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こんな時はどうなる!?マンション売却にまつわるトラブルQ&A

会田岳央弁護士

マンション売買を行うにあたって、常に気持ちよくスムーズに売買ができればよいですが、その過程ではさまざまなトラブルが起きてしまう可能性があります。
マンション売買にまつわる、起こりやすいトラブルからユニークな事例まで、法律的な見解ではどうなるのか?
今回は、弁護士法人シティ総合法律事務所の会田岳央弁護士にお話を伺いました。

「あなたの部屋を買いたい人がいます」という趣旨のチラシが

チラシ

Q: 住んでいる分譲マンションの郵便ポストに、「あなたの部屋を買いたい人がいます」という趣旨のチラシが入っていた。
ちょうどマンションの売却を検討していたこともあり、チラシに記載されている不動産業者に連絡をした。しかし、実際には部屋を購入したいという人はいなかった。 このチラシは、不動産業者側が売り物件を確保するために、マンション所有者に対して、さも部屋を買いたい人がいるように思わせて反響を獲得するための、いわゆる「おとりチラシ」であったことが判明した。
この場合、不動産業者を訴えることは出来るでしょうか?

A: 訴える、つまり裁判を起こす事態にまで発展するかは別として、このケースにおける売り主の不動産業者に対する請求につき考えてみます。 まず、不動産業者の作成した「おとりチラシ」によって売り主が部屋を売却に出したけれども、実際には売り主の部屋を買いたいという人はそもそも存在せず、 騙されて売却に出す意思表示をしたのですから、これは民法上「詐欺」に当たります。そのため、不動産業者との間で部屋の売却に関する契約を取り消すことができます。

部屋を売りに出すにあたって、例えば売り主が不動産業者に仲介料など何らかのお金を支払っていた場合には、契約をなかったことにして取り消して、 不動産業者に支払ったお金も返してもらうことができます。

また、部屋を売りに出すにあたって室内をクリーニングしたり、新たに住む場所を探したりなど、売り主が何らかのアクションを起こしていた場合は、不動産業者側に損害賠償請求をすることができます。 しかし、全てのケースで損害賠償請求ができるわけではなく、あくまでだまされたことによって部屋の売却のために売り主が起こしたアクションについて、不動産業者には損害賠償請求ができる可能性があります。

外国人の購入希望者が

外国人

Q: 売りに出している分譲マンションを「買いたい」という外国人が現れた。
しかし、売り主は外国人にあまりよいイメージを持っておらず、また、長く住んでいたため他の部屋の住人との付き合いなどもあったので、「外国人が悪いというわけではないが、文化や考え方の違いなどもあるため、 もしトラブルなどを起こす変な人であった場合、ご近所の人に申し訳ないと思う。そのため、日本人にしか売りたくない」と言っている。
この売り主の主張は、法律的には問題はないのでしょうか?

A: 不動産と外国人というと、売買よりも賃貸の場面で問題になることが圧倒的に多く、このケースのような事例は聞きませんが、法律的な問題につき考えてみます。 基本的な考え方で言いますと、売り主が売買の相手を誰にするか選ぶことは自由です。 しかし、外国人だけをお断わりするということは、外国人と日本人との扱いに差をつけるということにつながりますから、その行為は「差別」にあたり、 平等権を害する可能性があります(平等権は憲法に定められている人権であり、原則として対国家で問題となるのですが、このケースのような私人対私人の場面でも問題にはなります)。

しかし、平等権を害する可能性があるからといって、売り主が外国人へ部屋を売ることを拒否しているにも関わらず、無理やり売買を成立できるかというと、そういうわけではありません。 「外国人であることを理由に部屋を売らなかった」ことによって、その外国人が明らかに何らかの損害を被ったのであれば、売り主が損害賠償請求を受けることになる可能性はありますが、 売買の相手は自由ですから、「売りたくないのに売らなければならない」ということはありません。

損害賠償請求についても、可能性がないとは言いませんが、実際は請求するのは難しいケースが多いと思います。 まず、外国人であることを理由に売ることを断るとしても、「外国人だから売らない」という理由を売り主がその外国人に伝えなければ、この問題はそもそも起こらないのではないかと考えられます。 次に、外国人であることを理由に売買を拒まれた場合でも、それによってどのような損害が生じるかというのは立証が難しい場合が多いでしょう。

以上のとおり、このケースの法律的問題を考えてみましたが、差別的な取扱いをすることは問題ではあるものの、法的に具体的な請求をすることまでは難しいと考えられます。

なお、今回の問題は、あくまで「外国人が部屋を購入してそこに住む」ために起きうることであって、これが住むためではなく、単純に投資用物件として購入する場合には、何ら問題はないはずです。 また、分譲マンションの場合でも、特に周囲の住人と付き合いがなかった場合には、売り主はわざわざこのようなことは考えないはずです。

賃貸の場合には、何かあった時に貸主が責任を問われてしまうことがあるので、あらかじめ条件をつけていることがほとんどであると言えます。 例えば、老人など高齢者の方の一人住まいをお断わりしている賃貸物件もあります。 その理由としては、その高齢者の方がその部屋の中で孤独死されるなどのケースが起きた時に、物件の価値が下がってしまう可能性があるためです。

売買の場合ですと、部屋を売った後は権利関係もなくなりますし、後に住んだ住人がどんな人であれ、売り主は周囲の住人への責任などを問われることは滅多にありませんので、 そんなに気にする所ではないかもしれません。

相場よりも高い査定金額が提示されたが

提示

Q: 住んでいる分譲マンションを売却するため不動産業者に査定をお願いしたが、不動産業者が出した査定金額が、自分が予想していた金額よりも高かった。 「相場より高いのでは」と感じたが、不動産業者の言葉を信じてその価格で売りに出した。 しかし、案の定買い手がつかずに時間が経過した。その間に、景気が悪化して相場が下落してしまった。
この場合、不動産業者に損害を請求できるでしょうか?

A: 原則として、できないでしょう。 理由としては、不動産業者をどこにするのかということは、そもそも売り主が自由に決められることですので、どうしてもその不動産業者にお願いしなければならないという理由はありません。 売り主としても、「相場より高いのでは」とは感じたものの、最終的には不動産業者の技量を信じてお願いしたわけですから、そのリスクはどうしても負わなくてはいけません。 売り主側は、「部屋が売れない」というリスクを避けたかったのであれば、相場通り、または相場より安い査定をする不動産業者を選べばよかったということになります。 例え売り主に十分な不動産の知識がなかったとしても、他の不動産業者を自由に選ぶという選択肢が自分にあることくらいはわかるはずです。

しかし、例えばこれが明らかに不動産業者に「だまされた」のであれば、話は別です。 不動産業者側としても、ある程度の「営業トーク」などもあるので判断が難しい面もありますが、例えば売り主に「うちの会社は特別な販売ルートがあるから、 相場より高い販売価格をつけても絶対に売れますよ」などと言われて売却を行ったが、実際にそのような特別な販売ルートがなかった場合には、 不動産業者に騙されて取引をしたことになりますので、損害賠償請求ができる可能性があります。

近くに新築マンションが出来た

新築マンション

Q: 住んでいる分譲マンションの近くに破格の安さの新築マンションができ、買い主がその新築マンションと価格を慎重に比較した結果、 自分が住んでいるマンションの相場が一気に下落してしまった場合、新築のディベロッパーに損害を請求できるでしょうか?

A: これは、できないでしょう。 そもそも、近くにできた新築マンションの価格が安いのは、あくまでディベロッパーの企業努力で成し遂げているわけですし、おそらく価格を安くしている分、利益も少ないのではないでしょうか。売買は、基本的には自由競争です。 もしも例外的に、その新築のディベロッパーが「このマンションの価値を下げるという嫌がらせ目的のために、ここに新築マンションを建てた」という意図があるのであれば話が変わる可能性はありますが、基本的には安いものを売る分には何も問題はありません。

結局、近くに新築マンションを建てて安く部屋を提供していたとしても、例えばその中身が全然よくないとか、質が低いということであれば、安くしていても結局は売れないでしょう。 「売れる」ということは、企業ががんばっている、努力しているというだけのことであり、それを理由に他から法的請求を受けることはありません。

変な住民のせいでマンションが売れない

変な住民

Q: 相場 2000 万円の分譲マンションに住んでいるが、何と同じタイプの部屋を「20 億円」で売りに出す住人が現れた。
そのおかげで、「変な人が所有しているマンション」としてすっかり有名に。ネット上でも話題になり、マンション名で検索するとその記事ばかりがヒットするようになってしまった。 自分も現在売りに出しているのだが、その影響で悪いイメージがつき、なかなか買い手がつかずにいる。
この場合、売り主に損害を請求できるでしょうか?

A: この場合、20億円で売りに出した売り主の住人に、損害賠償請求をすることは難しいと思います。 こちらのケースも、「いくらで売るか」「いくらで買うか」は個人の自由であることが大原則です。 興味のない人にとってはただのガラクタでも、オークションなどで高額で取引されているおもちゃなどをイメージしてもらえれば分かると思います

損害賠償請求をできる可能性があるとしても、その相手は、売り主ではなく、ネット上で話題にしてこのマンションのイメージを悪くした人の方です。 しかし、残念ながら、ネットで書き込みをした者を特定して損害賠償請求をするのは困難でしょう。

このケースの設定は2000万と20億という極端な設定ですが、例えば2000万と2500万という場合には、2500という数字を他が提示してくれているおかげで、 自分の2000という数字が引き立って売りやすくなったり、2100や2200という数字を提示しても売れる可能性が出てくるわけですから、 もう少し一般的な設定でいえば、損害どころか恩恵をもたらしてくれる可能性の方が高いように思います。

同じマンションから売出しが

売り出し

Q: 売りに出していたマンションの購入者が決まりかけていたのに、同じマンション内から安い部屋が出たせいで契約が壊れた場合は、 安い部屋を売りに出した売り主に対して損害を請求できるでしょうか?

A: 先ほどのケースと逆のようなパターンですが、こちらも基本的には、できないでしょう。 こちらの場合も、基本的に「いくらで売るか」は個人の自由です。 安い部屋を売りに出した売り主に対しては、その売り主がこちらの売買成立を妨害する意図で安く売りだした等という事情がない限りは損害賠償請求はできません。

このケースですと、むしろ購入者への請求の方が可能性があります。購入者への請求の可否は、「売買がどの段階まで決まっていたか」がポイントになります。 売り主と買い主の間に完全な信頼関係が生まれていて、ほぼほぼ売買が決まりかけていたのであれば、キャンセルした側に対して、売り主が何かしら(部屋のクリーニング費用など)の損害賠償請求ができる可能性があります。

心霊体験は瑕疵?

心霊体験

Q: 分譲マンションを購入した住人から、 「部屋に住み始めてから心霊体験がある」と苦情があった。
聞けば、誰もいないはずの部屋から女の人の声が聞こえたり、子どもの笑い声が聞こえたりするという。 金縛りに合うこともあり、気味が悪く困っている。自分の子どもも「おばけがいる」と泣いて怖がっているという。 購入した住人にもその子どもにも、霊感などはないという。しかし、住人が購入した部屋はもちろん、マンション内で過去に事故や事件が起きたことはない。
この場合、瑕疵にあたりますか?

A: このケースは瑕疵にはあたりません。 基本的に、部屋で事故や事件が起きた場合には瑕疵(「心理的瑕疵」)に当たりますが、今回のようなケースはあたりません。

まず瑕疵足り得るには、「部屋から女の人の声や子どもの笑い声が聞こえるということが事実である」ということが大前提ですが、さすがにそれはないでしょう。 仮に、本当に仮にですが(笑)、事実だとしてもそれを証明しなければならないので、その点でも困難です。 さらに、その段階までクリアできたとしても、「住んでいる部屋で心霊体験に逢わないこと」が法律で保障されている権利や利益かというと、それは違います。 例えば、「雨漏りをしない」「屋根があり雨風をしのげる」というのは、最低限住居が備えていなければいけない機能として保護されていますが、「心霊現象に逢わないこと」は、法律的に保護されることが期待できない事象です。 法律上保護されていない権利・利益ならば、法律を用いて何らかの請求をすることはできません。 仮に、この心霊体験によって家族がノイローゼのような状態になってしまったとしても、損害賠償請求などをすることは、残念ながら、まずできないでしょう。

ただ、心霊現象だと思っていたことが実は違って、建物に施工不良があった場合には「瑕疵」にあたるでしょう。 例えば、建物の施工に不備があったことが原因で、他の部屋からの声が漏れ聞こえていた、何もない部屋で物音がするから心霊現象なのではと思っていたが、実は施工不良で建物がガタついていた、などの場合です。 少なくとも法的請求を考えるのであれば、心霊現象ではなく、こちらの可能性を考えるべきだと思います。

マンション売却を成功させるコツや売買の流れについて知りたい方は下記のページをご参照ください
「マンション売却を成功させるコツを不動産業者が徹底解説」

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