家賃滞納をすると起きること【退去・強制執行・裁判・差し押さえ?】

賃貸に長く住んでいると、ちょっとしたことから家賃を滞納してしまったと言う方もいるでしょう。ローンを延滞してしまうと。大きな問題となることがありますが家賃を滞納してしまうとどうなるのでしょうか?

目次

1.家賃を滞納するとどうなる?
☞家賃滞納が3ヶ月続くと強制退去になる?
・ドアロックを付けられたり、鍵を変えられたりする?
☞保証会社と契約している場合
・連帯保証人について
・夜逃げと連帯保証人、保証会社

2.家賃を滞納した後の手続きの流れ
☞最初は催告から
☞内容証明郵便が送られてくる
☞裁判外での交渉
・話がまとまらない場合はADRなどの利用も
☞裁判手続き
・賃料請求訴訟
☞強制執行と差し押さえ
☞不動産明け渡しの強制執行

3.家賃はいつまで請求される?
☞消滅時効について

4.家賃滞納と逮捕

5.家賃支払の拒絶について
☞大家さんが修繕の義務を怠っている場合
☞大家さんが家賃を値上げした場合
☞ペット不可物件にも関わらず隣人がペットを飼っていた場合

6.まとめ

1.家賃を滞納するとどうなる?

どうなる?家賃は、ローンの滞納と違い1度滞納したくらいで大きな問題になることはありません。また、遅れるのであれば大家さんに一言「○日までに振り込みます」と連絡すると良いでしょう。しかし、家賃を支払わずに2ヶ月3ヶ月と入金が遅れてくると問題となることがあります。

家賃滞納が3ヶ月続くと強制退去になる?

家を借りる時に大家さんとの間で締結した賃貸借契約書には家賃の支払方法や滞納した場合の措置について書かれています。国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」(改訂版)では、賃料と支払期限(当月分、翌月分)、支払方法等が記入されますが、その賃料支払義務を違反した際、大家さんが相当の期間を定めて催告したにもかかわらず、その期間内に履行されない時には、契約を解除することができる、と書かれています。

この相当の期間ですが、2ヶ月では強制退去させられず、3ヶ月経過すると強制退去させられる、という内容の判決が最高裁判所で出ています。なお、この裁判に使われた賃貸借契約書では家賃を滞納した場合にはすぐに退去する旨が書かれていましたが、3ヶ月までは強制退去させられない、と借主側に立った判決となりました。契約書の内容によってはもう少し結果が異なる可能性もあるでしょう。いずれにせよ、家賃を滞納する際には迷惑をかけないためにも大家さんに一言必ず連絡するべきでしょう。

ドアロックを付けられたり、鍵を変えられたりする?

家賃を滞納した結果、連絡もなくドアロックを付けられたり、鍵を変えられたりするケースもあるようです。しかし、上記約款にある通り家賃滞納により契約解除する場合には事前に催告することが条件となっています。このような行動を取られた際には弁護士に相談するなどの対応も検討すると良いでしょう。

保証会社と契約している場合

契約賃貸借契約を結ぶ際、家賃保証会社と契約を結ぶことがありますが、この家賃保証会社とはどういうものなのでしょうか?賃貸借契約では、家賃の支払いが滞納されたり、夜逃げされたりした時に代わりに家賃を負担してもらうために連帯保証人をつけるのが一般的ですが、家賃保証会社と契約することで、保証会社がその連隊保証人の代わりとなります。家賃保証会社は、入居者が家賃の滞納をした時には大家さんに立て替え払いをします。立て替え払いしてもらった分は後日利息を上乗せて家賃保証会社に支払うことになります。

連帯保証人について

保証人という言葉はよく聞くかと思いますが、保証人と連帯保証人でどう違いがあるか理解している人はそう多くありません。連帯保証人について一言で言ってしまうと、連帯保証人は借主と全く同じ責任を負う必要があると言えます。例えば、借主が家賃を滞納してしまった場合、大家さんは連帯保証人に家賃の催告を行うことになりますが、この時連帯保証人は、「先に借主に家賃を請求してくれ」と言うことができません。ここのところ、保証人は「先に借主に家賃を請求してくれ」と言うことができます。

また、同じ契約で連帯保証人が複数いる場合、その責任を頭数で割ることができません。例えば、家賃の滞納が50万円あった場合で連帯保証人が2人いたとしても1人頭25万円の支払い、と連帯保証人の側から主張することはできません。保証人はできます。

夜逃げと連帯保証人、保証会社

夜逃げ家賃を滞納する人の中には夜逃げしてしまう人も居ます。夜逃げされた場合大家さんは弁護士や探偵を雇って探ることも考えられますが、通常は連帯保証人に請求が行くことになるでしょう。上記の説明通り、連帯保証人は債務者と同じ責任を負うことになります。

一方、保証会社をつけていた場合は大家さんは保証会社から立て替え分の家賃を回収できます。借主は引き続き保証会社から家賃の請求がなされることになります。なお、入居者が夜逃げしたからと言って不動産の中にあるものを勝手に処分してしまうと損害賠償を請求されるリスクもあるため注意が必要です。

2.家賃を滞納した後の手続きの流れ

実際に家賃を滞納してしまった場合、どのような流れで話が進むのでしょうか。

最初は催告から

家賃の滞納があった場合、最初は通常大家さんから入居者に対して家賃の催告が行われます。今手元にお金がなく、後日入金できるのであればその日付を伝えると良いでしょう。賃貸借契約の段階で連帯保証人をつけている場合には、この段階で連帯保証人に連絡が行くこともあります。

内容証明郵便が送られてくる

催告しても家賃の支払いがない場合、またそれが2ヶ月続くような場合には滞納された家賃の額が掲載された内容証明郵便が送られてくるでしょう。その内容証明郵便では、記載された日付までに入金がない場合には法的手続きをとる旨が掲載されています。なお、この内容証明郵便は連帯保証人にも送られることがあります。

裁判外での交渉

内容証明郵便郵送後も家賃の滞納が継続した場合には裁判外での交渉が行われることになります。家賃を数ヶ月支払っていない場合にはその額も大きくなっていることが考えられるため、分割払いにするなどその支払い方法を交渉する事になります。ここで話しがまとまれば、支払い方法を示した合意書を作成し、その合意書に基づいて支払いを行っていく事になります。

話がまとまらない場合はADRなどの利用も

仲裁当事者間だけで話がまとまらない時には裁判外紛争解決手続と呼ばれるADR制度が利用されることもあります。ADRでは裁判所の裁判をすることなく、弁護士などの専門家が間に入り調停や仲裁を行ってくれる手続きです。裁判より手続きが簡単で、解決までの時間が短く、費用も安く済むという点でメリットがあります。

裁判手続き

裁判ここまで来て家賃の支払いがなされず、話がまとまらない場合には裁判所から支払督促がなされることがあります。支払督促は、裁判所が大家さんに変わって請求書を送付してくる手続きの事で、この請求書は判決と同じ効力を持つ事になります。

賃料請求訴訟

大家さん側から裁判所に訴状が提出された場合、裁判所でお互いの主張を行い、またその主張を裏付ける資料を提出して立証していく事になります。賃貸借契約では大家さん側に支払いがないことの立証をする必要がなく、借主側が支払をしたことを立証する必要があります。お互いの主張と立証が済むと、裁判所の判決が出される事になります。

なお、判決に対して不服であれば不服申立てをすることができます。不服申立てでは簡易裁判所〜地方裁判所〜高等裁判所〜最高裁判所と、進んで行く事になります。不服申立がなかった場合には判決は確定し、その判決に基づいて強制執行がなされます。

強制執行と差し押さえ

判決が確定した後にも家賃を支払わなければ確定判決に基づいて強制執行がなされます。強制執行では財産が調査され、預金口座や給料などを差し押さえられる事になります。

不動産明け渡しの強制執行

強制執行裁判で不動産明け渡しの確定判決が出たら当事者間で明け渡しの時期や不動産内の動産の撤去の時期、鍵の引き渡しなどについて話し合いが行われます。この明け渡しが行われない場合には、手続きすることで裁判所の執行官から明け渡しの勧告がなされ(1ヶ月)、それでも退去しない場合には執行官が訪れ強制的に明け渡しがされることになります。ここで撤去された遺留品は執行官の倉庫に預けられることになります。

3.家賃はいつまで請求される?

いつまで?家賃などの賃料請求権は、5年で時効により消滅することが法律で定められています。これを賃料請求権の消滅時効と言いますが、5年間賃料が支払われないともう家賃を請求することはできないのでしょうか?

消滅時効について

消滅時効とは権利を一定期間行使しなかった場合、その権利が消滅してしまうという制度の事で、賃料の場合その期間は5 年とされています。この消滅時効は、上記の賃料請求訴訟を行うことで「時効の中断」がなされます。時効の中断がなされると時効の進行を止めることができます。また、単に催告しただけでも、催告から6ヶ月間だけは時効が完成しなくなります。これらの手続きがなされない場合に限り、賃料請求権は5年で消滅することになります。

4.家賃滞納と逮捕

家賃滞納は、家賃という債務の遅れであり、最終的には財産を差し押さえられる可能性がありますがその手続きは民事手続きであり、家賃を滞納したからと言って逮捕されることはありません。その手続きは既にご説明した通りですが上記以外の方法を大家さんの側から行ってしまうと、逆に大家さん側が逮捕される可能性があります。

5.家賃支払の拒絶について

拒絶単に家賃滞納とは違い、大家さんが修繕の義務を怠っているなど何らかの理由があり家賃を収めていない場合もあるでしょう。家賃支払の拒絶は認められるのでしょうか?

大家さんが修繕の義務を怠っている場合

大家さんが修繕の義務を怠っている場合、家賃の支払いは拒絶できる可能性があります。ただし、大家さんが修繕の義務を行っているからといって即家賃の支払いをしなくても良いというわけではなく、その程度によって家賃の支払いを拒絶できる割合が決まります。この割合については、明確な定めがあるわるわけではなく、ケースバイケースとなっています。

大家さんが家賃を値上げした場合

家賃の値上げなど、賃料の改定については通常賃貸借契約書にその内容が記載されていますが国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、「土地または建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合」「土地または建物の価格の上昇または低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合」「近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合」に協議の上、賃料を改定できる、としています。ポイントは、協議しなければならない、という点で大家さん側から値上げの請求があったとしても入居者側で納得できなければ値上げした家賃を支払う必要はありません。この場合は入居者側が家賃の値上げを拒否し、それでも納得できないようであれば裁判で争うことになります。

一方、納得できない場合でも従前の賃料で家賃を支払う必要があります。仮に上記のような理由があったとしても家賃を支払わなければ家賃滞納扱いになってしまいます。従前の家賃では大家さん側が受け取らないというケースもあるようですが、そうした場合には賃料供託手続きを取るといいでしょう。

ペット不可物件にも関わらず隣人がペットを飼っていた場合

ペット賃貸アパートに入居する際、ペット不可物件であるという理由で賃貸契約を締結していたのに、隣人がペットを飼っていた。このような場合に賃貸契約の内容に違反しているとして家賃の支払いを拒否することはできるのでしょうか。この場合、基本的には家賃の支払い拒否が認められることはありません。賃貸借契約はあくまでも大家さんと入居者との間で取り交わされる個別の契約だからです。大家さん側からすると、それぞれの入居者に対して「ペット可」か「ペット不可」か異なる内容の契約をすることも可能です。このケースで家賃を支払わないと単なる家賃滞納になってしまいます。

6.まとめ

家賃を滞納した場合の法的手続きやその流れについて説明してきました。賃貸借契約は基本的に借主に有利な内容となっていることが多いですが、家賃滞納にはいろいろなケースが考えられ、当然認められることとそうでないことがあります。家賃滞納はしないのが一番ですが、その対処法について事前にしっかり理解しておきましょう。

- 2016年09月27日