最近では、みずほ銀行が久々に人員削減を行ったり、金融機関の収益が軒並み悪化していたり、
メガバンクが採用減になるなど、金融機関のネガティブなニュースが多いです。
最も大きな理由は、日本銀行が打ち出した「マイナス金利政策」の影響でしょう。
一方、消費者側は、マイナス金利政策の恩恵を受け、住宅ローンなどの金利は、
歴史上類を見ないほどの低金利となっています。
今回は、そんな住宅ローンに注目し、2017年~2018年の金利推移を、金利の仕組みを踏まえ解説していきます。
目次
1. 金利推移について
1-1. それぞれの金利タイプについて
1-2. 金利推移について
2. 変動金利の推移
2-1. 店頭金利と優遇金利・実質金利
2-2. 店頭金利が変わらない理由
2-2-1. 短プラとは?
2-2-2. 短プラを変更しない理由
2-3. 主要銀行の金利推移
2-3-1. 金利の水準は?
3. 固定金利の推移
3-1. 国債と連動する理由
3-1-1. 国債とは?
3-1-2. 金融機関と国債
3-1-3. 住宅ローンと国債
3-2. 固定金利の推移
3-2-1. 実際の固定金利は?
3-2-2. ある程度は連動する
4.まとめ
まずは、金利推移から見ていきましょう。 そもそも金利には以下の3つのタイプがあります。
変動金利は、半年に1回金利の見直しがされ、5年に1回返済額に反映されます。
固定金利期間選択とは、「固定5年」のように、一定期間は金利が固定され、その期間が終われば、再度金利タイプを選ぶという金利です。
全期間固定金利は、借入している全期間で金利が固定されています。 有名な全期間固定金利では「フラット35」があります。
なお、民間の金融機関でも、変動金利・固定金利選択型、全期間固定金利の全タイプの住宅ローンを提供していることがほとんどです。
一般的には、変動金利、固定金利期間選択型、全期間固定金利型の順番で金利が低く、同じ順番でリスクが高いです。 つまり、リスクが高いほど金利が低いというわけです。
さて、そんな住宅ローン金利の推移ですが、以下がフラット35を提供する住宅支援機構が出典している金利推移表になります。
まず、変動金利ですが、実は何年もの間、2.475%で変わっていません。
固定金利期間選択型は多少の変動はあるものの、「マイナス金利」時代には多少金利が高いという印象を持つ方もいると思います。
次項以降で、その理由について解説しますが、まずは上記の金利推移を頭に入れておいてください。
次に、全期間固定金利のフラット35の金利推移です。
上記の赤枠部分が、2017年から2018年にかけて提供されているフラット35の金利になります。
このように、2017年から2018年にかけて、多少上がっていますが、一定水準を保っているのが分かると思います。
まずは、変動金利の推移から見ていきましょう。 金利の解説をするときは、以下の順番で解説していきます。
金利は少々複雑な面もあります。
しかし、その点を理解することで、金利の推移も理解しやすいですし、なぜ金利が変わっていないのかも理解できます。
さて、最初に店頭金利と優遇金利、
そして実質金利という3つの金利を解説します。
店頭金利というのは、金融機関が前項で解説した基準金利(変動は2.475%)を参考に設定している金利です。
大抵の金融機関が、基準金利を採用しているので、店頭金利も2.475%に設定しています。
しかし、ネットで「住宅ローン 変動金利」などで検索してもらえると、ほぼ全ての金融機関で、
変動金利が2.475%以下で設定していることが分かると思います。
この理由は、金融機関が独自に優遇金利を設定しており、
店頭金利から金利をマイナスして提供しているからです。
マイナスした後の金利は「実質金利」と呼ばれます。
たとえば、A銀行が変動金利0.8%で提供していれば、1.675%優遇(2.475%-1.675%=0.8%)しているということです。
各金融機関で変動金利が違うのは、この優遇金利が金融機関によって異なるからです。
それが、金融機関が提供する住宅ローンの商品力の差にもなります。
また、金融機関でも毎月提供する住宅ローンの金利が異なるのは、月ごとに優遇金利を変えているからです。
そのため、店頭金利を見ても意味がなく、金融機関が設定している優遇金利を見る必要があるのです。
さて、そんな店頭金利は、なぜ2009年頃から2.475%のままなのでしょうか?
その大きな理由は、変動金利が短期プライムレート(短プラ)と連動しているからです。
その短プラを2009年以降、ほとんど変えていないので、2.475%から変えないということです。
短プラとは、主に金融機関同士でお金を貸し借りするときの金利です。 金融機関はお金を貸して、貸出先が利息を含めて返済することで収益を上げています。 そして、その原資となるのが、わたしたちが預けている銀行預金です。
しかし、金融機関の間でもお金の調整が必要になり、金融機関同士で貸し借りすることもあります。
そのときは、金融機関は信用力がある企業と認識されるので、優良企業への貸し出し金利(短プラ)が適用されるという仕組みです。
短プラを変更しない理由は、金融機関が利ザヤを得るためです。 マイナス金利政策の煽りを受け、住宅ローンをはじめ、企業への貸出金利なども下がりました。 つまり、金融機関からすると、利息が小さくなるので、収益を圧迫するということです。
だからこそ、虎の子の短プラを下げてしまうと更に収益が圧迫されてしまうため、短プラは現状維持し続けているというわけです。
これが、店頭金利が2.475%のまま推移している理由と言われています。
さて、そんな変動金利ですが、2017年から2018年6月までの推移を見てみましょう。 今回は、変動金利を2つの金融機関で比較してみます。
1つは、ネット銀行の代表であり、数ある金融機関の中でトップクラスに金利が低い住信SBIネット銀行です。 2つ目は、日本最大の金融機関である三菱UFJ銀行です。
以下が2017年1月~2018年月の、住信SBIネット銀行・三菱UFJ銀行の変動実質金利になります。
住信SBIネット銀行 | 三菱UFJ銀行 | |
2018年6月 | 0.46% | 0.78% |
2018年5月 | 0.46% | 0.78% |
2018年4月 | 0.46% | 0.78% |
2018年3月 | 0.46% | 0.78% |
2018年2月 | 0.46% | 0.78% |
2018年1月 | 0.46% | 0.78% |
2017年12月 | 0.48% | 0.78% |
2017年11月 | 0.48% | 0.78% |
2017年10月 | 0.48% | 0.78% |
2017年9月 | 0.44% | 0.78% |
2017年8月 | 0.44% | 0.78% |
2017年7月 | 0.44% | 0.78% |
2017年6月 | 0.44% | 0.78% |
2017年5月 | 0.55% | 0.78% |
2017年4月 | 0.57% | 0.88% |
2017年3月 | 0.57% | 0.88% |
2017年2月 | 0.57% | 0.88% |
2017年1月 | 0.57% | 0.88% |
上記をグラフ化した資料が以下です。
上記のように、住信SBIネット銀行は0.5%を切っており、三菱UFJ銀行でも0.8%を切っています。 住信SBIネット銀行が低すぎるので、三菱UFJ銀行が高く見えるかもしれませんが、0.8%切っているという水準は非常に低い金利です。 その証拠に、三菱UFJ銀行の2010年~2015年の金利は以下で推移しています。
2015年12月 | 0.975% |
2015年6月 | 0.975% |
2014年12月 | 0.975% |
2014年6月 | 0.975% |
2013年12月 | 1.075% |
2013年6月 | 1.075% |
2012年12月 | 1.075% |
2012年6月 | 1.075% |
2011年12月 | 1.075% |
2011年6月 | 1.275% |
2010年12月 | 1.275% |
2010年6月 | 1.275% |
ちなみに、住信SBIネット銀行も、2014年頃までは0.8%ほどの金利でした。
上記を見ると、住信SBIネット銀行の0.5%切り、三菱UFJ銀行の0.8%切りが、いかに低金利か分かると思います。
また、2018年に入っても、2017年末の金利は、ほぼ変わらずに推移していることも分かります。
さて、次に固定金利の推移を解説します。 変動金利は短プラに連動して、金融機関ごとに優遇金利を設定していました。
一方、固定金利は新発の10年国債に連動します。 その金利と、上述した優遇金利を基に、固定金利も実質金利が決まるという仕組みです。
固定金利については、以下の順番で解説していきます。
変動金利とルールや仕組みが異なる点があるので、その点に注意しながら読み進めていってください。
特に、固定金利は国債が出てきますので、国債の仕組みをザックリと頭に入れて読み進めていきましょう。
なぜ、金融機関の固定金利は短プラではなく、国債と連動しているかというと、国債の金利よりも住宅ローンの固定金利を高く設定しないと、 国債を取得した方がお得になってしまうからです。
そのため、金融機関が提供する固定金利は、国債の利回りよりも高く設定するのが一般的なのです。
国債とは、国が提供する債券です。
要は、国が国民や企業から借金をするというわけです。
その国債で得た財源は、政府の予算内に組み込まれ、日本のために利用されます。
良く「今年度予算案」などをニュースで見ると思いますが、その予算の内訳をみると、収入の欄に「国債」があります。
つまり、企業や個人に国債を売却して、その売却金額を収入として予算に組み込んでいるというわけです。
先ほど少し触れましたが、金融機関はわたしたちの預金を、預金の金利よりも高い金利で企業や個人に貸し出します。
そして、その利息を収益としてビジネスを成り立たせているというわけです。 しかし、そのほかにも、企業の株や債券、そして国債を取得し、その配当金や償還金額も収益としているのです。
国債の場合は、あらかじめ利率が決められており、たとえば「0.5%」の利率であれば、毎年国債購入金額の0.5%の利率をもらうことができます。 国債を取得しておけば、国が破綻しない限りは利息をもらえますし、期限が来れば元本が返還されるので、 低金利ながらも低リスクで収益を上げられるのです。
さて、ここで住宅ローンの話に戻ります。 仮に、5年で償還される(5年後に元本が戻る)国債の金利が0.5%で、住宅ローンの固定5年も0.5%に設定するとします。
この場合、たとえば3,000万円というお金を、金融機関は国債を取得するのと、固定5年の住宅ローンを個人に貸し出すのはどちらがお得でしょうか?
答えは「国債」です。
なぜなら、国が破綻する確率と、借入者という一個人が破綻(返済不能)になる確率は、一個人が破綻する確率の方が高いからです。
そのため、リスクが高い一個人に貸し出す金利の方が、低リスクの国債の金利より高く設定するというわけです。
だから、固定金利は国債の利回りと連動し、国債の利回りより少し高く設定するというわけです。
さて、前置きが長くなりましたが、前項までを踏まえて固定金利の推移を見ていきましょう。
まずは、以下が10年国債の利回りです。 10年国債とは、途中で売却しなければ、10年後に元本が返還され、それまでの期間は以下の利率にて、毎年利息をもらうことができる国債です。
上記は直近3年のグラフですが、以下3点を覚えておいてください。
上記を踏まえ、住信SBIネット銀行と三菱UFJ銀行の固定金利を見ていきましょう。
住信SBIネット銀行 | 三菱UFJ銀行 | |
2018年6月 | 0.81 | 0.85 |
2018年5月 | 0.76 | 0.8 |
2018年4月 | 0.74 | 0.8 |
2018年3月 | 0.77 | 0.8 |
2018年2月 | 0.77 | 0.8 |
2018年1月 | 0.72 | 0.75 |
2017年12月 | 0.72 | 0.75 |
2017年11月 | 0.72 | 0.75 |
2017年10月 | 0.72 | 0.75 |
2017年9月 | 0.64 | 0.75 |
2017年8月 | 0.66 | 0.8 |
2017年7月 | 0.66 | 0.7 |
2017年6月 | 0.66 | 0.75 |
2017年5月 | 0.61 | 0.7 |
2017年4月 | 0.56 | 1.05 |
2017年3月 | 0.5 | 0.55 |
2017年2月 | 0.54 | 0.5 |
2017年1月 | 0.54 | 0.65 |
上記のように、国債価格とほぼ連動していることが分かります。 2017年3月に少し下がり、9月以降少し金利が上がっています。 その後は緩やかに上昇しているという結果です。
国債の利回りよりも、上記の固定金利の利回りの方が上がっていますが、これは金融機関の戦略でしょう。
恐らく、マイナス金利で変動金利や企業への貸出金利が下がった関係で、固定金利を上げないと収益が厳しくなったと思われます。
さて、さきほどいった3点目の「2016年7月付近でググっと利率が下がっている」を思い出してください。 実際にこの時期の固定金利を見ると以下の通りです。
住信SBIネット銀行は元々低金利だったのでインパクトは小さいですが、三菱UFJ銀行の下落は大きいです。
国債の利率がマイナスになっているということは、国債を買っても利益が出ていない状態ということです。
つまり、国債を買うくらいだったら、金利を下げてでもそのお金を固定金利で貸し出した方がまだマシということで、 上記のように金利が下がっているのです。
このように、2017年から2018年にかけては、変動金利はほぼ変わらず、固定金利は少し上がっているという結果でした。
いずれにしろ、マイナス金利政策の影響で、低金利の状態は続いています。 今後どうなるかは読めませんが、マイナス金利政策が続く限りは、低金利が続くと予想されるので注視しておきましょう。
※ 本記事は2018年06月時点の内容になります。各サービス内容の詳細については当該サービス事業者にご確認ください。
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