タワーマンションや大規模マンションで清掃がカイゼンしない理由とは?

都心のタワーマンションや大規模マンションで、居住者から必ずといってよい程に話題となるのが、

清掃が汚い

というものです。

マンションが高級であればあるほど、クレームになりやすいのが清掃です。
清掃がなぜクレームになりやすいのか、なぜカイゼンしないのかについて、解説していきます。

目次

1.マンションで清掃がクレームになりやすい理由とは?
☞1-1 あまりにもグレーが多すぎる「清掃の仕様」
☞1-2 管理組合が指摘しないとなかなか出てこない「課題点」

2.マンション管理業界が学ぶべきは「清潔さ・美しさ・快適さの継続・向上への貢献」

3.どうやって清掃をカイゼンするか
☞3-1 清掃スタッフが清掃を「単純作業の繰り返し」と捉えていないか
☞3-2 管理会社が清掃を専門業者へ再委託(丸投げ)して依存していないか
☞3-3 清掃の改善提案(有償でも良い)を出すことを躊躇していないか
☞3-4 管理会社はホテルや式場などワンランク上の環境での清掃を勉強しているか

4.清掃とは何ぞや?を今一度考える

1.マンションで清掃がクレームになりやすい理由とは?

クレーム

1-1 あまりにもグレーが多すぎる「清掃の仕様」

マンション管理業界では、清掃の仕様=国土交通省が例示する「標準管理委託契約書(委託仕様)」に準拠した内容を提案する管理会社が多いですが、この委託仕様そのものに「グレーな部分」がかなり多いため、これに準拠する契約書も、同然ながらグレーな部分が多くなります。

グレーが多くなる、ということは、それだけ現場スタッフ(清掃員)の能力とモチベーションに依存せざるを得なくなる、ということです。

能力とやる気のある清掃スタッフがたまたまマンションに配属された結果、清掃の満足度があがることがありますが、大規模マンションやタワーマンションの場合、清掃スタッフは複数名となりますので、スタッフによってムラが目立ち、クレームとなるケースが増えます。

1-2 管理組合が指摘しないとなかなか出てこない「課題点」

管理会社から清掃に関する改善・改良提案がでてくることは、まずありません。
この理由には大きく分けて、以下の4つの理由が考えられます。

①清掃スタッフが清掃を「単純作業の繰り返し」と捉えて、狭い視野で作業を継続してしまい、かつ会社としてアンテナを張っていない

②管理会社に清掃のノウハウが乏しく、清掃業務を専門業者へ再委託(丸投げ)しており、専門業者に依存している

③改善すべき清掃状態があっても、提案(特に有償提案)を出すことを躊躇してしまう

④マンション管理業界全体として、清掃のセンスや感度が低い

2.マンション管理業界が学ぶべきは「清潔さ・美しさ・快適さの継続・向上への貢献」

マンション管理業界は、清掃を「単なる掃除」と捉えるために、「清掃仕様に書かれている内容(作業内容と頻度)をこなしている」ことで業務履行と判断しています。

でも、清掃を「単なる掃除」にとどまらず「清潔さや美しさ・居住者の快適性の継続・向上に貢献する大切な仕事」と考えることで、仕様そのものもグレードアップできますし、仕様に書かれたこと以外の「気づきや発想」に知恵を絞るようになり、観察力が増し、改善・改良提案につながります。
テッセンのお掃除劇場(新幹線の車内清掃)の発想は本当に勉強になります。

また、清掃の発注者である管理組合としても、ただ「汚い」とクレームを出すだけではなく、どのレベルを求めているのかを明確にして要請する必要があります。
特に、都心のタワーマンションは、ホテルライクでワンランク上の暮らしの一部として清掃が占めるウエイトは大きく、また清掃に投資できる予算があります。

3.どうやって清掃をカイゼンするか

改善単に清掃の仕様を細かくしたり、清掃してほしい箇所を厳しく注文するだけでは、その場所が一時的に改善されても、すぐ元に戻ってしまいます。

まずは、管理会社(専門業者)に気付いてもらい、清掃のあり方を根本的に見直してもらうことです。
それでも改善が見られない場合は、改善のための第一歩として、以下のことを伝えて、どんな改善ができるのかをヒアリングすることです。

・清掃スタッフが清掃を「単純作業の繰り返し」と捉えてしまい、清潔さに対するアンテナを張っていないのではないか

・管理会社に清掃のノウハウが乏しく、清掃業務を専門業者へ再委託(丸投げ)して依存しているのではないか

・清掃の改善提案(有償でも良い)を出すことを躊躇していないか

・ホテルや式場など、ワンランク上の場所の清掃と自分たちの清掃との違いを考えているか

3-1 清掃スタッフが清掃を「単純作業の繰り返し」と捉えていないか

清掃スタッフに限らず、その上司に当たるマネージャークラスや管理会社のフロント担当者が、清掃を「単純作業の繰り返し」と認識している、または長年作業を繰り返しているうちに、無意識に思考が固まっている可能性があります。

しかし、清掃は単純作業ではありません。
同じ箇所を清掃することには変わりありませんが、居住者の入れ替わりや天候により状況は変わります。

また、単純作業化してしまうと、仕様に書いてある箇所以外に目が行き届かなくなります。
例えば、清掃スタッフに廊下の床を清掃するよう強調した指示をすると、壁や天井・器具に目が行かなくなる可能性が高くなります。

3-2 管理会社が清掃を専門業者へ再委託(丸投げ)して依存していないか

管理会社が清掃業務を再委託することに問題はありません。
しかし、管理会社が元請けとして責任をもって清掃専門業者と協議し、清掃専門業者をチェックする、という視点が欠けている管理会社がほとんどです。
管理会社の中に清掃のプロフェッショナルが少ないのも、丸投げ依存する一因です。

3-3 清掃の改善提案(有償でも良い)を出すことを躊躇していないか

特に都心のタワーマンションや大規模マンションの住民は、より良い環境づくり・清潔さや美しさの向上のために、現状の委託契約内容以外の改善提案を求めています。
しかし、管理会社はなかなか提案をしません。
なぜか?

ひとつは、新築時に管理会社が積算し、設定した清掃仕様の内容に誤り(不足)があったことを、自ら認めることになるのを恐れているからです。

もうひとつは、値上げをお願いすることで、却って全体的なコスト削減を要求されることを恐れているからです。

管理会社は、管理組合(理事会)から「なぜ当初にちゃんと清掃の設計をしなかったか?」と責められ、現状の管理委託費の中で清掃業務を履行するように求められるのを恐れています。

しかし、新築当初に最善を尽くして考えた清掃仕様が現実と異なることは致し方ないことですし、住民のゴミ出しマナーが悪く、ゴミの仕分けに想定外の時間を費やさざるをえない、ということは十分に考えられます。

特に賃貸化が進み、入居者が頻繁に入れ替わる都心のマンションや、外国人入居者が多く入居するタワーマンションでは、想定外のことが多いでしょう。

本質的に居住者は「快適な居住環境」をマンションに求めていますし、行き届かない環境を居住者に強いるほうが不誠実です。

大規模マンションやタワーマンションは基本的に予算に若干のゆとりを持っているところばかりですから、勇気を出してどんどん有償提案してほしいものです。

3-4 管理会社はホテルや式場などワンランク上の環境での清掃を勉強しているか

出張でホテルに宿泊するとよくわかりますが、清掃スタッフは実に整然とスピーディに働き、その姿勢・動きがホテルの景色の一部になり、使っている道具がホテルの商品の一つになっています。

一部屋当り○分で、やることは○○と○○と○○と、、、と、実にきめ細かい清掃仕様が決められている上に、廊下やエレベーターで宿泊客とあった時の対応も丁寧で見事です。

タワーマンションは「ホテルライクの生活」を売りにして販売している以上、それを引き継いだ管理会社もこのレベルを追求しなければなりません。

4.清掃とは何ぞや?を今一度考える

マンション管理業界は、清掃=仕様で決めた箇所を掃除するだけでなく、自分たちの活躍により、清潔な空間を居住者へ提供し、快適な暮らしを支え、美しい建物を維持し、資産価値を守る大切な仕事の一翼を担っている」という高い意識を持って取り組む必要があります。
また、クライアントであるマンション管理組合は「清掃を通じて何を求めているのか」を管理会社へ伝え、清掃の方向性を共有するべきです。

「業務標準(共通のものさし)」を作成し、目指すべき・目標とするべき清掃の状態を明確化し、「双方で共有するようなサポート体制を整えなければいけません。
そういうものがないと、いつまでも「あそこが汚い」「なんでやってくれないのだ」「いや、仕様通りやっている」という不毛な不満や言い訳をぶつけあうだけで、根本解決にならないでしょう。


深山 州(みやま しゅう)
マンション管理士。大手不動産仲介会社、大手管理会社、管理費削減専門会社、小規模管理会社を経て、2006年にメルすみごこち事務所を創業。
とにかく三度の飯よりマンション管理好きで、しかも管理組合のカイゼン・改良・改革系の取り組みに志向する、右脳的・文系的なコンサルタント。
メルすみごこち事務所(外部サイト)

- 2018年03月27日