税金と聞くと頭が痛くなる人が少なくないようです。
お金が出ていくという理由と複雑で難しいという理由からではないでしょうか?
でも、不動産を取引するときには、避けては通れない大切な内容です。 知らないと大変なことになることも…。
税金として、お金が出ていくのは仕方ないとしても、いくらくらい出ていくのかが分からないと、どうしようもありません。
後で「こんなはずではなかった」と、ならないように最低限押さえておきたいポイントをご紹介しましょう。
目次
1. 不動産を売却すると税金がかかる理由
2. 印紙税とは?
3. 登録免許税とは?
4. 譲渡所得税・住民税とは?
4-1. 譲渡所得税と住民税の「譲渡所得」
4-2. 譲渡所得税と住民税の「課税譲渡所得」
4-3. 譲渡所得税と住民税の「税率」
4-4. 譲渡所得税と住民税の「税額」
5. 消費税
6. 売却前に税金のチェックをしておこう
不動産を売るには、税金がかかると聞いたことがあるかと思います。
たとえば、相続した土地を売るときにも税金がかかるのでしょうか?
不動産を売却すると、さまざまな税金がかかります。
なぜだと思いますか?
不動産を売却することは、不動産という商品を売って利益を得る行為になるからです。
たとえば、商売で儲かれば税金がかかりますね。
サラリーマンでも給料に税金がかかります。
個人の場合、商売による利益や給料を受取る場合には「所得税」という税金がかかります。
不動産を売却したときには、不動産を譲渡するところから「譲渡所得税」という税金になるのです。
ただし、不動産を売却しても利益が上らなければ譲渡所得税はかかりません。
なぜなら、そもそも所得税とは、儲かったから支払わなければならない税金であって、儲かっていない場合には支払う必要がないからです。
たとえば、住宅を買い替えるときなどは、住宅を売却しますが、購入もするため、結果として儲かることはないでしょう。
ただし、不動産を売却したときに儲かっていなくても、契約を結んだり不動産登記をしたりするのに
支払わなければならない税金もあるので注意してください。
具体的には、「印紙税」や「登録免許税」です。
では、それぞれの税金について説明していきましょう。
不動産を売却したときに、利益が出なくても支払わなければならない税金の一つに印紙税があります。
不動産を売却するときには、売買契約書を交わしますね。 売買契約書には印紙を貼ることになっています。
収入印紙を貼って消印をすることで印紙税を納めることになるのです。 印紙税とは、課税文書に貼らなければならないとされています。
たとえば、売買契約書や請負契約書などです。 その他に領収書にも貼ることになっています。
印紙を貼らなければならない文書を課税文書といいます。
なお、建物の賃貸借契約書は、課税文書にならないので印紙を貼る必要はありません。
課税文書である売買契約所の場合、売主と買主が連帯して印紙税を納めなければならないとされています。 実際には、買主が契約書を保有し、売主が写しを保有するなら、買主が納付、両方が契約書を保有するなら両方が納付するのが一般的でしょう。
印紙の額は、契約する金額により異なります。
たとえば、売買契約で金額が「1,000万円を超え5,000万円以下」であれば「2万円」というように契約金額に応じて定められているのです。
詳しくは、参照URLをクリックしてください。
参照URL:国税庁・印紙税額の一覧表
「2.印紙税とは?」ではお金を動かすのにも税金がかかることがわかりました。では他に何があるのでしょうか?
登記という言葉を聞いたことがあるかと思います。
登記自体にはさまざまな種類があり、不動産では「不動産登記」というものがあります。
不動産登記は、その土地や建物についての権利を法的に公にする制度です。
不動産は高価なもですから、持ち主をはっきりさせたいですよね?
そこで、登記を申請するときに必要なのが「登録免許税」という税金になります。
不動産売却時は、売却する不動産のローンが残っていると登録免許税が必要になります。
金融機関とローン契約を結ぶとき、不動産に抵当権が設定されるでしょう。
抵当権とは、万が一返済できない場合に抵当権を設定した不動産を処分してお金にかえて返済を強制する権利です。
一般的に抵当権の設定された不動産を売却するときには、ローン残高を完済して設定された抵当権を抹消しなければ売れません。
抵当権抹消時には、抹消登記が必要になります。
抹消登記のときの登録免許税の額は、不動産ひとつにつき1,000円とされています。
つまり、売却するのが戸建て住宅であれば、建物につき1,000円、土地につき1,000円となるので、あわせて2,000円が必要です。
納付方法は、抹消登記をするときの登記申請書に税額分の収入印紙を貼って提出することができます。
不動産を売却することにより利益がでれば、支払わなければならないのが譲渡所得税と住民税です。
売却した年の所得として、翌年の確定申告のときに申告納付することになります。
では、譲渡所得税・住民税の計算の仕方をご紹介しましょう。
税金では、儲かった場合に「所得」と表現します。 不動産を売却する場合は、買主に譲渡するわけですから「譲渡所得」と言います。
譲渡所得税と住民税を計算するためには、まず不動産を売却したことによる譲渡所得がどれだけあったのかを計算しなければなりません。
譲渡所得の計算 |
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用) |
参考 |
・譲渡価格…売却した価格 ・取得費…売却する不動産を取得したときの費用(不明であれば売却価格の5%) 購入代金 取得時の仲介手数料 買主が負担した印紙税 登記費用 不動産取得税 その他 ・譲渡費用…不動産を売却したときの費用 売却時の仲介手数料 売主が負担した印紙税 登記費用 その他 |
下記の計算例で実際に計算して見ましょう。
計算例 |
譲渡価格…3,000万円 取得費…2,000万円 譲渡費用…100万円 |
譲渡所得の計算 |
3,000万円-(2,000万円+100万円)=900万円 |
計算により求めた900万円が、譲渡所得になります。
不動産の売却も他の商売と同じように、仕入れた不動産を売るわけですがから、譲渡所得税や住民税がかかるのも納得ですね。
では、この譲渡所得に税率を掛けるのでしょうか?
たとえば、自宅のような居住用の不動産を売却する場合、譲渡所得から「居住用財産の特別控除」として
3,000万円を差し引くことができます。
譲渡所得から当別控除を差し引いた残りを「課税譲渡所得」というのです。
課税譲渡所得の計算 |
課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除 |
上記の「計算例」で計算してみましょう。
課税譲渡所得の計算 |
900万円-3,000万円=-2,100万円 |
課税譲渡所得がプラスになると、その額に税率を掛けて譲渡所得税と住民税を計算するのですが、「計算例」の場合、課税譲渡所得がマイナスになるので 譲渡所得税と住民税を支払う必要はありません。
売却した不動産が居住用であれば「居住用財産の3,000万円特別控除」が適用されるため、課税譲渡所得がマイナスになることが少なくないのです。
譲渡所得税と住民税の税額は「課税譲渡所得×税率」となることがわかりました。
ただし、譲渡所得税と住民税の場合、「税率」が売却した不動産の所有期間により違うため注意が必要です。
ポイントとしては、所有期間が短いと税率が高くなり、所有期間が長いと税率が低くなるところです。
不動産を短い所有期間で転売することは、生活にもとづかない商品としての売却だとみなされるのです。
ここでは、その税率について詳しく見てみましょう。
譲渡所得税と住民税の税率には「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類があります。
売却した年の1月1日時点での所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得になり、5年を超えると長期譲渡所得になるのです。
短期譲渡所得の場合、所有期間が短いため、商売としての取引とみなされるので税率が高くなります。
そして、長期譲渡所得の場合、所有期間が長いため、生活するうえで必要な売却とみなされるので税率が低いのです。
10年を超えて所有していた不動産の売却の場合、居住用財産であれば「10年超所有軽減税率の特例」が適用されるため、 さらに税率が低くなります。
適用される税率
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | 10年超所有軽減税率の特例 | |
譲渡所得税率 | 30.63% | 15.315% |
課税譲渡所得が6,000万円以下の部分 10.21% 課税譲渡所得が6,000万円超の部分 15.315% |
住民税率 | 9% | 5% |
課税譲渡所得が6,000万円以下の部分 4% 課税譲渡所得が6,000万円超の部分 5% |
税額は、上記4-2の課税譲渡所得に売却した不動産の所有期間に応じて、上記4-3の表の譲渡所得税率と住民税率を乗じて計算します。
税額の計算 |
税額=課税譲渡所得×税率(譲渡所得税・住民税) |
税金の額は、課税譲渡価格に税率を掛けるだけですから簡単ですね。
おおよその計算式をマスターするだけでも、税額の予測はできるでしょう。
不動産を売却するときには、あらかじめ譲渡所得税と住民税の計算をしておくことで、手元にどれだけのお金が残るか把握できます。
税額を知らないと、税金として支払わなければならない分まで、うっかり使ってしまうこともあるかもしれません。
特に、土地を売る場合は税額が高くなる可能性がありますので、下記の「参照URL」をチェックしておきましょう。
参照URL:国税庁・土地や建物を売ったとき
ところで、不動産を売却するときに消費税はかからないのでしょうか?
個人が不動産を売却する場合には、消費税は非課税です。
不動産の売却で消費税がかかるのは、不動産業者のような課税事業者が事業として建物を売却するときです。
しかし、課税事業者であっても土地を売却するときは消費税がかかりません。
ただし、個人の取引でも新築マンションを売却するような場合は消費税がかかるのです。
また、収益物件であるマンションを売却するときにも消費税はかかります。
つまり、投資用の物件を取引するのは商売とみなされるので、注意が必要です。
不動産を売却したからといって、お金が入ってくるだけではありません。
思わぬ出費もあるのです。
少なくとも、納めなければならない税金については押さえておかなければならないでしょう。
なかでも注意が必要なのは譲渡所得税と住民税ですね。
売却した不動産が居住用財産であれば特別控除のため税金がかからない場合も多いのですが、土地の場合は居住用財産の特別控除が使えません。
さらに、所有期間が5年以下だと税率も高いため、かなりの出費になります。
不動産を売却して、お金を使ってしまった後で確定申告の時期に譲渡所得税や住民税の納付を知って慌てることにもなりかねません。 知らないでいると、手元に残るお金が思いのほか少なかったということにも。
どうやら、不動産を売却するときには、あらかじめ税額をチェックして備えておく必要がありそうですね。