住宅ローンは、おそらく多くの人にとって人生の中で最も大きな額の借金になるでしょう。他にローンを利用するとしても、自動車や学費などがせいぜいであり、それも金額で言えば数百万円程度です。返済を行う機関も10年にも満たないでしょう。
しかし住宅ローンの場合は殆どが1000万円以上、返済期間も20年30年は当たり前ですから、定年退職まで付き合うことになるケースが大半です。場合によっては退職金で返済をしきれずに、定年退職後も再就職をして返済し続けることになるかもしれません。また返済が滞ってしまい、せっかく手に入れたマイホームを手放すというのもよくある話です。
それだけに負担が大きいわけですが、住宅ローンの利用者の負担を少しでも軽減するために、国でも住宅ローンを利用して住宅を購入した人向けに「住宅ローン減税」という制度を導入しています。
そこでここでは住宅ローン減税を利用するとどのようなメリットがあるのか、また利用するためには何をしなければいけないのか、どういったものを用意しなければいけないのかなどをお伝えしていきます。
目次
1. 住宅ローン控除とは
1-1. 住宅ローン控除の概要
1-2. 住宅ローン控除を受けられる住宅の条件とは
1-3. 認定住宅ならば控除が更に大きい
2. なぜ確定申告をしなければいけないのか
2-1. 確定申告をする方法
2-2. 用意しなければいけない書類
3. 確定申告書の記入の方法
4. 2年目以降も確定申告は必要なのか
4-1. 必要なもの
4-2. 手続きの仕方
4-3. もし年末調整で書類の提出を忘れてしまったら
5. 住宅ローン控除の意外な注意点
5-1. 入居した時と、住宅ローンを借りた年が異なると控除期間が短くなる
5-2. 所得税や住民税を支払っていないと、住宅ローン控除は受けられない
6. まとめ
まず住宅ローン控除とはどのような制度なのかを理解しましょう。 住宅ローン控除は 住宅を建設や購入するために、金融機関や機構などから借り入れた金額の1%を所得税の控除額から差し引くという制度になっています。
例えば金融機関から4000万円を借り入れ、借り入れた初年度で借入金の残額が3900万円になっていた場合は、3900万円の1%である39万円を所得から差し引くことができます。 それによる減税効果がどの程度であるかは、個人の所得によって異なりますが、1年で10万円以上の節税ができることもあります。
この住宅ローン控除は最大で4000万円の1%、40万円分の控除を10年間受け続けられます。 つまり10年間合計で400万円までの控除となります。 10年間分で100万円以上の節税となることも珍しくありませんので、住宅ローンを借り入れたばかりの、 収入が少ない家庭にとっては大変ありがたい制度になっているといえるでしょう。
住宅ローン控除を受けられる住宅の条件は、新築と中古でそれぞれ違ってきます。
まず新築住宅の条件ですが
となっています。
主な条件はほとんどの家が満たしており、気にする点は年間所得が3000万円以上の人は控除を受けられない、ということぐらいでしょう。 ただ都心で夫婦二人で住むようなマンションを購入した場合には、家の面積が50㎡以下ということも有りえます。 また床面積と専有面積で面積が異なる場合は、床面積が50平方メートルを超えているかという点はしっかりと注意するようにしましょう。
中古住宅の場合は新築に加えてさらに条件が追加されます。
となっています。
他人や親族から譲られたものではない、建物が古すぎるもの、 耐震基準を満たしていないものは不可といったところでしょう。 築年数20年を過ぎた築25年の木造住宅などを購入した場合には、耐震工事をしないと控除を受けられません。
耐震工事の費用はまちまちですが、それほど大きくない住宅の簡単な工事ならば50万円程度で完了することもあります。 その場合は耐震工事を行って住宅ローン控除を受ければ、10年間の収支でプラスになることもあるでしょう。
また耐震工事を行う時には助成金を出している自治体も多くありますので、自分が住む自治体に問い合わせてみても良いでしょう。
新築住宅ならばほとんどの住宅が、中古住宅でも条件を満たせば住宅ローン控除を受けられる対象はかなり多いですが、 最大400万円の控除からさらに枠を広げることも可能です。 いわゆる認定住宅(認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅)を新築した場合は、年間の最大で5000万円の1%、 50万円を10年間に渡って控除を受けられます。
長期優良住宅や低炭素住宅とは耐震性が高く強固な構造を持ち、長持ちしやすい家のことを指します。 また省エネルギー性にも優れ、町並みにマッチングした家であることも条件となっています。 一方低炭素住宅とは省エネ性の部分で優れた性能を持つ家を射し、耐震性や構造についての条件はありません。
建築コストでいえば長期優良住宅が最も高く、次いで低炭素住宅、そして一般的な住宅の順番になります。 長期優良受託や低炭素住宅は建築費が掛かるので、住宅ローン控除を利用できたとしても、家を持つのにかかる費用はどうしても高くなります。
しかし固定資産税や住宅ローン金利などで様々な優遇があるので、性能が良い家に、 それなりのコストを掛けて住みたいという場合には、長期優良住宅を建てるのもありでしょう。
こういった住宅にも様々な自治体による助成金制度があるのでチェックを怠らないようにしましょう。 長期優良住宅の住宅ローン控除措置についても、現在のところ令和7年12月31日までに入居した家を対象としています。
控除を受けるメリットと、控除を受けられる住宅の条件がわかったところで、控除を受ける方法について今度はお伝えしていきます。
確定申告とは個人が得た収入を税務署に申告し、納税額を確定させるのに必要な手続きとなっています。 特に個人事業主の場合は、きちんと収入を申請しないと脱税や追徴課税になることもあります。 例年2月15日から1ヶ月は確定申告の期間となっているので、この時期の税務署は大変に混雑をすることでも知られています。 住宅ローン控除の場合は住宅ローンを利用していることを証明し、その分の控除を受けるために必要となってきます。
確定申告と言えば税務署に書類を持っていき、そこで書類を確認してもらう、というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。 最近ではITの発展によりインターネット上でも確定申告ができるようになっています。 サラリーマンにとっては休みを取って税務署に行かなくても良いというメリットがあります。
一覧にすると
税務署に申告
といった方法があります。
確定申告書自体は国税庁のサイトからダウンロードできるので、それを印刷し、税務署でアドバイスを聞きながら作成しても良いですし、 もちろん国税庁のサイトには記入方法も記されているので、e-taxで確定申告を完結することもできます。
住宅ローン控除を目的として確定申告を行うのならば、自分が住宅ローンを借り入れていることを証明する書類が必要になります。
普通の確定申告に必要な書類を合わせて、以下のような書類を用意するようにしましょう。
これらの書類を用意したら、いよいよ確定申告に臨みます。
税務署などから入手した確定申告の申請書にはこのように記入していきましょう。 確定申告の締切の3月15日には窓口が大変に混雑をするので、できれば2月中に確定申告を済ませたいところです。
確定申告書は以下のような書類になっています。
まずは計算明細書を作成します。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/r03/14.pdf上記の書類には
して記入していきます。
そして肝心要の確定申告書ですが、住宅ローン控除を受ける場合には下記のリンクからダウンロードできる書類を使用します。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/r03/01.pdffAとBの2種類がありますが、会社員はAを使います。
上の書類には源泉徴収票に書いてある数字を転記していきます。
を記入していきます。
また還付される税金の受取場所には自分の銀行や信用金庫の情報を記入します。
そしてもう一枚記入が必要となります。
上の書類には
を該当する欄に記入していきます。
1枚目の書類と内容はほぼ同じです。住民税の欄には扶養控除の対象とならない16歳未満の扶養親族がいたら、その氏名などを記入します。 そして一番右下の特例適用条文等に、自分がその住宅に転居した日を記入しましょう。
入力する欄が一見多いので、最初は面倒そう、難しそうに思ってしまうかもしれませんが、 基本的には源泉徴収票を元にした給与関係の情報と、売買契約書などによる住宅の情報を記入すればいいだけです。 普通の確定申告と比較すれば、非常に記入する欄は少なくなっています。
e-taXでは上記の書類ともに、以下の様なものが必要になります。
上記のものを用意し、マイナンバーカードをICカードライターで読み込み、本人であることを証明してから書類の作成を行います。もちろん記入する内容は同じです。
e-taxでは直接税務署に行かなくても確定申告が行える他に、以下のようなメリットがあります。
・書類の処理が早く、還付が早めに行われる…機会で受付と処理をするために、税金の還付が3週間程度で行われます。 通常の確定申告の場合は1ヶ月ほど掛かることが多くなっています。
確定申告をして、年末調整を行えば住宅ローン控除が受けられることが確定します。 しかし住宅ローン控除は最大10年間続くものなので、住宅ローン減税を毎年受けるには、 10年間2月になったら毎年確定申告をしなくてはいけないのか、と考えてしまうかもしれません。
自営業や個人事業主の人の場合は、たしかにそのとおりですが、こういった人たちは元々2月になったら確定申告を行い、税額を確定する義務があります。
一方で給与所得者の場合は、基本的に収入が2000万円以下の場合は、確定申告をする義務がありません。 給与は最初から税金を引かれて支給されています。基本的には確定申告をしない人がほとんどでしょう。
確定申告は慣れないことだけに心理的にも負担が大きく、また平日に税務署に赴かなければいけないのは厳しいところですが、 2年目以降は給与所得の社の場合は毎年2月に税務署に赴いて数々の書類を容易、または記入して提出する必要はありません。
以下の手続きを行えば住宅ローン控除を受けることが可能です。
以上の2点のみです。
税務署の発酵する住宅借入金等特別控除申告書は確定申告を行えば税務署から年数分が、10月下旬に送付されてきますので、 しっかりと保管をし、毎年提出しましょう。ただ万が一無くしてしまった場合も、税務署に申告すれば再発行をしてもらえます。
2点の書類を会社の年末調整の時期に給与の担当者に提出します。 自分で税務署に赴いて手続きをする必要はなく、会社内で手続きが完了するので、2年目以降の負担は殆どないと言っていいでしょう。
ただし金融機関から送付されてきた「住宅取得資金に係る借入金の融資額残高証明書」に記載されている残債などの金額を、 税務署から送付されてきている「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」に転機をしなくてはいけません。
現在住宅ローンがどれくらい残っているのかは、金融機関からの証明書に記載してあるので、その情報を税務署の書類を1枚切り取り空欄に記入していきます。 記入の方法は会社の給与担当者や税務署の人間に聞いてみましょう。
2年目の場合、税務署から送られてきた書類を年末調整の際に添付するのを忘れてしまった、ということもあるかもしれません。慣れないとつい忘れがちです。
この場合2年目の受託ローン控除は受けられないのか、と思ってしまいがちですが、 年末調整は基本的に翌年の1月末まで受け付けていますし、確定申告を2年目も行えば、きちんと控除を受けられます。
ただし当然ながら手間は大変にかかるので、年末調整の際に提出を忘れないようにしましょう。
住宅ローン控除を受けるために様々な条件があることは説明済みですが、ローンを借りた時の状況や退職により、いくつか注意をするべきポイントがあります。
住宅ローン控除が受けられるのは「入居」のタイミングが非常に重要になります。 2017年に入居をした場合は2026年まで控除の対象になります。
しかしもし2017年年末に入居し、住宅ローンの融資が始まったのが2018年1月頭であった場合は、 1年タイミングがずれてしまうことになります。 この場合控除が受けられるのは2018年の住宅ローン残高から、2026年の9年間となり、1年間分期間が短縮されてしまいます。
入居にはできるだけ年末を避け、年明けにするか、住宅ローンは年内中に利用するようにしましょう。
妻の貯金から返済していればその妻分の残高に応じて、住宅ローン控除を妻が受けられるのでは、とお猛人もよくいるのですが、 専業主婦(主夫)の場合収入もなく納税もしていないので、還元される税金が存在しません。 よって住宅ローン控除も受けられないのです。
もし夫が妻の分の住宅ローンも返済していることになると、それは夫から妻への贈与となり、税金が発生する場合もあります。 また妻が借りていた住宅ローンを、住宅ローン借り換えを行うことで全部夫の借り入れにすれば、 住宅ローン控除を全額分受けられるのでは、と考える人もいますが、それも間違いです。
この場合はローンの借り入れが住宅購入のためではなく、妻の借金返済のために借り入れたことになってしまうので、 住宅ローン控除の条件と一致しません。
計算例
住宅ローン契約時
総額4000万円
夫2000万 妻2000万
双方20万円ずつ住宅ローン控除を受けられる
5年後妻退職
残債3000万円
夫1500万円 妻1500万円
妻は夫の扶養に入る
↓
夫は15万円分住宅ローン控除を受けられるが妻は受けられない
ということになります。
住宅ローン控除は、年収がなかなか伸びにくい現代の日本において、少しでも多くの人に有料な住宅の購入を促進するために作られた制度です。 その効果は非常に大きく、受けるのと受けないのでは、家計にも大きな影響を与えると言っても過言ではないでしょう。
確定申告の手続は非常に複雑に感じるかもしれませんが、最近ではネット経由で行うこともできますし、税務署でのアドバイスや関連の本などもたくさん発売されています。 税金を納める仕組みは会社員だとなかなか意識しないものですが、所得税などがどういう計算で徴収され、 個人事業主はこのような手続きを毎年行っていることを知ることは、社会勉強にもなります。
税金は意外な優遇制度がたくさんあり、有効に活用することで手取りのお金を年間十万円以上増やすことも場合によっては可能です。 またサラリーマンでも独立し個人事業主になれば、確定申告の義務が出てきますから、そういったときのための予習にもなるでしょう。
会社からの収入だけでは思うような生活ができないという人も、副業で年間20万円以上の収入があれば、また確定申告をしなければいけません。 収入や納税に対する意識を高めるために、しっかりと確定申告の意味と手順を理解していきましょう。
※ 本記事は2017年03月時点の内容になります。
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