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家族名義の家や土地を売る時のポイントと注意点

家を売却する時には、原則その家の名義人が手続きをしなければいけません。それは、当然家族であっても同じことです。 ただし、事情があり名義人本人が売却手続きを出来ない事もありますので、その場合のみ家の名義人本人以外でも家を売る事は出来ます。

今回は、家族名義の家や土地を売る時のポイントと注意点をお話します。

契約が名義人本人でないといけない理由

契約が名義人本人でないといけない理由は、不当な売買を防ぐためです。 名義人の意思で売却をしないと後々トラブルになることがあるので、名義人が意思を持ってその不動産を売却しなければいけません。

具体的には契約者が行う契約関連行為には以下のような行為があります。

  1. 不動産会社に売却を依頼する「媒介契約」の署名・押印
  2. 買主と結ぶ売買契約書の署名・押印
  3. 所有権移転登記(住宅ローンの残債があれば抵当権抹消登記も)に関する登記関係書類への署名・押印

不動産の売買は高額な取引であり、専門性の高い取引でもあります。 そのため、売買契約が成立して所有権が売主から買主に移るまでの間に、色々な書面に記名・押印しなければいけません。

それらの書面への記名・押印は原則名義人でなくてはいけません。 また、③の所有権移転・抵当権抹消登記に関しては原則司法書士が行います。 そのため、司法書士が本人確認を行いますし、登記を受理する側の法務局の登記官も本人確認を行います。

このように、不動産の名義人本人による手続きが諸々あるため、名義人本人が手続きをしないと物理的にも不動産を売却出来ません。

親や子でも勝手に売却はできない

勿論、親や子、もしくは近しい親族だったとしても勝手に不動産を売却する事は出来ません。 親が高齢のため売却手続きが面倒なので、親が子に売却を依頼したとしても、子供が自分だけの意思で不動産を売却することは不可能です。 例え、このように親が子に依頼した時でも、原則は親が契約行為をしなければいけません。

しかし、それでもどうしても契約手続きを子に依頼したいという場合には、以下のような書類があれば子が主導となり契約手続きを進められます。

  1. 名義人の実印
  2. 名義人の印鑑証明
  3. 名義人の身分証明書
  4. 名義人の住民票
  5. 委任された子の本人確認書類

このように、名義人の「意志」を示すための書類や、「身分」を示すための書類が必要になります。これらの基に親が子に不動産の売却を依頼したという「委任状」を作成する必要があります。

委任状は、「〇〇(親の氏名)は〇〇(子)に、以下記載の物件(対象不動産)の売買契約や売却活動、及び引渡などに関連する行為を、代わりに行う事を委任する」のような文言があり、その下に委任される者(今回の場合は「子」)と委任する者(今回の場合は「親」)の記名・押印が必要になります。

委任する者の押印は実印でなくてはならず、その実印とセットで印鑑証明書の添付も必要です。 また、当然ながら委任した者と委任された者の関係を示すため、運転免許証や戸籍謄本などの、「委任された側」の本人確認書類は必要になります。

・司法書士は本人確認をしなければいけない

先ほど言いましたが、登記を任される司法書士は名義人本人の意思を確認する必要がありあます。 そのため、例え委任状があったとしても司法書士は名義人本人の意思を確認してから所有権移転登記や抵当権抹消登記を行います。

司法書士が必ず本人確認を行う理由は、取引や登記の公平性や確実性を担保する事が目的です。 仮に、子が親を欺いて不動産を勝手に売却しようとしている場合には、この司法書士が歯止め役になります。

また、仮に名義人本人の意思とは関係なく、勝手に不動産の売買契約が成立したとします。 売買契約が成立した後に司法書士は登記手続きに入りますので、名義人本人に売却意思を確認します。

この時点で名義人本人に売買の意思がなければ、名義人本人が売買契約を追認(後から認める)しなければいけません。 追認しなければ売買契約は成立していないものとなります。また、買主側も売買契約を取り消す事ができます

・親から子へ名義変更をする場合

前項の話を受けて、一旦親から子へ名義変更をした後に不動産を売却すれば問題ないと思われた方もいると思います。 確かに名義人が親から子へ替われば、子が名義人なりますので手続きに関しての問題はなくなります。

しかし、親から子へ名義変更を行うという事は「贈与」と見なされて、贈与税が掛かってしまうのです。 贈与税は税金の中でもトップクラスに高い税率※になりますので、注意が必要です。

※1国税庁ホームページ 贈与税 https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm

親の判断能力がなくなってしまった場合

仮に、親が認知症などを患い、意思を決定する能力や判断能力を失ってしまったとします。 その時には、前項で言った「名義人の意思」が確認できなくなるので、別の手続きをする必要があります。

このように名義人本人の意思決定能力及び判断能力が無い状態になった時には、「成年後見人制度」の申し出を行う必要があります。 成年後見人制度とは、認知症などの判断能力を失った成年者に後継人を選定する制度です。その後見人が、名義人本人の代わりに不動産の売却手続きなどを出来るようになります。

・後見人について

成年後見人制度を利用して後見人を選定しますが、その後見人は誰でもなれるワケではありません。後見人になれる人は、原則「親族」「弁護士・司法書士」「社会福祉士」に限られます。

この3種類の人が後見人になれますが、大抵の場合は親族が後見人になります。例えば、身寄りのない方であったり、親族が後見人になることを拒否したりする場合には、弁護士や社会福祉士が後見人なります。

後見人になれば、不動産を後見人の意思で売却したり、不動産以外の財産の管理や処分をしたりも出来るようになります。 そのため、後見人になる手続きは簡単ではなく、後見人への申し出から審判の確定、実際に後見人として受理されるまでには3~4か月程度の時間がかかります。具体的に後見人手続きをして、不動産を売却するには以下のような流れになります。

  1. 名義人本人の住所地の家庭裁判所に、成年後見制度開始の審判の申し立てを行う
  2. 医師が名義人本人の意思能力や判断能力を評価する
  3. 後見人が選定され、審判が確定される(1~3までで3ヵ月~4か月程度かかる)
  4. 後見人が不動産会社と媒介契約を結び、不動産の売却活動を開始する
  5. 後見人が申込受理・売買契約などの手続きを行う
  6. 買主の個人情報(氏名や住所)や売買金額、売却した資金の使い道などを家庭裁判所に提出する
  7. 6の許可を家庭裁判所から得る
  8. 家庭裁判所の許可を得てから、引渡手続き(売買代金の精算や所有権移転登記など)をして売却完了となる

このように通常の不動産売却とは異なり、家庭裁判所の許可などが必要になります。 これは、買主と売主に利害関係がないことを確認したり、キチンと売却した代金が名義人本人のために使われるかを確認したりする意味合いがあります。

後見人はあくまで名義人本人の代わりなので、売却した金額は名義人本人のために使わなければいけません。 そのため、売却代金をそのまま自分の口座に移して自分のために利用する事はできません。仮に、自分のために使った場合には「贈与」となります。

まとめ

このように、いくら名義人本人の「子」であっても、家族名義の不動産を勝手に売却する事は出来ません。キチンとした手続きを経て売却をしなければいけないのです。 不動産は高額な商品のため、ただでさえ手続きが煩雑です。親名義の不動産を代わりに売却する時には、上記のように手続きは更に大変になりますので、その点は認識しておきましょう。

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