最近銀行などの金融機関の広告で、高齢者を利用者とした不動産活用ローンとして、
「リバースモーゲージ」という商品を宣伝しているのを見たことがないでしょうか。
あまり聞き慣れない言葉ですが、ここ数年高齢者の生活を支えるための、ローンとして注目を集めています。
一般的に住宅ローンや金融ローンは返済の見込みが高い若い人を中心に融資されるものですが、このリバースモーゲージはなぜ高齢者を対象として融資されるのでしょうか。
そこでリバースモーゲージの仕組みとメリット、デメリットなどの特徴についてお伝えしていきます。
目次
1. リバースモーゲージとは
1-1. リバースモーゲージの仕組み
1-2. リバースモーゲージの歴史
2. リバースモーゲージの融資と返済システム
2-1. 資金の受取方法
2-2. 返済方法
2-3. ホームエクイティローンとリバースモーゲージの違い
3. リバースモーゲージの融資を受けるには
3-1. 対象となる年齢
3-2. 契約人以外にも融資は引き継がれるのか
3-3. 融資を受けるための不動産
3-4. 他の融資条件
4. リバースモーゲージを利用するメリット
4-1. リバースモーゲージの使い道
4-2. リバースモーゲージのリスクとデメリット
4-3. 「長生き」のリスク
4-4. 親族との関係のリスク
5. 取扱機関と商品名
6. まとめ
リバースモーゲージとはどんな声質を持ったローンなのでしょうか。
そしてなぜ高齢者こそ利用する価値の高いローンと言われるのでしょうか。
リバースモーゲージは自宅を担保として融資を受けるローンになります。
普通の住宅ローンの場合は自宅を担保にして、返済できない場合に抵当権を設定した不動産を金融機関が売却します。
一方でリバースモーゲージの場合は
すでに所有している自宅を担保にし、生活資金の融資を受け、自分が亡くなったあとに金融機関に自宅を売却するという契約を結びます。
保証人も不要です。
このリバースモーゲージが、なぜ今日本で注目されているかというと、2つの理由があります。
現代日本が抱える事情が如実に反映されたものといえるでしょう。
自分に子供がいない、資産を残さず自分のために使いたいという人が増えており、 そういった人がリバースモーゲージによって、年金だけでは足りない老後の生活資金の融資を受けているのです。
自宅を売却すると住む家がなくなってしまいますが、リバースモーゲージの場合は、生きている間は自宅に住むことができるので、住居の不安もいりません。
まさにいま日本が直面している少子高齢化社会によって脚光を浴びることになったローンと言えるでしょう。
このリバースモーゲージは、1960年代にアメリカで生まれ、日本でも1981年に導入されたことがありました。
しかしその時期はまだ日本が現在ほどの高齢化が進んだ社会ではなかったため、注目を浴びることもなかった上に、 バブル経済の地価の上昇で銀行側に不利になり、一度はほとんど融資されることは無くなりました。
しかし2000年代に入り一気に注目を集めることになったのです。
その背景として2002年、厚生労働省による号令のもと「長期生活支援金貸付制度」として、リバースモーゲージが国策に盛り込まれました。
ただ当初は、国や一部の自治体、民間金融機関などが少しずつ扱いを増やす程度に止まっていました。
ところが、2013年にみずほ銀行がメガバンク史上初めてリバースモーゲージの導入を発表したことに端を発し、 三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行が相次いで導入を決定し、リバースモーゲージは一躍脚光を浴びることになりました。
2013年と言えば、東京五輪開催が決定した年で、アベノミクス効果による株式相場や不動産価格が上昇カーブを描いていており、 そういった背景もリバースモーゲージに対する関心度向上に大きく作用したと考えられます。
さらに、2015年には国土交通省の直轄機関である「安心居住政策研究会」が、リバースモーゲージについて、フラット35を提供する「住宅金融支援機構」を活用した住み替え支援策や、 担保評価の基準見直し、公的な保証制度策定などの方針を打ち出しており、国を挙げてリバースモーゲージを普及させる取り組みが進んでいます。
自宅以外の資産がなく、貯金がないという高齢者に対して、多くの借入金の融資が受けられるリバースモーゲージは大きな魅力を持っているといえるでしょう。
仕組みがわかったところで、実際にリバースモーゲージはどのように融資されたお金を受け取り、また返済を行うのでしょうか。
リバースモーゲージを利用するには、まず金融機関に、そして自治体などに自宅を担保物件として土地評価額や建物評価額などを出してもらいます。
そして担保として評価された金額の50~80%を上限とした借入額の融資を受けられるようになります。
融資が決まった借入金額ですが、そのまま融資限度額を一括融資してもらうこともできますし、 年金のように、毎月や毎年など定期的に貸付限度額まで融資を受けるといった2つの方法がメインになっています。
また必要な時だけ、貸付限度額を上限に、適宜キャッシングの形で融資を受けることも可能です。
借入残高に注意をしてキャッシングを受けていき、必要がなければ返済義務のあるお金も減ります。
リバースモーゲージは現金などの金融資産を所有していない人を主に対象としたローンなので、定期的な返済をするのではなく、 債務者の死亡後に自宅などの不動産を売却することを前提にしています。
つまりは融資先が返済能力のない不良債権に近い存在なので、初めから担保の売却代金による資金回収を金融機関等は前提にしているのです。
また死亡時ではなく、融資を受けてから20年後など、一定の期間を経過した時点で返済を行うケースもあります。
余命が大体わかり、残りの人生に必要な資金が算定できた時点で、利用可能額から借りた分を返済するというケースもあります。
相続を受ける人間が現金で返済をすることもできますが、実際には自宅を売却する人が多くなっています。
一方でリバースモーゲージと似たような自宅を担保とした融資に、ホームエクイティローンがあります。
これは現在所有する自宅と、住宅ローンの残高の差額を「自宅の正味価値(ホームエクイティ)」として融資をするものになっています。
例えば4000万円の資産価値がある住宅を所有しており、住宅ローンの残高が2000万ならば、2000万円までの融資を受けることが可能です。
大きな違いとしてホームエクイティローンは自宅を手放すことは前提としておらず、40代などまだ働く人を対象としています。
そのため一定期間返済の義務がないものではなく、毎月融資を受けた金額から少しずつ返済をしていきます。
返済があるために、定期的な収入のない高齢者向けのローンとはいえないものになっています。
リバースモーゲージを是非利用して、老後生活の不安を解消した、と思っても金融機関等からの融資ですから、融資を受けるための条件が設定されています。
リバースモーゲージは老後資金の捻出のためのローンという側面が大きくなっているので、融資を受ける対象の年代も限られたものになっています。
一般的な金融機関では満60歳以上の人を対象としています。
一方で、みずほ銀行、東京スター銀行、スルガ銀行などは55歳以上の人にも融資を行っています。
リバースモーゲージの融資を受けられる世帯の形式としては、銀行をはじめとした民間の金融機関は単身者および夫婦世帯のみを対象としています。
一方で国や自治体が融資を行う場合は親子で同居している世帯も対象となっています。
夫婦世帯で配偶者が契約を引き継げるかには、一定の条件が設定されています。
〔配偶者がリバースモーゲージ契約の引継ぎを希望する場合の条件〕
金融機関や国が積極的に推し進めているリバースモーゲージですが、もちろん彼らも融資したお金を回収できないと破綻してしまいます。
しっかりと売却後に融資した分の資金を回収できる価値のある不動産かどうかは、最も融資を受ける上で見られるポイントと言えます。
住宅ローンの残務の有無に関しては、国の融資では残債があれば融資を受けられませんが、
民間の金融機関ならば残債があっても融資をしてくれるところはあります。
東京や大阪、名古屋などの都心であれば中古住宅でも、土地の分を売却できる可能性が高いので、融資を受ける条件に該当します。
しかし過疎化が進む地方の不動産は買い手が付かない、買い手がついても金額が著しく低くなる可能性があるので、 融資を受ける担保価値がないものとして、融資が認められないケースがあります。
さらに担保の不動産を売却するのは、契約者が無くなる数十年後ですから、その際の日本の状況を想定すると、地方の不動産はかなり売れにくくなっているはずです。
地方の郊外に住むと、融資を受けられない、もしくは少ない額の融資しか受けられないこともあります。
基本的には建物の価値が下がって土地の価値が担保になる一戸建ての物件を担保の対象にしていますが、 みずほ銀行や東京スター銀行、一部の自治体などではマンションも担保として認められるケースもあります。
融資額の上限は融資先が国の場合ならば不動産評価額の70%と高いのですが、 一般の金融機関では50%が上限になっていることが多いです。
都心など人口が多い場所の不動産でないと担保にならないということと併せて、所得者やある程度資産価値の高い不動産を所有していないと、 結局利用しづらいローンとも考えられます。
金利について、国の場合は長期プライムレート(*1)か上限金利(3%)のいずれか低い方を、 自治体の場合は長プラか上限金利(%)のいずれか低い方が適用になります。
民間金融機関については、長プラ以外にも短期プライムレート(*2)や独自の基準金利を設定しているところもあり、それぞれ確認が必要となります。
また、融資の条件に「遺言信託(*3)」等の信託契約を付帯させたり、建物の築年数制限を設けている金融機関もあります。
*1 長期プライムレート
*2 短期プライムレート
*3 遺言信託
リバースモーゲージがどんな融資の形であるのかが分かってきたところで、利用した方がいい人、利用することに生まれるメリットを考えてみましょう。
民間の金融機関の場合、リバースモーゲージの用途は自由にしていい、というケースがほとんどです。
多くの人は日常の生活資金に利用することになりますが、もちろん自分のためにつかう分には自由ですので、 住宅ローンの完済に使ったり、自宅の戸建住宅を高齢者住宅として、老後向けにリフォームする、また耐震工事、旅行などの娯楽や趣味の物の購入資金に使っても良いでしょう。
老後生活を豊かに彩るためのお金ですから、できるだけ後悔のないように使いたいものです。
親族に残すため、というケースはあまりないでしょうが自分の医療費や老人ホームに入るためのお金、介護費用として健康に過ごすために使うこともあります。
ただし事業資金や投資資金、金融商品の購入目的は認められていません。
投資などを目的とした場合、融資額以上の投資損が発生し、本人が破産するリスクがあるからです。
また「住宅ローン」と銘打ってリバースモゲージを打ち出している金融機関から融資を受けた場合には、 住宅の建築やリフォーム、耐震工事以外には使えません。
一方でリバースモーゲージにもリスクやデメリットは存在します。
まずは担保割れのリスクです。
不動産の価格は流動性があるために、融資を受けるための不動産価値が下がれば、担保割れが発生することもあります。
もし大幅に不動産の価値が下がってしまった場合には評価基準の見直しにより、 契約期間が満了する前に、融資してもらったお金の一括返済を求められるのです。
さらに2017年時点では、日銀のマイナス制作によって、日本は空前の低金利となっています。
もし今後欧米並みの金利となっていけば、金利の上昇によって毎月の返済額が増える可能性が高いです。
返済総額が担保不動産の評価額を上回ってしまうと、担保割れとなり返済をしなくてはいけません。
65歳でリバースモーゲージの融資を受けたとして、日本人の平均寿命である85歳でなくなることを想定して20年後の返済という契約にしたとします。
しかし85歳になっても元気であった場合、本来ならばとてもめでたいことなのですが、 リバースモーゲージの契約上では、契約者にとっては大きな問題が起こります。
融資期間が満了した後には不動産を売却するか、もしくは一括で融資分を返済しなくてはいけないので、 資産がない中でどちらかの選択肢を選ばなくてはいけません。
収入減が無くなるどころか、毎月の返済義務が出てくるとなると、破産する人も発生するでしょう。
さらに配偶者への契約の引き継ぎが認められていない金融機関で融資を受けていた場合は、 契約していた配偶者が死亡した後に自宅を売却しなくてはならず、住み家を失うというリスクもあります。
リバースモーゲージの融資条件や返済義務の発生、契約者の規定には金融機関ごとに様々な違いがあるので、融資を受ける前にしっかりと確認しておきましょう。
もし子供などの親族がいる場合は、リバースモーゲージを行うことで子供に資産を残さないということになります。
子供からすれば親が財産を残してくれないことで、関係にヒビが入り、介護などの問題が発生した時に面倒を見てくれない、ということもあります。
もし子供がいるのであれば、家を売って二世帯住宅を買い直す、同居を考える
などの方法を採ったほうが安全に老後を過ごせるかもしれません。
リバースモーゲージは不動産の評価額の50~80%の融資を受けられるものです。
受け取る金額だけ考えれば、売却をしたほうが多くなるということも、理解しておきましょう。
最後に、代表的なリバースモーゲージ商品(制度)をご紹介します。 なお、対象者、対象不動産、おもな特徴については、主要項目のみ抜粋して記載します。
○対象者
○対象不動産
○おもな特徴
参考:厚生労働省
○対象者
○対象不動産
○おもな特徴
参考:三井住友銀行
○対象者
○対象不動産
○おもな特徴
参考:三菱東京UFJ銀行
○対象者
○対象物件
○おもな特徴
参考:東京スター銀行
○対象者
○対象不動産
○おもな特徴
参考:りそな銀行
○対象者
○対象不動産
○おもな特徴
参考:足利銀行
○対象者
○対象不動産
○おもな特徴
参考:静岡銀行
○対象者
○対象不動産
○おもな特徴
参考:西日本シティ銀行
リバースモーゲージは上手に利用すれば、年金制度の崩壊に備えるための保険にもなりますし、老後の生活資金を捻出できる大変便利なローンです。
しかし日本でも歴史が浅いだけに、金融機関ごとの違いも大きく、潜在している問題が、10~20年後に顕在化してくるリスクもあります。
メリットとデメリット、そしてリスクをしっかりと把握し、長生きした時にはどうするかなど、 不測の事態への対応をファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談して、融資を受ける金融機関を決めていきましょう。
※ 本記事は2016年06月時点の内容になります。各サービス内容の詳細については当該サービス事業者にご確認ください。
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