サブリースが抱える問題~さまざまなリスクと契約トラブル

少子高齢化に伴う人口減少時代を向かえ、都市一極集中や空き家問題など不動産事業を取り巻く環境が厳しさを増しています。しかし、そんな中でも新築の賃貸アパート・マンションがあちこちで建築されており、「そんなに建てて大丈夫なの?」と他人事ながら心配になるほどです。

賃貸物件に空室が目立つ現状において、なぜ次々と新築アパートが建築され続けるのでしょう?

アパートを建築するのは地主(土地所有者)です。その地主が、現状で何の問題も無ければ、この時代にアパートを建てようとは思わないでしょう。それでも建てようと言うのには何か問題があるからで、これは例えば、相続などの資産防衛対策であったり、農地が宅地化されたことに伴う固定資産税対策だったりします。

では、それらの問題を解決するためにとアパート建築を考えても、前述のような空室の不安が付きまといます。でも、もし空室の不安が解消されるのであれば、地主はかなりの割合でアパートを建築するのではないでしょうか。そんな空室リスクを解消する代表的なシステムとして「サブリース」があります。

今回、このサブリースについて説明していきますが、サブリースの概要はもちろん、契約後のトラブルや想定外のリスクなどについても詳しくお話ししていきたいと思います。

目次

1.そもそもサブリース契約とは?
☞サブリース契約をカンタンに言うと・・・
☞サブリースの類似システム

2.サブリース契約に伴うリスクとは?
☞サブリース賃料の減額請求リスク
☞サブリース会社が行う査定によって、賃料が減額されるリスク
☞サブリース契約が中途解約されるリスク
☞サブリース会社倒産のリスク
☞サブリースにリスクは付きもの?

3.サブリース契約を解約したい場合は?
☞原則は6か月前通知
☞サブリース契約に違反した場合
☞サブリース会社がOKした場合

4.最近増えているトラブルケース
☞アパート建築業者が扱うサブリースは注意が必要!?
☞免責期間がある?・・・そんなの聞いていない!

5.サブリースがメリットとなるためには何に注意すべきか?
☞あらためてサブリースのメリットとは?
☞サブリース会社の見極め

6.マスターリース契約との違いは?
☞マスターリースの定義
☞マスターリース契約とは基本は一棟ビルの転貸
☞プロパティマネジメント

1.そもそもサブリース契約とは?

サブリース契約

サブリース契約をカンタンに言うと・・・

サブリースを超カンタンに言うと「転貸」「又貸し」です。アパートオーナーがある人に部屋を貸し、その借りた人が同じ部屋を別の人に貸すことです。そしてこれをシステム化し、商品として提供するようになったのが、現在のサブリース事業であり、おもに不動産会社やアパート建築会社などがオーナーから借り上げる形態が一般的となっています。

サブリースの類似システム

ここで、サブリースと混同されがちな「一括借り上げ」「家賃保証」について説明します。まず「一括借り上げ」とは、アパート・マンションなどの賃貸物件が完成した時から建物すべての部屋を借り上げ、オーナーに対しては満室家賃のうち一定割合を保証賃料として支払うシステムです。

※一括借り上げについてさらに詳しく知りたい方は「一括借り上げとは?仕組みやリスク・トラブル事例を徹底解説」を参考にしてください。

次に「家賃保証」ですが、家賃保証会社が連帯保証人となり、前もって賃貸物件の借主から家賃の一定割合を保証料として徴収し、借主が家賃を滞納した場合には保証会社が家賃を肩代わりします。後日、借主から回収しますが、滞納の頻度が多い場合は、オーナーに代わって部屋を明け渡すための請求手続きをするケースもあります。比較的家賃の低い物件などを契約する際に、不動産会社が借主に対して加入を指定することがあります。

そして、現在採用されているサブリース契約のほとんどは、「一括借り上げ」のシステムが基本となっています。そのため、本コラムではサブリースと一括借り上げを同義として進めていきます。

2.サブリース契約に伴うリスクとは?

リスク
サブリース契約の最大のメリットは、長期に渡って一定の家賃収入が保証される点です。ただ、そのメリットには見落とされがちな盲点があり、場合によってはアパート経営の根幹を揺るがすほどのリスクに発展し得るケースもあります。

サブリース賃料の減額請求リスク

サブリース会社は、オーナーから借上げる際、あらかじめ契約書で決めた保証賃料をオーナーに支払います。契約書には、「サブリース賃料は10年間据え置く」などと記載されています。にも関わらず、契約開始から5年程度で、サブリース賃料が一方的に減額されるケースがあります。

これはサブリース契約の盲点でもあるのですが、「サブリース契約を含む普通建物賃貸借については、経済事情等に鑑みて現状の賃料が不相当な水準となった場合に契約条件を見直し、賃料の増減が請求できる権利がある」という最高裁の判例があるのです。

そのため、たとえサブリース契約書に記載された約束事であっても、訴訟に至った場合は民法が優先され、保証されたはずの賃料が減額されるというリスクがあるのです。

サブリース会社が行う査定によって、賃料が減額されるリスク

サブリース会社からオーナーに支払われる賃料は、通常、相場家賃の80%~90%程度とされています。ただ、サブリース会社としては、周辺と比較して確実に入居が見込める家賃で査定するため、相場よりも低い査定となり、オーナーが享受すべきリターンが見込めなくなるケースがあります。

そのため、ローンを組んでアパートを建てる方ですと、返済額程度の賃料しか入ってこなくなる場合があり、所有だけで収益がないアパート経営になってしまう事もあります。

サブリース契約が中途解約されるリスク

某アパート建築メーカーや大手サブリース会社などは、「30年家賃保証」とか「最長35年一括借り上げ保証」といった触れ込みでサブリースを募ります。そして、契約書にも30年間中途解約しない旨が明記されています。

しかし、これも前述の減額請求権と同様、サブリース会社を含む賃借人による中途解約が民法で認められているため、オーナーは泣き寝入りするしかありません。ということは、「中途解約や賃料減額はしない」と契約書で交わした内容であっても、サブリース会社の都合が悪くなったら、いつでもひっくり返されてしまうということになるのです。

サブリース会社倒産のリスク

近年、サブリースを扱う会社どうしの競争が激しくなっており、物件獲得のために無理な査定を行う会社もあったりします。オーナー側からすれば高い査定金額に越したことはありませんが、サブリース会社としては、肝心の入居者が集まらなければサブリース賃料の負担が増すばかりになり、最悪の場合、倒産してしまうケースもあります。

そうなると、サブリース会社が入居者から預かっていた敷金等の預かり金が戻らない事態が発生する場合があり、その損害はオーナーの負担となってしまうこともあります。

また、そのような厄介な問題を抱えてしまった物件は、周辺の不動産会社から敬遠されることが多く、その後の入居募集にも大きな支障を来たすことになります。

サブリースにリスクは付きもの?

ここまでサブリースのリスクについて触れましたが、サブリースを生業とする会社である以上、利益を見込んでの事業であるということを理解しておかなければなりません。

サブリース期間が5年程度の短中期間ならまだしも、30年もの間ずっと同じ賃料を保証するというのはどう考えても不可能であり、一定の“しばり”を設けなければ、事業を維持して行くのは難しいのです。

また、最近では、金融機関が融資する際、サブリース契約の導入を条件とするところが多く、これは不動産事業そのものがリスクを抱える事業であり、そのリスクを回避する手段のひとつとしてサブリースがあるのだと判断されているためです。

そういった点を踏まえ、サブリース契約にはさまざまなリスクがあることを十分理解したうえで、契約に望む必要があるということになります。

3.サブリース契約を解約したい場合は?

解約一方で、大家側からサブリース契約を、契約期間満了前に解約したい場合はどのような流れや手続きが必要なのでしょうか。

当然ながら、サブリース契約は正式な「契約」になるので、大家側からとはいえ、そんなに簡単に契約解除が出来るワケではありません。通知義務があったり、違約になったりするときもあるので、その点には注意しましょう。

原則は6か月前通知

サブリース会社の契約書のフォーマットには、大抵の場合「大家は、サブリース会社に少なくとも6か月前に解約の通知を申し入れることによって本契約を解除できる」のような文言が記載されています。そのため、大家が何かの事情で「すぐにでもサブリース契約を解約したい」と思っても、解約するまでは6か月以上の期間がかかるということです。

仮に、このような文言がない状態でサブリース契約を結び、期間途中で解約を申し出ると「違約」になるケースがあります。違約になった場合には、サブリース契約に記載されている違約金が発生する可能性が高いので、契約前に良く確認しておく必要があります。

また、逆にサブリース契約に解約の文言がなかったとしても、サブリース契約自体が「建物賃貸借契約」として保護されています。つまり、建物賃貸借契約に則って、結局は「6か月前通知」という条件が適用されるということです。

まれに特約をつけて、この「6か月前」という申し出の期間を、「3か月前」などのように短くする場合もあるようです。ただ、この特約はサブリース会社にとってはデメリットしかないので、特約をOKしてくれるサブリース会社は少ないです。

サブリース契約に違反した場合

違反前項の「6か月通知」のルールに縛られずにサブリース契約を解約する方法は2つあります。その1つ目の方法は、サブリース契約に記載してあることに関して、サブリース会社が違反したときです。具体的に言うと、「賃料支払い義務」「費用負担義務」「使用目的遵守義務」「譲渡義務」の4つが、サブリース契約書に記載されている主な契約違反の事項になります。

「賃料支払い義務」は、その名の通りサブリース会社が大家に賃料を支払う義務を怠った場合や、違う金額を渡した場合などが該当します。

「費用負担義務」は、サブリース会社の過失による、室内の破損の修繕(費用負担義務が発生)をしなかった時などです。たとえば、サブリース会社が部屋を確認している時に、窓ガラスを割ってしまったり、フローリングに大きな傷をつけてしまったりした時です。

また、「使用目的遵守義務」は、原則「居住用」となっているマンションの一室を、サブリース会社が勝手に違う目的で賃貸した時のことです。たとえば、事務所として賃貸したり、事務所と自宅のいわゆるSOHO利用として賃貸したりしたときです。

最後の「譲渡義務」は、大家の許可なしに賃貸借権を他の個人や法人に譲渡したときです。つまり、あくまで大家はサブリース会社と賃貸借契約を結んでいるのであって、その権利を勝手に他者へ譲渡してはいけないということです。

サブリース会社がOKした場合

前項の「6か月通知」のルールに縛られずにサブリース契約を解約できる2つ目の方法は、サブリース会社が許可したときです。この場合には、サブリース契約書の内容に関係なく、解約書面を締結することでサブリース契約は解約できます。

ただし、サブリース会社も何の理由もなく解約することはありません。そのため、サブリース契約に多少の過失がない限りは難しいです。

たとえば、営業担当者の連絡ミスや対応の悪さが頻繁に起こった時などです。前項のように「契約違反」ではないけれども、大家側の心情も分かるといった時には、サブリース会社も解約を認めてくれるでしょう。

4.最近増えているトラブルケース

トラブル「入居募集やクレーム対応、日常の営繕管理まですべて任せて安心」といったサブリースの謳い文句をよく見かけます。なかには、「土地がなくても、わずかな自己資金でアパート経営!」などとアパート経営検討客を煽る会社も少なくありません。

さらに、サブリースを扱う会社のなかには、リスクについてほとんど説明せずに契約を取り付ける“悪質な”業者が存在します。ここでは、サブリース契約で最近増えているトラブルについて触れたいと思います。

アパート建築業者が扱うサブリースは注意が必要!?

サブリースを扱う会社として真っ先に浮かぶのが「アパート建築業者」です。その名の通り、この業者の本業は建築工事を獲得することですが、この業者間の競争は熾烈を極めます。1人の地主に対して、5人以上のアパート営業マンが競争するケースも珍しくなく、なかには同じ会社の営業マンどうしが争うことさえあると言います。

そんな状況ですから営業も強引になりがちで、目先の建築獲得のために「30年間保証賃料は変わりません。だから当社に!」などと一線を越えてしまい、後で問題が生じると、「そんな事は契約書に書いていないし、営業マンが言ったという証拠も無い」と開き直られ、訴訟になるケースも少なくありません。

と言うのも、ほとんどのサブリース契約は、30年一括借り上げを謳いながら、保証される賃料は当初10年間のみで、それ以降は2年ごとに改定される仕組みになっており、その事について詳しく説明しないまま、30年保証だけを強調し、建築契約に持って行こうとするのです。アパート建築会社が扱うサブリースは、“建築を獲得するための材料”であることを心得ておかなければなりません。

アパート経営を考える方にとって、空室は最大の不安材料であり、空室に伴う収入減は、ローン返済ができなくなるリスクを抱える事になります。

そんな、地主やアパートオーナーが抱える不安を解消する事を目的としたシステムがサブリースのはずです。30年保証せずに10年だけというなら、「10年間一括借り上げ」「期間満了後も一定条件で継続が可能」とすべきでしょう。適正且つ明確な法整備が待たれます。

免責期間がある?・・・そんなの聞いていない!

また、訴訟まで発展しないものの、サブリース契約のトラブルに挙げられるものとして、「免責期間」があります。サブリースを扱う会社のなかには、建物が完成してから3ヶ月間については、入居者が決まらない場合を想定してオーナーに保証賃料を支払わない「完成時の免責期間」や、退去時の敷金不足、入居時のフリーレント対応に備える「入退去時の免責期間」を設けているところがあります。

確かに、新築時や入退去時には不測のリスクがあるかも知れませんが、実際には建築中から入居募集ができますし、退去連絡も1ヶ月前にはわかっていますので、十分に募集活動は可能なはずです。それでも免責期間を採用しようとする理由は、新築・入退去の免責期間であっても、入居が決まれば家賃は全額サブリース会社の収入になるからです。

犠牲になるのはオーナー側で、入居していても免責期間のため、オーナーには賃料が一銭も入りません。一見、説得力があるように見える免責期間ですが、サブリース会社の損失はほとんどなく、オーナーだけが損をする仕組みと言えます。

5.サブリースがメリットとなるためには何に注意すべきか?

注意ここまで、おもにサブリースのリスクやトラブルについてお話ししてきましたが、サブリースそのものが悪いシステムとは限りません。オーナーの事情やアパートの条件によっては、メリットに作用することもあります。ここでは、サブリースが有効なケースとサブリース会社を見極める方法についてお話ししていきたいと思います。

あらためてサブリースのメリットとは?

まず、何度も触れましたが、サブリース導入のメリット安定した家賃収入が中長期で保証されることです。

確かに、保証賃料の減額や免責期間中の収入減といったデメリットはありますが、空室が発生した場合、通常ならその部屋の収入はゼロですが、サブリースの導入によって、確実に一定の賃料は入ってきます。サブリース会社としても保証賃料というコストが掛かっていますので、積極的に入居募集を掛けることになります。

また、入居者のクレーム対応や家賃滞納の督促、訴訟トラブルなどの面倒な手続きは、専門の知識と経験を持ったサブリース会社が、すべて“貸主”の立場で行うため、オーナーが直接立ち会うなどの必要は一切ありません。

そのため、自宅から離れた場所にアパート持つオーナーにとっては、サブリースは無くてはならない存在であるとも言えます。

他にも、確定申告の際、収支内訳には通常入居者名や賃料など詳細な内訳を記載する必要がありますが、サブリース会社と賃料収入の記載だけで済むという利点もあります。

サブリース会社の見極め

サブリース会社の見極めで重要になってくるのは、その会社が何を本業としているかです。先に述べたように、建築を本業とする会社にとって、サブリースは建築を取るための材料でしかありません。

また、アパートを建てて投資家などに販売する“建売アパートビジネス”という業態もあり、これは、新築の建売アパートの販売が目的で、売った後はオーナーとの接触もほとんどなく、サブリース業務はすべて外注で済ませるなど、サブリースとは名ばかりの会社も存在します。

他に、地域の不動産会社がサブリースを行うケースもあります。この場合、会社の本業はもちろん、社内にサブリースの専門部署やメンテナンス要員を置いているかを確認する必要があります。人様の財産を預かるサブリースを生業とする以上、専門知識や技能を持った人員は絶対に必要です。

ちなみに、サブリース業自体を本業とする会社もあり、一時期その数は増加を続けていました。

しかし、前述の「サブリース会社倒産のリスク」で触れたように、競争激化によって相当数が淘汰され、現在は資金力のある会社や堅実な会社が生き残っています。

サブリースを本業とする会社については、過去の実績や現状の取り扱い件数に加え、解約件数も確認し、解約件数が多い会社に対しては、慎重な姿勢でのぞむ必要があるでしょう。

6.マスターリース契約との違いは?

違い最後にサブリース契約と良く混合されやすい、マスターリース契約との違いについて解説します。

マスターリース契約の分かりにくいところは、通常のサブリース契約をしている時もマスターリース契約が発生しているという点です。

マスターリースの定義

マスターリースとは、サブリース(転貸借)を前提とした賃貸借契約のことです。つまり、今までずっと話していたサブリース契約をするために、大家とサブリース会社で結んでいる賃貸借契約のことを指します。

そもそも、今までお話してきたサブリース契約を整理します。仮にオーナーAが所有する不動産をサブリース会社Xがサブリース契約を結びます。この時に、オーナーAとX社は賃貸借契約を結んでいるので、その賃貸借契約をマスターリース契約と呼びます。

そこからX社は、賃借人Kさんと賃貸借契約を結んでその不動産を転貸します。厳密にはその「転貸」のことをサブリースというのです。

マスターリース契約とは基本は一棟ビルの転貸

一棟ビルマスターリース契約は、今まで話をしていた「サブリース契約」時にも発生しています。

しかし、個人が一室のマンションをサブリースする時にマスターリースの話を出すとややこしくなるので、基本はマスターリースという言葉自体出てこないです。そのため、「マスターリース契約」と言った時には、基本的には一棟ビルを転貸するときに使う言葉になります。

つまり、マスターリース契約をするときには、依頼する不動産会社の性質が異なってくるということです。

今までお話していたサブリース契約は、原則、一般個人が「居住用」として不動産を探している時に結ぶ契約です。そのため、賃借人は一般個人になるので、一般個人を募集して契約手続きをするノウハウが必要になります。

一方、マスターリース契約とは一棟ビルの転貸になります。そのため、賃借人はそのビルに入りたいテナントになるのです。つまり、店舗や事務所として利用したい人を募集したり、契約手続きしたりするノウハウが必要になるということです。

プロパティマネジメント

マスターリース契約は、ビルのプロパティマネジメントと似ています。プロパティマネジメントとは、ビルの管理関係を一手に引き受けることです。

マスターリース契約は、プロパティマネジメントに加え、一棟まるごと不動産会社と賃貸借契約を結んでしまうのが違う点です。

プロパティマネジメントの具体的な業務は「テナントの与信チェック」「ビルのメンテナンス」「契約、更新、解約手続き」「原状回復工事」「大規模修繕や設備の入れ替え」「テナントの日常的な対応」「報告書の作成」など多岐にわたります。

マスターリース契約を請け負う不動産会社も、勝手にテナントを入れるわけではありません。ある程度テナント会社の与信を見極め、ビルオーナーと相談の上で契約手続きを行います。オーナーによっては「資本金〇〇万円以上」など最初に条件を提示して、その条件をクリアするテナントであれば、不動産会社の判断に任せるとしているオーナーもいます。

また、ビルの一棟管理になるので、マンションの一室よりもはるかに手間がかかります。テナントの入退出も頻繁に行われますし、賃料交渉や原状回復工事の頻度も多いです。また、ビル自体を大規模修繕したり、設備の入れ替えをしたりする提案も不動産会社がオーナーに行います。

更に、「イベントを行いたい」「一時的に改築したい」などのテナントの要望にも応える必要があります。そのようなテナントとの日常的業務もマスターリース契約を請け負う不動産会社が行ってくれるのです。

逆にいうと、ビル一棟を所有するということは、それだけ膨大な量の仕事があるということです。マスターリース契約は、手数料がかかるというデメリットがありますが、オーナーにとってはそのような膨大な仕事を依頼できるというメリットがあります。

- 2016年03月23日