マンションの売却を考えるにあたり、「いつまでに売却しなければならない」という期限がある人もいればそうでない人もいるでしょう。
どちらの場合でも、マンションを売却するには最初に売却期間を決めて、それに沿った売却計画を立てていくことが大切です。
今回は中古マンション売却の際の売却期間についてお伝えします。
マンション売却を進める際に大切なのが、どのくらいの期間で売却したいかを計画することです。
マンション売却は基本的に、売れなければ値下げしていくもので、売り始めは強気の値段設定を、強気の値段設定で売れなければ周辺相場と同じくらいの価格で、 最終的に売りたい期限の1~2カ月前になったら相場より多少安くても売れる金額にまで値下げするといった段階的な計画を立てる必要があります。
それでは、マンションを売却するにおいて適正な期間というものはあるのでしょうか?
これは、全ての人に共通で適正な期間というものはなく、自分が退去する時期や希望価格(相場より高く売りたいなど)によって千差万別です。
とはいえ、高く売りたいのであれば期間に余裕があった方が、希望価格で売り出せる期間が長くなりますが、あまり長くしてしまうと「売れ残り感」が出てしまうなど弊害もあります。
マンション購入を考えている人の中には、長く一つのエリアに絞って物件情報を探し続けている人もいます。 こうした人から見ると、半年前も、1年前も同じ価格で売り出されている物件は「なにか理由があるから売れないんだな」と思われてしまう可能性があります。
また、実際にマンションの販売活動を行うのは不動産業者ですが、不動産業者も長く売れない物件に力を割いているわけにはいきません。 どうしても長く売れ残っていると、「頑張っても売れない物件」と思われてしまい、また販売を続けている間に他の良い物件が表われてそちらに力を入れていくようになってしまいます。
上記のような理由もあり、基本的には売却期間を3か月~6か月を基準に考えることが多くなっています。
3か月~6か月というのは、不動産会社と結ぶ媒介契約が基本的に3か月更新であるという事情もあります。
専任媒介契約や専属専任媒介契約であれば3か月経過すると契約が切れてしまいます。
ここで、契約を継続するか、場合によっては他の不動産会社と媒介契約を結ぶか選ぶことができるのです。
全体の期間を6か月として、最初の3か月を強気の値段設定で、残りの3か月を相場~相場以下の価格設定といった形にすると良いでしょう。
不動産会社との媒介契約には一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒介契約の3つがあります。
大きな違いとして、一般媒介契約は同時に複数の不動産会社と媒介契約を締結することができますが専任媒介契約や専属専任媒介契約は1つの不動産会社としか媒介契約を締結することができません。
また、専任媒介契約や専属専任媒介契約は活動報告義務や公的な不動産情報ネットワーク(レインズ)への登録義務があります。
一般的に専任媒介契約や専属専任媒介契約の方が不動産会社は頑張って販売活動をしてくれますが、一般媒介契約の方が複数の不動産会社が販売活動を行ってくれ、 結果として多くの方の目に物件情報を伝えることができるといったこともあります。
それぞれのメリット、デメリットを把握した上でどちらが良いか選ぶと良いでしょう。
参考:不動産会社に売却を依頼する時に結ぶ「媒介契約」の種類や違いに注意しよう
最初に売却期間を決めたら、積極価格、相場価格、売却価格の3つの価格を決めると良いでしょう。
積極価格は、「周りの相場より少し高いけれどこの価格で売りたい」という価格で、相場価格は周りの相場と同じ価格、売却価格は「最低限この価格で売らなければならない」という価格です。
例えば、売却期間を1年と定めた場合最初の3カ月は積極価格で、次の6カ月間を相場価格で、最後の3カ月を売却価格で販売するといった計画を立てます。
なお、それぞれの価格を決める際には住宅ローンの残債に気を付ける必要があります。
住宅ローンを組んでマンションを購入している場合、通常そのマンションは銀行に担保として提供しており、抵当権が設定されています。 そして、マンションの売却にあたり住宅ローンの残債を完済しなければこの抵当権を抹消することができず、抹消できなければ売却することができません。
例えば、2,000万円の住宅ローン残債がある場合で、マンションが1,600万円で売れた場合には差額の400万円を現金で用意する必要があるのです。
また、マンション売却時には抵当権抹消費用や住宅ローンを一括返済することによるペナルティなどもある場合があるため注意が必要です。
上記「売却価格」は最低限この条件を満たす必要があります。
参考:
マンション売却の相場は築年数でどのくらい変動する
参考:
マンション売却の相場をエリア・築年数別に紹介!2022年最新版
参考:
住宅ローンの残債があるマンションは売却できるのか?
ここまで売却期間について話をしてきましたが、最初にお伝えしたように売却期間に正解はなく、売れる平均期間を気にしすぎることにあまり意味はありません。
高く売れるなら売りたいという場合には売却期間を長くしたり、とにかく早く売りたい場合には価格を早く下げて売却したりする必要があるでしょう。
また、人の多く動く時期(1月~3月や、7月~9月)に売り出しを開始するなど、売り出しを開始する時期を工夫したり、また売れていなければ人の多く動く時期に大幅な値下げをしたりといった方法も考えられます。
マンションをすぐに売らなければいけない事情があっても、仲介ではいつ売れるか分かりません。 そこで、不動産会社に直接買い取ってもらう買取という手を選ぶのも一つの方法です。
買取は、仲介と比べると5割~8割程度の値段で売却となってしまうこともありますが不動産会社が納得すればすぐに売買契約を締結できること、即金で現金を貰えることといったメリットがあります。
また、仲介にはある瑕疵担保責任を考えなくて良い点もメリットです。
上記でお伝えしているように不動産を売却する方法には不動産会社に依頼して個人の買主を探してもらう仲介という方法と、不動産会社に直接マンションを買い取ってもらう買取という方法があります。
仲介ではそのマンションを購入したいと考える人がいなければならず、大幅な値引きをしても決まらないこともあります。 また、一度決まった場合でも契約後の住宅ローン審査で不承認となり解約しなければならない可能性もあり、ぎりぎりまで引越しのタイミングを決めることができません。
一方、買取は仲介と比べると安い価格での売却となってしまうことが多いですが売却の時期を明確に決められ、お金も現金ですぐ貰えるというメリットがあります。
最初に売却期間を設定しても、もちろん期間内に売れないこともあります。その理由にはどういったことがあるのでしょうか?
マンションが売れない場合の多くが、価格の問題です。
不動産はよほど問題がなければ価格を安くすれば売れてしまいます。
しかし、中古ではなく、新築でマンションを購入した場合などは特に購入価格と売却価格の差は大きく、売主としては売却価格を高く見積もりがちです。
「高く売りたい」気持ちも分かりますが、不動産会社などプロの言葉を素直に聞き入れることも大切です(誘導されないことも大切ですが)。
また、不動産会社に問題があることもあります。
不動産会社にもファミリータイプのマンションの売却に強かったり、特定のエリアに強かったりと得意不得意があります。
ご自分の売却物件が媒介契約を結んだ不動産会社の得意なものと違ったが故にうまく売れないという可能性もあるでしょう。
また、上記のような理由であればまだ許せるかもしれませんが、不動産会社に悪意がある場合もあるため注意が必要です。 例えば、物件価格が低く、成約となっても仲介手数料が安いといった理由で熱心に活動してくれなかったり、両手仲介という、 売主側にも買主側にも仲介業者としてつくことで2倍の仲介手数料を貰うために他の不動産会社をシャットアウトする囲い込みをしたりといったことです。
こうした事実が発覚したら、すぐにでも他の不動産会社を探すと良いでしょう。
不動産会社から見て、不動産を売却する際の仲介手数料の入り方には大きく片手仲介と両手仲介の2つがあります。 片手仲介は、売主と買主それぞれに不動産会社がつく方法で、1つの売買契約に売主と買主、売主側の不動産会社と買主側の不動産会社の計4者が関わります。
このため、売主側の不動産会社も、買主側の不動産会社も貰える仲介手数料の上限は法律で定められた3%+6万円+消費税までとなっています。
一方、両手仲介は売主と買主の仲介を1社で引き受ける方法で、1つの売買契約に売主と買主、売主と買主の仲介につく不動産会社の計3者が関わります。
このため、不動産会社は法律で定められた仲介手数料の上限である3%+6万円+消費税を売主と買主それぞれから受け取ることができ、片手仲介と比べると単純に2倍の仲介手数料を受け取れることになります。
このため、不動産会社は片手仲介より両手仲介を優先するのが一般的で、悪質な不動産会社になると他の不動産会社に物件情報を流さず、 自分だけで売主と買主を探す「囲い込み」や、その物件がすでに売れたものとして他の不動産会社の仲介を入らなくする「売り止め」といった手法を取る会社も存在します。
仲介手数料は不動産会社側の問題なので、売主にとっては片手仲介で両手仲介でもどちらでも良いことです。
また、自分自身に問題があることもあります。
例えば、マンションの購入を検討する方には必ず内覧をさせますが、内覧の際にも部屋が汚い、内覧出来る時間がかなり限定的で案内をしづらいといった理由や、 業者のアドバイスに一切耳を貸さないといったことが考えられます。
マンションの売却には、引っ越してから売り出す方法と売却が決まってから引っ越す方法の2通りがあります。
引っ越してから売り出す場合、購入希望者はいつでも物件を見学でき、また生活感を感じないなかでの見学ということもあり住みながらの売却活動より一般的に成約率は高くなるでしょう。
ただし、マンションを住宅ローンを組んで購入していた場合には、新居の家賃やローンと一緒に元のマンションのローンも支払う必要があり、二重に支払わなければならなくなってしまいます。
また、売却が決まってから引っ越す方法では家賃やローンの二重払いを防ぐことができますが、毎週土日、見学会のために時間を空けるなどしなければならず、 またモノがある中での見学は購入者にとっても元の居住者の生活感を感じてしまい、うまく決まらないことにつながりかねません。
また、売却が決まったら急いで引越し先を決めなければならないという点もあります。
上記2つのうちどちらを選ぶのかも売却期間を決めるにあたって大切なことです。
売却がうまく進まない場合には業者を変えることも考えるべきですが、こうした業者を見直すタイミングにはどのような基準があるでしょうか?
すでにお伝えしたように、媒介契約は基本的に3か月更新となっているため、3か月経ったらそのまま継続するのか、一旦契約を打ち切りにするのか選ぶことができます。
契約の段階で、「3か月売れなければ他の業者を検討する」と決めておくのも良いでしょう。
また、販売期間中は不動産会社から販売活動の報告を受けることになりますが、そうした報告がちゃんとしていたかどうかを見極めることも大切です。
報告がなければちゃんと活動していなかったのかもしれませんし、質の良い報告でなければ質の良い活動ができていない不動産会社なのかもしれません。
マンションが売れなければ何らかの改善をする必要がありますが、ただ「値引き」だけを進めてくる不動産会社では良い不動産会社とは言えません。
値下げ以外にフローリングをもっときれいにしてほしいといったことや、見学会の日や時間帯をいつにすれば売れるかもしれない、といった提案があると良いでしょう。
値下げの提案だとしてもどのような理由で最初の価格設定をして、現在の価格では売れないため値下げをするといった納得できる理由があれば良い不動産会社だと言えます。
また、単に売れないからといって業者を変更するだけでは売れるようにならないことも多くあります。
そもそも、景気が急速に悪化して不動産市況が悪化していれば不動産会社を変更したところで意味がありません。
不動産市況が悪化している時に安く購入する人もいるので思い切った値下げをするか、または不動産市況が良くなるまで待つという選択も良いでしょう。
また、そもそも相場以上の金額で売ろうとしている場合、いくら不動産会社に実力があったとしても難しい面があります。 実力のある不動産業者程そうした物件を無理矢理売りつけることはしません。後でトラブルになる可能性もあるからです。
適切な価格設定は難しいですが、自分でも相場を調べ、また複数のプロ(不動産会社)の意見を素直に聞き入れて適正な相場感を把握しておくようにしましょう。
近隣や同じマンション内から売出し物件が出てくると競合比較になってしまいます。 上記をきちんと指摘、適切なアドバイスが出来ない業者は見直す必要あるでしょう。
また、売主が喜ぶことしか言わず、都合の悪いことは隠す担当や、ただのイエスマンの担当なども良い担当者とは言えません。
ここまで、マンションの売却期間についてお伝えしてきました。 マンションの売却期間を最初に決めることで、積極価格や相場価格、売却価格等で販売する時期を決めることができ、計画的に値下げをしていくことができます。
それでもマンションの売却が上手くいかない場合には他の不動産会社に依頼する方法や、場合によっては仲介ではなく買取を選ぶなど臨機応援な対応をしていくことが大切です。