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サブプライム住宅ローン復活の兆し?今改めて確認するサブプライム住宅ローン問題

最近、“サブプライム住宅ローン復活”という記事が一部の報道機関で取り上げられました。 世界中に影響を及ぼした「サブプライム住宅ローン問題」を覚えていらっしゃる方も多いでしょう。 ずいぶん前の事のように感じられるこの問題も、ほんの10年くらい前の出来事なのです。

百年に一度と言われた「世界金融危機」は、このサブプライムローンが発端と言われています。 その“危険な”ローンを復活させたのは、またアメリカの銀行です。再びあの経済危機が巻き起こってしまうのか、一抹の不安を感じられるかも知れません。

そこで今回は、「サブプライム住宅ローンの仕組み」「世界金融危機が起きた背景」、 「日本の住宅ローンへの影響」「日本版サブプライム住宅ローン問題」について説明していきたいと思います。

目次

1. サブプライム住宅ローンとは?
 1-1. コトの始まりはアメリカの住宅バブル
 1-2. サブプライム住宅ローンの中身~サブプライム層でもローンが組める理由
  1-2-1. 高金利と略奪的貸付
  1-2-2. 証券化によるバブルの拡散

2. サブプライム住宅ローンに端を発した世界金融危機
 2-1. 住宅バブル崩壊の顛末
  2-1-1. 銀行は“余ったマネーの活用先”を探していた
  2-1-2. バブルで住宅価格は上昇するも庶民の収入は変わらないというジレンマが・・・
  2-1-3. 格付け引き下げが世界同時株安のボタンを押した!?

3. サブプライムローン危機とリーマンショックが日本にもたらした影響
 3-1. 影響が顕著だったのは「不動産・建設・金融業界」
 3-2. 国内のマンション価格への影響

4. 日本でサブプライム住宅ローン危機が起こる可能性はあるのか?
 4-1. 日米住宅ローンの違い
 4-2. 日本版サブプライム問題は起きるか?
  4-2-1. かつて日本でもサブプライム住宅ローンがあった!?
  4-2-2. 超低金利状政策が日本版サブプライムに発展する!?

5. まとめ

1. サブプライム住宅ローンとは?

1-1. コトの始まりはアメリカの住宅バブル

アメリカ

百年に一度の経済危機の震源地はアメリカです。2000年初頭、アメリカは不況に喘いでいました。 2000年のITバブル崩壊、2001年の同時多発テロ、2002年のエンロン事件・ワールドコム事件を始めとする企業不正会計疑惑と、 経済に大きく影響を及ぼす事件が立て続けに発生し、アメリカの景気後退は深刻な状況に陥っていました。

そこで、FRB(連邦制度準備理事会)は不況脱却の手段として超低金利政策を導入し、消費拡大の起爆剤にしようとしました。 FRBの目論見通り金利の軽減によって消費は徐々に回復し、その影響は住宅ローン金利も例外ではなく、住宅販売が大幅に伸びていきました。

ただ、住宅を購入できる人達は所得が安定していて、信用上の問題も無い一部の層に限られ、 ローン審査をクリアできない人達は住宅を購入できず、住宅販売の頭打ちが懸念されていました。

そんな中で登場したのがサブプライム住宅ローンです。 借金を踏み倒した過去があった人やローンを返済するための収入や資産がない人のことを、アメリカでは「サブプライム層」と称していて、普通なら住宅ローンを組むことはできない人達です。 もし、サブプライム層でもローンを借りることができれば、住宅販売の拡大とともに銀行の販路も拡大させることができます。

成り立ちについては後述しますが、サブプライム住宅ローンが市場に供給されたことにより、アメリカの住宅販売はバブルを迎えます。

また、銀行は住宅ローンブローカーと呼ばれる斡旋人に対し、サブプライム住宅ローンの借り手を紹介した際に報奨金を支払っていたことから、 サブプライム層ではない人達に対しても意図してサブプライム住宅ローンへと誘導する行為が当たり前のように行われていました。

1-2. サブプライム住宅ローンの中身~サブプライム層でもローンが組める理由

サブプライム住宅ローンの特徴として、「高金利と略奪的貸付」「証券化」が挙げられます。それぞれ見て行きます。

1-2-1. 高金利と略奪的貸付

銀行が信用力や担保力のない人達に貸し出す際は、何らかのリスクヘッジが必要です。 それが高金利での貸し出しになる訳ですが、それなら日本の消費者金融でも行っていることです。 問題なのは、住宅バブルに便乗し“略奪的な貸付”が横行したことです。

これは、特に変動金利型のローンにおいて、当初2、3年間を優遇期間として“見せかけの低金利”で貸し出し、 優遇期間が終了すると一気に金利が引き上げられ、返済不能状態にして住宅を差し押さえ、不動産会社に転売させます。 そして銀行は新たな購入客に同様のローン貸し出しを行い、その度に多額の手数料を得ていたのです。

1-2-2. 証券化によるバブルの拡散

金融商品

時はバブルの最中でしたので、住宅価格が急上昇していても転売先はすぐに見つかる状況でした。 そのため、サブプライム住宅ローン関連の投資銘柄はAAAランクに格付けされ、世界中から投資が集中しました。 通常の住宅ローンは、国の中央銀行から資金を借り入れた都市銀行などの金融機関が、金利を上乗せして一般の顧客に貸し出されます。 そして、債権(ローンの貸し手の権利)は銀行が保有し、上乗せ分の金利が銀行の収益になります。

一方のサブプライム住宅ローンは、銀行が保有していた債権を細分化して複数の債権と組み合わせ、金融派生商品(デリバティブ)として売却されます。 代表的なものとして“MBS”“CDO”が挙げられます。 銀行はこの商品を世界中の投資家に売却することで、従来の上乗せ金利とは比べものにならないほどの収益を上げることに成功します。

では、サブプライム住宅ローンと関係が深い金融派生商品について説明します。

MBS(不動産債務担保証券)

住宅ローンを貸している銀行は、借りている人から元本と利息の返済を受ける権利(債権)があります。 その銀行の持つ多くの住宅ローン債権をまとめて小口証券化し、金融市場で売ったり買ったりできるようにしたものMBSです。 MBSの主旨としては、好調な住宅市場を背景とした高金利がもたらす収益性です。

ただ、前述の通り信用力が疑わしいサブプライム層の返済が原資であり、優遇期間終了後に返済が滞る危険をはらんでいます。

CDO(債務担保証券)

住宅ローンや一般の貸付金、企業・公社の社債など様々な債権を担保として発行された証券CDOで、 その主旨は担保力です。 万が一ローンを踏み倒されても、債権を履行(住宅を売却)して負債に充てればリスクを回避できることから、リスクが分散される優良な金融商品として高い信用を得ていました。

当時は住宅価格が上がり続けていて、下落は全く念頭にない状況でしたが、 もし下落すれば、売却価格は担保不足となってCDOは元本割れに陥り、最悪の場合は紙クズ同然になることもあります

CDS(信用債務不履行保険=ローン破綻時に保険金が支払われる保険商品)

MBSやCDOが破綻して紙くず同然になった場合に、その損害を穴埋めする保険CDSです。 保険ではありますが投資対象としての性格を持っており、MBSやCDOの価格が下落すると相対的にCDSの価格は上がることになります。 住宅バブルだった当時、サブプライム住宅ローンが破綻することはないと思われており、 MBSやCDOはAAAに格付けされていましたので、真逆の投資商品であるCDSに銀行や投資家は見向きもしませんでした。

みなさんの中に、リーマンショック時の実話をもとにした映画「マネーショート」をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。 映画の主人公は、住宅バブル下で保険会社に巨額のCDS契約を持ち掛けます。保険会社からすれば、絶好調の住宅市場において保険金など発生するはずはないと考え、喜んで契約に応じます。

車の保険の場合、保険を掛けるのは通常、事故が起こることが前提ではなく、事故が起こった時に備えるためです。 しかし、映画の主人公は事故が起こる(破綻する)ことを見越してCDSを契約しました。そして、結果的に500倍近い利益を得ることになります。

合成CDO(債務担保とローン破綻保険の合成=目的が矛盾する商品)

破綻リスクを抱えるCDOの中に、破綻リスク時の保険(CDS)を組み込んだ証券で、リスクの分散が図れる商品として販売されました。

しかし、のちの世界金融危機において、銀行だけでなく相当数の保険会社も倒産したため、 デフォルト(保険金支払い不能)に陥り、商品目的の矛盾を露呈することになります。

このように、住宅の供給が主たる目的である住宅ローンのはずが、債権(リスク)を投資商品として売却してしまったことから、 投資家と銀行の利益追求に目的がすり替わってしまい、銀行本来のチェック体制や融資の慎重性が低下してしまい、 通常なら貸し出すはずのないサブプライム層に対して“湯水の如く”融資され、そのほとんどが返済不能となり、 MBSなどの商品は紙クズと化したのです。

サブプライム“自動車”ローン

2008年にサブプライム住宅ローンバブルが崩壊し、世界的な金融危機の引き金となったにも関わらず、 その後アメリカにおいて“サブプライム自動車ローン”と称する新型のローンが出回っています。 アメリカでは、新車販売が住宅と並んで市況の大きな判断材料になっています。 リーマンショック後の不況から景気復調の兆しが出始めた頃、新車販売にもテコ入れが行われていました。

ところが、アメリカの新車に対する平均的なローン融資は1台あたり3万ドル(約300万円)で、 その返済は中流階級の世帯でもなんとかやっていける水準であるため、なかなか新車の販売は伸びません。

そこで、販売数を伸ばすためにサブプライムを層ターゲットとした自動車ローンが登場しました。 その内容は、かつてのサブプライム住宅ローンを応用したもので、 当初の1~2年を低金利期間としたり、従来よりも長期の返済年数とするなどですが、 言うまでもなく、低金利期間が終われば金利は上がって返済不能になりますし、 長期返済となれば利息の額が多くなるなどのリスクをはらんでいます。

現に、2016年度の不履行率(踏み倒し)は2015年度と比べて2ケタの上昇となっており、 1兆ドル(100兆円)規模にも膨らんでしまったサブプライム“自動車”ローン市場が、好調に推移しているアメリカ経済に不安な影を落とし始めています。 サブプライム“自動車”ローンは、厳密にはデリバティブではありませんが、関係が深いローン商品であり、今後の状況も懸念されることから言及させて頂きました。

2. サブプライム住宅ローンに端を発した世界金融危機

世界金融危機

前項でサブプライム住宅ローンとはどのようなモノか、そしてなぜ破綻することになったかがご理解頂けたと思います。 では、アメリカ国内の住宅ローン破綻が、世界的な金融危機にまで発展した経緯について説明して行きます。

2-1. 住宅バブル崩壊の顛末

2-1-1. 銀行は“余ったマネーの活用先”を探していた

前項でも触れましたが、2000年代初頭のアメリカは不況に喘いでいて、世界各地の巨大投資組織はアメリカ以外(アジア、中南米、アフリカなど)への投資を活発に行っていました。

しかし、それらの地域への投資は、ハイリターンをもたらすと同時にハイリスクも抱えることになります。

投資する側としては、できれば世界経済の中心であるアメリカにおいて安定した投資を望んでいました。 そこに発生したのが住宅バブルです。 投資家を顧客とするアメリカの銀行(特に投資銀行)は、その住宅バブルに便乗した投資家マネーの活用法を作り出します。

それが、サブプライム住宅ローンを原資とするデリバティブです。 その手法は前述しましたので詳細は省きますが、当時のアメリカ住宅市場は青天井で、それに絡むデリバティブがAAAに格付けされたことから、 巨大投資組織だけでなく世界中のありとあらゆる投資マネーが、サブプライム住宅ローン絡みの金融商品に集まることになります。

2-1-2. バブルで住宅価格は上昇するも庶民の収入は変わらないというジレンマが・・・

住宅バブルによって金融業界が活況を呈していたにも関わらず、一般庶民の収入にはこれといった変化がありませんでした。 このままでは好調な住宅市場に水を差すことになります。 そこで銀行は、サブプライム住宅ローンの審査基準をさらに緩め、好調のサイクルを維持しようとします。

好調のサイクル

住宅を購入したい人に資金を貸し出すのが住宅ローンの目的のはずですが、 あろうことか、投資家にMBSやCDOを売り続けるのを目的に、すでにサブプライム基準であった審査のハードルをさらに緩めて貸し出したのです。 このようなスパイラルがいつまでも続くはずがないことは、冷静に考えれば分かるでしょう。

2-1-3. 格付け引き下げが世界同時株安のボタンを押した!?

格付け引き下げ
格付けはデタラメだった!?

先にMBSやCDOに対する信用格付け機関の評価がAAAであったことはお話ししましたが、この評価には重大な不備がありました。 MBSやCDOを仕組んだ投資銀行は、格付け機関から高い評価を獲得するために、リベートを提供していたことが後の調査で判明しました。

MBSやCDOの評価が適正ならば大きな問題ではなかったでしょうが、調査によってサブプライムローン優遇金利後の返済不能によるリスクの大きさに格付け機関が気付いていた証拠が発覚したのです。 格付け機関までもが、自社の利益を優先するために格付け操作を行っていた訳です。

サブプライムローン危機の幕開け

サブプライムローンの優遇期間が毎月のように終了していくなか、青天井の住宅価格にかげりが見え始めます。 転売しようにも買い手が付かなくなってきたのです。そうなると、貸し手である銀行の負担は解消せず、サブプライム銘柄の収益も悪化します。

そんな中、2006年12月、比較的小規模のサブプライムローン斡旋会社が経営に行き詰まり業務停止状態であると報じられます。 ただ、時が年末商戦と重なり、バブルの後押しで個人消費も好調であったため影響は限定的とされ、事態は大きく報じられないまま2007年を迎えます。

2007年第3四半期(3rd Quarter:7-9月期)、サブプライム関連銘柄の格付けを放置してきた格付け機関は、ついにMBSの格付け引下げに踏み切り、 2008年第4四半期までに1兆9千億ドル相当のMBSの格付け引下げが為されます。 にも関わらず、NY株式市場は史上最高値を記録し、日経平均もバブル後最高値を記録していました。

アメリカ発の世界金融危機

しかしながら、虚栄はやがて終焉を向かえます。 2008年3月、全米第5位の投資銀行ベアスターンズの経営が破綻し、JPモルガン・チェースに買収されます(ベアスターンズ危機)。

さらに同年9月、全米第4位の投資銀行リーマンブラザースの経営が破綻します(リーマンショック)。

さらに、サブプライム銘柄の取扱いに主力を置いていたリーマンブラザースが破綻したことで、CDS(信用債務不履行保険)を扱う保険会社に巨額の負担が発生することになります。 なかでも全米最大の保険会社AIGは、巨額のCDS保険金支払いの発生によって経営破綻の危機に直面していました。ここで、米政府とFRBは850億ドルを緊急融資して同社を救済します。

ベアスターンズ、リーマンブラザーズは救済せずにAIGを救済した理由としては、投資銀行破綻の影響は大きいのは確かですが、 ここでAIGも破綻するとなれば、さらに4000億ドルの影響が市場に及ぶため、FRBが救済措置を講じて国の管理下としたのです。

そして2008年9月29日、米政府が金融不安回避策として緊急経済安定化法案(金融機関に対する支援策)を国会に提出しますが、 企業自身の責任で解決すべきとの下院議員の主張に押し切られ、法案は否決されてしまいます。

この否決判断によって、サブプライム銘柄をはじめとする株式や債券が大量に売却され、NYダウ史上最大の777ドル安という大暴落を記録し、 その影響は地滑り的に「世界同時株安」に発展することになります。 “世界恐慌再来の日”とも言われたこの9月29日を境に、世界金融危機へと発展して行ったのです。

3. サブプライムローン危機とリーマンショックが日本にもたらした影響

日本

ここで、サブプライム問題が日本に及ぼした影響を見ていきます。

3-1. 影響が顕著だったのは「不動産・建設・金融業界」

2008年9月18日に、国土交通省が都道府県の基準地価を発表しています。 これによると、東京圏や名古屋圏の一部でわずかに上昇しているものの、前年16年ぶりに上昇した商業地が下落に転じるなど、全国的に下落傾向が鮮明になっていました。 注視すべきなのは、この調査が7/1現在のもので、9/29のリーマンショック前にも関わらず、なぜ下落に転じたのかという点です。

2000年代、世界を席巻した“ITバブル”が日本にも巻き起こります。 そして、日本の不動産および金融市場には多くの外国資本が流入しており、 外資系企業の“日本買い”やオフィスビル利用によってJ-REIT(不動産投資信託)の価値が押し上げられ、 その影響から不動産価格は持ち直しの兆しが見られていました。

しかし、MBSやCDOなどのサブプライム派生商品はJ-RIETにも組み込まれていたことから、 2007年後半に始まったサブプライム問題の影響によってJ-REITにも下落の兆候が出始め、 国内の地価もそれに連動するように下落し始めます(日経平均や為替の説明は省略します)。 国内外の不動産市況に懸念を持ち始めた日本の各銀行は、それまで積極的だったマンションデベロッパーや不動産事業法人に対する融資を引き締めるようになります。

その状況下で起きたのがリーマンショックです。 リーマンブラザーズ日本法人の拠店は、六本木ヒルズに置かれていましたが、同社の破綻以降、外資系企業向け賃貸オフィスの空室率が上昇します。 空室が増えれば賃料は下がり、不動産価格の下落が顕在化します。

需要(入居・購入)が減少すれば供給(募集・販売)を伸ばすことが難しくなり、 デベロッパー(開発・販売業者)や新興不動産会社は在庫過多債務超過に陥ります。 折しも、2008年8月に開催された「北京五輪特需」によって鉄など金属の価格が高騰し、建築資材不足が起こります。

在庫が捌けないために資金を回収できず、資材不足で新規の施工もできないという二重苦によって、多くの不動産・建設業者が倒産しました。 そして同業界から多くの失業者が発生し、2009年7月時点の失業率は全体で過去最悪の5.6%と、今では考えられない水準に達したのです。

3-2. 国内のマンション価格への影響

国内不動産の中でも、特にマンション価格への影響について説明します。 不動産鑑定会社「東京カンテイ」が2011年4月21日に発表した“2011年3月 三大都市圏のマンション価格変動指数”のデータによると、 首都圏のマンション価格は2008年1月から7月にかけてピークを迎えていたとされています。

ピークの後には定石通り、下落トレンドへと移るのですが、まさにそのタイミングでリーマンショックが発生します。 その後、2009年5月の底値水準まで下落し、東日本大震災発生後の2011年春頃まで価格の停滞が続くことになります。

このピーク時からの下落率は約8.25%とされていますが、実際の下落幅は10%を超えていたと言われています。 見方を変えれば、マンション購入を検討されていた方にとって、2009年の春頃は購入の絶好期だったということになります。

4. 日本でサブプライム住宅ローン危機が起こる可能性はあるのか?

4-1. 日米住宅ローンの違い

日米

日本の常識で考えると、アメリカの銀行がリスクの大きいサブプライム層への住宅ローン貸し出しをなぜ行うのか疑問に感じられるところですが、 その根底には、日本とアメリカで“担保に対する認識の違い”があります。 日本の一般的な住宅ローンを金融用語では「リコースローン」と言います。 これは、債務者がローンを支払えなくなった場合、まずは担保である住宅を売却して返済に充てますが、そこで返済しきれない場合でも債務は消えず、支払い続けなければなりません。

一方、アメリカの住宅ローンは「ノンリコースローン」と言い、 ローンの大小に関わらず住宅を売却すれば住宅ローンとは縁が切れることになります。

わかりやすく言うと、「担保になっているのは住宅であり、その担保を手放せば住宅ローンとは無関係」とするアメリカの常識と、 「担保がどうのこうのよりも借りた金は返す」という日本の商慣習の違いということになります。 “担保”の本質的な意味からすれば、アメリカの方が正しように感じますが、 ノンリコースローンの仕組みこそがサブプライム問題の根源であるのも確かで、良し悪しを判断するのは難しいと思われます。

4-2. 日本版サブプライム問題は起きるか?

日本版サブプライムローン

4-2-1. かつて日本でもサブプライム住宅ローンがあった!?

借りた金は返すという原則からすれば、銀行がサブプライム層に住宅ローンを貸し出す可能性は低いと言えるでしょう。 ただ、収入が基準に満たないだけで過去にローン事故がない方々であればどうでしょう。 そういう方々でも借りることができる住宅ローンがあるのです。というかあったのです。それは旧住宅金融公庫が行っていた「ゆとり返済」です。

これは当初の1~5年目と6~10年目の金利を低くし、11年目には当初の2倍近い返済額となる制度で、前述した「略奪的貸付」に似ています。 実際、ゆとり返済終了後の11年目以降、返済に行き詰って任意売却(*)や競売に陥ったケースが少なくありませんでした。

*任意売却:https://mansion-market.com/satei/category_points/optional

4-2-2. 超低金利状政策が日本版サブプライムに発展する!?

超低金利政策に伴って住宅ローン金利も引き下げられ、収入基準も従来よりも低くなったことから、以前なら借りられなかった額のローンが組めるようになっています。 そして、その恩恵は固定金利よりも変動金利の方が大きいため、変動金利を選択されるケースが多くなっています。

しかし、現在の金利が最低ということは、上昇する可能性が高いのも事実で、仮に上昇に転じれば、真っ先に影響するのが変動金利です。 変動金利は、市場動向によって金利が変動するため、上昇によって返済額が増えれば、低金利効果で購入した低所得者層ほど 負担の割合は大きくなり、家計が厳しくなることが容易に想像されます。

後になってから金利が上がるという意味では、サブプライム住宅ローンと似たような危険性を含んでいるとも考えられます。

5. まとめ

サブプライム危機後、米銀行は住宅ローンの審査に際して20%以上の頭金を条件とするなど厳しい基準を設けたことで、債務不履行が大きく減少します。

ただ、基準の厳格化は、信用力のある中間層や富裕層しか不動産を購入できないという副作用をもたらします。 不動産が売れなければ住宅ローンの貸し出しも増えないため、銀行や不動産会社など関連する業界の収益は上がりません。

そこで、アメリカの銀行は目先の利益獲得のために冒頭で言及した“サブプライム住宅ローン復活”の狼煙を上げます。 アメリカの大手銀行バンクオブアメリカとウェルズファーゴは、頭金を3%以上に引き下げ、職業や収入などの属性も従来よりも評価の甘い住宅ローンの貸し出しを始めたのです。

これからの不動産・金融市場において、アメリカのサブプライム復活リスクを、日本のローン金利上昇リスクを注視する必要があり、 この状況下で私達にできることは、“身の丈を踏まえた資金計画”と、 “未来の収入を楽観視しすぎないこと”に尽きるのではないでしょうか。

中古マンション購入に掛かる費用や手続きの流れについて知りたい方は下記のページをご参照ください。
中古マンション購入の流れと注意点、費用の目安などについて

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