「ホームインスペクション」は今後の中古住宅売買で必須になるかもしれない

「ホームインスペクション」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

ホームインスペクションは日本ではあまり耳馴染みのない言葉でありますが、今後は中古物件を売買するときには「必ず行うこと」になるかもしれません。
それくらい、昨今の不動産売買に深く関わってくるものになります。

そこで今回は、ホームインスペクションについて詳しく解説します。
法改正や費用相場などの詳細に関しても紹介するので、今後家を売買しようと思っている人は確認ください。

目次

1.ホームインスペクションの概要
☞ホームインスペクションを行う人
☞ホームインスペクションの目的
☞ホームインスペクションの内容

2.ホームインスペクションの義務化について
☞改正内容
☞義務化について
☞法改正の目的

3.ホームインスペクションの費用について
☞ホームインスペクションの費用
☞ホームインスペクションの注意点

4.ホームインスペクションを利用する人
☞一戸建ての調査
☞マンションの調査は?

5.ホームインスペクションを実施するタイミング
☞買主について
・キャンセルリスク
・一方的解除
・検討段階での調査
☞買主について

6.まとめ

1.ホームインスペクションの概要

検査
そもそも「ホームインスペクション」とは、住宅(ホーム)を調査(インスペクション)することです。
ホームインスペクションすることにより、もし建物に欠陥があれば中古物件を売買する前に発見することができます。

ホームインスペクションを行う人

ホームインスペクションを行う人は、建築士などの専門家になります。
ただ、「ホームインスペクションを行うための資格」はないため、極端な話をいうと誰でもできるということです。

ただ、一定の信頼感がないと買主・売主は納得しないため、民間資格を取得するか「建築士」などの建築関連の資格を取得するのが一般的です。

インスペクションの資格や登録は「NPO法人日本ホームインスペクターズ協会」「建築士会インスペクター」「既存住宅状況調査技術者」などの機関で資格取得や登録を行います。
それにより、第三者からの信頼を得た状態でホームインスペクションを行えるということです。

ホームインスペクションの目的

後ほど詳しく解説しますが、ホームインスペクションの目的は「中古住宅の流通促進」「買主保護」の2つです。

世の中に色々な商品がある中で、「住宅」は最も高価な商品の1つです。
しかし、高価にもかかわらず、品質に関しては素人目には分かりにくいのも事実です。
そのため、建築の専門家の目によって、きちんと建物を調査することで、買主の安心感につなげることができます。

ホームインスペクションは欧米では通常のことでありますが、日本ではまだまだ浸透していないのが現状です。

ホームインスペクションの内容

「住宅を調査」とは、具体的には以下のような点を調査します。

・建物や設備の欠損はないか

・建物にひび割れはないか

・建物や室内や配管に変色はないか

・設備関係にぐらつきはないか

・設備関係の状態・動作確認

・土台や素材に腐食はないか

上記のように、建物が劣化することにより入居者が被害を受けるポイントの全ての調査をします。
調査する項目が多岐に渡るため、床や壁などの室内のみならず、外壁や共用部分まで調査範囲も広いです。

また、特に一戸建てであれば、雨どいや屋根なども調査して、不備や欠陥がないかを確認します。

基本的には、調査員の「目視」による調査ですが、機器を利用して調査する場合もあります。
たとえば「電気抵抗式木材水分計」という機器を使って、木材の含水量を調べることもあります。

この調査内容はホームインスペクションを行う業者によっても異なりますし、そもそも調査を依頼する人がどこまで調査するかによっても変わります。

2.ホームインスペクションの義務化について

法律の改正
2016年の2月に、「宅地建物取引業法(宅建業法)」の改正がされました。
つづけて、2016年12月には、国土交通省の分科会が2016年2月の改正した宅建業法の運用方法を発表しました。
その中で「既存建物取引時の情報提供の充実」という項目があり、この項目がまさに「ホームインスペクション」と深く関わってくる項目になります。

改正内容

この宅建業法の改正内容は、不動産を仲介する不動産会社に対し「売買物件の現況を確認するために建物インスペクションの活用を促す」という内容になっています。

国土交通省の分科会が発表した内容によると、2018年4月より不動産会社は買主・売主と売買契約(物件の売買を不動産会社に依頼する契約)を結ぶときに「ホームインスペクション業者をあっせんできるかどうか」を買主・売主に対して書面で明示します。
あっせんが可能であれば、依頼に応じて不動産会社がホームインスペクション業者を手配するという流れになります。

そして、ホームインスペクション業者が建物の構造上で重要な部分について第三者の調査を行わせます。

ホームインスペクションした結果は重要事項説明で買主に伝えられ、売買契約時にも「建物を売主・買主が双方確認した」という旨の書面を交付することになりました。
仮に、あっせんが不可能であれば、買主自らが探すか、ほかの不動産会社にあっせんを依頼します。

ただ、不動産会社からするとホームインスペクション業者を知っていれば良いだけの話なので、「あっせんできない」となると信用を失います。
そのため、大抵の不動産会社はあっせんすると思われます。

義務化について

良く勘違いされがちですが、「ホームインスペクションを行うこと」自体が義務化されたワケではありません。
「ホームインスペクションをあっせん出来るか」を明示することが義務化されたのです。

売主が「ホームインスペクションを許可しない」と主張すれば、ホームインスペクションをすることはできません。
ただ、ホームインスペクションを拒否すると買主に不安感が広がるので、物件が売れにくくなるというデメリットがあります。

そのため、結果的には法改正によってホームインスペクションは普及するものと考えられます。

法改正の目的

法改正の目的は、「中古住宅の流通促進」「買主保護」の2点です。
中古住宅を購入するときに、買主は建物の劣化具合を気にします。
それを、第三者であるホームインスペクション業者がチェックすることで、安心感を高めます。
その結果として、中古住宅の流通が活性化するということです。

また、そもそも「ホームインスペクション」を知らない消費者にも「中古住宅を購入する前には『建物調査』ができる」と周知されます。

3.ホームインスペクションの費用について

費用
つづいて、ホームインスペクションにかかる費用について解説します。

ホームインスペクションの費用負担は、基本的に買主側が行います。
ただ、今後は自分の物件の価値を高めるために、売主自らがホームインスペクションを依頼する可能性もあります。
売主自らがホームインスペクションすることによって、「この物件は建物調査済みです」と購入検討者にアピールできるというワケです。

ホームインスペクションの費用

ホームインスペクションの費用は、ホームインスペクション業者によってマチマチです。
ただ、相場としては5万円~7万円程度になります。
ただし、先ほどいった「機器」を利用すると高くなったり、調査範囲を広げると高くなったりするので、詳細はホームインスペクション業者に確認しましょう。

ホームインスペクションの注意点

先ほど、「詳細はホームインスペクション業者に確認しましょう」といいましたが、ホームインスペクションを依頼する際にはいくつかの業者を見るのがベストです。
一般的には不動産会社があっせんした業者を利用しますが、こだわりを持ってホームインスペクションをするのであれば業者選びもこだわりましょう。

たとえば、ホームインスペクション業者によって、床下や屋根裏へ侵入して調査する費用は別途かかり、10万円を超えることもあります。
また、調査費用は安いものの、報告書が簡素であるホームインスペクション業者もいるので注意しましょう。

4.ホームインスペクションを利用する人

家購入
結論から言うと、ホームインスペクションは一戸建ての売買時に、特に利用するべきです。
なぜなら木造である一戸建ての方が鉄筋コンクリート造のマンションよりも劣化しやすく、かつ一戸建ての方が調査範囲は広いからです。

一戸建ての調査

マンションの場合には、主に自分が購入しようとしている(もしくは売却しようとしている)室内を調査すれば良いです。
マンションは、外壁や外部廊下などの「共用部」もありますが、共用部に関してはマンション全体で集めたお金で補修できます。

ただし、一戸建ては外壁や屋根、土台なども全て自分で補修する必要があります。
つまり、万が一欠陥や激しい劣化があった場合には、自分のお金で補修しなければいけないということです。

マンションの調査は?

マンションも鉄筋コンクリート造とはいえ、ホームインスペクションをした方がベターではあります。
特にホームインスペクションするべき建物は、一戸建てにもいえることですが「築古」の建物です。

マンションであれば20年程度、一戸建てであれば15年程度を目途に「築古」と呼ばれるようになります。
このような建物は目に見えない部分が劣化している可能性があるので、ホームインスペクションをして安心感を得る方が入居後を考えると良いです。

5.ホームインスペクションを実施するタイミング

タイミング
いざホームインスペクションをするときには、買主・売主ともにどのタイミングで行うべきか迷うものです。

結論から言うと、買主は「申込~契約」までのタイミング売主は「売却活動前」に行うべきです。

買主について

なぜ、買主は「申込~契約」までの間にホームインスペクションするべきかというと、その期間がキャンセルリスクのないタイミングだからです。
そもそも、物件を購入するときには、「物件探し」「内覧(室内見学)」「申込」「契約」「引渡し」という順番になります。

キャンセルリスク

先ほど紹介した「物件を購入する流れ」の中で、「契約」を結んでしまうとキャンセルリスクがあります。
具体的には、買主側からの一方的解除の場合には、売主に預け入れている手付金が没収となってしまいます。
手付金は売買価格の20%以下の価格になりますので、百万円単位で預け入れていることが多いです。

もし、ホームインスペクションの結果が原因でキャンセルするときに「一方的解除」と見なされれば、手付金は売主に没収されてしまいます。

一方的解除

キャンセルが一方的解除になるかどうかは、売主や物件に過失があるかどうかです。
たとえば、売主が「広さを虚偽」していたことによるキャンセルであれば、当然買主の一方的解除になりません。
このようなときは、白紙解約になるか、下手をすれば売主の一方的解除になり、手付金分の違約金が買主に支払われます。

しかし、「ホームインスペクションによる欠陥」が一方的解除になるかは、その原因次第です。
たとえば、雨漏りしていたり土台に重大な損傷があったりした場合には、買主はリスクなく契約解除できます。

ただ、「外壁に微細な亀裂がある」程度の欠陥による契約解除であれば、買主の一方的解除になる場合もあります。
そのため、リスクのない「申込~契約」までの期間がホームインスペクションを実施するベストの期間なのです。

検討段階での調査

申込前の検討段階での調査は避けた方が良いでしょう。
なぜなら、検討が取りやめになる可能性がある上に、ほかの検討者が先に申込むリスクもあるからです。

仮に、検討段階でホームインスペクションをするとします。
このとき、たとえホームインスペクションの結果も良好だったとしても、他物件で良い物件があれば、そちらの物件を検討すると思います。
別の物件を検討するとなると、またホームインスペクションしなければいけませんので、費用負担が大きくなってしまいます。

また、申込をしていないと、ほかの検討者が申込できるので、最悪の場合はホームインスペクション中に物件がなくなってしまうかもしれません。
そのため、申込~契約のタイミングがベストなのです、

買主について

一方、買主がホームインスペクションするべきタイミングは、物件を売却する前になります。

そもそも、買主がホームインスペクションする理由は、「物件価値を上げるため」です。
そのため、広告へ「インスペクション済み」と表記するのが最も効果的な方法になります。
広告へそのような表記をするには、売却活動の初期段階でホームインスペクションをする必要があるのです。
そのため、物件の売却を決意した段階で、ホームインスペクションを行ってしまいましょう。

6.まとめ

このように、ホームインスペクションは、これから日本でメジャーになってくると考えられます。
冒頭でいった「ホームインスペクションが必須」とまではいきませんが、中古住宅の売買をするときには必ず「ホームインスペクション」という単語を聞くようになります。

そのため、現段階で家の売買を考えている人は、ホームインスペクション業者に一度話を聞いてみることをおススメします。
話を聞けば、どんなリスクが回避できて、どのくらいの金額なのかが、より詳細に理解できることと思います。

- 2017年06月16日