空き家が問題となっている4つの問題点

今、日本では「空き家」の増加が社会問題となっています。
しかし、なぜ空き家が問題視されているか良く分かっていない方もいると思います。

そこで今回は、空き家が社会問題となっている具体的な理由を4つに分けて解説していきます。

目次

1.犯罪リスクの上昇
☞空き家の数
☞犯罪リスク
☞犯罪リスクへの対策

2.災害リスクの上昇
☞耐震基準
☞実際の災害
☞災害への対策

3.資産価値の低下
☞資産価値とは?
☞物件自体の資産価値
・空き家は放置すると劣化が早まるから
・空き家管理をしないことでどんどん売却金額が下がるから
・売却金額が下がると売却に積極的ではなくなるから
・売却や賃貸するときには手間がかかるから
☞そのエリアの資産価値低下
・景観阻害による資産価値の低下
・空き家が安く売り出されることによる資産価値の低下

4.土地の有効活用ができない

5.まとめ

1.犯罪リスクの上昇

犯罪
まず、空き家が問題となっている1つ目の理由は、空き家が増えることによって犯罪リスクが上昇することです。

ここでいう犯罪とは、具体的には以下のような犯罪になります。

・不法占拠

・放火

・盗難

このような犯罪が増えていくと近隣住民にも迷惑がかかるので、空き家は問題視されているのです。

空き家の数

前項の犯罪リスクの話の前に、そもそも今日本で空き家の数がどの程度あるかを解説します。
空き家の数は総務省統計局※1が集計しており、5年に1度発表するため最新データは平成25年となっています。

平成25年時点のデータを見ると、10月1日における日本の空き家率は13.5%となっています。
日本の住宅数が6,063万戸なので、そのうちの13.5%ということは空き家は800万戸を超えているという計算になります。

また、前回調査した平成25年からは70万戸ほど増え、比率も0.4%上がっています。

以下が日本の総住宅数と空き家率の推移になります。

・昭和48年:総住宅数3,106万戸、空き家率5.5%(約170万戸)

・昭和53年:総住宅数3,545万戸、空き家率7.6%(約270万戸)

・昭和58年:総住宅数3,861万戸、空き家率8.6%(約332万戸)

・昭和63年:総住宅数4,201万戸、空き家率9.4%(約395万戸)

・平成5年 :総住宅数4,588万戸、空き家率9.8%(約450万戸)

・平成10年:総住宅数5,025万戸、空き家率11.5%(約577万戸)

・平成15年:総住宅数5,389万戸、空き家率12.2%(約657万戸)

・平成20年:総住宅数5,759万戸、空き家率13.1%(約754万戸)

・平成25年:総住宅数6,063万戸、空室率13.5%(約820万戸)

上記のように、平成5年と比較すると空き家の数は1.8倍以上になっていることが分かると思います。

※1総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/topics/topi861.htm

犯罪リスク

平成25年時点でも800万戸を超える数の空き家があるということは、単純に考えて人が住んでいない家が800万戸以上あるということです。
人が住んでいなければ、空き巣に入ったり不法占拠したりされるリスクが上がります。
また、人が住んでいなく建物がどんどん劣化していくと、放火されるというリスクも高まるのです。

その家だけのリスクが高まるならまだしも、空き家が原因で近隣住宅までリスクが高まる可能性があるので、空き家が増えることが問題視されているというワケです。

犯罪リスクへの対策

このような犯罪リスクへの対策としては、きちんと空き家管理することです。

空き家管理とは、具体的には以下のようなことを指します。

・定期的な掃除や換気

・水まわりの通水

・庭や共用部の手入れ

・郵便物の処理

建物全般にいえることですが、建物は人が住んでいない方が劣化します。
そのため、最低月に1回程度は上記の空き家管理が必要になります。
定期的に掃除や換気をしないとカビが生えるリスクが上がりますし、通水しないと臭いがこもります。
また、庭や共用部の手入れや郵便物の処理をしないと、「空き家」だと判明しやすくなってしまうため犯罪リスクがさらに上がるのです。

遠方に空き家ある場合には、空室管理を不動産会社に依頼することもできます。
ただし、不動産会社に空き家管理を依頼すると、月額1万円程度の費用がかかる点はデメリットになります。

2.災害リスクの上昇

倒壊
空き家が社会問題となっている2つ目の理由は、空き家が増えることによって災害リスクが上昇することです。

ここでいう災害とは、具体的には以下のような災害になります。

・建物の倒壊

・建物の破損などによる傷害

災害リスクは、犯罪リスクと同様に近隣住民にも被害が及ぶ可能性があります。

耐震基準

災害リスクに関しては、特に「旧耐震」と呼ばれている古い耐震基準の空き家は注意が必要です。
「旧耐震」は、今の法律ではなく地震に対して緩い基準のときに建てられた建物のことです。

建築基準法が1981年5月末日に改正されたため、その日を境に「旧耐震」と「新耐震」に分かれます。
つまり、建築確認申請が1981年5月末日より前の建物は旧耐震物件になるということです。

旧耐震物件は、建て替える義務などはないため、世の中の建物の中に旧耐震建物は意外と多いです。
東京カンテイが出典している資料※2によると、2011年時点でも全国で36,662棟、1,469,423戸が旧耐震物件になります。
特に、空き家は相続物件も多いので、古い建築物が多いという理由で、旧耐震物件が多い可能性が高いです。

※2東京カンテイ
http://www.fukukan.net/paper/1112/topic_tokyo.html

実際の災害

仮に、新耐震だったとしても、築年数が古いと建物は劣化してきます。
また、先ほどいった「空き家管理」をしっかりしていないと、建物が劣化するスピードは上がっていってしまいます。
そのため、強風や積雪によって建物が倒壊したり、倒壊とまではいかなくても一部破損したりすることは十分に考えられるのです。
たとえば、積雪によって落ちてきた屋根の一部が通行人に当たれば、ケガをしてしまう可能性もあります。

このように、災害によって建物が倒壊するリスクだけでなく、人的被害の可能性もあるので空き家は問題視されているのです。

災害への対策

災害への対策は、まず上述した空き家管理をすることです。
空き家管理をすることで、建物の劣化を遅らせることができます。
後は、空き家とはいえ火災保険には加入しておくことをおススメします。

火災保険は単純な火災だけでなく、以下のような災害にも対応できます。

・水濡れ

・落下や飛来による建物破損

・盗難被害

・個人賠償責任保険

・水災

・風災

・雪災

上記はプランによっても異なるので、エリアや自分のリスクヘッジしたい範囲に合わせて検討しましょう。
ただ、保険会社によっては、空き家は火災保険への加入ができない場合もあります。
そのため、いくつかの保険会社へ打診する必要があります。

3.資産価値の低下

低下

空き家が社会問題となっている3つ目の理由は、空き家が増えることによる資産価値の低下です。

資産価値の低下が問題とは、具体的には以下のようなことです。

・物件自体の資産価値定価

・そのエリアの資産価値定価

上記2点で、特に後者の「そのエリアの資産価値定価」は、所有者以外にも被害が及ぶため問題視されています。

資産価値とは?

物件とエリアの資産価値低下の話の前に、そもそも資産価値とは何か?の話をします。

ここでいう「資産価値」とは、「リセールバリュー」のことで、もっと平たく言うと「中古で高く売却できるか?」ということです。
物件自体のリセールバリューは分かりやすいと思いますが、エリアのリセールバリューとは、そのエリア全体の相場価格ということです。
つまり、空き家があることによって、そのエリア全体の相場価格が下がるリスクもあるということです。

物件自体の資産価値

空き家問題が多く、その物件自体の資産価値が低下する理由は以下の通りです。

・空き家は放置すると劣化が早まるから

・空室管理をしないことでどんどん売却金額が下がるから

・売却金額が下がると売却に積極的ではなくなるから

・売却や賃貸するときには手間がかかるから

上記4点の理由によって、空き家にすることで増々資産価値が落ちていってしまうのです。

注意するべき点は、資産価値が落ちること自体が空き家問題ではないという点です。
なぜなら、物件の資産価値が落ちただけでは、所有者自身が損をするだけだからです。

問題は、資産価値が落ちることにより空き家が増え、それにより上述した「犯罪リスク」や「災害リスク」がさらに増すということです。

空き家は放置すると劣化が早まるから

これは、先ほどいった通りです。
空き家にすると放置することも多く、結果的に建物の劣化が早まります。
物件の資産価値は「建物状況」が大きく左右するので、空き家が多いほど資産価値の低い建物が増えていく傾向にあるのです。

空き家管理をしないことでどんどん売却金額が下がるから

資産価値が低い建物が増えるということは、売却金額が下がっている建物が増えていくということです。
そのような物件に空き家管理の費用を充てたくはないので、さらに売却金額が下がるという悪循環が発生します。

売却金額が下がると売却に積極的ではなくなるから

また、売却金額が下がると、売却に積極的ではなくなります。
たとえば、一戸建てを売却するときには、木造一戸建ての場合には築20年~25年で建物査定金額は0円になることが多いです。

そうなると、空き家管理をする価値がなくなり、今売却しても10年後売却しても、大事なのは「土地の価値」になります。
土地の価値は周辺相場金額で判断されるので、空き家を放置しても問題ないのです。

そのため、売却金額が下がり売却意思が低下すると、さらに空き家が増えるという事態を引き起こしてしまいます。

売却や賃貸するときには手間がかかるから

不動産を売却するときや賃貸するときなどには非常に手間がかかります。

購入検討者や賃借人を募集して接客するのは不動産会社ですが、所有者も以下のような手間があります。

・内覧(物件)前の掃除など出迎え準備

・必須ではないが売買時の内覧は原則立ち会う

・契約などに伴う事務作業

これらの手間を考えると、空き家を放置しがちです。
特に、固定資産税も優遇されていて、大した負担になっていたときは、「一旦所有して後で活用方法は考えよう」と思いがちです。

そのエリアの資産価値低下

前項のように、空き家は放置されがちで、放置されることで物件自体の価値が下がり、その結果空き家の数が増えるという問題を引き起こします。

さらに、1つの空き家がどんどん劣化すると、そのエリア全体の資産価値にも影響を及ぼします。

その理由は以下の通りです。

・景観が阻害されて購入検討者の印象が悪くなるから

・空き家は安く売り出されるケースが多いから

景観阻害による資産価値の低下

ボロボロの空き家などがあると、それだけで購入検討者の印象が悪くなります。
資産価値は、需給バランスによって決まるので、購入検討者の印象が悪くなると需要が低下してしまいます。
需要が低下するということは、結果的に資産価値の低下につながるのです。

そのため、先ほどいった空室管理を行い、景観を阻害しないような状態に空き家を保つ必要があるのです。

空き家が安く売り出されることによる資産価値の低下

エリアの相場価格は、上述した需給バランス以外にも「直近で成約した金額」でも左右されます。
上述した通り、空き家はどんどん資産価値が落ちていくので、空き家を売り出すときには低い金額で売り出されることもあります。
そうなると、直近での成約金額が低くなってしまい、結果的にそのエリアの不動産相場金額も落ちてしまいます。

また、空き家は相続したケースも多いので、住宅ローンが残っていないケースも多いです。
そのため、売却金額に大きなこだわりを持っていないことも多く、「金額」より「売却スピード」を優先するケースが多いです。
そうなると、増々売却金額は落ちてしまい、結果的にエリアの相場金額の低下を招いてしまいます。

4.土地の有効活用ができない

土地
空き家が社会問題となる4つ目の理由は、空き家が増えることにより、土地の有効活用ができないということです。

土地の有効活用とは、具体的には以下のようなことを指します。

・商業地に向いている土地を放置

・公共施設に向いている土地を放置

・もっと規模の大きな建物を建築できる

上記は、特に大きな土地を保有している空き家にいえることです。
空き家の築年数が古ければ古いほど、その空き家を建築したときと今の状況は異なります。
そのため、本来であれば商業地や公共施設にしたい土地も、空き家があることによって出来ないという可能性もあります。

また、今の建築基準法に照らし合わせると、一戸建てではなく数十戸のマンションが建てられる場合もあります。
そうなると、そのエリアの人口増加のチャンスをつぶし、結果的に税収アップや街の活性化につながりません。
つまり、行政としてもマイナス面が多いということです。

1つ1つの空き家で考えると小さなことですが、日本にある800万戸超の空き家で考えると、非常に大きな損害になっています。

5.まとめ

空き家問題は以下の点を覚えておきましょう。

・空き家を放置することで放火や盗難などの犯罪リスクが上昇する

・空き家は劣化しやすいため建物倒壊リスクなどが上昇する

・空き家の資産価値低下によりエリア一帯の資産価値も低下する恐れがある

・空き家があることによって土地の有効活用ができなくなる

いずれも、その物件だけではなく近隣住民にも被害が及ぶという点が問題視されているのです。

- 2017年05月18日