高齢者向けやペット可の賃貸マンション経営、そのメリット・デメリットとは?

賃貸マンションを経営する時に気を付けなければいけない点は「ニーズ」です。今、賃貸マンションに求められているモノと、20年前に賃貸マンションに求められていたモノは違います。例えば、昔はバリアフリーの意識が今ほどはありませんでしたし、ペット可のマンションも少なかったです。

このように時代が変わればニーズが変わり、そのニーズをキチンと汲み取ってマンションを経営しないといけません。今回は、昨今高まっているニーズである「高齢者向け」と「ペット」という2つのテーマについてお話します。

1.高齢者向け住宅について

高齢者まずは、高齢者向け住宅についてです。

1-1高齢者が考える住まい

直近の内閣府のデータ※1を見ると、高齢者が「理想」と思う住まいについてのアンケートで、「高齢者向け住宅や介護施設」と答えた人は20%を超えています。単純計算で日本の65歳以上の人口が平成27年時点で3,384万人※2いますので、その20%と考えると676万人に当たります。

しかし、日本の高齢者向け住宅はどの程度あるのでしょうか。高齢者向け住宅(後述します)に登録されている住宅はわずか20万戸※3に満たない数字です。つまり、圧倒的に高齢者向け住宅は少ないという状況なのです。

※1平成27年11月 内閣府政府広報室発表「住生活に関する世論調査
※2総務省「高齢者人口
※3サービス付き高齢者向け住宅 情報提供システム

1-2高齢者向け住宅とは?

前項で言った「高齢者向け住宅」とは、高齢者が安心して生活することを目的として作られた住宅の事です。平成23年に制定された「高齢者の安全確保に関する法律(高齢者住まい法)」により、この高齢者向け住宅の定義が決まりました。

例えば、住宅の構造にで「バリアフリー」「高齢者向け設備」「安否確認サービス状況」などの様々な条件を設定し、都道府県が認定して決めます。上述した「20万戸」と言う数字はこの登録数から来ています。

1-3高齢者向け住宅のメリット・デメリット

メリット・デメリットこのような高齢者向け住宅を、マンション経営として運用した場合のデメリット・デメリットは以下の通りです。

<メリット>
・高齢者が住みやすく、今のニーズを拾えているので空室リスクが少ない
・サポート体制も完備されているので、家族も安心できるので、同意を得やすい

<デメリット>
・保証金、家賃が高くなりがち
どうしても設備の導入やサポート体制の完備などの費用がかかりますので、設備の補修費もかかり、初期費用もかかります。そのため、保証料や家賃を高く設定せざるを得ないです。

・支払いリスク
ご家族が完全にサポートしてくれれば良いですが、高齢の方は収入が年金しかないため支払い能力リスクがあります。ご家族の方を連帯保証人にするケースがほとんどですが、通常の場合よりも支払いリスクは覚悟しなくてはいけません。

・コミュニケーションリスク
高齢のためどうしてもコミュニケーションが取りにくいです。そのため、ご家族の協力が必須です。入居者診断はキチンとやる必要があります。

1-4リスクの解消方法

前項で言ったリスクを解消することが、高齢者向けマンション経営の必須条件になります。「連帯保証人に家族を付ける」のはマスト項目です。それ以外には、いかに集客を多くして、入居者を見極める余裕を作るかと言う点が大事になってきます。

・通常の住宅と根本的に違うと認識する
高齢者向け住宅の経営は通常のマンション経営と全く違うと考えましょう。通常の住宅に住む方の「ニーズ」と高齢者向け住宅に住む方の「ニーズ」が全然違うのが理由です。通常の住宅は、「立地」を考える時に20代~30代(広い部屋であれば30代半ば~40代前半)をターゲットにします。

そのため、交通利便性や周辺施設の充実などを重視しますが、高齢者はそれを求めません。どちらかと言うと「静かな場所」や「家族が車で来やすい場所」などを求める場合が多いです。

今までの「投資物件を選ぶ視点」を180度変えて「高齢者」をターゲットにして考えてみましょう。今後高齢者向け住宅のニーズは増してくると思いますので、特にマンション経営を始める方は気を付けましょう。完全に高齢者向け住宅を造るのがリスクと感じるならば、せめて「今後高齢者向け住宅に改装しやすい」とう視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

2.ペット可のマンションについて

ペット可今ではペット可のマンションも増えてきました。しかし、実はまだまだペット不可のマンションも多く、都内では約80%程度の賃貸マンションがペット不可と言われています。その状況の中でペット可にすると差別化が出来ますので、マンション経営を考えている方は検討してみてはいかがでしょうか。この章では、ペット可のマンションを経営する際の注意点などをご紹介します。

2-1ペット可マンションのリスクを知ろう

まずはペット可マンションを運営するリスクです。

・原状回復費用が高くなりやすい
一番のリスクは原状回復費用です。どうしても室内に傷や汚れが付きやすく、毛詰まりなどの影響で配管も劣化しやすいです。また壁紙に臭いが付いたり、床が変色したりする場合があります。それらを補修する原状回復費用が高くなりがちです。

・近隣住戸とのトラブル
二番目のリスクはマンション内のトラブルです。犬や猫の鳴き声は大きさによっては隣戸にも響きます。鉄筋コンクリート造でも響きますので、木造なら尚更です。また、鳴き声だけなく、エレベーターなどの共用部に臭いが充満したり汚れたりする可能性があります。トラブルが発生しても住民同士で解決すれば良いですが、時には管理会社経由でオーナーにクレームが入る場合もあります。

2-2ペット可マンション経営での対策

リスク解消前項のリスクを少しでも減らすためには以下のような対策が効果的です。

・ペットの種類の制限
一般的に飼育可能なペットは犬や猫になりますが、ウサギや子ザルなどを飼っている人もいます。特に爬虫類やサル系は嫌いな人も多いですし、他の入居者を傷つけてしまうリスクもあります。そのため、飼育できる動物の種類は制限した方が良いです。

・ペットの大きさ、個体数の制限
また、ペットの大きさと室内で飼育して良い個体数も制限しましょう。例えばエレベーターに同上する犬がチワワなのか、ゴールデンレトリバーなのかで、同乗者の印象は違います。また、チワワが1匹乗ってくるのと5匹乗ってくるのとでも印象は変わります。鳴き声の問題もありますので、例えば中型犬までで2匹を超える数は飼育禁止などの制限を設けておきましょう。

・原状回復の条件
上述しましたが、ペット可のマンションは原状回復費用が高くなる場合が多いです。そのため、敷金0円という取り決めは避けましょう。また、退去時は「無条件に壁紙を張替え入居者が費用負担する」などの確認書を締結しておきましょう。

※現状回復については「賃貸における原状回復とは?ガイドラインや費用を知ってトラブルを回避しよう」も参考にしてみましょう。

・家賃の設定
家賃の設定は少し高めにします。ペット可のマンションを探している方は一定数いますし、建物もそれなりに設備を導入する必要があるからです。例えば、ゴミ置き場に防臭設備を設置したり、ペット専用の足洗い場を設けたりする必要があります。

これらの対策を行えば前項で言ったリスクは軽減できます。ペット可のマンションが少ないエリアなどは差別化出来ますので、マンション経営を考えている方は検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。マンション経営も企業と同じで、消費者(この場合は賃借人)のニーズを捉え、競合物件と差別化する必要があります。そのためには、今後差別化出来るポイントである「高齢者向け住宅」と「ペット可住宅」の事を知っておきましょう。

どちらもリスクはありますが、ある程度は事前にリスクヘッジ出来るポイントです。マンション経営に取り入れて利益が得られると判断すれば、是非上記の事項に気を付けて実践してみてください。

- 2016年08月10日