不動産売却のスタートは、必要書類準備のスタートでもあるといえます。
不動産売買は大きなお金の動く取引であると同時に、いくつもの法律行為が絡むことから、売主から買主に対して引継ぐ資料や証となる書面などを入手・準備しておく必要があります。
売却を依頼する時は、物件の状況を把握するための書類が必要になります。また、契約や引渡しの際には、売主自身に関連する書類と物件に関する書類があります。それぞれのポイントについて解説します。
購入時に取り交わした売買契約書や重要事項説明書には、現状では知り得ない当時の売主と取り交わした約定などが明記されている場合もありますので、不動産会社に売却を依頼する際に、準備しておくと良いでしょう。加えて、建売住宅やマンションなどのパンフレットがあれば、併せて提示するようにしましょう。
主にに一戸建てや土地の売買において「どの部分が売却対象なのか」を明確にするための書類で、隣地との境界トラブルがない状態で買主へ引渡すために必要なものでもあります。そのため、境界が不明確な場合は、対象物件に隣接したすべての土地所有者の了解を得た測量図を作成することになります。
これらは一戸建ての売買において必要な書類で、対象物件が建築基準法等に則って施工されたかどうかの証明となり、買主が住宅ローンを利用する際に、金融機関への提出書類になります。検査済証は、原則として現地で行われる検査によって基準に適合している事が確認された後、発行されます。
不動産の所有者には、固定資産税という税金が課せられます。これらの書類を見て物件の評価や固定資産税の税額を確認します。また、登記費用の一部である「登録免許税」の計算の基となる課税標準額を確認するためにも必要となります。
本人である事を確認するために必要です。免許証やパスポートなどが適切でしょう。
契約や引渡しの際、売主本人の実印が必要です。もし共有者がいる場合は、共有者全員の実印が必要になります。ちなみに、認め印の使用はできません。
印鑑証明書は、登記手続きを行う際に必要です。注意点として、印鑑証明書の有効期間は3ヶ月ですので、3ヶ月以内に発行されたものを用意します。
売主の現住所と登記上の住所が異なる場合、住民票が必要になります。住民票の有効期間も3ヶ月ですので、しっかり確認しましょう。
売主に住宅ローンの残債がある場合、抵当権抹消登記手続きが必要となるため、ローン残高証明書(または返済予定表)と抵当権抹消書類が必要になります。売買契約が完了したら、不動産会社と司法書士の協力を仰ぎ、なるべく早期に準備しておいた方が良いでしょう。
手付金・残代金・精算金を受取った時に、買主に渡します。通常、不動産会社で書面を用意してくれます。
買主が残金や精算金を振込みによって支払うために必要です。
残金決済時に、支払いなど出金を要する場合に必要となります。
一般に「権利証」と呼ばれるもので、現在は登記識別情報という文字情報による書面に代わっています。これは、登記名義人がその不動産の真正な所有者であることを証明する書面で、法務局から登記名義人に対して交付されます。売主は、不動産の売却と同時に登記識別情報を買主の代理人である司法書士に渡し、売主から買主への所有権移転登記がなされます。登記識別情報は、不動産売買において最重要書類と言ってもよい書類です。
もし権利証を失くしてしまった場合は「権利証を失くした時に不動産売却をする方法」を参考にしてみましょう。
これらは一戸建てや土地の売買において必要な書類ですが、公的な証明書ではないため、前述の建築確認済証と比べると重要度の低い書類に見えます。ただ、買主がどのように設計・施工されたかを知っておくことで、将来のリフォームや、維持管理していく上で必要な書類と言えるでしょう。
東日本大震災の発生および、近い将来発生するであろう大地震への懸念から、建物の耐震性については注目が集まっています。売却物件が新耐震基準が導入される以前の建物であれば、この書類が求められる可能性があります。なお、これらが無ければ売却できない訳ではありませんが、引渡し後のトラブルを未然に回避するためにも、必要であると考えるべきです。また、将来の建替えを考慮しての地盤調査報告書の提出、買主の住宅ローン条件が拡充される住宅性能評価書、既存住宅性能評価書等、築年数が古い建物のアスベスト使用調査報告書等も提出できれば、なお万全でしょう。
マンションの管理規約書・使用細則の書類はマンションを売却する際に必要となります。マンションでは1棟の建物に多くの世帯が居住していますので、所有・居住するにあたり細かい規約が定められています。売買取引において売主が必ず提出すべき書類ではないのですが、どのような管理をされているか、共用部分の使用にあたってどのような決め事があるかなどが定められていますので、これから住む買主にとっては重要かつ必須の書類になります。加えて、設備の仕様説明書や管理費、修繕積立金、管理組合費、町内会費、施設使用料等の維持費等を明記した書類も、同様に準備しておきましょう。