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不動産売却の疑問 〜 離婚時の不動産売却 〜

住宅ローンが残っている自宅を財産分与する際の手順

離婚届

一般的にマイホームを購入される年代は20代後半から40代前半が多いでしょう。 また、子供が生まれると、できれば転校せずに済むよう小学校入学前に購入したいと考える方が最近は増えていて、年齢的に多くの方が住宅ローンを利用して購入されることでしょう。

でも、もし何らかの事情で離婚を余儀なくされてしまったとしたら、マイホームや住宅ローンをどうするのか考えなければなりません。 誰が住むのか、誰が所有するのか、住宅ローンの名義や支払いは誰になるのかなどについて、冷静に決めて行かなければなりません。 離婚後も子供の、妻の、そして夫の生活も続いて行く訳ですから、一時的な感情に左右されることなく、先々も十分に考えて決めて行く必要があります。 ただ、コトはお金が絡む問題です。しっかりとした手順を踏み、夫婦で冷静に話し合って進めて行く事が求められます。

今回は、離婚に際し、住宅ローンが残っている自宅の扱いについて、特に財産分与に焦点を当てて解説して行きたいと思います。

ではまず、「離婚を機に住宅ローンが残っている自宅をどのように扱うべきか」について手順を列記します。

  1. 住宅ローンがどの程度残っているか、もし自宅不動産を売却するとすればどれくらいで売れるのかをそれぞれ確認し、自宅不動産の価格と住宅ローンとでどちらの金額が大きいのかを把握する。
  2. 上記1の結果から売却するかしないかを判断する。売却しない場合は、誰が所有し、誰が居住するのか、誰が住宅ローンを負担するのかを決める。
  3. 財産の配分をどのようにするのか決める(財産分与の手続き)。
  4. 自宅不動産の所有権、住宅ローンの名義を変更する場合、一定の手続きを行う。

※ 自宅不動産の所有権移転登記手続き
※ 住宅ローン債務者変更手続き
※ 連帯保証人になっている場合の手続き

これらの手順に則って進めて行くことになります。以降、それぞれの手順の中身について説明して行きたいと思います。

1.住宅ローンがどの程度残っているか、もし自宅不動産を売却するとすればどれくらいで売れるのかをそれぞれ確認し、自宅不動産の価格と住宅ローンとでどちらの金額が大きいのかを把握する。

住宅ローン残高

住宅ローンがいくら残っているかを確認する。

これは、借りている金融機関に問い合わせれば確認できます。とりあえず、問い合わせした日現在の残債額で良いでしょう。

自宅不動産がどれくらいで売れるのかを確認する。

これについては、専門家の見解が必要になります。自宅等の居住用不動産であれば、最も関わりの多い「不動産仲介会社」に調べてもらうのが賢明でしょう。 申し出る際は、「売却の査定」の名目で1社だけでなく4~5社程度の会社に依頼するようにします。ここで重要な点は、「売りたい金額」ではなく「現実的に売れる金額」を教えてもらうことです。見込んでいた金額で売れなかったために、ローンの残債が返済できなくなる可能性も考えられるからです。もし、不動産会社が金額の明言を避けるようであれば、「幅をもって売れる上限・下限の金額」だけでも良いので聞き出し、その幅の中間の金額を目安とするようにします。なお、売却の査定については無料で行なってくれますので、費用の心配はありません。

不動産の査定価格とローンとでどちらの金額が大きいかを把握する。

不動産の査定金額が住宅ローンより大きい“アンダーローン”になるか、住宅ローンの残債額の方が大きい“オーバーローン”になるかを確認します。 加えて、登記費用や仲介手数料などの売却に伴う諸費用は、物件によって数百万円単位の金額になる場合がありますので、不動産会社に頼んで試算してもらうようにしましょう。

2.1の結果から売却するかしないかを判断する。売却しない場合は、誰が所有し、誰が居住するのか、誰が住宅ローンを負担するのかを決める。

売却せずに、妻が自宅に居住する

女性の一人暮らし

妻が自宅に住む場合として、以下の4つのケースが想定されます。権利関係やお金の動きが複雑になりますので、良く理解して下さい。

  • ① 自宅不動産の所有権を妻の単独名義に変更し、住宅ローンの名義は夫のままとするケース

    これは「所有も居住も妻」で「支払いは夫」となることから、妻に優位性があるように見えますが、夫がローンを滞納するかも知れないというリスクが考えられます。また、売却査定の結果からアンダーローンになるようであれば、不動産査定額からローン残債額を差し引いた金額のうちの半分を、妻から夫に支払う必要が生じる場合もありますので、一概に優位とは限らず、財産はほぼ均等に分配されるものと理解して下さい。

  • ② 自宅不動産の所有権・住宅ローンの名義ともに夫のままとするケース

    これは、妻が金銭的な負担を一切せずに住み続けることができるので、①よりさらに優位性があるように見えますが、同じく夫が滞納するリスクが懸念されます。対策としては、公正証書等の公文書により、一定のリスク回避策を講じておく必要があります。

  • ③ 自宅不動産の所有権・住宅ローンの名義を妻に変更するケース

    このケースでは、①と同様にアンダーローン時の支払いの可能性を考慮する必要があります。また、ローンの全額を返済していく妻の負担が大きくなることから、返済の一部を夫に負担してもらうなどの協議が必要となることも考えなければなりません。そして何より重要なことは、金融機関の審査を経なければならないことです。当初、夫の収入・資産から承認されたローンですので、妻が同様以上か、別途保証人を立てるなどの措置を講じなければ、審査の承認が得られない可能性もあり、場合によってはこのケースを選択できない可能性もあります。

  • ④ 自宅不動産の所有権・住宅ローンの名義は夫のままで、妻が家賃を払って住み続けるケース

    これは、最も現実的な方法と言えます。子供の転校を回避することができますし、妻の仕事やコミュニティ環境も維持できます。また、夫が家賃収入を得られるため、①②のような滞納への歯止めにも有効性があります。

売却を選択する

住み続けることを選択せず、売却することにした場合は、オーバーローン(残債額>売却金額)かアンダーローン(残債額<売却金額)かでお金の動きが大きく異なります。それぞれ見てみましょう。

  • ① オーバーローン(住宅ローン残債額の方が売却金額よりも大きい)のケース

    不動産売買において、売却してもローンが完済できないケースというのは、通常の売却方法では困難な状況です。 このケースでは、金融機関などの債権者と交渉し、売却金額でローンの抵当権を抹消してもらう「任意売却」という形態で進めて行くことになります。 そして、売却しても払いきれなかった債務については、金融機関と話し合った上で別途返済して行くことになります。

  • ② アンダーローン(売却金額の方が住宅ローン残債額よりも大きい)のケース

    売却してローンの残債を払い、そこでお金が残った場合は、残ったお金については、離婚協議において決めた配分通りに財産を分ける(財産分与)ことになります。

3.財産の配分をどのようにするのか決める(財産分与の手続き)

話し合いの場を持つ

話し合う夫婦

離婚した後も生活は続きますし、子供も育てなければなりません。 ですから、自宅・債務の返済・財産の分配などお金に関する話し合いをしっかり行わなければ、問題の先送りになってしまい、後で取り返しのつかない事態になり兼ねません。 話し合いでは、以下の事を忘れずに実行するようにします。

  • ① 話し合いの記録を取る。

    夫婦どうしで記録を取るというのも抵抗があるかも知れませんが、後から「言った言わない」を回避するためにも、可能な限り取るようにしましょう。

  • ② 親戚などに立ち会ってもらう。

    これは、上記①の「言った言わない」の回避と同様の目的であって、話し合いを優位に進めるための加勢ではありません。話し合いの内容をすべて記録できないことも十分考えられるでしょうから、こちらも可能な限り同席してもらう方が良いでしょう。

なお、話し合いでまとまらない場合は、「離婚調停」や「離婚裁判」という方法も考えられます。 ここで、本コラムでは「住宅ローンが残っている自宅を財産分与する際の手順」をテーマに解説させて頂いており、離婚そのものの手順をお教えするのが主旨ではないため、それらの手続きについての詳細説明は省略することとさせて頂きます。 参考までに、概要のみ以下に記載致します。

離婚調停による財産分与

話し合いが暗礁に乗り上げてしまった場合は、裁判所による調停を申し立てる方法があります。手続き等は以下の通りです。

参照:裁判所ウェブサイト(夫婦関係調整離婚調停

離婚調停でもまとまらない場合は、離婚裁判で争うことになる

話し合いでも結論が出ず、調停でもまとまらなかった場合は、離婚裁判で争うことになります。手続き等は以下の通りです。

参照:裁判所ウェブサイト(裁判

4.自宅不動産の所有権、住宅ローンの名義を変更する場合、一定の手続きを行う。

自宅の名義人変更(所有権移転登記)

自宅などの居住用不動産を購入する際の不動産の名義人は、通常、夫の単独名義か夫と妻の共有名義にされる方がほとんどでしょう。 そして離婚に際し、「自宅不動産の所有権を妻の単独名義に変更し、住宅ローンの名義は夫のままとするケース」と「自宅不動産の所有権・住宅ローンの名義を妻に変更するケース」のように、妻の単独名義へと変更する場合は、「所有権移転登記」という名義変更の手続きを行う必要があり、手続きは司法書士などの有資格者に依頼することになります。

また、所有者を変更するとなれば、住宅ローンの抵当権者である金融機関に了承を得なければならないのですが、通常、住宅ローンが残った状態での所有者変更に金融機関が応じるケースは稀と言えるでしょう。 そのため、住宅ローンを全額完済するか、後述の債務者変更手続きを並行して行うなどの措置を講じる必要があります。

住宅ローンの名義を妻に変更する(債務者変更手続き)

これは「自宅不動産の所有権・住宅ローンの名義を妻に変更するケース」が該当し、そこでも記述しましたが、あらためて住宅ローンの審査を経なければならず、妻の収入が基準に満たなければ保証人を付けるなどの措置を講じる必要があります。 他にも、住宅ローンに付帯する契約(火災保険・団体信用生命保険・地震保険等)の名義人変更の手続きも行います。

連帯保証人になっているケースの対処法

共有名義での購入や夫単独名義であっても、妻を連帯保証人としている場合にはそれを解除する必要があります。 ただ、金融機関の審査を経ることとなり、承認を得られなければ別途の方法を検討しなければなりません。方法の具体例を挙げておきます。

  • ① 金融機関に、返済期間や金利等の条件変更を願い出る。
  • ② 他の金融機関に借り借り換える(審査あり)。
  • ③ 親など別途の連帯保証人・連帯債務者を立てる。

いずれを選択するにせよ、金融機関との話し合いや審査は必須条件となりますので、専門家にアドバイスを受けるなどしっかりと準備をしてのぞむようにしましょう。

〔参考実例〕結婚していない男女が共有名義でマンションを購入し、その後離別したケース

ここで、実際にあったケースをご紹介します。結婚前提で交際していた男女が、連帯債務でローンを組み、共有名義で自宅マンションを購入しました。 男女が共働きだったこともあってローンは早期に完済できましたが、事情により結婚に至らず、女性は自宅マンションを出て行き男性はそこに住んだままの状態でした。 女性はマンションを売却して財産分与に応じるよう男性に申し出たものの、売却に同意せず困っているという事案でした。

このケースで女性が最も注目すべき点は、「共有名義」で購入しているということです。 結婚すると一般的に男性が世帯主になるでしょう。 ただ、世帯主だからと言って安易に男性の単独名義にしてしまい、非婚・離別した後で何もせずに放置しておくと、民法の取得時効(20年)が進行することとなり、すべて男性側の所有になるという事態も起こり得るのです。

本件は、共有名義にしていたため女性側の所有権は担保されていました。しかし、その点を踏まえても男性が売却を拒否するのであれば、女性の所有権持分を男性側に買い取るよう請求することができます。 もしそれさえも拒むようであれば、裁判所に対し「共有物分割請求」を申し立てることにより、男性と争うことができます。 そして、女性側の主張が正当と見なされれば、今度こそ男性側は買い取りを拒むことができなくなるのです。

離婚時の対応とは異なる点がありますが、参考にして頂ければと思います。

マンション売却を成功させるコツや売買の流れについて知りたい方は下記のページをご参照ください
「マンション売却を成功させるコツを不動産業者が徹底解説」

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