サラリーマンのなかには「確定申告なんて、したことない」と言う人もいるでしょう。
一般的に確定申告は、個人の自営業の方が利用する納税方法です。
しかし、サラリーマンでも確定申告で「医療費控除」などをすることがありますね。
実は、不動産売却の時にも確定申告が関係してくるのです。
今回は、不動産売却と確定申告の関係をご紹介します。
確定申告が必要なのかどうかを確認してください。
確定申告が必要なのにうっかり忘れていると大変なことになるかもしれません。
目次
1. 不動産の売却と確定申告が関係する理由とは?
2. 不動産を売却したときに確定申告は必要?不要?
2-1. 不動産を売却すると譲渡所得税・住民税を支払わないといけない
2-1-1. 譲渡所得
2-1-2. 課税譲渡所得
2-1-3. 税率
2-2. 確定申告の「必要な人」「不要な人」「したほうがお得な人」がいる
2-2-1. 確定申告が不要な人
2-2-2. 確定申告が必要な人
2-2-3. 確定申告をしたほうがお得な人
3. 譲渡所得の確定申告に必要な書類
3-1. 税務署から取得する書類
3-2. 必要な添付書類
4. 不動産を売却したときには確定申告をしよう
不動産を売却したときには、確定申告が必要と聞いたことがあるかもしれません。
では、なぜ不動産売却時には確定申告が必要なのでしょうか?
自営業者の場合、商売をしたことにより利益が発生すると確定申告により税金を納めることになります。
これが所得税の確定申告です。
サラリーマンの場合でも給料について所得税が発生するのですが、会社が天引きにより納税してくれているのはご存知でしょう。
不動産を売却するケースとして、購入した不動産を売却するときがありますね。
たとえば、不動産を商品と仮定してみましょう。
商品を購入して、その商品を売却することにより利益が発生するのであれば商売になるのではないでしょうか?
つまり、サラリーマンでも給料以外に商売による所得があれば、確定申告をすることになるのです。 サラリーマンであれば、商売による所得を申告しないで済むとすると自営業者に対して不公平になるでしょう。
税金とは国民が不公平なく、自営業者もサラリーマンも同じように納めるシステムです。 したがって、不動産の売却により利益が生じれば、その利益を所得とみなして税金を支払うように定めています。
不動産の売却により利益が生じた場合、確定申告が必要となります。
では、利益を得なければ確定申告をしなくても良いのでしょうか?
実際に不動産を売っても確定申告していない人もいるようですが、本当に不要なのでしょうか?
確定申告のポイントは、「所得の有無」です。
所得があれば確定申告が必要になり、所得がなければ確定申告は必要ないように思えます。
実際に「不動産を売ったが、確定申告なんてしていない」と言う人も少なくないのです。
実は「所得がなければ確定申告なんて必要ない」と言うことができれば簡単なのですが、 そうとも言い切れないのが現状です。
確定申告が必要?不要?…
その答えを出すために、まず不動産を売却したときの所得に対する計算方法をご紹介しましょう。
不動産を売却した利益として支払わなければならないのは、譲渡所得税と住民税です。
そして、譲渡所得税と住民税の額を算出する計算式は下記のようになります。
税額の計算 |
税額=課税譲渡所得×税率(譲渡所得税・住民税) |
では、計算の仕方を詳しく見ていきましょう。
譲渡所得税と住民税を計算する前に、不動産を売却したことによる「譲渡所得」の計算が必要です。 まず、どれだけ利益を得たかを計算してください。
譲渡所得の計算 |
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用) |
譲渡所得税と住民税は、どれだけ利益を得たかで税金を支払います。
ここでポイントとなるのは、直接、譲渡所得に税率を掛けるのではないということです。
譲渡所得は、あくまで譲渡所得税と住民税の計算の準備段階となります。
参考 |
・譲渡価格…売却した価格 ・取得費…売却する不動産を取得したときの費用(不明であれば売却価格の5%) 購入代金 取得時の仲介手数料 買主が負担した印紙税 登記費用 不動産取得税 その他 ・譲渡費用…不動産を売却したときの費用 売却時の仲介手数料 売主が負担した印紙税 登記費用 その他 |
課税譲渡所得とは、税金の対象になる譲渡所得という意味です。
実際に税率を掛けるのは、譲渡所得ではなく課税譲渡所得になります。 譲渡所得と課税譲渡所得は違う、という事がポイントです。
譲渡所得は、特別控除により金額が変わる可能性があるため、まだ税率は掛けません。 控除した後の譲渡所得を課税譲渡所得と言います
居住用の住宅の売却の場合、「居住用財産の特別控除」として、 譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
控除後の譲渡所得が「課税譲渡所得」であり、課税譲渡所得に税率を乗じて税額を求めるのです。
課税譲渡所得の計算 |
課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除 |
居住用の住宅を売却した場合には「居住用財産の3,000万円特別控除」により課税譲渡所得がなくなることが少なくないのです。
課税譲渡所得に、売却した不動産の所有期間に応じた譲渡所得税と住民税の税率を掛ければ、税額が計算できます。
譲渡所得税と住民税の税率として「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」があります。
短期譲渡所得 |
売却した年の1月1日における所有期間が5年以下 |
長期譲渡所得 |
売却した年の1月1日における所有期間が5年超 |
さらに、10年を超えて所有していた不動産の売却であれば、居住用財産の場合、「10年超所有軽減税率の特例」により税率が低くなります。
適用される税率
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | 10年超所有軽減税率の特例 | |
譲渡所得税率 | 30.63% | 15.315% |
課税譲渡所得が6,000万円以下の部分 10.21% 課税譲渡所得が6,000万円超の部分 15.315% |
住民税率 | 9% | 5% |
課税譲渡所得が6,000万円以下の部分 4% 課税譲渡所得が6,000万円超の部分 5% |
(復興特別所得税を含む)
参照URL:国税庁・
土地や建物を売ったとき
所有期間に応じて税率の種類が多いので、少し複雑に感じるかもしれませんが、税額の計算自体は思いのほか簡単ですね。
実は、結果として譲渡所得税・住民税を支払わなくてよい場合でも、確定申告が不要になるとは限りません。
譲渡所得がなくなるのが、上記見出し「2-1-1. 譲渡所得」の段階か「2-1-2. 課税譲渡所得」の段階かの違いで、確定申告が不要になるか必要になるかが決まるのです。
課税譲渡所得がなくても、確定申告が必要な人と不要な人がいます。
どうして、譲渡所得税・住民税の計算で確認できるのでしょうか?
確定申告が不要な人とは、見出し「2-1-1. 譲渡所得」の段階で譲渡所得がなくなる人です。
「2-1-1. 譲渡所得」の計算で譲渡所得が0円以下になったのであれば、そもそも所得がないことになります。
したがって、確定申告の必要はないといえるのです。
ただし、税務署は登記情報から不動産を売却したことが分かっているので、後日問い合わせがくるでしょう。
確定申告が必要な人とはどのような人なのでしょうか?
確定申告が必要な人は、見出し「2-1-2. 課税譲渡所得」の段階で譲渡所得がなくなる人です。
「2-1-1. 譲渡所得」の段階では、まだ譲渡所得があったが「2-1-2. 課税譲渡所得」の段階で特別控除を利用して所得が0円以下になったのであれば、
確定申告が必要になります。
なぜなら、「居住用財産の3,000万円特別控除」を利用するためには確定申告が必要だからです。
では、確定申告をするほうがお得な人とはどのような人なのでしょうか?
確定申告するほうがお得な人とは、見出し「2-1-1. 譲渡所得」で譲渡所得がなくなった人です。
「2-1-1」の計算で譲渡所得がマイナスになったのであれば、譲渡所得がないどころか譲渡による損失が発生していることになります。
税金が戻ってくる可能性があるのです。
確定申告をすることにより「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」を受けることができます。
参照URL:居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
参照URL:特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
どうやら、譲渡所得のあるなしにかかわらず、いずれにしても確定申告はしたほうが良さそうです。
申告の時期は、不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日の間です。
では、確定申告をするときに必要な書類をご紹介しましょう。
確定申告書の様式には、A様式とB様式があります。
サラリーマンが医療費控除などの確定申告をするときには、一般的に確定申告書A様式(給与所得者用)を使用することが多いでしょう。
しかし、不動産を売却したときには、分離課税用の様式も必要になるので、「確定申告書B様式」と「分離課税用の様式」をセットで使用します。
また、「譲渡所得の内訳書」も必要です。
譲渡所得の内訳書で計算してから確定申告書に記載するイメージですね。
国税庁のホームページに「確定申告に関する手引き」があります。
申告される年の手引きをクリックして、「譲渡所得関係」の内容を確認してください。
必要な書類は税務署から取得する書類だけでいいのでしょうか?
確定申告書を使用して申告するのですが、計算の根拠となる書類の提出も必要です。
購入の費用と売却の費用を比べるためですね。
具体的には、売買契約書・登記簿謄本・仲介手数料の領収書などになります。
取得時の書類として必要な添付書類 |
売買契約書の写し 仲介手数料の領収書の写し 取得のときに必要な登記その他の費用の写し |
売却時の書類として必要な添付書類 |
売買契約書の写し 仲介手数料の領収書の写し 売却のときに必要な登記その他の費用の写し 売却後の不動産の全部事項証明書 |
不動産を売却すると確定申告が「必要な人」「不要な人」「したほうがお得な人」のパターンがありました。
しかし、「不要な人」の場合でも、後日、税務署からの問い合わせがあれば何かと面倒なことになるでしょう。
万が一思い違いがあれば犯罪になるかもしれません。
同じ面倒であれば、確定申告をする方向で進めるほうがお得かもしれません。 場合によっては、思わぬ税金のバックの可能性があります。
「申告しないで大丈夫かな…?」と思い悩むよりは、申告することでスッキリしたほうが精神的にもプラスになるでしょう。