スマートロックは今後カギのスタンダードになるかもしれない

スマートロックという言葉を聞いた事があるでしょうか。欧米では普及しつつありますが、日本ではまだ認知度は決して高くない商品です。しかし、スマホの普及やIoT※1、民泊(詳細は後述します)の展開により、スマートロックは今後急激に需要が高まると予想されます。そもそもスマートロックとはどういうものなのか。スマートロックのメリットとデメリットは何か、今後なぜ普及していくのか。今回は、今注目の「スマートロック」がテーマになります。

※Iot:「Internet of things」の略。モノとITの融合を指します。

スマートロックの概要と特徴

スマートロックスマートロックとは実物に鍵を使わずに、スマホを使う(鍵つまみ部分にかざす、近づける)ことにより、鍵の開錠・施錠が出来るロック方法の事です。スマートロックのメリット・デメリットを紹介します。

スマートロックの取り付け方法

スマートロックは取り付けも容易で専用の工具などは必要がありません。専用のキットが届き、ドアの内側に取り付けます。取り付ける時も、強固な両面テープで止めるので非常に楽です。このテープは強固なものの、取り外した後はテープ後が残りにくい素材なので、賃貸マンションでも安心して使用できます。

詳しくは後述する商品説明サイトでご覧ください。

スマートロックのメリット

メリットつづいて、スマートロックのメリットについてお話します。

鍵の開け閉めが楽

製品にもよりますが、ドアに近づくだけで開錠ができるので、わざわざバッグから鍵を取り出して鍵穴に差して・・・という一連の流れがなくなります。例えば、雨の日やベビーカーを押している時、子供を抱っこしている時なんかは非常に便利です。

また、賃貸不動産の内見時にも便利です。皆さんも経験があると思いますが、賃貸物件を見に行くときは、鍵の受け渡しが面倒です。鍵の受け渡しの都合でどこか別の不動産会社に行ったり、オーナーの元へ直接取りに行ったりする必要があります。スマートロックならその手間が省けるので、賃貸物件を見る時も時間の短縮に繋がります。

鍵の受け渡しが不要

実物のカギだと受渡が非常に面倒でした。わざわざキーボックスを買ってきて暗証番号を教えて、鍵を受け取りまたキーボックスに戻す・・・というやり取りが必要です。その一連の流れがスマートロックを利用すればなくなります。

例えばベビーシッターさんや、ハウスキーパーさんを雇っていた場合は楽ですし安全です。今までは書面で誓約書などを交わし、上述のキーボックスを利用する方法か、現地で鍵の受渡をする方法でした。しかし、スマートロックであればURLをメールやLINEで送れば終わりです。また、有効期限も決められるので、所定の時間になればスマートロックは使えなくなります。

安全性が高い

上述した事以外にも、基本的にはBluetoothを利用して通信するので安全性が高いです。スマホを利用してのリスクであるハッキングについては、Bluetoothは毎秒1,600回もチャネルを切り替えているため、データの傍受が困難であります。ですので、ハッキングされてロックを第三者に解除される可能性が低いのです。

閉め忘れ防止

これはメーカーや製品にもよりますが、扉を閉めて一定時間経つと自動で鍵も閉まる設定に出来ます。単純な閉め忘れがなくなりますし、例えば子供だけを家に残して外出する時も自動で閉まってくれるので安心です。空き巣被害の4割が「鍵の閉め忘れ」と言われていますので、空き巣対策にもなります。

紛失時も安心

実物の鍵をなくしてしまうと大変です。特に最近の住宅は複製しにくいディンプルキーを使う事が多いので、容易に合鍵を作る事ができません。複製するにしてもメーカーに直接依頼するため時間も費用もかかります。例えば夫婦で2本のディンプルキーを持っていたとします。仮に夫が鍵をなくしてしまえば、複製が出来るまでの数日~1週間は妻と鍵を共有する必要があります。

万が一その期間に妻も鍵をなくしてしまえば、一度ドアをこじ開けて一時的に新しい鍵を作り、また元の鍵に戻しておく必要があります。非常に大きな手間と費用が掛かってしまうのです。その点スマートロックであれば、仮にスマホをなくしたり、どこかに置いてきてしまったりしても安心です。別の端末でアプリをダウンロードして、IDとパスワードを入力すればスマートロックの機能が回復します。

スマートロックのデメリット

デメリットつづいて、スマートロックのデメリットについてお話します。

安全性

先ほどの安全性はあくまでBluetoothでの通信が前提です。仮にWi-fiを利用した場合には傍受されるリスクがBluetoothよりは上がります。

ドアによっては取り付けが出来ない

スマートロックは全ての扉に対応しているワケではありません。実際に取り付ける際はメーカーへ問い合わせをする必要がありますが、「ドアが平面でサムターン(つまみ部分)がドアノブから独立している」。こんなドアであれば大抵は付けられます。

但し、サムターンがドアノブと一体型の扉は付けられない可能性があります。また、メーカーによってはサムターンの厚さに制限があるので注意しましょう。

電池切れのリスク

スマートロックには2つの電池切れリスクがあります。1つ目はスマートロック本体の電池切れリスクです。鍵の開け閉めはスマートロックの設備が自動でサムターンを回すことで扉をロックしています。そのため、スマートロックの本体の電池が切れると作動しなくなってしまいます。但し、対策としては電池切れが近くなってくると警告がスマホに届いたり、そもそも電池の量を増やしたりして電池切れリスクに対応しています。

2つ目はスマホの電池切れです。恐らくスマートロックの本体の電池切れよりも、こちらのリスクの方が高いのではないでしょうか。これは気を付けておくしか方法はありませんが、予備のバッテリーを常備しておいたり、万が一のためにポストにキーボックスに入れてある実物鍵を保管しておいたり等で対策が出来ます。

スマートロックの現状と今後

低成長スマートロックのメリットとデメリットは上述の通りです。ご覧いただいた通り、メリットの方が大きく、大きなデメリットはないという点が理解頂けたと思います。しかし、スマートロックは現状普及しているとは言い難いです。

スマートロックの現状

まだ日本では普及していない一番大きな理由は、そもそも日本にこの製品がなかったという点です。欧米では普及が進んでいますが、欧米で10万台以上売り上げている「danalock(ダナロック)」も、日本に進出したのは2015年です。日本でのスマートロック市場は1兆円規模とも言われ、既にドコモやソニーもスマートロックの本格運用に向けて動いています。

今では賃貸会社もスマートロックを導入している会社もあります。例えば東急住宅リースは後ほど紹介します「Akerun」という製品を導入しました。勿論、まだ一部の物件ではありますが、賃貸を案内する時も楽ですし、賃借人の反応も良くなります。今後は更に色々な会社が導入を検討することと思います。

Airbnbの普及によるスマートロック需要の高まり

日本では今「民泊」が話題になっています。その民泊をする時には、スマートロックが便利なため爆発的な普及が見込まれているのです。今は民泊については過渡期のため、スマートロックの話の前にまず民泊について簡単に整理します。2016年6月時点では、以下のように3種類の民泊があります。

Airbnbとは?

簡単に言うと、一般人の民家に泊まることを仲介してくれるサイトです。例えば、私がアメリカ旅行をするとします。ホテル代が高いため、民家でも良いので安いところを探しているとします。その時にAirbnbを利用すれば場所と金額が記載されている「泊まってもOK」という家が探せます。そうすればAirbnb経由で予約と支払い、鍵の受け渡しの連絡が出来ますのでやりとりが非常に楽です。

旅館業法許可

民泊の種類の一つ目は旅館業法の許可を取る民泊です。現状では、基本的にAirbnbはこの許可がないとNGとなっています。昨年ごろからAirbnbを利用して、勝手に分譲マンションなどに外国人を泊めていた事が問題になっていました。管理規約上、分譲マンションで第三者に一時的に金銭を貰い泊めることはNGとなっているのです。そのため、旅館業法の「簡易宿泊所」の中に民泊を定義付け、基本は旅館業法の許可を取らないと民泊NGにしたのです。

新民泊法

正式名称ではありません。2016年6月現在、まさに策定している最中の法案です。背景には外国人観光客を増やすという戦略があり、そのためにはホテル数が少ないので、民泊の規制を緩め、受け入れ先を増やしたいという政府の考えがあります。新民泊法が出来れば、ある程度の規制は出来ると思いますが、旅館業法の許可を得ずにAirbnbを利用して民泊が出来ると言われています。

国家戦略特区

例えば大田区などは羽田空港に近いため、外国人が滞在しやすい街と言われています。そのため、新民泊法が出来る前、暫定的に規制を緩めた民泊を展開しています。このように2016年末を目処に新民泊法が制定される予定です。そのため、Airbnbを利用した民泊も増えると予想されます。

なぜ民泊(Airbnb)によりスマートロックが普及するのか?

民泊それでは、なぜ民泊が増えるとスマートロックが普及するのでしょうか。理由は以下になります。

手間がかからない

先ほど言ったようにスマートロックであれば鍵の受け渡しに手間がかかりません。スマートロックでないと民泊を行う外国人に鍵を貸す必要があるため、受け渡し方法を作り、相手に伝える必要があります。そのため、万が一鍵の受け渡しに失敗すれば民泊が成立しない上にクレームにもなりかねません。

スマートロックなら相手のLINEやメール、もしくはフェイスブックなどを経由してURLを送れば、それだけでロックを解除する事ができます。

安全性が高まる

例えばベビーシッターやハウスキーパーなどは顔を知っているケースが多いです。しかしAirbnbを利用しての民泊ですと、面識のない外国人が利用する可能性が高いです。そのため、例えば鍵を複製されてしまったり、鍵を盗難されてしまったりというリスクも0ではありません。

しかし、スマートロックを利用すればその心配もありません。鍵を開けられる期限も決める事が出来るので、民泊の期限が終了すれば家に入ることはできません。合わせて、入退出履歴も残るので、万が一何かあった時にも証拠として残ります。

このようにスマートロックと民泊の相性は非常に良いのです。スマートロックの初期費用も数万程度で済みます。数万で上記のようなメリットが受けられれば安いものです。

スマートロックの商品

ここではスマートロックの具体的な商品をご紹介します。

国内の最新スマートロック

Akerun

まずはAkerunという製品です。これは上記でお話をした機能を全て有しているスマートロックです。更に、サポートも充実しており、24時間の電話で対応しているセンターがあります。そのため、万が一スマートホンをなくしたり故障したりした場合でも対応してくれるため、実物の鍵をもっているよりも緊急時への対応力は高いです。また、1年間の保証が付いているため、故障したとしても安心です。

Qurio smart rock

こちらもAkerunと同様、上述の機能を兼ね備えたスマートロック。ソニーとWiLとの共同出資で誕生した「Qlio株式会社」が手掛け、特徴としては、スタイリッシュで小ぶりなため、ドアに後付けしたとしても違和感なく馴染む点です。価格は15,000円程度とお手頃で、規格が合えば後付けで設置する事ができます。もし、購入をご検討の場合は設置できるかの確認は事前に行いましょう。

Ninja Lock

不動産管理会社が開発・製造するスマートロックで、そのスタイリッシュな外観が特徴。スマホアプリやWebサイトから開閉できる他、権限のある携帯電話から開閉することもできます。取り付けはサムターンの上から被せてテープでつけるだけの簡単設置で、複数ユーザでの共有や期限付きユーザーの設定などシェアハウスやシェアオフィスでの利用やAirbnbでの利用も簡単です。

海外の最新スマートロック

Evoke

アメリカ製のスマートロックで、ドアノブメーカーKwitsetの開発によるもの。Bluetoorth認証機能付きで、バッグやポケットにiPhoneを入れた状態でロックに指をタッチすると解錠されます。さらに携帯の電波が届くところからであればどこでも鍵の操作が可能になるKevo Plusも有ります。

OKIDOKEYS

世界的な大手プロパイダ会社OpenWays Groupの子会社OKIDOKEYS社が開発するスマホだけでなくスマートキーで、カードキーやリストバンドキー、通常キーなどさまざまなタイプがあります。ドアの開け閉め時にアプリで知らせてくれるサービスもあり、家族での利用も安心です。

August Smart Lock

AugustSmartLockは、サンフランシスコに本社を構えるAugust社のスマートロックで、そのデザイン性の高さからアメリカで人気となっています。AugustSmartKeypadを導入すればキーパッドに暗証番号を入力するだけで解錠することができ、意外と面倒なスマートフォンでの操作や、電池切れを心配しなくて良くなります。その他、オプションを導入することで鍵に締め忘れを確認したり、遠隔操作で鍵を掛けたり、またインターフォンを押した際にスマートフォンを通して遠隔地から会話をすることもできます。

Bolt

現在使用している鍵に取り付けるだけで使えるスマートロックで、好評だったLockitronの後継機。
本体価格$99と、他のスマートロックと比べて低価格なのも特徴の一つで、開閉や鍵のシェアをアプリで行い、インターネットを使い世界中どこにいても開閉確認を行うことができます。

スマートロックの主な使い方

ここでは、Akerunを例にスマートロックの導入から使い方までご説明します。

Akerun導入

Akerunに対応しているかどうか確認

購入前に、Akerunを設置できるドアかどうかを確認しておきましょう。Akerunを設置できるかどうかは、サムターン(つまみ)とドアノブが離れており、サムターンの中心からドア枠まで51mm以上あることやAkerunを設置できるだけのスペースがあること、メーカーや型番が適合していることといった条件を満たす必要があります。

分からない場合はメーカーに写真を送ることで対応しているかどうか確認することができます。
https://akerun.com/check/

アプリのインストールとアカウント作成

Akerunを購入したら、最初にAppStoreもしくはGooglePlayからアプリをダウンロードしてインストールします。インストールしたアプリを起動したら、「サインアップ」から名前、電話番号、メールアドレスなどを入力し、アカウントを作成します。アカウントを作成したら、AKerunアプリの設定ページ内「Akerunを設置する」からスマートフォンのペアリングを行います。

アプリに従ってドアに設置する

Akerunアプリ内「Akerunを設置する」に沿って実際のドアへの配置まで進めます。ここまで、わずか5分。初期設定をしてドアに貼り付けるだけで誰でもすぐに使い始めることができます。

Akerunの利用方法

鍵の開け閉め

Akerunの設置と登録が完了したら、Akerunアプリからログインし、Akerunのついたドアの近くでロックボタンを押すと鍵の開け閉めが出来ます。

鍵のシェア

鍵をシェアするには、アプリ上で鍵を渡したい人の携帯電話番号やメールアドレスを入力して、有効期間など鍵の条件を設定して送信することで行えます。相手の携帯電話にはSMS通知かメールが届きます。

リアルタイムで利用履歴を確認

Akerunの所有者は、登録している家族や友人がAKerunで鍵の開け閉めを行った際にスマートフォン上にリアルタイムで通知させることができます。また、過去の利用履歴をアプリ上で確認することもできます。

不動産内覧向け導入も進んでいる

すでにご説明しましたが、スマートロックは賃貸不動産の内覧の現場でも導入が進んでいます。
特に賃貸物件を紹介する不動産仲介業者においては、一般的な鍵であれば管理会社と仲介会社との間で鍵の受け渡しが必要となりますが、スマートロックを利用することでそうした手間を省き、業務の効率化を図ることが目的です。

SUUMOでの導入事例

リクルートテクノロジーズの研究開発機関アドバンスドテクノロジーラボによる「iNORTH KEY」は、不動産内覧に特化したキーレスエントリーシステムで、既存システムでは対応できなかったサムターン形状にも対応しています。

HOME’S加盟の不動産店舗向け導入事例

HOME’Sを運営するネクストは、不動産会社間の物件見学に関わる業務をスマートロックの導入で効率化する「HOME’S PRO 内覧予約機能」を提供しています。

同サービスでは、仲介会社が対象の物件に内見予約を入れ、物件の管理会社が予約の承認を行うことで、スマートフォンで現地物件のロック開錠を行えるシステム。HOME’Sに加盟している不動産会社であれば無料で利用することができます。

従来であれば管理会社から仲介会社宛てに行われた鍵の受け渡し業務を省くことができ、またデータが残るため過去の内覧データを活用することが可能となります。

現在対応のスマートロックは既にご紹介した「Qurio Smart Lock」です。

サービス終了の事例

サービス終了今後ますます発展が予想されるスマートロックですが、サービスを終了するメーカーもあります。

246 PadLockのサービス終了

「株式会社電通ブルー」によるスマートロック「246 Padlock」は、本革の装飾をあしらった南京錠タイプが特徴で、2014年末にサービス提供が開始されていましたが、2016年6月30日いっぱいでサービスを終了しています。

電通ブルーは、電通グループで初めてのテクノロジー・ブティック子会社として2014年10月に設立された会社で、IoTに関する製品の開発やライセンス提供、Webサービスやアプリの開発を行っている会社です。

サービス終了の具体的な理由は明記されていませんが、同社提供の他のサービスも同時期に終了していることから、会社内部の事情があるのかもしれません。

6月30日23時59分を過ぎると246Padlockは開錠することができなくなることから、ユーザーに注意が呼びかけられました。サービス終了後は何の機能も果たさなくなってしまうため、希望者には246Padlockを返品することを条件に2017年4月26日まで、本体代金相当額の返金に応じています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。スマートロックの特徴や、今後普及が見込まれている理由がお分かり頂けたと思います。今後分譲マンションや賃貸マンションを建てる際にもスマートロックが元々付いている建物がスタンダードになるかもしれません。利便性も非常に高いため、いち早くスマートロックを入手してみてはいかがでしょうか。

- 2016年06月17日