マンションを貸すときに必ず知っておきたい5個のこと

転勤などによって、せっかく購入したマンションから引っ越さなくてはいけないこともあります。
その場合、「売却するのはもったいない」と考える人もいるので、今まで住んでいたマンションを賃貸する人も多いです。

しかし、居住していたマンションを賃貸する場合は、投資用マンションを賃貸する場合と異なり、色々な注意点があります。
その注意点を知らずに賃貸してしまうと、金銭的な損失を受けることもあるので注意しましょう。

目次

1.マンションを貸すときの流れを知ろう
☞不動産会社への依頼
・仲介を依頼
・管理も依頼する
☞賃貸方法を選ぶ
・サブリース
・定期借家契約
☞入居者の募集

2.部屋を貸すときの経費を知ろう
☞家具、家電撤去費用
☞クリーニング費用
☞修繕費用
☞固定資産税
☞マンションの管理費・修繕積立金

3.確定申告について知ろう
☞不動産所得について
・経費について
・課税方法について
☞確定申告について

4.賃貸借契約について知ろう
☞なぜ賃借人に強いか
☞賃借人が保護される理由

5.居住用不動産を賃貸するときの注意点を知ろう
☞家賃設定
☞住宅ローン

6.まとめ

1.マンションを貸すときの流れを知ろう

賃貸
まずは、マンションを貸すときの流れを知っておきましょう。

居住してからのマンションを貸す場合も、通常の投資用マンションを貸す場合も、基本的には以下のような流れになります。

・不動産会社へ依頼

・賃貸方法を選ぶ

・入居者の募集

大枠ではありますが、原則は不動産会社へ仲介を依頼して、管理形態を選び、入居者を募集するという流れになります。

不動産会社への依頼

まずは、不動産会社へ仲介を依頼することです。

不動産会社へ依頼するときに決めておかなければいけないことは、不動産会社にどこまで依頼するかという点です。
不動産会社へは、「仲介だけ」依頼する方法「その後の管理」まで依頼する方法があります。

仲介を依頼

仲介だけを依頼する場合には、不動産会社に以下のことをお願いします。

・入居者の募集

・契約条件の交渉(賃料や入居日)

・賃貸借契約関係の手続き

・入居手続き関係のサポート

仲介だけといっても、入居者を募集した後の交渉や、賃貸借契約の手続きは行ってくれます。

報酬としては、賃借人と賃貸借契約を結んだ後に、家賃1か月分をオーナーから不動産会社へ支払うケースが多いです。
本来であれば、不動産会社が受け取って良い仲介手数料は、「1か月分の家賃」を越えなければ、オーナーと賃借人からのどちらから受け取っても良いです。

ただ、今は「礼金」として賃借人がオーナーに金銭を支払い、オーナーが仲介手数料として不動産会社に支払うのが通例です。

管理も依頼する

一般的な賃貸の場合には、こちらの「管理まで依頼する」方が多いです。

管理まで依頼する場合には、不動産会社は前項で解説した業務のほかに以下の業務も行います。

・家賃の入出金管理

・入居者からのクレーム対応

・建物の掃除や点検

これらの業務をオーナー自身が行うと面倒なので、不動産会社に依頼してしまうというワケです。

ただ、入居していたマンションを賃貸に出す場合には1戸のマンションであり、建物自体の管理はマンション自体で依頼している管理会社が行ってくれます。

そのため、「賃借人からのクレーム対応や入金管理くらい自分でやる」という人は、前項の「仲介だけ」依頼するパターンでも良いかもしれません。
不動産会社にこの管理業務まで依頼すると、賃料の5%程度を毎月支払う必要があります。

賃貸方法を選ぶ

不動産会社への依頼が終われば、次にどのような賃貸方法にするかを選びます。

賃貸方法は、大きく分けて以下3つの方法があります。

・通常の賃貸

・サブリース

・定期借家契約

通常の賃貸に関しては、一般的な「賃貸借契約」のことです。
2年に1度更新日があり、毎月賃借人が家賃を支払うという形態になります。

サブリース

サブリースは一括借り上げともいいますが、要は「空室保証」するタイプの賃貸形態です。

サブリースの流れとしては以下の通りです。

・不動産会社とマスターリース契約を結ぶ

・不動産会社が賃借人の賃貸借(サブリース)契約を結ぶ

要は、不動産会社にマンションを貸した後に、不動産会社が賃借人にまた貸しするということです。
そのため、賃借人が付かなったとしても、オーナーからしてみれば不動産会社から毎月賃料をもらえるというワケです。
そのため、「空室保証」といいます。

ただし、空室保証するというリスクを不動産会社が負う代わりに、家賃の10%前後の手数料が毎月発生します。

定期借家契約

定期借家契約は、決まった期限で必ず賃貸借契約を解除できるという契約形態になります。
居住中のマンションを賃貸に出すときには、「将来的にそのマンションへ戻ってくる可能性がある」という人も多いです。

しかし、詳しくは後述しますが、賃貸借契約はオーナーの一存で賃借人を退去させるのは非常に難しくなっています。
そのため、一度賃貸借契約を結ぶと、自分が家に戻りたいときに戻るのは難しいです。
そのようなときには「定期借家契約」が効果的です。
定期借家契約は必ず解約する日が決まっています。
定期借家契約を結び、自分がマンションへ戻る予定の時期を解約予定日に設定すれば、都合の良いタイミングで戻ってくることが可能です。

※さらに「定期借家」について詳しく知りたい人は、賃貸契約「定期借家」とは何?を参照してください。

入居者の募集

不動産会社に依頼をして、賃貸形態を決めたら、いよいよ入居者の募集をします。
入居者の募集はネットやチラシなどを不動産会社が作成し、広告活動をしてくれます。
この時点では、オーナーが行うことはありません。

ただ、実際に入居検討者が現れたときに、最終的に入居を許可するかはオーナーが判断します。
審査や保証会社を付けるかなど、細かいことは不動産会社が行いますが、基本的にオーナーがNOと言えば賃貸借契約を結びません。

仮に、空室リスクをヘッジする目的で審査にハードルを設けたい場合は、事前に不動産会社に伝えておきましょう。
もしかしたら、広告宣伝のやり方なども変わってくる可能性があります。

2.部屋を貸すときの経費を知ろう

経費
次に、部屋を貸すときの費用を知りましょう。

居住中の部屋を貸すときには、前項で解説した「仲介手数料」と「管理委託費用」以外に、以下の費用が発生します。

・家具、家電撤去費用

・クリーニング費用

・修繕費用

・固定資産税

・マンションの管理費・修繕積立金

家具、家電撤去費用

住んでいたマンションを貸すときには、家具・家電をどうするか決めましょう。

「家具・家電付き」のマンションとして貸すこともできますが、1R~1LDKくらいのコンパクトマンションでない限りは避けた方が良いでしょう。

なぜなら、コンパクトマンションは単身者が対象のため、「はじめての一人暮らし」の方も多いです。
このような方には、家具・家電付きマンションは喜ばれますが、夫婦やファミリーの人は既に家具・家電を持っています。
そのため、逆に家具・家電は不要になるというワケです。

仮に、次の新居に家具・家電を持っていかないものの、処分もしたくない場合には「トランクルーム」を賃貸するという手段もあります。
毎月賃料が発生しますが、検討してみてはいかがでしょうか。

クリーニング費用

居住中のマンションを賃貸に出す場合には、一度自分で徹底的に掃除してみましょう。
当然ながら、賃借人も汚い部屋は敬遠します。
仮に、自分で掃除しても汚れが落ちない場合には、室内にクリーニングを入れることも検討しましょう。

修繕費用

また、今後かかってくる費用として、賃借人が退去する際の修繕費用があります。
結論から言うと、賃借人が退去する際の原状回復費用は、ほとんどがオーナー負担となります。

国土交通省もガイドライン※1を出典していますが、修繕費用が賃借人の負担になるときは賃借人の故意・過失によるものです。
そのため、「タバコによる壁紙の変色」、「明らかに使い方が悪いことによる傷」などでない限りは、オーナーが修繕することになります。
自分のマンションを長期間賃貸する予定の人は、この修繕費用が継続的にかかる点は認識しておきましょう。

※1国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

※現状回復については「賃貸における原状回復とは?ガイドラインや費用を知ってトラブルを回避しよう」も参考にしましょう。

固定資産税

固定資産税は、毎年1月1日にその不動産を「所有している人」にかかる税金です。
そのため、賃貸したとしても税金の支払い義務はオーナー側にあります。

マンションの管理費・修繕積立金

また、そのマンションの管理費・修繕積立金も、あくまでそのマンションのオーナーに支払い義務があります。
管理費・修繕積立金も含めて賃料設定するのが通常ですが、マンションの管理費・修繕積立金は自分の口座から引き落とされる点は認識しておきましょう。

3.確定申告について知ろう

確定申告
つづいて、確定申告について知りましょう。

マンションを賃貸するということは、賃料収入が発生します。
賃料収入は「不動産所得」になりますので、確定申告をして納税する義務が発生するのです。

不動産所得について

不動産所得の計算方法は「年間賃料収入-年間経費」になります。

経費として換算できるのは、前項で解説した項目のほかにもあるので、前項の項目も含め以下にまとめます。

・クリーニング費用

・修繕費用

・固定資産税

・マンションの管理費・修繕積立金

・減価償却費

・住宅ローン利子部分

・税理士報酬

経費について

前項で解説していない費用は「減価償却費」「住宅ローン利子部分」「税理士報酬」です。

減価償却費は、物件を取得した金額を少しずつ「経費」として計上できる費用です。
この費用は、不動産会社に算出してもらうか、国税庁の確定申告作成コーナー※2で試験的に計算しみると良いでしょう。
金額としては大きな額になるので忘れないようにすることです。

また、住宅ローンを支払っている場合には、利子部分は経費として計上できます。
ただ、ローンについては注意点があるので、詳しくは後述します。

最後の税理士報酬とは、確定申告を税理士に依頼した場合の報酬です。
税理士にもよりますが、5~10万円程度の報酬が発生し、その金額も経費として計上できます。

※2国税庁 確定申告作成コーナー
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/kakutei.htm

課税方法について

不動産所得は「総合課税」といい、ほかの所得と合算して税金を計算します。

たとえば、以下の例で見てみましょう。

・年間家賃収入144万円

・年間経費36万円

・給与所得660万円

仮に、不動産所得がなかったとします。
そうなると、所得税率※3に照らし合わせ「660万円×20%-控除額427,500円=892,500円」が所得税になります。

しかし、この人には108万円(144万円-36万円)の不動産所得があります。
そのため、この人の所得は768万円(給与所得660万円+不動産所得108万円)となり、所得税率※3と照らし合わせると
「768万円×23%-636,000円=1,130,400円」
が所得税額になります。
つまり、不動産所得があることによって237,900円(1,130,400-892,500円)税額が上がるということです。

※3国税庁 所得税
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm

確定申告について

上述したような仕組みで、その年の不動産所得がある場合には、翌年2月15日~3月15日までの期間で確定申告する必要があります。
確定申告の書類自体は、先ほど紹介した国税庁のホームページ※2で、自力で作成することは可能です。

ただ、「経費として計上するかどうか」「経費額がどのくらいになるか」などの不明点がある場合には税理士に相談しましょう。
確定申告日が近くなると、最寄りの税務署で「無料税務相談会」を行っている場合もあるので、ぜひ活用してみてください。

いずれにしろ、サラリーマンであれば「給与所得」、個人事業主であれば「事業所得」と不動産所得は合算して計算することになる点は覚えておきましょう。

4.賃貸借契約について知ろう

賃貸借契約書
つづいて、賃貸借契約についてです。

先ほども少し触れましたが、賃貸借契約書は賃借人に有利な内容になっています。
その点を良く理解しておきましょう。

なぜ賃借人に強いか

そもそも賃貸借契約は「借地借家法」という法律が基となっている契約です。
借地借家法は基本的に賃借人保護が目的で作成された法律なので、賃貸借契約も賃借人に有利な内容になっているということです。

賃借人が保護される理由

賃借人が保護される理由は、単純に賃借人の立場が弱いからです。
仮に、賃貸借契約書上「オーナーの都合で賃貸借契約は解約できる」という状況の場合には、賃借人は大きな被害を受けます。

たとえば、賃借人が病気で仕事に就けない状況の場合には、次に住む物件を探すのも困難です。
そのため、オーナーの都合で賃貸借契約が解除されれば、最悪の場合賃借人は住む家がなくなってしまいます。

一方、オーナーは今住んでいる家があるので、賃貸借契約を解除できなくても基本的に住む家がなくなるとは考えにくいです。
そのため、賃貸借契約を解除する前提であれば、先ほどいった「定期借家契約」にする必要があります。

5.居住用不動産を賃貸するときの注意点を知ろう

注意点
最後に、居住用不動産を賃貸するときの注意点を解説します。

注意点は以下2点です。

・家賃設定

・住宅ローン

家賃設定を間違えると空室リスクが上がりますし、住宅ローンについては手続きが必要になります。
特に、住宅ローンについての知識がないと、金銭的な損失が発生することもあるので注意しましょう。

家賃設定

まず、今住んでいる居住用マンションを賃貸するということは、分譲賃貸になります。
要は、分譲マンションを賃貸するということで、賃貸用マンションよりも「居住環境が良い」と認識されるというワケです。
なぜ、分譲賃貸の方が居住環境は良いかというと、単純に賃貸用のマンションよりも仕様・設備が良いからです。

「仕様・設備が良い」とは、具体的には遮音性や断熱性が高いので、快適に居住できるということになります。
そのため、分譲賃貸の場合には家賃を高めに設定しがちですが、あくまで周辺の賃貸物件と比較した賃料設定にしなければいけません。

最近の賃貸マンションの設備・仕様は、グレードが高いマンションもあるので、高い賃料にすると空室になってしまうリスクがあります。
そのため、分譲賃貸だからという理由だけで賃料を高くせずに、周辺の競合しそうな賃貸マンションと比較して賃料は検討しましょう。

住宅ローン

住宅ローンは、あくまで「居住用」の住宅を購入するときのローンになります。
そのため、家を賃貸する場合には、原則住宅ローンを借り続けることはできません。
住宅ローンの本契約である金銭消費貸借契約の契約書にも明記されています。

そのため、居住用マンションを賃貸にする場合には、住宅ローンを借りている金融機関に連絡しましょう。

大抵の場合は、以下のようになります。

・金利が上がる

・賃貸用のローンに切り替え

・フラット35は民間ローンに切り替え

仮に、金融機関に申告せずに、住宅ローンを借りたまま賃貸に出すと、「金銭消費貸借契約違反」にもなりかねません。
最悪の場合には金融機関から「一括返済」が求められることもあるので要注意です。

また、住宅金融支援機構の提供するフラット35は、「入居用不動産」しかローン提供していないので、賃貸するときには民間金融機関のローンへ切り替えが必要になります。
仮に、ローンを切り替えるときには、手数料などがかかります。
詳細の金額は金融機関によって異なりますので、借り入れている金融機関へヒアリングしましょう。
これは、同じ金融機関内での切り替えでも、フラット35から民間金融機関への切り替えでも同じです。

住宅ローンについての色々な知識を知りたい人はこちら

6.まとめ

このように、居住していたマンションを賃貸するときには、以下の点を理解しておきましょう。

・不動産会社や賃貸形態を決めておく

・部屋を貸すときにはランニングコストが発生する

・賃貸にまわすと不動産所得が発生するので確定申告が必要

・賃貸借契約は賃借人に有利な契約

・住宅ローンは切り替える必要がある

- 2017年06月03日