第1回 マンション管理の重要性とは?

管理の良し悪しによって、マンションの資産価値は大きく左右されると言われています。資産価値の低下を避けるためには、それぞれのマンションに沿った正しい管理・運営が必要であると考えられます。
今回は、渋谷に本社を持ち、自身もマンション管理コンサルタントとしてご活躍されている、メルすみごごち事務所代表の深山州(みやま しゅう)さんに、マンション管理の重要性と、マンション管理を行う上での注意点、マンション側から多く寄せられる相談内容などについてお伺いしました。

「不動産の売買」と「マンション管理」は全く違うもの

-マンション管理の重要性・必要性について教えて下さい。

まず、基本的に「不動産の売買」と「マンション管理」は全く違うものです。みなさんがマンションを購入される際には、外観の美しさや駅からの距離、築年数、管理人が常駐しているか、リフォーム済みなのかどうかなど、目に見える「定量化できるデータ」を参考に、家探しをされる方が多いのではないかと思います。

しかし、購入する時は1~2回程度しか見にいかないことがほとんどだと思いますし、自分が住む部屋の上下左右に住んでいる人がどんな人なのかもわからない状態です。そのため、管理組合がどれくらいのお金を持っているか、建物や設備の修繕は適切に行われているか、これからも行われるのか、といった管理面や、部屋の上下左右に限らずどんな住民が住んでいるかなど、購入する時には目に見えない部分がたくさんあります。

実際にマンションを購入して部屋に住み始めてから、例えば、購入後数年で外装工事をすることになったけれどマンションの財政状態が悪くてお金がなく「1世帯から100万円ずつ集めないと工事ができない」と言われたり、また、マンション内に口うるさいクレーマーが住んでいることもあります。日本人の性質のひとつとして「声の大きい人に流されやすい」という所があるので、その人がマンションの中で幅を利かせ、その人の意見に沿った運営をしなくてはいけないという風になってしまい、住民同士の輪が乱れてしまうケースもあります。

マンションを購入して終わりではなく、「買ったあと大丈夫なのか?」という視点から、マンション管理は重要なのです。

住民同士にチームワークがあり、何かあった時にすぐ話し合える状況を作っておくことが必須


―住民がマンション管理を行う上で、注意すべき点はありますか?

賃貸物件の場合は、基本的にはオーナーさん(大家さん)が一人で、清掃人を雇ったり家賃を徴収したり、エレベーター点検など全てを決定しているため、住人は毎月家賃だけを払っていればよいですし、管理が悪ければ引っ越せば良いわけです。

分譲物件の場合はそれとは異なり、例えば100戸あるマンションなら、そこに住む100人全員がオーナーなので、マンション内で何らかの問題が起きた時にすぐ話し合えるような住人同士のつながり・コミュニケーションが取れる状況が作れていることが欠かせません。住民同士にチームワークがあり、何かあった時にすぐ話し合いの場を設けられるかどうかは、マンション管理の良し悪しが別れる大きな境目になります。

なお、100戸のマンションは100人全員がオーナーと言いましたが、いつも住民全員で話し合いをするというわけにはいかないので、10名ほどで理事会という組織を作り、持ち回りで1年ごとに人が変わっていきます。日本人は奥手なので初対面の人とは話が弾まないことも多く、話し合いの場がまるでお通夜のような雰囲気になってしまうこともあります(笑)。例えばエレベーターが壊れたとして、管理会社が異様に高い見積もりを持ってきたとしても「それでいいんじゃない?」と管理会社に依存したり、意見がまとまらない、ということが起こります。

マンションは、たまたまそこの条件(立地、間取り、金額など)が気に行って購入した人たちの集まりですし、「ローンが組めたから購入した」という人もいるでしょう。そのため、住民にはそれ以外の共通の価値観がありません。最近では音大の近くに、楽器などを演奏する人向けに、各部屋に防音性能が完備されているマンションが建つなど、「楽器を演奏する」という共通の目的がある人のみが集まって住んでいるような企画付きマンションもあり、住民同士のコミュニケーションが取りやすそうですが、ほとんどが賃貸物件です。

一般的な分譲マンションの場合、価値観や人生観が全く異なる「寄せ集まった人たち」が希薄な人間関係にならないように話し合う〝場〟のようなものが、作りづらいのが現状ではないでしょうか。

-マンション管理の現場からは、どのようなご相談を受けることが多いのでしょうか?

弊社へのマンション管理組合からのお問い合わせやご相談は、大きく3つに分けられます。1つが、管理会社側への不満、1つが、理事会内部で話がとまらずもめているというケース、もう1つが、建物の修繕工事についてです。

マンションでよくあるトラブルとして、住民の騒音、ペットの鳴き声、ごみ出しのマナー違反、住民の外国人が文化の違いなどから起こすトラブルなどがありますが、我々はそのようないわゆる「個人間の生活について」の相談を受けることは、管理組合とコンサルタント契約を結んでいるところ以外では対応していません。あくまで「マンションの管理・運営に関するご相談」に対応しています。

マンション管理組合を「会社」に例えて、理事会は「管理組合の執行部」で、執行部である理事会のサポート役が「管理会社」という風に考えると分かりやすいかもしれません。本来であれば、問題があれば執行部である理事会の中で解決するのですが、マンション管理に関する知識や経験が乏しいうえに、意見の相違や、住民同士が遠慮してものが言えずにうまくまとまらないなかで、サポート役であり実務経験の豊富な管理会社が何もしてくれないなどの事情から、ご相談を受けることが多いです。

第2回 よい管理会社と悪い管理会社の違いは?

- 2016年02月12日