【徹底解説】意外と知らない住宅ローン控除について

住宅の購入を検討したことのある人は、「住宅ローン控除」という税制優遇を聞いたことがあるかもしれません。
住宅ローン控除は、住宅を購入するときに最も節税効果のある優遇措置になります。
そのため、この控除を受けられるかどうかで、収支は大きく変わってくるのです。

しかし、住宅ローン控除は受けられる条件が異なる上に、居住年月日などによって限度額も異なります。
そのため、今回はそれら詳細を踏まえた上で、住宅ローン控除について徹底的に解説していきます。

目次

1.住宅ローン控除の仕組み
☞1-1 どの税金からどのくらい控除されるか?
☞1-2 どのような条件で控除を受けられるか?
・1-2-1 居住用住宅の購入
・1-2-2 床面積50㎡以上
☞1-3 住宅ローン控除を受ける流れ

2.税金が控除される上限
☞2-1 居住年ごとの違い
☞2-2 所得税の上限を確認する方法
☞2-3 住民税の上限を確認する方法

3.具体的な手続き方法
☞3-1 敷地取得に関わるローンがない場合
☞3-2 敷地取得に関わるローンがある場合

4.まとめ

1.住宅ローン控除の仕組み

住宅ローン
まずは、住宅ローン控除の仕組みを知りましょう。
具体的には、以下3点を知っておくことが大切です。

・どの税金からどのくらい控除されるか?

・どのような条件で控除を受けられるか?

・住宅ローン控除を受ける流れ

特に、住宅ローン控除は受けられる「条件」があります。
その条件に該当しないと控除を受けられないので、その点は特に注意しましょう。
また、概要は以下に記載しますが、詳細は国税庁ホームページ※1を確認ください。

※1住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1213.htm

1-1 どの税金からどのくらい控除されるか?

住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の1%を、所得税・住民税から控除するという仕組みになっています。
たとえば、2017年に住宅ローンを組んでマンションを購入したとして、2017年末の住宅ローン残高が2,400万円だとします。
残高2,400万円の1%は24万円になるので、その年の所得税と住民税から最大で24万円控除されるということです。

ただし、控除される金額は24万円が上限ではありますが、所得税・住民税にもそれぞれ上限があります。
その点の詳細は後述するので、良く確認しておきましょう。

1-2 どのような条件で控除を受けられるか?

住宅ローン控除は全ての物件、全ての人が受けられるわけではなく、受けるためには以下のような条件があります。

・法人ではなく個人が住宅ローンを組むこと

・居住用住宅を購入すること(新築、中古どちらも対象)

・住宅ローン控除を受ける人の所得が3,000万円以下である

・取得した住宅が50㎡以上であり、半分以上が居住用住宅として利用している

・住宅ローンは10年以上の借入期間であること

・居住した年の前後2年で、他の特例を利用していないこと

上記の中で特に気を付けるべき点は、「居住用住宅の購入」「床面積50㎡以上」 という点です。
また、詳細は国税庁ホームページ※1で確認ください。

1-2-1 居住用住宅の購入

住宅ローン控除は居住用住宅の購入時しか適用できず、投資用不動産の購入時には適用できません。
投資用不動産を購入するときには、そもそも住宅ローンを利用できず、アパートローンや不動産投資ローンを利用することになります。

ここで注意すべき点は、どのように居住用か投資用かを判断するか?という点です。
基本的には、居住用かどうかを住民票で判断します。
つまり、その物件に自分の住民票があれば居住用不動産と判断されるということです。

仮に、転勤によって、住宅ローンを組んで購入した物件を離れることになったとします。
その場合は、住民票が別の場所に移り、居住用物件ではなくなるので、その時点で住宅ローン控除は受けられなくなります。
もしローン控除を受けるとすると、家族だけはその家に残し単身赴任の形を取る必要があります。

1-2-2 床面積50㎡以上

また、床面積が50㎡以上という点も注意すべき点です。
なぜなら、ここでいう床面積は図面上の面積ではなく、登記簿上の面積だからです。
住宅を購入するときは、広告や図面集に記載されている情報を基に、間取りや広さを判断します。

しかし、広告や図面集に記載されている面積は「壁芯面積」といい、壁の一部も面積として含まれている数値です。

一方、登記簿面積は壁の面積は一切含めずに、壁の内側から測定する「内法面積」になります。
つまり、登記簿面積の方が面積は小さくなるということです。

そのため、特に50㎡~53㎡程度の住宅を購入するときは気を付けましょう。
登記簿面積は広告上の面積から3㎡前後減ることは多いので、53㎡くらいだと、もしかしたら登記簿面積で50㎡を切っているかもしれません。

また、登記簿面積は登記時(物件引渡後)にしか分からないので、物件購入時に登記簿面積を知ることはできません。
登記簿面積で50㎡を切りそうな物件は、住宅ローン控除は受けられない可能性を加味して検討しましょう。

1-3 住宅ローン控除を受ける流れ

住宅ローン控除を受けるときは、初年度は確定申告が必要になります。
詳細は国税庁ホームページ※1を見て欲しいのですが、実際に確定申告を作成するときは国税庁の確定申告作成コーナー※2を利用すると良いでしょう。

また、会社員の方は一度確定申告をしてしまえば、2年目以降は会社の方で年末調整をしてくれます。
つまり、2年目以降は特に手続きしなくて良いということです。

ただし、個人事業主の方は、会社が年末調整してくれるわけではないので、2年目以降も確定申告が必要です。

また、必要書類は以下の通りです。

・登記簿謄本

・住民票

・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

・住宅ローン償還表

住宅ローン償還表とは、住宅ローンを借りている金融機関が、毎年郵送してきてくれる書類です。
その書類に年末のローン残高が記載してあります。

この書類はなくさないよう大事に保管してきましょう。
なお、詳細は後述します。

※2国税庁 確定申告作成コーナー
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/kakutei.htm

2.税金が控除される上限

税金
先ほども少し触れましたが、ローン残高の1%という上限以外にも、以下3つの観点から控除される税金の上限が決まっています。

・居住年ごとの違い

・所得税の上限がある

・住民税の上限がある

まず、居住年ごとに年間控除できる上限が決まっています。
そのため、特に住宅ローンを既に組んでいて居住中の人は、居住年によって上限が異なっているので、自分自身が適用できる上限額を把握しておきましょう。

また、所得税と住民税にも控除できる上限があります。
以下より、その上限額と控除限度額を確認する方法を解説していきます。

2-1 居住年ごとの違い

まず、以下のように居住年ごとに上限が決まっています。
また、場合によっては「住宅ローンの年末残高×1%」のパーセンテージが異なる場合もあり、控除される期間が異なる場合もあります。

居住した年控除期間控除限度額
2007年1/1~12/3115年1年目~10年目
年末残高×0.6%(限度額15万円)
11年目~15年目
年末残高×0.4%(限度額10万円)
2008年1/1~12/31
※控除期間を10年、15年選択
10年1年目~6年目
年末残高×1%(限度額20万円)
7年目~10年目
年末残高×0.5%(限度額10万円)
15年1年目~10年目
年末残高×0.6%(限度額12万円)
11年目~15年目
年末残高×0.4%(限度額8万円)
2009年1/1~2010年12/3110年1年目~10年目 年末残高×1%(限度額50万円)
2011年1/1~12/3110年1年目~10年目 年末残高×1%(限度額40万円)
2012年1/1~12/3110年1年目~10年目 年末残高×1%(限度額30万円)
2013年1/1~12/3110年1年目~10年目 年末残高×1%(限度額20万円)
2014年1/1~2021年12/3110年1年目~10年目 年末残高×1%(限度額40万円)

上記で注目すべき点は、各年の限度額が異なる点です。

たとえば、2012年に居住した物件であれば年間30万円が限度額になりますし、2013年であれば限度額は年間20万円まで減少します。
一方、2014年~2021年に居住するケースであれば、年間限度額は40万円まで拡大します。

控除期間は10年ですので、2012年に取得した場合と2014年に取得した場合は、10年合計で最大200万円の差が出るということです。
なお、上記の限度額とは1年で控除される限度額のことを指しています。

住宅ローン控除の限度額やパーセンテージは、日本の市況が大きく関係してきます。
現時点で2021年までのローン控除額は決定していますが、住宅取得時は念のためローン控除の限度額やパーセンテージは確認しておくと良いでしょう。

2-2 所得税の上限を確認する方法

また、住宅ローン控除は、あくまで支払った所得税と住民税から控除されるという仕組みです。
つまり、支払った所得税以上には控除されない(できない)ということなので、前項の上限額に関係なく、支払った所得税額が上限になります。

たとえば、2015年に居住したマンションを、住宅ローン4,000万円を組んで購入したとします。
このケースで、仮に2015年のローン残高が3,900万円だったとします。

その場合、まず前項のローン限度額に照らし合わせると、2015年に居住しているので、年間控除限度額は40万円になります。
つまり、ローン残高3,900万円の1%である39万円は、全額控除できるという計算になります。

しかし、2015年に支払った所得税が仮に25万円であれば、所得税からは25万円控除され、残りの14万円(限度額39万円-所得税25万円)は住民税から控除されます。

会社員の方は、源泉徴収で既に所得税は毎月徴収されています。
そのため、控除された分は、年末調整で返還されるという流れです。
個人事業主の方は、確定申告後に還付されるので、会社員の方よりは還付のタイミングは遅くなります。

自分が支払った所得税額を確認するときには、会社から配布される源泉徴収票を見ましょう。
源泉徴収票の中段右側に「源泉徴収額」という欄があり、その欄に記載してある金額が所得税になります。

2-3 住民税の上限を確認する方法

つづいて、住民税から控除される上限額は以下の通りです。

居住した年控除期間控除限度額
~2014年3/31ローン控除期間に準ずる最高97,500円
2014年4/1~2021年12/31最高136,500円

所得税は国税ですが、住民税は各自治体が管理している地方税になります。
そのため、住宅ローン控除の控除額も一応は地方が決めているということになっていますが、実際は全国の自治体が上記の控除額を適用しています。

先ほどの例のように、居住年からの控除限度額が40万円、年末のローン残高が3,900万円、支払った所得税が25万円の例で見ていきましょう。
この場合、先ほどいったように、所得税は支払った25万円が限度額なので、残りの15万円は住民税から控除します。

しかし、住民税の控除限度額は、上記のように136,500円です。
そのため、このケースの場合、25万円+136,500円=386,500円が住宅ローン控除で、控除できる上限ということです。
つまり、本来39万円まで控除枠があったものの、所得税額と住民税額によって、全てを控除しきれなかったということです。

また、住民税の控除手続きは、別途申請は不要です。
住民税は所得税額によって決まり、住民税額を示す「住民税決定通知書」は毎年6月頃に手元に届きます。
その明細の「税額控除」欄に控除額が記載されているので、所得税とは確認方法が異なる点は覚えておきましょう。

3.具体的な手続き方法

住民票
先ほど少しだけ触れましたが、最後に住宅ローン控除を受けるための具体的な手続き方法を解説します。
繰り返しますが、初年度は確定申告が必要であり、個人事業主の方は次年度以降も確定申告が必要です。

3-1 敷地取得に関わるローンがない場合

まず、敷地取得時にローンを組まなかった場合です。
マンションは敷地と建物が一体として扱われるので、このケースは主に一戸建て購入時の話です。
この場合は、以下の書類が必要になります。

・住宅借入金等特別控除額の計算明細書

・ローン償還表

・住民票の写し

・売買契約書の写しや請負契所の写し

上記のうち、売買契約書に写しなどは、「住宅取得日」「取得費用」「50㎡以上である旨」が分かる書類であれば何でも構いません。

3-2 敷地取得に関わるローンがある場合

一方、敷地取得に関わるローンがある場合には、以下の書類が必要です。

・敷地の登録証明書や売買契約書の写しなど

・ローン償還表

・住民票の写し

一点覚えておくべきことは、前項も本項も初年度と次年時以降で、必要書類の種類が異なるという点です。
上記については、色々な種類があるので、詳細は国税庁ホームページ※1で確認ください。

いずれにしろ、書類がもろもろ必要なので、売買に関する書類やローンに関する書類はきちんと保管しておくことが大切になります。

4.まとめ

住宅ローン控除に関しては、以下の点を覚えておきましょう。

・住宅ローン控除にも限度額がある

・所得税額と住民税にも限度額がある

・手続きは確定申告が必要

・必要書類は保管しておく

特に知っておくべき点は、控除限度額になります。
控除限度額の仕組みをしっかり理解し、自分に照らし合わせて、どの程度の金額が控除されるかを知りましょう。
それを知ることで、年間どのくらいの金額が還付されるかが分かり、収支を組みやすくなります。

- 2017年09月23日