なぜおとり物件がなくならないのか?チェックの仕方を学んで騙されないようにしよう

「おとり物件」

この言葉を聞いたことがある方は多いと思いますし、意味を何となく知っている方も多いと思います。そのくらい認知度が高く、未だに不動産業界ではおとり物件はあるというのが現実です。しかし、インターネットなどで情報がすぐに得られるようになった現在、おとり物件を確認する方法もあります。また、おとり物件は主に賃貸物件にあり、売買物件にはほとんど見られません。

今回はそんな「おとり物件」がテーマになります。

目次

1.おとり物件とは?
☞1-1実際に取引する気がないケース
☞1-2既に成約しているケース

2.おとり物件を見極めよう
☞2-1ネット検索を活用
☞2-2相場を調べる
☞2-3取引様態を見る
☞2-4定期借家契約かどうかをチェックする。
☞2-5現地待ち合わせで内見が出来るか

3.おとり物件がなくならない理由
☞3-1集客が必要だから
☞3-2営業マンが売上を上げたいから
☞3-3他社がおとり広告を行っているから
☞3-4おとり広告を見分けるのは難しいから

4.分譲はおとり広告が少ない?
☞4-1高額だから購入者が気にしやすい
☞4-2来訪者のクレームが大きい

5.まとめ

1.おとり物件とは?

悪徳商法おとり物件とは、実在しない物件を宣伝して、集客を図る事です。簡単に言うと、目玉住戸を作ってお客さんを呼んでおき、いざ来店してみると「先ほど成約した」などと言い、別の部屋に誘導することです。では、具体的にどういうケースがあるかを見ていきましょう。

1-1実際に取引する気がないケース

賃貸管理会社Z社はマンションオーナーのAさんから1部屋を月々7万円で借り上げました。その部屋の家賃相場は大体月10案円程度です。しかしZ社はその部屋を月々6万円の家賃と掲載しました。その広告を見て来訪する人や、問い合わせをする人が増えましたが、「近隣住民に問題がある」「事故物件です」など言訳を付けて断っていました。その後に違う部屋を薦めるという作戦です。それでも住みたいという人には、内見に行く前に「実は今まさに内見に行っている人がいて決まりそう」と嘘をつき諦めさせています。月々7万円で効率の良い広告代わりにしている例です。

1-2既に成約しているケース

例えば、オーナーの都合で極端に安い家賃で部屋を貸し出せたときです。不動産会社からしたら、家賃が安いため広告には出し続けたい。そのため、成約した後でも広告を掲載し続け、その部屋目当ての方が来訪した時には「先ほど決まってしまいました」と言い、別の物件を薦めるというパターンです。

このケースは、オーナーから「成約しているのにまだ掲載されているのは何故か?」と指摘が入る場合もあるので、そう長い期間は出来ません。ただ、ネット広告などをイチイチ確認しない高齢のオーナーの時などは、このようなケースは多いです。

おとり物件の中で「実際に実在しない住所などで掲載している物件もある」という人もいますが、それは昔の話です。インターネットがここまで発達した現在では、さすがに実在しない物件があればすぐに分かってしまいます。実在しない住所の物件をおとり物件にするリスクはあまりにも高いのです。

2.おとり物件を見極めよう

見極めるそんなおとり物件に出会ってしまったら、せっかく良い物件と思って来店しても全然違う物件を薦められて損した気分になるものです。そのため、おとり物件に騙されないように見極め方を知っておきましょう。

2-1ネット検索を活用

グーグルなどの検索エンジンを利用し、物件を検索してみましょう。検索すると、色々な会社が同じ物件の情報を入力しています。それを見比べる事でおとり物件を見極めるのです。もし、その物件がおとりであれば、各社で入力されている条件に違いが出てくるはずです。住所などは全て記載されていない場合もありますので、賃料や敷金礼金で確認をすると探しやすいです。

2-2相場を調べる

明らかに条件が良すぎる時は必ず相場を調べましょう。極端な例ですが、「恵比寿駅から徒歩5分1LDK7万円 敷金礼金0円」のような、明らかに相場より安い物件は要注意です。通常の物件でこの立地であったら、倍額以上の賃料でもおかしくないので、この物件には何かあるはずです。例えば、事故物件であることを分かりにくくしている場合などです。そのため、相場観を持っておくことは大切です。SUUMOやホームズなどのような不動産ポータルサイトでエリアの賃貸を調べてみましょう。

2-3取引様態を見る

チェック不動産の取引は、仲介する賃貸管理会社とオーナーの関係を明らかにしなくてはいけません。関係性とは以下の事です。この中で「仲介先物」の場合は注意しなければいけません。

・貸主:その名の通りオーナーという事です。賃貸管理会社が自らオーナーであるという意味です。

・代理:サブリースなどでオーナーから任せられている状態です。オーナーの代理をしているという意味です。

・仲介元付:オーナーより直接仲介を依頼されている状態です。

・仲介先物:上記の仲介元付の不動産会社に広告を許可されている立場です。オーナーの下に仲介元付がいて、その下に仲介先物がいるイメージです。

ご覧の通り、仲介先物はオーナーとの距離が遠いです。先ほどの「既に成約しているケース」で話をした例で言うと、オーナーとの距離が近ければ近いほど信頼関係が生まれているので、先ほどのようなおとり広告はしにくいです。言い方は悪いですが、オーナーへの責任が薄ければ物件も軽く扱いやすいという事です。

2-4定期借家契約かどうかをチェックする。

定期借家契約とは、定められた期間で賃貸期限が切れてしまうものです。オーナーが継続を申し入れない限りは、期限を迎えたら解約しなければいけません。「この物件は安い!」と思っても、物件詳細欄を見ると「定期借家:3か月」など記載がある場合もあります。割と見落としがちな箇所ですが、仮に定期借家3か月であれば借りる人はほぼいません。知らずに来店したとしても「物件情報に書いてあります」と言われ、別の物件を案内されてしまいます。

定期借家契約については「あまり聞き慣れない賃貸契約「定期借家」とは何?」も参考にしましょう。

2-5現地待ち合わせで内見が出来るか

おとり広告の場合は現地での待ち合わせを嫌がります。なぜなら、おとり広告の目的は、まずは来店させて別の物件を薦める事だからです。もし、現地待ち合わせで内見が出来るかを聞いた上、渋られたら注意しましょう。本来、不動産会社としては成約をしてくれれば良いので、現地待ち合わせは効率が良い案内方法でもあります。それにも関わらず渋るという事はおとり物件である可能性があるからです。

不動産会社が良く言う断り文句としては、「オーナーから現地での突然の案内はダメと言われている」という内容です。しかし、オーナーがそこに住んでいるケースはほぼ無いので、オーナーから直接現地の案内が禁止されている事は実際にはほとんどないです。

3.おとり物件がなくならない理由

なぜ?このようにおとり物件は法律に違反をしている物件であり、見極め方があるものの実際に見極めるのは難しいのが現状です。これだけ法整備され、更には消費者もネットを通じて様々な情報を得られる現代においても、おとり物件がなくならない理由は何でしょうか?

3-1集客が必要だから

不動産業は他の商品と比べて、決断が難しい「家」というものを商品にしています。それ故、成約率は決して高くないので、不動産会社が利益を出せるかの鍵は「集客量」になります。それは昔も今も変わっていなく、むしろネットの進化により参入障壁が下がり、数多くの不動産賃貸会社が存在する今の方が集客は大事かもしれません。

特に、テレビCMなどの広告展開などが出来ず、ネームバリューがない中小は生き残りをかけて必死です。そのため、おとり広告をしている会社も中小の方が多い傾向があります。例えば、名前の知らない不動産会社が駅前ビルの中にあっても、その店に行こうと思う人が少ないです。そこよりも駅前に店舗を構えている有名な不動産会社に行く方が、安心感があるからです。そのため、そういった名前の知られていない中小の不動産会社が集客を図る術として、おとり広告があります。

3-2営業マンが売上を上げたいから

営業マン大手も含めて、売買も賃貸も不動産流通(仲介)業界は成果主義であることが多いです。つまり、賃貸不動産であれば「賃付け(成約)をするほど給料が上がる」という事です。そのため、営業マンの判断でおとり広告を展開する場合もあります。そうすれば、その物件目当てで来訪したお客さんが増えるので、成約率は下がるかもしれませんが接客機会は増えます。そのため、結果的に成約が増え、給料が上がる可能性が高くなるのです。

3-3他社がおとり広告を行っているから

ここまでで分かる通り、他社がおとり広告をしていて自社でしていなければ、他社にお客さんが流れてしまうので集客が減ってしまいます。今はネットでの広告が主流なので他社がおとり広告をしているかを把握することが昔より容易になりました。そのため、「他社では(恐らくおとり広告であるが)○○駅徒歩5分月々○○万円という目玉住戸がある。ウチもそれに対応して目玉住戸を作らなければお客さんが来ない」という状態になり、おとり広告をするケースがあります。つまり、おとり広告を一斉に止めないとこの現象は終わらないという事です。

3-4おとり広告を見分けるのは難しいから

繰り返しますが、おとり広告を見分けるのは難しいです。先ほどのおとり広告をチェックする方法があるにも関わらず難しいのです。厳密には難しいというよりは「チェックの仕方を知らない」「おとり広告の存在自体を知らない」という方もいるため、結果的におとり広告とは知らずに不動産会社に来訪する人が多いという事です。

確かに、大手不動産会社をはじめ、調べてみると、おとり広告をしていたのがバレて、行政処分を受けた不動産会社はあります。しかし、行政処分までするためには、消費者が繰り返し苦情を申し入れたり、その証拠を提示したりする必要があります。そもそもおとり広告を消費者が見分けるのが難しい上に、見分けたとしても証拠をわざわざ集め、消費者庁に進言をするのは手間がかかるし、自分に利益は一切ないのでやらない方がほとんどです。

不動産会社も消費者庁への進言を恐れているので、消費者から大きなクレーム等が入った場合にはネットに掲載しているおとり広告をすぐに落とすなどの対抗手段も取ってきます。このようにおとり広告を0にするのは、かなり難しい事が分かると思います。もし、おとり広告をなくすとすると、業界構造(手数料が利益になる構造)を変えるか、不動産会社が一斉におとり広告をやめる、もしくは行政処分を極端に厳しくするか等が考えられます。しかし、いずれも実現する可能性は極めて低いため、おとり物件は未だに存在し、そして今後もおとり物件がなくなる可能性は低いのです。

4.分譲はおとり広告が少ない?

分譲マンション分譲は賃貸と比較しておとり広告が少ないです。理由は「購入者からの指摘が多い」点と、「来訪者のクレームの度合いが大きい」からです。

4-1高額だから購入者が気にしやすい

賃貸が月々数万~十数万円くらいのお金を出して得る商品とすると、分譲は数千万円のお金を出して得る商品です。そのため、購入者も自分が成約した物件に関して良くチェックします。例えば、ある物件で目玉住戸として「70㎡ 2,980万円」という住戸があったとします。それを広告に掲載し集客を図り、実際に来訪した方が契約をしたとします。不動産会社からすると集客を維持したいので、その住戸は広告に掲載し続けたいです。

しかし、契約者からすると自分が買ったにも関わらず、広告が掲載されている事は良い気分はしないはずです。賃貸の時よりもクレームが入る可能性は圧倒的に高いです。勿論、不動産会社から「もう成約していますが集客のために広告は載せ続けます」という事はできません。自分から法律違反していることを進言しているようなものだからです。これが賃貸に比べて分譲の方が、おとり広告が少ない一つ目の理由です。

4-2来訪者のクレームが大きい

二点目はクレームが大きい事です。上述したように、不動産を購入する時には数千万円の費用がかかります。そのため、目玉住戸に釣られて来訪した人が、実際にその住戸がなくなったとなると落胆が大きいです。例えば、前項の例で2,980万円の物件をAさんが買ったとします。しかし、不動産会社は集客のために物件の広告を落とさずに掲載し続けたとします。一週間後、その広告を見たBさんが来訪しますが、「先ほど決まってしまいました」と不動産会社に言われたとします。その場はしょうがないと思うかもしれませんが、もしBさんとAさんが知り合いだったらどうでしょうか?

既に1週間前に契約していたにも関わらず広告を掲載していたと知ったら、Bさんから大きなクレームが入るはずです。しかも「先ほど決まった」と不動産会社に嘘をつかれているので尚更です。賃貸よりも高額な商品であるが故、クレームの大きさも賃貸より大きい可能性が高いです。そのため、賃貸より分譲の方がおとり物件は少ないのです。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。おとり物件は実際に存在し、今後もなくなる事はないと思います。しかし、おとり広告に釣られて来訪して結局良い物件がないとなると、消費者の手間も時間も取られてしまいます。まずは自分で見極める方法を理解する事です。少しでも怪しいと思ったら、ご自身で調べてみておとり広告を見極めましょう。

- 2016年09月05日