2017年の住宅ローンを振り返る

株高やアベノミクス、オリンピック招致と、比較的好景気と言われている日本ですが、住宅ローンはどうなっているのでしょうか。
住宅ローン金利は、日本銀行の政策金利に大きく影響されるので、日本の景気を反映しているといっても過言ではありません。

そこで今回、さまざまなデータやニュースから、2017年の住宅ローンを振り返ります。
2017年に借入が起きた住宅ローンはどのようなタイプが多く、金利はどのようになっていたのか。

また、住宅ローンにまつわるニュースを見ることで、2017年の住宅ローン事情を見ていきましょう。

目次

1.住宅ローンの動向調査
☞1-1.選択金利タイプは?
☞1-2.固定金利の年数比較
☞1-3.フラット35の利用状況
☞1-4.住宅種類別のローンタイプ
☞1-5.融資率
☞1-6.返済負担率
☞1-7.借入者の世帯年収
☞1-8.今後の金利見通し
☞1-9.金利上昇に対する返済への対応
☞1-10.フラット35を利用した理由

2.金利推移は?
☞2-1.フラット35の金利推移
☞2-2.民間銀行の金利推移
☞2-3.金利と支払額の比較
・フラット35(金利1.0%)
・変動型(金利0.5%)

3.住宅ローンに関するニュース
☞3-1.変動金利と固定金利の逆転
・長期金利が下落
・金利の逆転
☞3-2.付加価値を上げる金融機関の増加
☞3-3.保障を手厚くする金融機関の増加
・住信SBIネット銀行「全疾病保障」
・じぶん銀行「ガン50%保障」の概要
☞3-4.フラット35も団信見直し
・保険料が金利上乗せ
・保障範囲が拡大
・オプション保障の内容も拡充
☞3-5.外的要因にも影響された長期金利

4.まとめ

1.住宅ローンの動向調査

2017年の住宅ローンを振り返る上で最も分かりやすい調査結果は、住宅支援機構が提供する「2017年度 民間住宅ローンの貸出動向調査結果」です。
この調査はフラット35を提供する住宅支援機構が、民間住宅ローン利用者に対して行った独自の調査であり、ローンに関して色々なヒアリングをしています。

※参考サイト:2017年度 民間住宅ローンの貸出動向調査結果

1-1.選択金利タイプは?

住宅ローンには、大きく分けて変動金利固定期間選択型、そして全期間固定型の3種類があります。
それぞれの特徴を簡単にまとめると以下の通りです。

変動金利固定期間選択型全期間固定金利
金利低い中間高い
リスク高い中間低い
審査比較的厳しい中間比較的緩い

このように、金利タイプによってメリット・デメリットが異なりますが、2017年に最も借り入れが多かった金利タイプは変動金利タイプです。

変動金利は、半年ごとに金利を見直し、5年ごとに支払額に反映させます。
固定期間選択型は「10年固定」など、決められた期間は固定金利ですが、その期間が過ぎれば、再度金利タイプを選択します。
そして、全期間固定金利は借入期間ずっと金利が変わらないタイプです。

金利

2016年から変動金利がジワジワと増えており、2015年と2016年を比べると、15%ほど増加しています。
一方、全期間固定金利を選択する人は減少しており、2015年と比べると、約25.4%も減少していることが分かります。

これは、マイナス金利政策などにより、今までにないほど低金利になったことが理由でしょう。
また、今後金利が大きく上昇する可能性は低いであろうという、消費者心理も読み取れます。

1-2.固定金利の年数比較

次に、固定金利を選択した人の中で、どのくらいの期間を選択した人が多かったのかを見ていきましょう。
上述したように、全期間固定金利は借入期間中ずっと金利が変わらないので、ここでは固定期間選択型のことをいっています。

固定金利

このように、直近の動向では10年未満の金利タイプを選ぶ人が多い傾向にあります。
これは、たとえば「5年固定」や「3年固定」などの期間が短い金利タイプは、変動金利と比較的近い低金利に設定されているからと思われます。

つまり、「固定金利だけど、変動金利並みに金利が低いので、とりあえず短期間の固定金利で組んでおく」というニーズが増えたものと考えられます。

1-3.フラット35の利用状況

次に、全期間固定金利の代表格であるフラット35の利用状況です。
全期間固定金利はフラット35が最もメジャーですが、実は民間銀行も全期間固定金利の商品を提供しています。

フラット35

上記のように、2017年はフラット35の利用比率が下がり、フラット35以外の民間銀行が提供する全期間固定金利タイプが逆転しました。
2014年のシェアと比べると分かると思いますが、最近では民間銀行のシェアが拡大を見せています。

この大きな理由として、マイナス金利や量的緩和政策によって、民間銀行の固定金利が下がったことが挙げられるでしょう。

1-4.住宅種類別のローンタイプ

次に、新築戸建て、新築マンション、中古住宅など、住宅の種類別に利用されたローンタイプを見ていきましょう。

ローンタイプ

中古戸建と中古マンションに全期間固定型が多いところを見ると、借入額が安かったことから、全期間固定型にしたと考えられます。
借入額が安ければ、金利が高くても月々返済額はさほど上がりません。
そのため、金利が安定している全期間固定型を選ぶ人が多かったと思われます。

1-5.融資率

融資率とは、フラット35や民間銀行が借入者へ、物件価格のうち、どのくらいの金額を融資したかという数値です。

この数値は、逆に言うと借入者の自己資金率を表します。
つまり、融資率が100%であれば、自己資金はゼロで、融資率が50%ということは、自己資金率は50%です。

融資率

このように、多くの借入者が融資率90%超~100%以下、言い換えると自己資金率10%未満での借り入れをしているということです。
これは、以下2つの点が言えます。

・金利が低いので借入額を増やせる

・審査に比較的通りやすい

一番大きな理由は、金利が低いので、自己資金を出すよりもローンで組むという方針の人が多かったのでしょう。
また、自己資金率が低いほど審査には通りにくいので、比較的ローン審査に通りやすい時期だったとも言えます。

1-6.返済負担率

返済負担率とは、年収に対するローンの返済額です。
たとえば、年収500万円の人が年間100万円のローン返済をしていれば、「100万円÷500万円」という計算になり、返済負担率は20%となります。

返済負担率

このように、多くの借入者が返済負担率25%以内で借入を起こしています。
いくら金利が低いとはいえ、借入額を無駄に増やすことはせずに、比較的堅実な借入額の設定をしていると言えるでしょう。

1-7.借入者の世帯年収

次に、借入者の世帯年収になります。

世帯年収

上記のように、600万円以下をボリュームゾーンとして、800万円以下、1,000万円以下がつづくという結果です。
この辺りは例年と大きな変化は見られなかったため、金利に関わらず、借入をして住宅を購入する層は変わらないということです。

1-8.今後の金利見通し

借入を行った人たちが、今後の金利をどのように予測していたかのデータです。

今後の金利見通し

当然の結果ではありますが、やはり「ほとんど変わらない」と予測する人が変動型を選んでいます。
要は、今の低金利時代が変わらないので、金利が変動するタイプを選んでも問題ないだろうという考えです。
全体的にも、半数以上がほとんど変わらないと予測しています。

1-9.金利上昇に対する返済への対応

こちらは、仮に金利が上昇して返済額が増えたときにどうするか?という対応をデータ化したものです。

返済対応

見当がつかない、分からないという意見もありますが、「返済継続」「一部・全部完済」という人が多いです。
つまり、ある程度余裕を持って借入している人が多いことが分かります。

1-10.フラット35を利用した理由

次に、フラット35で借入をした人が、フラット35を利用した理由です。

フラット35を利用した理由

やはり、返済額を確定するというリスクヘッジ組が多いですが、金利が低いという層も多かったです。
これは、低金利だからこその意見と言えるでしょう。

2.金利推移は?

前項で、2017年の住宅ローンはどのようなタイプの借り入れが多かったか、また借入者の志向性はどうだったのかが分かったと思います。
次に、2017年の住宅ローン金利はどのように変動したかを見てみましょう。

住宅ローンは、上述したように3種類あります。
今回は、その中から全期間固定型の代表格であるフラット35、そして民間銀行からは日本の最大手銀行である三菱UFJ銀行金利推移を紹介します。

2-1.フラット35の金利推移

まずは、フラット35の金利推移からです。

借入期間団信加入旧団信
15年~20年21年~35年15年~20年21年~35年
2017年12月1.271.340.991.06
2017年11月1.31.371.021.09
2017年10月1.291.361.011.08
2017年9月1.021.08
2017年8月1.041.12
2017年7月1.031.09
2017年6月1.011.09
2017年5月0.981.06
2017年4月1.011.12
2017年3月1.011.12
2017年2月0.991.1
2017年1月1.021.12

引用元:ARUHI住宅ローン

団信とは、団体信用生命保険のことで、借入者が亡くなったり、高度障害になったりしたときに支払われる生命保険です。
その団信に加入しているかどうかで金利が異なります。
上記のように、団信加入なしであれば、2017年は1%前後と、かなりの低金利で推移しました。

実際に、今までのフラット35の推移を2008年から見えていくと、以下のようなグラフになります。

フラット35の推移

引用元:ARUHI住宅ローン

このように、2008年には2.5%~3%ほどの金利だったことが分かります。
それが右肩下がりになっていき、2017年にはついに1%を切るほどにまで金利が下がったというわけです。

フラット35は全期間固定金利なので、35年ローンであれば35年間金利が変わることはありません。
それは、支払額が変わらないということなので、1%の金利で35年間ローンを借り続けられるということです。

2-2.民間銀行の金利推移

さて、そんな全期間固定型のフラット35ですが、上述した住宅支援機構が提供するデータを見ると、全期間固定型よりも変動型で借り入れた人の方が多かったです。
それは、フラット35が1%ほどの超低金利であるものの、以下のように民間銀行の変動金利が更に低金利だったからです。

変動金利引用元:価格.com

こちらは三菱UFJ銀行の住宅ローン金利表です。
色々と種類はありますが、青のラインが変動金利を表しています。
このように、三菱UFJ銀行が提供する住宅ローンの変動金利は、何と0.5%~0.7%ほどで推移していました。

1つ注意点は、変動金利の基準金利は2.475%と、ここ最近ずっと変わっていない点です。
銀行が独自に優遇金利を設定します。
優遇金利とは、基準金利の2.475%から銀行がマイナス(優遇)してくれることであり、たとえば変動金利が0.6%であれば、1.875%優遇してくれているということです。

上記のように三菱UFJ銀行は0.5%を下回ることはありませんでしたが、ネット銀行などを中心に変動金利で0.5%を下回っている銀行もありました。
そのため、1%という金利も非常に低金利なのですが、0.5%ほどの金利である変動金利の方がもっと魅力的に映った人が多かったということです。

2-3.金利と支払額の比較

では、次に金利差によって、実際にどのくらい支払額が変わるか見てみましょう。
この点によって、上述した全期間固定型よりも変動型の方が多かったという理由が分かると思います。
条件は、どちらも借入額3,700万円、元利均等返済、借入期間35年です。

フラット35(金利1.0%)

・月々返済:104,445円

・総返済額:43,867,000円

変動型(金利0.5%)

・月々返済:96,046円

・総返済額:40,339,361円

このように、金利が0.5%違うだけで、月々返済で8,399円(年間100,788円)総返済額で3,527,639円の違いがあります。

3.住宅ローンに関するニュース

ニュースさて、住宅支援機構が提供したデータで2017年の借り入れ状況が分かり、金利推移によって2017年のローン金利がどのような水準だったかが分かったと思います。

最後に、2017年に報道された住宅ローンに関するニュースを紹介します。
このニュースによって、2017年の住宅ローンが世間からどのように評価されていたかが分かります。

3-1.変動金利と固定金利の逆転

上述したように、基本的には変動金利と固定金利は、変動金利の方が低金利です。
変動金利の方が金利(支払額)が変動するリスクがあるので当然なのですが、実は2017年には固定金利と変動金利が逆転するという珍しい現象が起きました。

そもそも、変動金利と固定金利の基準は異なります。
変動金利は、銀行間や優良企業に貸し出すときに適用される「短期プライムレート(短プラ)」が適用され、長期金利は新発10年国債などの金利が適用になります。

長期金利が下落

長期金利は、新発10年物国債の金利によるので、国債が買われて価格が上がれば金利が下がり、その逆なら金利は下がります。
日本銀行(日銀)の質的・量的緩和などによって、国債の大量借入などが行われ、国債価格が上がり、金利が下がるというような現象が発生しました。

金利の逆転

日銀の政策だけの影響ではありませんが、とにかく固定金利が下がったことで、三井住友信託銀行の5年固定金利が0.5%まで下がり、当時の変動金利を下回るという現象になったのです。
このように、マイナス金利政策なども含め、日銀の金融政策に踊らされて、今までの常識が通用しない金利になっていたのが2017年の状況です。

3-2.付加価値を上げる金融機関の増加

また、このような金利競争のほかに、各金融機関は自社で借り入れしてもらうために、以下のような付加価値を高めました。

・実店舗での相談受付

・通信料のキャッシュバック

特に、ネット銀行に対抗するため、実店舗での手厚いサポートを充実する銀行が多かったです。
また、KDDIが代理店として販売しているau住宅ローンなどは、auユーザーなら自分の携帯の通信料のキャッシュバックが受けられます。

ほかにも、イオン銀行ならイオンで買い物を割引したり、住信SBIネット銀行ならほかのサービスの割引特典などを付与したりしていました。
このように、低金利時代を迎え、金利だけでは勝負できないので、ほかの商品やサービスと組み合わせて住宅ローンが増加したのも2017年の特徴です。

3-3.保障を手厚くする金融機関の増加

また、付加価値以外にも、団信を中心とする補償を手厚くする金融機関も増えていました。
先ほども少し触れましたが、団信は本来「亡くなったとき」や「高度障害になったとき」に保障される保険です。

しかし、以下のような保険を提供する金融機関が出てきました。

住信SBIネット銀行「全疾病保障」

・精神障害等を除くすべての病気やケガで働くことができない:ローン返済がゼロになる

・8疾病で12カ月継続して働くことができない:ローン残高がゼロ円になる

・8疾病以外の病気やケガの場合で入院によって12カ月継続して働けない:ローン残高がゼロになる

8疾病とは、がん・急性心筋梗塞・脳卒中・高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎のことです。
このように、団信の保険内容を手厚くして、民間の生命保険会社が提供するような保険にしているのです。

じぶん銀行「ガン50%保障」の概要

・医師にガンと正式診断された:ローン残高が50%になる

いわゆるがん保険という保険です。
住宅ローンを組むということは借金を背負うということなので、どうしても不安が残ります。
その不安を解消し、他行との差別化を図るために、上記のような保障内容を手厚くしたサービスが2017年は増えました。
この2つはほんの一部で、ほかにもたくさんの保障があります。

3-4.フラット35も団信見直し

前項に付随するニュースで話題になったのが、住宅支援機構が運営するフラット35の団信が見なおされたニュースです。
通常の民間銀行であれば、ローンの借入時に団信への加入は必須です。

なぜなら、団信に加入せずに融資すると、金融機関のリスクが高すぎるからです。

2017年10月からはこの制度が変わり、フラット35も原則団信へは加入となりました。

主な変更点は以下になります。

・保険料が金利上乗せ

・保障範囲が拡大

・オプション保障の内容も拡充

上記3点に共通しているのは、いずれも借入者のメリットになるという点です。
つまり、上述したように民間金融機関が団信保障を手厚くしたので、フラット35もそれに対抗したということです。

保険料が金利上乗せ

今までは、フラット35で団信に加入するときには、ローン支払いとは別に団信料を支払う必要がありました。
しかし、今回の変更で金利に上乗せしていたのですが、その金利上乗せ分は従来の団信料より安くなる設定です。
つまり、加入は強制になったものの、団信料は実質値下げされたということです。

保障範囲が拡大

また、団信で保険料が下りる保障範囲が拡大しました。
今までは「死亡+高度障害」という内容で、これは民間銀行が提供する団信と同じです。
改定後は「死亡+身体障害保障」になります。
これによって、従来は対象とならなかった人も、保障の対象となります。

オプション保障の内容も拡充

また、フラット35は3大疾病(ガン・心筋梗塞・脳卒中)付きの団信があり、この団信に介護保障(要介護2〜5)も付保されることになりました。

3-5.外的要因にも影響された長期金利

先ほどいったように、固定金利は以下の10年国債利回りに連動します。

10年利回り

引用元:三井住友銀行マーケットチャート

上記のように、2017年の10年国債利回りは、赤枠で囲っている部分になります。
上述したように、国債の利回りは、国債の価格が上がれば下がり、国債の価格が上がれば下がります。
国債価格が上がるときは国債が買われるときで、国債価格が下がるときは国債が売られるときです。

そのため、上述したように日銀の借り入れなどによっても左右されるのですが、ほかにも2017年は外的要因に左右されることが多かったです。
たとえば、2017年9月に国債利回りはマイナス圏内まで下落しています。

これは、北朝鮮が弾道ミサイルの発射と、6度目の核実験が行われたときです。
つまり、北朝鮮とアメリカ、およびアジア諸国との関係が緊迫してきており、戦争や制裁などのリスクが上昇した状態です。

そのため、比較的安全資産である円が買われ、その流れで国債が買われ、国債価格が上がったところで利回りが下がったというわけです。

このように、2017年は北朝鮮問題をはじめ、仮想通貨バブルや、トランプ大統領就任&保護主義などたくさんのニュースが流れました。
このような国際的なニュースはマーケットに影響を与え、マーケットは国債価格に影響を与えます。
それが、回りまわって固定金利にまで影響を及ぼしたのが2017年でした。

4.まとめ

2017年の住宅ローンについて振り返りましたがいかがでしたか。
やはり、全体的にはマイナス金利政策継続による低金利というのが特徴的であり、各金融機関が色々と保障内容やサービス内容を変えてきたのも特徴的でした。
この点を踏まえ、2018年はどのように推移するか予測してみましょう。

- 2018年07月09日