合は住宅ローンや税制の特例に建物の面積の要件が入っていることもあるので広告と謄本に相違がないかなど確認をしましょう。

2-2-3. 抵当権について

「所有権以外の権利に関する事項」として、抵当権の設定がある場合には、その内容やいつ抹消されるのかを確認しておきましょう。
万が一抵当権が実行されると、せっかく購入した不動産を失う可能性があります。

抵当権とはローンを組む際に不動産等を担保にとるために設定するもので、通常は不動産を売買する前に抵当権の抹消手続きをします。 ローンの残債がある場合には完済する必要があるので資金のあてがあるのかどうか確認しておくようにしましょう。

特に物件の売買価格より抵当権の設定額が大きい場合や過去に税金の滞納などの理由で差押さえの登記がされている場合などは注意が必要です。 こうした場合、もしもの時に備えて多額の手付金を支払わないなどの対策をしておきましょう。

参考:抵当権の抹消

2-2-4. その他の権利について

賃借権が設定されている場合や共有物件などの場合、一部制限された所有権となります。 特に道路に持分を持つ場合など、通行権や接道義務を満たさないなど将来のトラブルになる可能性もあるのでしっかり確認しておきましょう。

2-3. 法令上の制限

不動産には都市計画法や建築基準法をはじめさまざまな法令の影響を受けます。
法律により、家が建てられない区域があります。また、地域により建てることのできない種類の建物もあります。
特に土地の場合にはどのような用途でどの程度の規模の建物が建てられるのかや、中古住宅の場合には再建築が可能なのかどうかは、しっかりと確認しておきましょう。

2-3-1. 都市計画法・建築基準法に基づく制限

都市計画法では地域毎に市街化区域や市街化調整区域、そのどちらにも属さない非線引き区域などが定められています。 特に市街化調整区域は通常住宅を建築することのできない地域となっていますので、住宅を建てる場合にはどのような制度を利用して建築するのか確認しておきましょう。

・市街化区域

すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域であり、少なくとも用途地域が定められます。 開発行為(土地区画の変更や造成)を行う場合には、事前に都道府県知事の許可を受ける必要がありますが、市街化区域は1000㎡未満の開発行為に関しては許可が不要となっています。

・市街化調整区域

市街化を抑制する区域であり、原則として用途地域は定められません。 開発行為に関しても原則として許可がされません。原則として住宅の建築も出来ない地域ですが、平成13年5月18日に施行された改正都市計画法により市街化調整区域で新たに住宅を建てる場合の要件が緩和されました。

許可要件は「市街化区域に隣接し、または近接し、かつ自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域でおおむね50以上の建築物が連たんしている地域」となっています。

一定の範囲内に50以上の建物が建っていれば市街化調整区域でも住宅が新築可能というもので、その地域の住宅の新築が進めば進むほど許可要件を満たす地域が増えていきます。 自治体によってこの許可要件以外の要件を設けている場合もあります。

2-3-2. 用途地域の確認

用途地域は都市計画法により都市の環境保全や利便の増進のために、地域における建物の用途に一定の制限を行います。用途地域は12種類あります。

・第一種低層住居専用地域

低層住宅の良好な住環境を守るための地域。事務所や店舗単独での新築はできず、50㎡以下の兼用住宅としてなら新築可能です。10mもしくは12mの絶対高さ制限があります。

・第二種低層住居専用地域

主に低層住宅の良好な住環境を守るための地域。日用品販売など一定の制限がつきますが150㎡以下の店舗を建築可能となっています。10mもしくは12mの絶対高さ制限があります。

・第一種中高層住居専用地域

中高層の良好な住環境を守るための地域。第二種低層住居専用地域より制限は緩和されますが、一定の制限のもと、500㎡以下の店舗を建築可能となっています。

・第二種中高層住居専用地域

主に中高層の良好な住環境を守るための地域。第一種中高層住居専用地域と同じ制限のもと、1500㎡までの大きさの店舗を建てることができます。また、1500㎡以下かつ2階以下であれば事務所も建築可能です。

・第一種住居地域

住居の環境を保護するための地域。一定の制限のもと3000㎡までの店舗やホテルを建築することができ、小規模な工場も建築可能です。

・第二種住居地域

主に住居の環境を保護するための地域。一定の制限のもと10000㎡までの店舗やホテル、パチンコ店やカラオケボックスを建築可能となっています。

・準住居地域

道路の沿線等において、自動車関連施設などと住居が調和した環境を保護するための地域。国道や幹線道路沿いで指定され、車庫や倉庫などの建築が可能となっています。

・近隣商業地域

近隣の住民が日用品の買物をする店舗等の、業務の利便の増進を図る地域。床面積の制限なく店舗や遊戯施設の建築が可能な地域です。

・商業地域

主に商業等の業務の利便の増進を図る地域。ほとんど全ての商業施設や遊戯施設を建築可能で、広義の風俗営業用の建築物も建築可能です。 中心部の繁華街やオフィスビル街で指定され、大規模な建物が建てられることが多い地域です。

・準工業地域

主に軽工業の工場等、環境悪化の恐れのない工場の利便を図る地域。住宅や店舗も建てられますが、危険性、環境悪化のおそれがおおきい石油コンビナートなどは建築できません。

・工業地域

主に工業の業務の利便の増進を図る地域。住宅や店舗も建てられ、工場はどんなものでも建てられます。

・工業専用地域

工業の業務の利便の増進を図る地域。工場はどんなものでも建てられますが、12の用途地域の中で唯一住宅を建てることができません。

2-3-3. 建ぺい率と容積率の確認

都市計画法に基づき用途地域が指定されますが、建築基準法では用途地域毎に建ぺい率や容積率が設定されています。

建ぺい率は敷地面積に対する1階部分の建築面積の割合のことです。 例えば60坪の土地で建ぺい率の上限を50%と設定されている場合には建築面積で30坪までしか建物を建てることができません。

容積率は敷地面積に対する各階の延べ床面積の合計の割合のことです。 例えば60坪の土地で容積率の上限を80%と設定されている場合には各階の延床面積の合計で48坪の建物までしか建てることはできません。

高さ制限の確認

建ぺい率や容積率と同じく用途地域毎に5つの建築物の高さ制限が定められます。

・絶対高さ制限

絶対高さ制限は指定された土地に建てられる建物の高さを10mもしくは12mに制限します。第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域に適用されます。

・道路斜線制限

道路斜線制限は敷地の前面道路の反対側の境界線から一定の勾配をもつ斜線の内側にしか家を建てられないという高さ制限のことを指します。 一定の勾配は ①第一種低層住居地域~準住居地域までの住居系地域では1.25倍×水平距離 ②その他の用途地域では1.5×水平距離となっています。

・隣地斜線制限

隣地斜線制限は隣地の境界線から一定の高さと、一定の勾配をもつ斜線の内側にしか家を建てられないという高さ制限です。 ①第一種中構造住居専用地域~準住居地域までの住居系地域では20m+1.25倍の勾配 ②その他の地域においては31m+2.5倍の勾配となっています。隣地斜線制限は低層住居専用地域においては指定がありません。

・北側斜線制限

北側斜線制限は北側隣地の日照の悪化を防ぐために設けられる高さ制限です。北側の隣地境界線から一定の高さから1.25倍の勾配をもつ斜線の内側にしか家を建てられません。 一定の高さは ①低層住居専用地域では5m ②中高層住居専用地域では10mとなります。北側斜線制限は低層住居専用地域と中高層住居専用地域でしか指定がありません。

・日影規制

日影規制とは中高層建築物が一定時間以上の日影を一定距離の範囲に生じさせないように建築物を制限します。 中高層建築物とは、低層住居専用地域においては軒高7mを超えるものその他の地域においては10mを超えるものとしています。

この他、都市計画制限や特別用途地域など指定される地域では建築物の制限を受ける場合もありますので確認が必要です。

2-3-4. 再建築不可の物件の存在

中古住宅の場合、その建物を建てた当時には適法だったものの、その後の法令の改正により住宅を建築することができなくなる場合もあります。
こうした場合、その建物が建ち続けている間は既存不適格建築物という扱いで問題はないのですが、 建て替えなどで新しく住宅を建てる場合や、増改築の場合には新しい法令の制限を受けることになります。

例えば、建て替えたい場合は原則として、敷地が幅4メートルの道路に2メートル以上接していないと、家を新築することができません。
満たしていない場合は建替えができないので、リフォームで我慢するしかないのです。

また増改築を行政の確認を受けないで行っていた場合で、法令に適合しなくなっている場合には違反建築物となり、行政から改善などの指導や勧告を受けることもあります。

2-3-5. 都市計画法・建築基準法以外の法令による制限

不動産は都市計画法・建築基準法以外にも非常に多くの法令の制限を受けます。 宅地造成に関する制限のある法令や、町の景観を維持するための法令、空港の近くの場合には不動産の上空の利用についての制限など多岐に渡ります。 不動産の利用についての制限を受けることもありますので内容を確認しておきましょう。

2-4. 道路や飲用水、電気、ガス、給排水設備の設備状況

道路や飲用水、電気、などの各種インフラの確認をしておくことは非常に大切です。場合によってはこれらの整備に大きな費用がかかる可能性もあります。 現地での確認も行い、疑問に思うことがあったら必ず質問するようにしましょう。

2-4-1. 私道の負担に関する事項

私道負担とは、取引対象の土地に私道が含まれている場合や、敷地に接している道路が私道である場合に生ずる負担です。
取引対象の土地に私道が含まれている場合、道路を勝手につぶすわけにはいかないので、その分、自由に使える土地の面積が少なくなります。

不動産が私道に接している場合には、その私道部分の持ち分を持つのかどうか、持つ場合その負担はどれくらいなのかの確認をします。
特に2面に面している内の1面が私道という場合には私道の持ち分を持つ必要がない可能性もありますが、持ち分を持たないとその土地の通行権がありません。
駐車場の配置を私道側に持っていきたいなど、配置によって私道の持ち分を持った方が良い場合もあるので確認しておきましょう。

また、私道は不動産の購入後年数が経つ内に、分筆が進み接道義務を満たさないなどの問題を引き起こす可能性があります。 将来にたって問題とならないよう、私道の配置と権利関係についてはしっかり把握しておくことが大切です。

2-4-2. 飲用水やガス、電気などの整備状況

飲用水やガス、電気などの整備状況について説明があります。将来の建替えの可能性など考慮して飲用水やガスの引き込みの位置など質問しておくと良いでしょう。

・ガスの整備状況

その地域に都市ガスが通っているかどうか確認しましょう。また通っている場合には引き込みが必要なこともあります。 都市ガスの地域でないのであればプロパンガスを利用します。また、オール電化住宅の場合はガスを使用しません。

・電気の整備状況

電気の引き込みについて確認します。周囲にあまり電線のないような地域であれば別途負担金が発生する可能性があります。

・上水道の整備状況

飲用水の引き込みの確認をします。住宅が建てられたことのない土地の場合、前面道路まで配管がきていても、宅地内に引き込まれていない場合があります。 そうした場合宅地内への引き込み費用がかかります。また、道路の配管から住宅までの距離が長い場合には別途費用がかかる可能性があります。

・下水道の整備状況

下水道の配管の有無の確認をします。下水道が通っていない地域であれば別途合併浄化槽の設置費用が発生します。 また、下水道の配管がなされたばかりの地域の場合別途負担金が必要なこともあります。

・排水施設の確認

雨水や雑排水等の排水施設について確認します。

排水の処理については、公共の下水道で処理されるのかを確認してください。「排水だから、外にまけばいい」は、トラブルのもとです。

2-5. その他物件に関する事項

近頃、自然災害による被害が後を絶ちません。そこで、そもそも危険な区域かどうかの説明があります。
「造成宅地防災区域」「土砂災害警戒区域」「津波災害警戒区域」であれば、説明しなければならないとされています。

・造成宅地防災区域

造成宅地防災区域内か外かの説明を受けます。
造成宅地防災区域は、がけ崩れや土砂の流出によって多数の人に被害が及び災害が発生するおそれが大きい宅地造成地として指定される区域です。 この区域に指定された地域の土地所有者は、擁壁等の設置の勧告や命令を受けることがあります。
区域外であれば特に問題はありませんが、災害に備えて、近隣の地域で造成宅地防災区域に該当する区域がある場合には、把握しておくと良いでしょう。

・砂災害警戒区域と津波災害警戒区域

土砂災害警戒区域と津波災害警戒区域に指定されているかどうかの説明を受けます。
土砂災害警戒区域は、急傾斜地など土砂災害が発生するおそれのある地域に指定されます。 警戒区域(イエローゾーン)と特別警戒区域(レッドゾーン)があります。

津波災害警戒区域は、津波による人的災害を防止するために指定されるもので、指定された区域では警戒避難体制を特に整備する必要があります。
特に津波災害特別警戒区域に指定された区域では、一定の開発行為及び一定の建築物の建築や用途の変更の制限を受ける可能性があります。

これらの防災区域についても、区域内であればその説明を受け、防災区域外の場合も周辺の指定状況を確認しておくと良いでしょう。

2-5-1. 石綿(アスベスト)使用調査の有無とその内容

石綿(アスベスト)の使用状況の説明を受けます。
アスベストは安価でありながら耐久性、耐熱性に優れた繊維で、過去に建築資材として多く使われていたのですが、人が吸入すると人体に悪影響があることが判明したため、段階的に使用が制限されました。

ここではアスベストの使用状況について説明されます。 湿式石綿含有吹き付け材が使用されなくなった1989年以降の建物であれば、アスベストは使用されていないと推測されます。
アスベストが使用されているからといって即危険というわけではありません。アスベストが使用されている場合には、飛散しないように措置されているかどうかの確認をするようにしましょう。

2-5-2. 建物の耐震診断の有無

建物の耐震基準は過去の大きな地震毎に改正がなされてきていますが、特に1981年の改正以降の耐震基準を新耐震基準、以前を旧耐震基準としています。 新耐震基準で建てられた建築物はその後の震災においても一定の耐震性を備えていることが証明されています。 旧耐震基準で建てられた建物の耐震診断は義務ではありませんが、住宅ローン減税(控除)を受ける際の条件となっていることもあり、売買前に耐震診断を受けて一定の耐震性を備えているかどうかの確認をしておきます。

2-5-3.住宅性能評価を受けた新築住宅であるかどうか

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく住宅性能評価を受けている新築住宅であるかどうかの説明を受けます。
住宅性能評価では構造の安定、火災時の安全、劣化の軽減、維持管理・更新への配慮、温熱環境、空気環境、光・視環境、音環境、高齢者等への配慮、防犯対策などの各項目に対して1~3点の点数をつけていくもので、様々な工法があるなかでその建物の評価を客観的に把握することができます。
住宅性能評価を受けた建物は将来売却する場合などにも役立ちます。

2-6. マンションなど区分所有建物に関する事項

購入する物件がマンションなど区分所有建物である場合に、権利関係や管理組合についてなど説明がされます。

2-6-1. 敷地に関する権利の種類及び内容

マンションについても当然敷地はあります。
重要事項の説明では、区分所有建物の敷地に関する権利の種類とその内容について説明されます。
マンションは専有部分の区分所有権を持つとともに、敷地の所有権も持ちます。建物の敷地を確認するとともに、敷地の所有権について確認しましょう。

特に、分譲マンションであっても、敷地については「所有権」の場合以外に、「賃借権」の場合もあります。 敷地が所有権であれば問題ないのですが、賃借権であれば、地代が発生します。
分譲マンションを購入したという認識でも、敷地の権利が賃借権であれば、地代の支払は必要なので注意しましょう。

2-6-2. 共用部分に関する規約

共用部分とは、マンションの誰々のみが使用するというような性質のものではなく、マンションの住人が共同で使用する部分です。
玄関・廊下・階段・エレベーターといった、住人が共同で使用するのが当然と思われる部分が「法定共用部分」になります。
その他に、本来マンションの一室として使用できるにもかかわらず、規約によりマンションの管理人室として利用するような場合があります。
このような共有部分については、規約で定めているので「規約共用部分」と言います。

共用部分は、管理方法や管理者についてなど管理規約で定められていることが一般的です。
管理規約はマンションの法律のようなものなので、しっかり確認しておくとともに、不明な点があれば質問するようにしましょう。

2-6-3. 専有部分に関する規約

専有部分とは、たとえば101号室のような、マンションの住人が単独で所有し、自分だけで使うことのできる部分です。
しかし、マンションのように共同生活を営むような場合、所有権があるからといって、戸建てのように勝手なことができるわけではありません。

専有部分の用途や利用の制限がある場合にはその規約の説明がされます。
ほとんどの区分所有建物ではペットの飼育を禁止していますが、禁止されるペットの種類や大きさなど決まりがあります。 その他、店舗にしてはいけないなどの使い方のルールや、ピアノ演奏の禁止、リフォームを禁止している場合もあるので確認しておくと良いでしょう。

2-6-4. 専用使用権に関する規約

駐車場やトランクルームなど共用部分に関して特定の区分所有者のみに使用を認める専用使用権の規約に関する説明がされます。

具体的には専用駐車場や専用庭などのことです。 使用する方が決まっている場合には、説明を受けておかないと、うっかり使用してしまいますね。

2-6-5. 修繕積立金や管理費に関する規約

マンションなど区分所有建物では、建物の計画的な維持管理計画のため、区分所有者から管理費や修繕積立金の収集を行います。 蓄えられた積立金は管理組合で管理することになります。
中古マンションを購入する場合は現在の積立がいくらくらいなのかや既に修繕工事が実施されている場合はその内容について確認をすることができます。

規約があるにもかかわらず、積立額が少ないようなケースは、滞納者が多いということになります。 滞納が多いマンションでは、定期的な修繕がとどこおる可能性が高く、資産価値から見ても、お得な物件とはいえません。
中古マンションを購入するようなケースには、特に注意しましょう。

2-6-6. 管理の委託先に関する事項

区分所有建物の管理を管理会社に委託している場合、ここで管理会社の概要について説明を受けます。
どこが管理しているのかを知らなければ、何かあったときに困るのは言うまでもないでしょう。

2-7. 契約条件に関する事項

購入する不動産の、代金や契約の解除に関する事項、損害賠償や受領した金銭の保全措置についてなど契約条件に関する事項の説明を受けます。 特に金銭関係は後にトラブルとなる可能性が高いので注意して説明を受けましょう。

2-7-1. 代金及び交換差金以外に授受される金額

契約時に受領する手付金の額や、固定資産税・都市計画税、その他管理費等売買代金以外に授受される金銭についての説明がされます。 売買代金以外に必要な費用についてここでしっかり確認しておきましょう。

固定資産税・都市計画税に関しては、その年の1月1日の所有者に対して課税されます。 一般的には代金の入金が行われる決済日以降を買主の負担、以前を売主の負担として按分する方法をとります。 その按分方法と固定資産税・都市計画税の総額について説明を受けます。

新築をする場合、固定資産税や都市計画税は、更地の場合と土地の上に住宅がのっている場合や地目が田や畑の場合と宅地の場合とで金額に大きな差があるので注意が必要です。

2-7-2. 契約の解除に関する事項

契約の解除に関する事項について説明を受けます。
原則として、一度交わした契約は解除することができません。しかし、例外もあります。

一般的に買主は契約時に手付金を支払いますが、手付金を入金している場合、買主側からは手付金を放棄することによって、 また売主側からは手付金を倍額を支払うことによって契約を解除することができます(手付解除)。
この手付解除の期限は、相手側が履行の着手をするまでと定められており、履行の着手とは例えば、売主からの着手金、中間金の支払いなどを指します。

この履行の着手の概念は必ずしも明確ではなく、判例では「債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識し得るような形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指す」(昭和40年11月24日最高裁判決)となっています。

相手方が履行の着手をするなど手付解除の期限を過ぎた後の契約解除は違約金や損害賠償金を支払わなければならない可能性があります。

その他にも、契約などで定めた解除方法があれば、どういう場合に解除できるのか、その手続や効果を確認しておきましょう。

参考:契約解除について

2-7-3. 損害賠償額の予定または違約金に関する事項

契約に違反したときの損害賠償や違約金に関する説明を受けます。
なぜ、損害賠償額などを予定するかというと、契約違反があっても損害額を証明することは難しいのです。

そこで、契約内容に違反した場合は売買代金の20%を損害賠償とするなど取り決めをします。 損害賠償額や違約金の額は一般の売主であれば自由に決められますが、売主が宅地建物取引業者の場合には、売買代金の20%が上限となっています。

ここで定めた損害賠償額の予定額は、実際の損害額が予定額を上回った場合、その差額を請求することはできませんが、下回った場合にはここで定めた予定額を請求することができます。

2-7-4. 手付金等の保全措置の概要

手付金等保全措置とは、手付金や中間金などの、契約日から物件引渡しまでに支払われたお金を対象にして、 万が一不動産業者が倒産しても返せるようにする仕組みです。

売主が宅地建物取引業者の場合には、手付金等の額が一定額を超えると保全措置を講じる義務があります。 一定の額とは ①完成物件の場合は売買代金の10%または1000万円を超える場合 ②未完成物件の場合は売買代金の5%または1000万円を超える場合となっています。

保全措置とは、宅地建物取引業者が倒産した場合でも手付金が買主に戻る措置で、

  • ・保証措置(保証委託契約)
  • ・保険措置(保証保険契約)
  • ・保管措置(手付金等寄託契約)

の3つの方法を金融機関等に依頼することになります。

2-7-5. 支払金または預り金の保全措置の概要

不動産の取引では、売買代金等の支払い以外にもさまざまなお金が動きます。 例えば新築のための確認申請費用や地盤調査費用など事前に売主から徴収することがありますが、そうした費用の保全措置の有無やその内容についての説明を受けます。 手付金等と違い保全措置を講じるか否かは任意となっています。

尚、①受領する金額が50万円未満の場合 ②手付金等の保全措置が講じられている場合 ③登記以降に受領するもの④報酬については、支払金または預り金には含まれません。

2-8. その他の事項

・金銭の貸借のあっせん

金銭の貸借のあっせんとは、不動産業者が買主のために購入資金を借りる金融機関を紹介することです。

購入する不動産会社等から銀行の住宅ローンを紹介された場合にはその内容について説明することになっています。住宅ローンの融資先、金利、借入額などについて説明がされます。

買主が売買代金を住宅ローン等金融機関からの融資を利用することを前提に売買契約を締結し、融資の一部または全部について承認が得られなかった場合には、その売買契約を無条件で白紙解約するというローン特約をつける場合には、その契約解除の期限についてもここで説明を受けます。

ローン特約をつけるときは、①金融機関 ②融資金額 ③ローン特約による契約解除の期限 ④融資不承認の場合の対応策などを取り決めます。 ここで定めた契約解除の期限を超えて住宅ローンの審査が長引きそうな場合には契約解除の期限を延長してもらえる場合もあります。

2-8-2. 瑕疵担保責任の履行に関する措置に関して

瑕疵担保責任とは、取引する不動産に見えない欠陥(瑕疵)などがあった場合に売主が買主に対して負う責任のことです。ここでは売主が講ずる瑕疵担保責任の履行に関する措置について説明がされます。

瑕疵担保責任の履行に関する措置とは、物件に瑕疵があった場合に売主が負うべき責任と負担に関して、売主が倒産してしまった場合に備えて措置をとっているかどうかの説明を受けます。 特に新築住宅の場合には住宅瑕疵保険への加入が義務付けられていますが、土地や中古マンションなどの場合には瑕疵担保責任の履行に関する措置を講じていない場合もあります。

尚、瑕疵担保責任の履行に関する措置を講じていない場合でもそれがイコール瑕疵担保責任を負わないという意味ではありません。

参考:瑕疵担保責任について

2-8-3. 割賦販売に関する事項

割賦販売とは、商品を購入するときに数回に分けて支払う販売方法のことです。 携帯電話やテレビの購入などの際には割賦販売を行うことが一般的ですが、不動産取引において割賦販売を行うことはほとんどないといって良いでしょう。

不動産の取引では手付金、中間金、内金といった名目で複数回に分けてお金を入金することがありますが、これは割賦販売に該当しません。また住宅ローンの支払いも割賦販売ではありません。

2-8-4. 供託所に関する事項

宅地建物取引業者は営業保証金を供託するか、宅地建物取引業保証協会に加入することが義務付けられています。 これにより、現金を支払ったものの、宅地建物取引業者が建物建築中に倒産してしまった場合など、保証金の還付を受けることができます。 ここでは営業保証金を供託している供託所や宅地建物取引業保証協会の所在地および供託所の所在しについて説明を受けます。

3. 最後に

いかがでしたか?

重要事項説明書には、さまざまなポイントがあります。 しかし、まったく理解できないというような内容は少なかったと思います。

しっかりとポイントを押さえて、重要事項の説明を受ければ大丈夫です。 少なくとも契約後の大きなトラブルは避けられるでしょう。

ところが、ポイントを押さえたつもりでも、いざ説明を聞くと緊張とプレッシャーで、結局、何がなんだか分からずに終わる方も少なくないかもしれません。

そこで、不動産業者から、あらかじめ重要事項説明書のコピーをもらっておくことをおすすめします。

自分なりにポイントを確認しておくのです。 分からないことがあれば当日に確認すればOKです!

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